『世界』メールマガジン/2021年12月号 【特集1:学知と政治】【特集2:コロナ660日】
2021/11/11 (Thu) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2021年12月号
■■ vol.#0078
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■『世界』2021年12月号(第951号)好評発売中
2021年11月8日発行
定価935円(税込)
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▼本号の目次
特集/注目記事/世界の潮/SEKAI Review of Books/連載/編集後記/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集1┃学知と政治
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈いかなる逸脱だったのか〉
日本における学術と政治─学術会議会員任命拒否問題から考える
岡田正則(早稲田大学)
〈文脈を追う〉
現代日本と軍事研究─日本学術会議で何が議論されたのか
加藤陽子(東京大学)
〈「事件」の本質〉
法治の危機と学術の軽視
松宮孝明(立命館大学)
〈真と偽を区別する〉
ポスト真実の政治状況と人文知
芦名定道(関西学院大学)
〈民主主義への参加〉
「反政府的」であるとは、どういうことか─政治と学問、そして民主主義をめぐる対話
宇野重規(東京大学)
〈学問の自由を守る政治へ〉
反憲法政治の転換を
小沢隆一(東京慈恵会医科大学)
┏━━━┓
┃特集2┃コロナ660日
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈写真家のみたコロナ禍〉
グラビア パンデミックの光景
小原一真、渋谷敦志、大石芳野、林 典子、高橋健太郎、岩村優希、石川真生、岩波友紀
〈課題は何か〉
生存のための社会変革を!──現場からの検証………生存のためのコロナ対策ネットワーク
総論…藤田孝典、渡辺寛人
女性…竹信三恵子
学生…大内裕和
外国人…岩橋 誠
〈検証〉
コロナと法─何ができ、何をしなかったのか
永井幸寿(弁護士)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈ジャーナリズムと連帯〉
フィリピン 沈黙しないジャーナリストたち─マリア・レッサのノーベル平和賞受賞に想う
工藤律子(ジャーナリスト)
〈強いられた流浪〉
ネグロスからの手紙─虐殺と弾圧の島で(特別篇・上)ランタンの灯は遠くなっても
クラリッサ・シングソン(人権アクティヴィスト)、訳・構成=木村英昭・勅使川原香世子
〈報告〉
「ニュース女子」事件とは何だったのか
辛淑玉(のりこえねっと)
〈国際的調査報道〉
パンドラ文書を解読する(上)
奥山俊宏(朝日新聞)、畑宗太郎(朝日新聞)
〈情念とルサンチマン〉
異端者の政治─安倍政権試論
二階堂友紀(朝日新聞)
〈対談〉
岸田「先祖返り」内閣に期待できるか
御厨 貴(東京大学名誉教授)、後藤謙次(政治ジャーナリスト)
〈政治家の軌跡〉
メルケルとは何者だったのか
板橋拓己(成蹊大学)
〈争点は何だったか〉
メルケル後 ドイツの選択(上)──連邦議会選挙と新政権
梶村太一郎(ジャーナリスト)
〈最終回〉
関西生コン弾圧と産業労働組合、そしてジャーナリスト・ユニオン(下)
花田達朗(早稲田大学名誉教授)
〈シリーズ連載〉
ジェンダー平等へ教育に何ができるか
阿久澤麻理子(大阪市立大学)
〈司法の独立の危機〉
岡口裁判官への弾劾訴追は妥当か─訴追状を読む
木村草太(東京都立大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇米価下落─コロナ禍のもとの農業危機
尾原浩子
◇米国の対中政策とクアッド
藤田直央
◇「聖職」神話への挑戦──埼玉教員超勤訴訟10・1判決の意義と課題
高橋 哲
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇SEKAI Review of Books
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇越境する世界史家(下)──リチャード・J・エヴァンズ著『エリック・ホブズボーム』
三宅芳夫(千葉大学)
◇アブドゥルラザク・グルナ、ノーベル文学賞受賞に寄せて
橋本智弘(青山学院大学)
◇読書の要諦──文芸 強靭な孤独
藤沢 周(小説家)
◇【連載】本とチェック 第3回 とてつもないこと
金承福(「クオン」代表)
◇新刊紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
----〈好評連載〉----------
●分水嶺II コロナ緊急事態と専門家【第6回】
「病床二割増」計画
河合香織(ノンフィクション作家)
●亡所考【第12回】
水産市場の〈地霊〉
北條勝貴(上智大学)
----〈最終回〉----------
●県境の町【第10回】
今を生きる
吉田千亜(ライター)
----------------------------
●脳力のレッスン特別篇
「新しい資本主義」への視界を拓く──日本経済・産業再生への筋道(下・1)
寺島実郎
