皆さま

今週もマネックスクリプトバンクから、Web3.0界隈の動きをお伝えします。
注目トピックス
暗号資産ETFに忍び寄る上場廃止の危機
コメント:島田
Cosmos Asset Managementがオーストラリアの証券取引所に上場していた2つの暗号資産ETFの上場廃止申請を行いました。この動向に乗じて、他の暗号資産ETFの危険性を指摘する議論が活発化しています。

上場廃止は主に販売不振、取引高の低迷によるものです。トロント証券取引所に上場している別の暗号資産ETFを追跡することを目指す「インデックスファンドのインデックスファンド」と表現できるようなETFでしたが、ファンドの運営体が新興のアセマネ会社であったことともあいまって、ニーズをうまく引き出せなかったようです。

このETFが上場された直後に同じ市場へ上場した21Shares社の暗号資産ETFは、間接的にではなく直接BTCやETHへ投資するETFです。こちらはそれなりにニーズがあるのか(AUM的には大差はないようですが)、本件に関連して上場を廃止するような計画はないと広報担当者がコメントしています。

21Sharesの件を見ると、巷で危ぶまれているように、この動向に続いて他のETFも上場廃止に向かうかどうかは微妙なところです。

ただ、十分に差別化されていない暗号資産関連のETFや信託商品が溢れている状況はあまり好ましくないでしょう。流動性が分断化されるために原資産の価格変動への対応力が損なわれますし、また、米国市場の規制的なハードルを回避するための消極的なニッチ市場への上場は持続可能性に欠けます。

おそらくはすでにETFの供給量が投資家の需要を上回っている状況ですが、調整のため、今後、下位のものから順に上場廃止されていく可能性があります。それにより上位のETFがAUMをより大きくしていきますが、そうなると、今度は巨大な資産を抱えるファンドの側で流動性の問題が生じます。

インデックスETFが自らの抱える資産の大きさに負けて、原資産のパフォーマンスをまともに追跡できなくなるようでは本末転倒ですが、暗号資産の世界の流動性は既存の金融と比べるとまだまだ未発達な状態であり、実際にどの程度耐えうるのかもまだあまりわかっていないような状況です。今後はETFの進展とともに暗号資産の流動性を巡るビジネスにも注目が集まりそうです。
コメント:万代
世界最大の仮想通貨取引所Binanceは、大手仮想通貨取引所FTXの発行する取引所トークンFTTの自己ポジションをすべて売却すると発表しました。

FTXは、元々Binanceがインキュベートした数々の仮想通貨スタートアップのひとつでしたが、昨年株式をFTXが買い戻しており、その対価としてステーブルコインおよびFTTによってBinanceに$2.1Bが支払われていました。

FTXのCEOであるサム・バンクマン=フリードは、他にアラメダリサーチという投資会社を保有していますが、最近そのバランスシートの内容がリークされ、約146億ドルの資産のうち、3分の1以上がFTTであることが判明しました。結果、アラメダリサーチに資金需要が生じた際にFTTが急速に現金化されて暴落するリスクが懸念されています。

BinanceのCEOであるCZは、今回のFTT売却判断の理由はこうした情報を反映したリスク管理だとしています。一方、サム・バンクマン=フリードが発表していた仮想通貨業界の規制草案(DeFiへの取り締まり強化などを含む)への不満もFTT売却を後押ししたのではないかと憶測を呼んでいます。

今回Binanceが売却するFTTは$500M程度だとされていますが、FTTの価格下落によって、FTTを担保とするローンの強制担保決済などに繋がり、暗号資産価格全体に影響が生じないか、一部の仮想通貨ユーザーの間では不安が広がっています。
コメント:松嶋
暗号資産資産市場が低迷するなか、一部のマイニング企業の経営状況が悪化しています。ナスダック上場企業Core Scientific【CORZ】は1000億円を超える債務を抱えており、直近の財政悪化により債務不履行に陥るリスクが危ぶまれています。同Argo Blockchain【ARB】も資金調達が上手くいかず、キャッシュフローがマイナスになる恐れが出ています。

たしかに今年に入ってからはビットコインの暴落と電気代の高騰によってマイニング事業全体が厳しい状況にあります。マイナーはビットコインで得た収益を現金に替えるか、担保融資によって現金を借りるかによってマイニングにかかるコストを支払いますが、法定通貨建ての収益も担保価値も大幅に下がる傾向にあります。

しかし、このような状況でもRiot Blockchain【RIOT】やMarathon Patent Group【MARA】、Clean Spark【CLSK】などはコストを上手くコントロールすることによってマイニング事業の収益性を保っています。これらの企業は昨年のビットコイン絶頂期にかけて過度な設備投資を行わなかったため、債務返済に追われていません。
一方のCore Scientific等は融資を受けながら積極的に機械購入を続けた結果、金融環境の悪化やインフレなどの影響もあって経営が窮地に立たされています。

今後は冬の相場のなかでマイニング企業の統廃合も進むのではないかと予想されます。また、マイニングに限らず、暗号資産ファンド3ACの破綻を見ても、暗号資産関連事業では短期的にリスクを取りすぎることが禁物であることがわかります。


注目の資金調達
Tharsis
概要:Evmosブロックチェーン開発
調達額:2700万ドル
ラウンド:プライベートトークンセール
主な出資者:Polychain Capital, Galaxy Digital, Huobi, HashKey

WalletConnect
概要:ウォレット通信プロトコル
調達額:1250万ドル
ラウンド:-
主な出資者:1kx, Union Square, Shopify, ConsenSys, Gnosis

RakkaR Digital
概要:暗号資産カストディ
調達額:1000万ドル
ラウンド:シード
主な出資者:SCB 10X

Braavos
概要:Starknet基盤の自己管理型ウォレット
調達額:1000万ドル
ラウンド:シード
主な出資者:Pantera Capital, Brevan Howard Digital, Crypto.com, Road Capital, Matrixport, Starkware

Custodia Bank
概要:デジタル資産銀行
調達額:700万ドル
ラウンド:-
主な出資者:不明

Texture
概要:Solana基盤のDeFiイールドプラットフォーム
調達額:500万ドル
ラウンド:-
主な出資者:P2P Capital, Sino Global, Wintermute, Semantic Ventures, Jane Street Capital

NiftyApes
概要:NFT担保ローン
調達額:420万ドル
ラウンド:シード
主な出資者:Variant, FinTech Collective, Robot Ventures, Polygon, Coinbase Ventures

Centrifuge
概要:実物資産のトークン化プロトコル
調達額:400万ドル
ラウンド:-
主な出資者:Coinbase Ventures, BlockTower, Scytale, L1 Digital

Orderly Network
概要:NEAR基盤のDeFiインフラ
調達額:不明
ラウンド:シード(増資)
主な出資者:Laser Digital(野村子会社)
注目のWeb3関連サービス
ウォレットとDappsのハブとして機能するWalletConnect

今回は暗号資産ウォレットと分散型アプリ(Dapps)の接続をハブとしてサポートする通信プロトコルであるWallet Connectを紹介します。

企業概要
2021年4月に設立された、米国のweb3関連スタートアップ。「Connecting web3」を理念に、暗号資産ウォレットとDappsの接続をサポートする通信プロトコルをオープンソースで開発している。

主な資金調達
・2021年4月、シードラウンドで130万ドルを資金調達(1kx)
・2022年3月、シリーズAで1130万ドルを資金調達(1kx、Union Squareなど)
・2022年11月、エコシステムラウンドで1250万ドルを資金調達(Shopify、Coinbase Ventures、ConsenSys、Circle Venturesなど)
※評価額は非公表

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