『世界』メールマガジン/2018年8月号 【特集:セクハラ・性暴力を許さない社会へ】
2018/07/08 (Sun) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2018年8月号
■■ vol.#0038
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■『世界』2018年8月号(第911号)好評発売中
2018年7月6日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/世界の潮/注目記事/連載/グラビア/編集後記/
『世界』から生まれた本/イベント情報
┏━━━┓
┃ 特集 ┃セクハラ・性暴力を許さない社会へ
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈「敵」は内側にあり〉
変わらない男社会の体質――メディア業界の女性たち
匿名(民放職員)
〈現場からの視点〉
セクハラという「男性問題」
金子雅臣(職場のハラスメント研究所主宰)
〈「魂の殺人」に向き合う〉
性暴力被害当事者との対話から
本橋由紀(毎日新聞)
〈「なぜ抵抗しなかったのか」〉
性的被害と「凍りつき」
椎名 葉(弁護士)
〈「あるある」で済ませない〉
他人事ではない「無意識のセクハラ」
瀧波ユカリ(漫画家)
〈フェミニズムの新たな波〉
韓国「# MeToo 革命」――女性が主導する「第二の民主化運動」
李娜榮(韓国・中央大学),翻訳・構成=岡本有佳
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈偽りに抗う〉
「沖縄ヘイト」とマスメディアの責任
小那覇安剛(琉球新報)
〈法的対抗〉
匿名のヘイトスピーチといかにたたかえるか
小倉秀夫(弁護士)
〈袴田事件「再審を認めず」を認めず〉
特別寄稿「負けてたまるか」
袴田ひで子
〔インタビュー〕冤罪の継続こそ罪である
西嶋勝彦(弁護士)
検察の主張を丸吞みにした決定
木谷 明(弁護士)
〔連載〕神を捨て,神になった男 確定死刑囚・袴田巖【特別篇】「生きている限りは闘い続けていきます」
青柳雄介(ジャーナリスト)
司法に用いられる科学のあり方
荒木涼子(毎日新聞)
司法の良心を市民が見ている
青木恵子(冤罪被害者),金聖雄(映画監督),新田渉世(元プロボクサー)
〈EUの矛盾〉
左と右のポピュリズム――なぜイタリアで
赤木昭夫(元慶應義塾大学教授)
〈脆弱な政権〉
「分裂国家」台湾の現実――蔡英文政権二年を迎えて
本田善彦(ジャーナリスト)
〈民主主義から遠ざかる〉
カンボジアで何が起きているか
熊岡路矢(日本映画大学)
〈インタビュー〉
「見て見ぬ振り」を繰り返さないために――『ゲッベルスと私』監督たちに聞く
中村一成(ジャーナリスト)
〈インタビュー〉
「地方議員のなり手を見つけ,育てる努力が不足しているのです」
寺島 渉(長野県飯綱町前町議会議長),聞き手=相川俊英(地方自治ジャーナリスト)
〈つながり続ける〉
言葉を失うとき――相模原障害者殺傷事件から二年目に考えること
渡邉 琢(介助士)
〈米朝首脳会談は何を変えるか〉
朝鮮半島の大転換,本格的な推進段階へ
李南周(聖公会大学),翻訳=青柳純一
〔対談〕米朝首脳会談後の東アジア――非核化・平和構築の行方は
李鍾元(早稲田大学)×平井久志(ジャーナリスト)
〈追悼・日高六郎〉
東アジアの思想家としての日高六郎――二〇世紀を生き抜き,書き,思考した知識人
三宅芳夫(千葉大学)
「含羞の知識人」を見送る
見田宗介(東京大学名誉教授)
〈特別寄稿〉
続・続 韓国行 (下)
金石範(作家)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇AIの軍事利用を問うグーグル社員
池内 了
◇持続可能な山づくりに逆行しかねない「森林経営管理法」
尾原浩子
◇岐路に立つフィリピン・ミンダナオ和平
米元文秋