●メディア批評【第168回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●片山善博の「日本を診る」【145】
新型コロナ対策のこれから──国も都道府県も特措法の原点に戻れ
片山善博(早稲田大学)
●いま、この惑星で起きていること【第24回】
暗く、熱くなる地球
森さやか(気象予報士)
●但馬日記【第31回】
繰り返された「トランプ型選挙」──豊岡市長選顛末記(4)
平田オリザ(劇作家)
●お許しいただければ──隣の連中(A. G. ガードナー)
訳=行方昭夫(英文学者)
●原発月報――(21・9~10)
福島原発事故記録チーム
●ドキュメント激動の南北朝鮮【292】(21・9~10)
編集部
●ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○読者投句・岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
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○表紙写真
アメリカの新型コロナ感染症の死者数と同じ、約67万本の白い旗が掲げられた米国ナショナル・モール国立公園。
ワシントンD.C.、2021年9月21日。 ロイター/アフロ
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
日本学術会議への攻撃には、いくつかの政治的文脈があるように思われる。
一つには、政権への批判を辞さない独立的存在をどうしても許容できなかった安倍―菅政権の非民主主義的体質、精神的幼稚さ。
二つには、加藤陽子氏が深く検証しているように、軍事研究の是非をめぐり、きわめて周到な討議を経て慎重な姿勢を示したことへの直接的な報復。
三つに、学術と民間企業を軍事へと動員することを企図する「経済安保」の文脈があるように見える。その旗振りである甘利明氏(当時自民党税調会長)が自身のブログで「日本学術会議は防衛省予算を使った研究開発には参加を禁じていますが、中国の『外国人研究者ヘッドハンティングプラン』である『千人計画』には積極的に協力しています」などと、幾重にも虚偽と曲解の絡み合うデマゴギーを拡散し、ナショナリスティックな感情に訴えて学術会議への攻撃を煽ったのは、この文脈であろう。つまり、四の五の言わず軍事研究に邁進せよ、ということである。この傾向は、新内閣で甘利氏が幹事長に着任したことに象徴されるように、今後も継続するだろう。であればこそ、この任命拒否問題は今後も追及されなければならない。
今号特集を編む作業の中で、6名の方々の知的誠実さに頭の下がる思いを繰り返し抱いた。こうした知性と専門性が活かされる政治の実現を求めていきたい。
今月、やり取りの中で印象的だったのは、辛淑玉さんだ。サプリメント大手のDHCがスポンサーの「ニュース女子」による、現在の日本のもっともダメな成分を抽出して濃縮したような番組を、引用の原文確認のため、私も視聴せざるをえなかった。これは苦痛でしかなかった――メールでそう述べた私に、辛さんは「ごめん」と返事を書いてこられた。いやいや、もちろんそれは辛さんのせいではありません。
先に紹介した甘利氏の文章にも共通するのだが、むきだしの敵意や野卑さは、対話への契機はもちろん、批判的コミュニケーションへの意欲をも失わせる。だが、辛さんから届いた原稿を読んで驚いた。相手の差別性や責任逃れの姿勢を強く批判するばかりではなく、それでいいのか、と問いかける。
自らを顧みざるをえない。低劣な言説は唾棄するだけで済ませ、結果としてただ沈黙していることに終わっていることが少なくないのではないか。この場合、何らかの変化や止揚へと至る可能性はゼロだ。今日、校了した後も、辛さんの文章を再読し考えたいと思う。
さて、一年のしめくくりとなる今号、吉田千亜さんの「県境の町」が完結、扉絵の金井真紀さん「世界のことわざ」も終了する。周縁にあって軽視され補償を拒まれてきた原発事故の被害を可視化してきた吉田さんの連載も、世界中の多彩なコトバを通じて人や生きることの面白さを表現してきた金井さんのイラストも、まさに本誌の粋そのものでした。心より御礼申し上げます。また誌面でお会いしましょう。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議
河合香織
定価1,980円
http://iwnm.jp/061466
クラスター対策に3密回避。専門家たちの議論と葛藤を、政権や行政も含め関係者の証言で描くノンフィクション。
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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◇「webいわなみ たねをまく」(岩波書店のウェブマガジン)
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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□『世界』メールマガジン
〒101-8002 東京都千代田区一ツ橋2-5-5
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WEB: http://iwnm.jp/sekai
Twitter: https://twitter.com/WEB_SEKAI
◇本誌のご注文はお近くの書店か小社営業部宛てにお願いいたします.
