vol.6  20230920
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【1】著者に聞く!新教材『初級日本語パノラマ』のねらい
【2】『初級日本語げんき フランス語版/スペイン語版』発売中!
【3】近刊案内
【4】NIHONGO教室だより~学生ボランティア活動編~

【1】著者に聞く!新教材『初級日本語パノラマ』のねらい
8月に発売された 『Elementary Japanese: PANORAMA(初級日本語パノラマ)12の文法ポイントで学ぶ速修日本語初級』(以下、『初級日本語パノラマ』)は、1冊で効率よく、かつ確実に初級日本語が学べる全く新しい形の総合テキストです。今回、著者の先生方に、この教材を作った経緯やねらいについてお聞きしました。

ーー『初級日本語 パノラマ』は、近年の急速な学習環境の変化に対応すべくデザインされたそうですね。
著者:今までは、教師一人が複数の学生に対して行う一斉授業が中心で、学生の間にレベルやニーズの違いがあっても、平均的な内容を扱うしかありませんでした。しかし、現在は学習者一人一人に端末があり、個人学習を支援するテクノロジーも日々進歩しているので、授業内でも個人ニーズにあった学習が進められるようになっています。

 
 私たちは、このような学習環境の変化に対応した新しい初級教材が必要だと考え、本教材を開発しました。例えば、教師の簡潔な導入後は、テキストおよび 専用ウェブサイト上にある確認問題や練習、そして ANKIというフラッシュカードアプリを用いて、個別に学習を進めることができます。本教材は、グループワークやペアワークなどの共同作業も用意しつつ、個人学習の時間を授業中に作り出すことができるのが特色と言えるでしょう。

ーーシラバスの特徴として、12の文法ポイントがありますが、このねらいは何でしょうか。
著者:従来の一斉授業では、一つの学習項目に焦点をあて、短い期間に繰り返し練習を行う「集中学習」が効率的で、多くの初級日本語教科書がその考え方でシラバスを組んでいます。この集中学習の長所はすぐに効果が見られることですが、一方で忘れやすいという問題があります。例えば、「~かもしれない」を学んでいる時は練習や会話でうまく使えるようになります。しかし、次の単元では新しい表現を集中的に練習するため、「~かもしれない」を忘れてしまうということは、皆さんにも経験があるのではないでしょうか。このように集中学習は、一斉授業で練習をするには便利でしたが、個別的かつ断片的で、長期的な学習効率が悪いと言えます。

 記憶には、大きな概念は覚えていても、細かいことは忘れやすいという特徴があります。本教材は、似た表現をまとめて大まかな概念を学び、徐々に細部に目を向けさせることで、記憶が保たれるようにしています。文法概念をまとめた太い幹が12の文法ポイントであり、各学習項目がどの幹についているかわかるような体系的なシラバスとなっています。

 例えば、多くの初級日本語教科書において、「たら」と「ば」は混乱を避けるために、別のタイミングで学習していますが、本教材では「たら」「ば」「と」「なら」といった条件表現は一緒にまとめ、おおよその概念を把握させます。そして個別練習で例文を見て、それぞれの違いを考えます。また、よくできる学生は、全ての表現をしっかり練習し、学習が遅い学生は主要な表現に集中して練習ができます。このように類似表現をまとめて学ぶシラバスにすることで、学習の個別化がしやすくなります。
ーー課ごとの単語リストがないのも特徴的ですね。
著者: 課ごとに覚えるべき単語を区切ると、その課の単語クイズで良い点を取ることができたとしても、次の課に移行した後は、多くの単語を再び目にすることもなく忘れてしまいます。これを避けるため、課ごとの単語リストは作らず、 ANKIアプリによる間隔反復練習を取り入れています。ANKIはフラッシュカードのアプリで、覚えた度合いを自分で判定しておくと、それに応じた適当な間隔で同じカードが出現するので、効率よく記憶することができます。このANKIで使える単語や漢字、例文のデータセットを 専用ウェブサイト上で提供しているので、学習者は授業内で自分のタスクが終わった後や、授業外の隙間時間に、ANKIで興味に応じた学習を行うことができます。

 本教材は、このように単語リストがなかったり、シラバスにも特徴があるので、初日のオリエンテーションにしっかり時間をとって、勉強の手順や学習する際の注意点、そしてANKIアプリの使い方を理解してもらうことが大切だと思っています。ウェブサイトに 独習者用のページがあり、推奨される学習方法や注意点を載せているのですが、基本的には授業で学ぶ学習者にも当てはまることですので、こちらも活用していただきたいと思います。
ーー独習者用のページというお話が出ましたが、『初級日本語 パノラマ』は独学にも向いていそうですね。
著者: 言語の教科書は、一人でも学べるようにデザインされているべきだと思います。授業で学ぶ時間は限られており、ほとんどの言語学習は授業外で行われると言えるでしょう。また、学習者の日本語学習は、コースが終わってからもずっと続くわけですから、一人でも継続できる具体的な学習法を教え、学習の習慣を身に付けさせることは、教師の重要な役割の一つだと思います。このような理由で、本教材は授業外でも、また独学でも学べるようにデザインしています。ぜひ、さまざまな学習者にこの教材で学んでほしいと思います。
『初級日本語パノラマ』 に興味をお持ちの先生方、参考になったでしょうか。さらに詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。
  教科書の構成や使い方
  教師用ページ
また今後、読解・作文力を養う初中級編の作成も予定しているそうですので、ぜひご期待ください。