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●脳力のレッスン【196】特別篇
一九六八年再考――トランプも「一九六八野郎」だった
寺島実郎
●新語解題【第6回】
「集団心理」――ヒトラーと大衆操作
小俣和一郎(精神医学史家)
●アパレル興亡【第12回】
黒木 亮(作家)
●私的小豆島名所【その37】
内澤旬子(イラストルポライター)
●仮想通貨は幻想通貨?【最終回】
ビットコインの展望
中島真志(麗澤大学)
●それぞれの出ウチナー記 海を越えるアイデンティティー【第11話・最終回】
――国家を越え世界に広がった絆
三山 喬(ジャーナリスト)
●沖縄(シマ)という窓
――母と子,少年たちの沖縄戦
山城紀子(フリーライター)
●映像世界の冒険者たち【第4回】
歴史の塵埃――テオ・アンゲロプロス
四方田犬彦(比較文学・映画研究家)
●パチンコ哀歌(エレジー)【第5回】
依存に崩れた家庭と人生
古川美穂(フリーライター)
●〈周縁〉の「小さなアメリカ」【第8回】
「ボーダー文化」の体現者たち――越川芳明との対話
中村 寛(多摩美術大学)
●中国新建築文化論【第15回】
中国近代建築の初期設定――梁思成とモダニズム
市川紘司(明治大学助教)
●読者投句・岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)
●片山善博の「日本を診る」【第105回】
今,野党のなすべきこと
片山善博(早稲田大学)
●原発月報――(18・5~6)
福島原発事故記録チーム
●メディア批評【第128回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●世界論壇月評
朱建栄・竹田いさみ・吉田文彦・石郷岡建
●ドキュメント激動の南北朝鮮(252)(18・5~6)
編集部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○グラビア
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○公募作品【168】
カンボジア――奪われた正義
高橋智史(フォト ジャーナリスト)
○A SHOT OF THE WORLD
○表紙の言葉
鈴木邦弘(写真家)
○表紙写真= 鈴木邦弘 デザイン= 赤崎正一+ 佐野裕哉
○グラビアについて(公募規定)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今国会では,モリカケ問題のどさくさにまぎれて,昨年の「主要農
作物種子法廃止法案」成立と似た文脈で,二つの法律が成立した.
「森林経営管理法」(本号,尾原氏)と「改正卸売市場法」である.
公共的価値から経済性の追求へ.規制緩和と民営化を進め,生きる
インフラを取り崩す安倍政権版,あくなき「ショック・ドクトリン」
である.
「改正卸売市場法」は,日本の食の流通を劇的に変容させるおそれ
があると指摘されている.新自由主義的政策でも安倍首相と同類の小
池都知事がぶち上げた,築地を「食のテーマパーク」にするというあ
まりに浅はかな構想とともに,築地市場の豊洲移転が三カ月後に迫っ
ている.
「築地市場の場内,場外だけでなく,本願寺,浜離宮,そして歌舞
伎座,勝どき橋,聖路加周辺まで……これらが築地だと思っています.
日々谷と銀座にも新しいビルができましたが,そこからまっすぐ歩い
てくると,タイムスリップしたかのような築地の街が現れます.蘭学
事始の地や慶應義塾発祥の地であるなど,築地は文化を継承してきた
所でもあります.築地全体が,ヨーロッパの都市でいう旧市街のよう
なものです.築地のこの雰囲気は一朝一夕にできたものではありませ
ん.地価は高いかもしれませんが,築地市場で働く人々が,その価値
以上のものを作ってきました.だから世界のブランドになったのです.
どうか築地全体を守ってください」(「築地女将さん会」の新井眞沙
子さん,六月二日集会での発言要旨).
二〇〇〇年前後にユーロ圏に入り,低利の銀行融資に飛びついた南
欧の国々(本号,赤木氏)で,一〇年足らずの住宅バブル・リゾート
開発により,地方都市の美しかった旧市街が見るも無残に消滅した例
がいくつもあったのを思い出した.
乱開発で壊された景観や街の文化は二度と元には戻らない.民間業
者の乱伐でできたハゲ山が,防災機能ももつ美しい森になるまでに何
十年もかかる.
不屈の反対運動が続く沖縄・辺野古新基地建設現場周辺では,専門
家が警鐘を鳴らしていたとおり(二〇一七年一二月号,大久保奈弥氏
「サンゴの移植は環境保全措置となり得ない」参照),希少サンゴが
消失の危機と報じられている.
もはや元に戻らない最も深刻な問題は,「少子化」であろう.日本
の人口構造は,ピラミッド型から釣鐘型へ,そしていまや「棺桶型」
に移行しているとのことだ.地方は「無子高齢化」(四月号,前田正
子氏)で子どもの笑い声が途絶えて久しく,都会ではサブカルの舞う
ディストピアが広がる……二〇二〇年以降の日本をどう構想すればい
いだろうか.
後戻りできないと言えば,南北・米朝の首脳会談とともに踏み出し
た朝鮮半島の平和プロセスが,逆行・挫折することなく進むことを望
みつつ注視したい.小誌では,一九九七年八月号から「ドキュメント・
激動の南北朝鮮」の連載を続けている.最近は「超激動」と形容する
にふさわしく,またキャンドル革命以降の韓国民主主義の進展ぶりに
も目を見張る.本号で二五二回を迎えたこの最長期連載が,幸せな形
で大団円を迎える日が近く来ることを願っている.
***
今月号で編集長を退任することになりました.この間,𠮟咤激励,
ご意見,ご批判をたくさんいただきました.この場を借りて御礼申し
上げます.次号からは熊谷伸一郎が編集の任を担います.引き続きご
愛読のほど,お願い申し上げます.
清宮美稚子(本誌編集長)
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎ひとはなぜ戦争をするのか 脳力のレッスンV
寺島 実郎
定価(本体1700円+税)
http://iwnm.jp/024533
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▼本号の目次
特集/世界の潮/注目記事/連載/グラビア/編集後記/
『世界』から生まれた本/イベント情報
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┃ 特集 ┃セクハラ・性暴力を許さない社会へ
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈「敵」は内側にあり〉
変わらない男社会の体質――メディア業界の女性たち
匿名(民放職員)
〈現場からの視点〉
セクハラという「男性問題」
金子雅臣(職場のハラスメント研究所主宰)
〈「魂の殺人」に向き合う〉
性暴力被害当事者との対話から
本橋由紀(毎日新聞)
〈「なぜ抵抗しなかったのか」〉
性的被害と「凍りつき」
椎名 葉(弁護士)
〈「あるある」で済ませない〉
他人事ではない「無意識のセクハラ」
瀧波ユカリ(漫画家)
〈フェミニズムの新たな波〉
韓国「# MeToo 革命」――女性が主導する「第二の民主化運動」
李娜榮(韓国・中央大学),翻訳・構成=岡本有佳
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◆注目記事
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〈偽りに抗う〉
「沖縄ヘイト」とマスメディアの責任
小那覇安剛(琉球新報)
〈法的対抗〉
匿名のヘイトスピーチといかにたたかえるか
小倉秀夫(弁護士)
〈袴田事件「再審を認めず」を認めず〉
特別寄稿「負けてたまるか」
袴田ひで子
〔インタビュー〕冤罪の継続こそ罪である
西嶋勝彦(弁護士)
検察の主張を丸吞みにした決定
木谷 明(弁護士)
〔連載〕神を捨て,神になった男 確定死刑囚・袴田巖【特別篇】「生きている限りは闘い続けていきます」
青柳雄介(ジャーナリスト)
司法に用いられる科学のあり方
荒木涼子(毎日新聞)
司法の良心を市民が見ている
青木恵子(冤罪被害者),金聖雄(映画監督),新田渉世(元プロボクサー)
〈EUの矛盾〉
左と右のポピュリズム――なぜイタリアで
赤木昭夫(元慶應義塾大学教授)
〈脆弱な政権〉
「分裂国家」台湾の現実――蔡英文政権二年を迎えて