取材協力:花井 善朗先生/江森 祥子先生(ウィスコンシン大学オシュコシュ校)

【2】『初級日本語げんき フランス語版/スペイン語版』発売中!
『初級日本語げんき』のフランス語・スペイン語版電子書籍が発売中です。文法説明、会話訳・単語訳、練習の指示文など、『初級日本語げんき』のすべての英語部分がフランス語・スペイン語になっています。ジャパンタイムズ出版デジタルストアで提供しているほか、各国の電子書店でご購入いただけます。
※スペイン語版のテキスト2・ワークブック2は2024年1月発売予定です。
※フランス語版は紙書籍版でも発行しています。

フランス語版 テキスト1

フランス語版 テキスト2

スペイン語版 テキスト1

スペイン語版 テキスト2

【3】近刊案内

『こんにちは、にほんご!―すぐに使える暮らしのかんたん表現[改訂版]』
てくてく日本語教師会 著

やさしい日本語を使いながら生活に役立つ言葉が自然に身につくと好評の入門会話表現集が、英語・中国語・ベトナム語訳と音声付きでリニューアル。 基本のあいさつから買い物や病院でよく使うフレーズ、「助けて!」などの緊急表現まで、豊富な入れ替え語彙とカラーイラスト付きで収録しています。

A5変形 192ページ 英語・中国語・ベトナム語訳付き
音声無料ダウンロード
10月下旬発売予定

「ミニストーリーで覚える JLPT日本語能力試験ベスト単語N1 合格2600」
話題別コーパス研究会 著

JLPTに合格するための語彙力を養う単語帳「ベスト単語」シリーズから、ついにN1が登場! コーパス研究に基づき、科学的に「よく出る組み合わせ」を1つの例文でまとめて提示することにより、少ない文で効率的に単語が覚えられます。また、【例文⇒単語】の形式で、読解力も同時に身に付きます。

B6変形 約368ページ 英語・中国語・ベトナム語訳付き
音声無料ダウンロード
10月下旬発売予定


【4】NIHONGO教室だより~学生ボランティア活動編~
取材協力:小森 万里江先生、宮口 恵美先生(東京育英日本語学院)
日本、そして世界各地で日本語を教える先生にお話を伺って、最新事情をお届けします!
今回は、渋谷区にある東京育英日本語学院が取り組んでいる学生ボランティア活動について、お話しいただきました。
◆フードバンク活動のボランティア
 今日は渋谷区の福祉施設「総合ケアコミュニティ・せせらぎ」で、NPO法人フードバンク渋谷が行うフードバンク活動のボランティアに参加しています。
 このボランティア活動は、企業や個人から提供された食品を、シングルマザーや外国人、失業者など何らかの理由で支援を必要とする方に渡せるように仕分けをするもので、毎月第2金曜日に定期的に行われています。今日参加している学生たちは日本語学習を始めて3~4ヶ月ですが、そのうち一人はすでに3回ボランティアに参加しています。

◆ボランティア活動に取り組む目的

 当校は、2016年より地域貢献の一環として、渋谷区の清掃ボランティアを行っています。基本的には興味がある学生が参加していますが、当校の母体となるアイア株式会社が行う地域の清掃活動に参加する形で、授業として清掃ボランティアをしたこともあります。また、渋谷青山通り商店会が行う青山通りの清掃活動に、近隣の店舗や住民の方とともに参加したこともあります。
 去年からは、さらなる地域貢献のため、SDGsの観点からフードバンク活動に注目し、活動を行う自治体や企業、ボランティア関連団体に問い合わせました。最初の足掛かりを作るまでが大変でしたが、渋谷区の社会福祉協議会がボランティアを受け入れてくれることになり、フードバンク活動を定期的に行うようになりました。定期的なフードバンク活動だけでなく、バスケットボールチーム「アルバルク東京」の試合会場で行われるフードバンク活動の手伝いをしたこともあります。また、社会福祉協議会の紹介で、区民による英会話サークルの講師をするなど、活動の幅も広がっています。
◆学生にとってのメリット
 フードバンク活動には地域の年配の方や子供連れの家族も参加しており、日本語学校やアルバイトなどでは出会うことが少ない区民との交流の場になっています。中には区民の方の家に招かれ、友だちのような関係を築いている学生もいます。学生にとってボランティア活動は、覚えたての日本語を教室外で使ってみるチャンスであることはもちろん、社会参加の機会にもなっていると思います。

 ボランティアに参加している時の学生の顔は生き生きとしています。その表情を見るとボランティア活動に取り組んで本当に良かったと感じます。


■編集後記
日本では、そろそろ「食欲の秋」を迎えます。食といえば、「日本の料理名には、ときどき器の名前が入りますね」と海外の方に言われたことがあります。「ざるそば」「茶碗蒸し」「○○丼」「○○鍋」・・他にもあるでしょうか。また、他の国ではどうでしょうか。料理名分析も面白そうですね。
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THE NIHONGO TIMES 第6号 
2023年9月20日発行
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