本田善彦(ジャーナリスト)
〈民主主義から遠ざかる〉
カンボジアで何が起きているか
熊岡路矢(日本映画大学)
〈インタビュー〉
「見て見ぬ振り」を繰り返さないために――『ゲッベルスと私』監督たちに聞く
中村一成(ジャーナリスト)
〈インタビュー〉
「地方議員のなり手を見つけ,育てる努力が不足しているのです」
寺島 渉(長野県飯綱町前町議会議長),聞き手=相川俊英(地方自治ジャーナリスト)
〈つながり続ける〉
言葉を失うとき――相模原障害者殺傷事件から二年目に考えること
渡邉 琢(介助士)
〈米朝首脳会談は何を変えるか〉
朝鮮半島の大転換,本格的な推進段階へ
李南周(聖公会大学),翻訳=青柳純一
〔対談〕米朝首脳会談後の東アジア――非核化・平和構築の行方は
李鍾元(早稲田大学)×平井久志(ジャーナリスト)
〈追悼・日高六郎〉
東アジアの思想家としての日高六郎――二〇世紀を生き抜き,書き,思考した知識人
三宅芳夫(千葉大学)
「含羞の知識人」を見送る
見田宗介(東京大学名誉教授)
〈特別寄稿〉
続・続 韓国行 (下)
金石範(作家)
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◇世界の潮
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◇AIの軍事利用を問うグーグル社員
池内 了
◇持続可能な山づくりに逆行しかねない「森林経営管理法」
尾原浩子
◇岐路に立つフィリピン・ミンダナオ和平
米元文秋
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●連載
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●脳力のレッスン【196】特別篇
一九六八年再考――トランプも「一九六八野郎」だった
寺島実郎
●新語解題【第6回】
「集団心理」――ヒトラーと大衆操作
小俣和一郎(精神医学史家)
●アパレル興亡【第12回】
黒木 亮(作家)
●私的小豆島名所【その37】
内澤旬子(イラストルポライター)
●仮想通貨は幻想通貨?【最終回】
ビットコインの展望
中島真志(麗澤大学)
●それぞれの出ウチナー記 海を越えるアイデンティティー【第11話・最終回】
――国家を越え世界に広がった絆
三山 喬(ジャーナリスト)
●沖縄(シマ)という窓
――母と子,少年たちの沖縄戦
山城紀子(フリーライター)
●映像世界の冒険者たち【第4回】
歴史の塵埃――テオ・アンゲロプロス
四方田犬彦(比較文学・映画研究家)
●パチンコ哀歌(エレジー)【第5回】
依存に崩れた家庭と人生
古川美穂(フリーライター)
●〈周縁〉の「小さなアメリカ」【第8回】
「ボーダー文化」の体現者たち――越川芳明との対話
中村 寛(多摩美術大学)
●中国新建築文化論【第15回】
中国近代建築の初期設定――梁思成とモダニズム
市川紘司(明治大学助教)
●読者投句・岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)
●片山善博の「日本を診る」【第105回】
今,野党のなすべきこと
片山善博(早稲田大学)
●原発月報――(18・5~6)
福島原発事故記録チーム
●メディア批評【第128回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●世界論壇月評
朱建栄・竹田いさみ・吉田文彦・石郷岡建
●ドキュメント激動の南北朝鮮(252)(18・5~6)
編集部
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○グラビア
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○公募作品【168】
カンボジア――奪われた正義
高橋智史(フォト ジャーナリスト)
○A SHOT OF THE WORLD
○表紙の言葉
鈴木邦弘(写真家)
○表紙写真= 鈴木邦弘 デザイン= 赤崎正一+ 佐野裕哉
○グラビアについて(公募規定)
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◇編集後記
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今国会では,モリカケ問題のどさくさにまぎれて,昨年の「主要農
作物種子法廃止法案」成立と似た文脈で,二つの法律が成立した.
「森林経営管理法」(本号,尾原氏)と「改正卸売市場法」である.
公共的価値から経済性の追求へ.規制緩和と民営化を進め,生きる
インフラを取り崩す安倍政権版,あくなき「ショック・ドクトリン」
である.
「改正卸売市場法」は,日本の食の流通を劇的に変容させるおそれ
があると指摘されている.新自由主義的政策でも安倍首相と同類の小
池都知事がぶち上げた,築地を「食のテーマパーク」にするというあ
まりに浅はかな構想とともに,築地市場の豊洲移転が三カ月後に迫っ
ている.
「築地市場の場内,場外だけでなく,本願寺,浜離宮,そして歌舞
伎座,勝どき橋,聖路加周辺まで……これらが築地だと思っています.
日々谷と銀座にも新しいビルができましたが,そこからまっすぐ歩い
てくると,タイムスリップしたかのような築地の街が現れます.蘭学
事始の地や慶應義塾発祥の地であるなど,築地は文化を継承してきた
所でもあります.築地全体が,ヨーロッパの都市でいう旧市街のよう
なものです.築地のこの雰囲気は一朝一夕にできたものではありませ
ん.地価は高いかもしれませんが,築地市場で働く人々が,その価値
以上のものを作ってきました.だから世界のブランドになったのです.
どうか築地全体を守ってください」(「築地女将さん会」の新井眞沙
子さん,六月二日集会での発言要旨).
二〇〇〇年前後にユーロ圏に入り,低利の銀行融資に飛びついた南
欧の国々(本号,赤木氏)で,一〇年足らずの住宅バブル・リゾート
開発により,地方都市の美しかった旧市街が見るも無残に消滅した例
がいくつもあったのを思い出した.
乱開発で壊された景観や街の文化は二度と元には戻らない.民間業
者の乱伐でできたハゲ山が,防災機能ももつ美しい森になるまでに何
十年もかかる.
不屈の反対運動が続く沖縄・辺野古新基地建設現場周辺では,専門
家が警鐘を鳴らしていたとおり(二〇一七年一二月号,大久保奈弥氏
「サンゴの移植は環境保全措置となり得ない」参照),希少サンゴが
消失の危機と報じられている.
もはや元に戻らない最も深刻な問題は,「少子化」であろう.日本
の人口構造は,ピラミッド型から釣鐘型へ,そしていまや「棺桶型」
に移行しているとのことだ.地方は「無子高齢化」(四月号,前田正
子氏)で子どもの笑い声が途絶えて久しく,都会ではサブカルの舞う
ディストピアが広がる……二〇二〇年以降の日本をどう構想すればい
いだろうか.
後戻りできないと言えば,南北・米朝の首脳会談とともに踏み出し
た朝鮮半島の平和プロセスが,逆行・挫折することなく進むことを望
みつつ注視したい.小誌では,一九九七年八月号から「ドキュメント・
激動の南北朝鮮」の連載を続けている.最近は「超激動」と形容する
にふさわしく,またキャンドル革命以降の韓国民主主義の進展ぶりに
も目を見張る.本号で二五二回を迎えたこの最長期連載が,幸せな形
で大団円を迎える日が近く来ることを願っている.
***
今月号で編集長を退任することになりました.この間,𠮟咤激励,
ご意見,ご批判をたくさんいただきました.この場を借りて御礼申し
上げます.次号からは熊谷伸一郎が編集の任を担います.引き続きご
愛読のほど,お願い申し上げます.
清宮美稚子(本誌編集長)
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