岩波書店営業部読者係(TEL:03-5210-4111,FAX:03-3263-6999)
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■『世界』2021年12月号(第951号)好評発売中
2021年11月8日発行
定価935円(税込)
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▼本号の目次
特集/注目記事/世界の潮/SEKAI Review of Books/連載/編集後記/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
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┃特集1┃学知と政治
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〈いかなる逸脱だったのか〉
日本における学術と政治─学術会議会員任命拒否問題から考える
岡田正則(早稲田大学)
〈文脈を追う〉
現代日本と軍事研究─日本学術会議で何が議論されたのか
加藤陽子(東京大学)
〈「事件」の本質〉
法治の危機と学術の軽視
松宮孝明(立命館大学)
〈真と偽を区別する〉
ポスト真実の政治状況と人文知
芦名定道(関西学院大学)
〈民主主義への参加〉
「反政府的」であるとは、どういうことか─政治と学問、そして民主主義をめぐる対話
宇野重規(東京大学)
〈学問の自由を守る政治へ〉
反憲法政治の転換を
小沢隆一(東京慈恵会医科大学)
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┃特集2┃コロナ660日
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈写真家のみたコロナ禍〉
グラビア パンデミックの光景
小原一真、渋谷敦志、大石芳野、林 典子、高橋健太郎、岩村優希、石川真生、岩波友紀
〈課題は何か〉
生存のための社会変革を!──現場からの検証………生存のためのコロナ対策ネットワーク
総論…藤田孝典、渡辺寛人
女性…竹信三恵子
学生…大内裕和
外国人…岩橋 誠
〈検証〉
コロナと法─何ができ、何をしなかったのか
永井幸寿(弁護士)
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◆注目記事
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〈ジャーナリズムと連帯〉
フィリピン 沈黙しないジャーナリストたち─マリア・レッサのノーベル平和賞受賞に想う
工藤律子(ジャーナリスト)
〈強いられた流浪〉
ネグロスからの手紙─虐殺と弾圧の島で(特別篇・上)ランタンの灯は遠くなっても
クラリッサ・シングソン(人権アクティヴィスト)、訳・構成=木村英昭・勅使川原香世子
〈報告〉
「ニュース女子」事件とは何だったのか
辛淑玉(のりこえねっと)
〈国際的調査報道〉
パンドラ文書を解読する(上)
奥山俊宏(朝日新聞)、畑宗太郎(朝日新聞)
〈情念とルサンチマン〉
異端者の政治─安倍政権試論
二階堂友紀(朝日新聞)
〈対談〉
岸田「先祖返り」内閣に期待できるか
御厨 貴(東京大学名誉教授)、後藤謙次(政治ジャーナリスト)
〈政治家の軌跡〉
メルケルとは何者だったのか
板橋拓己(成蹊大学)
〈争点は何だったか〉
メルケル後 ドイツの選択(上)──連邦議会選挙と新政権
梶村太一郎(ジャーナリスト)
〈最終回〉
関西生コン弾圧と産業労働組合、そしてジャーナリスト・ユニオン(下)
花田達朗(早稲田大学名誉教授)
〈シリーズ連載〉
ジェンダー平等へ教育に何ができるか
阿久澤麻理子(大阪市立大学)
〈司法の独立の危機〉
岡口裁判官への弾劾訴追は妥当か─訴追状を読む
木村草太(東京都立大学)
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◇世界の潮
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◇米価下落─コロナ禍のもとの農業危機
尾原浩子
◇米国の対中政策とクアッド
藤田直央
◇「聖職」神話への挑戦──埼玉教員超勤訴訟10・1判決の意義と課題
高橋 哲
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◇SEKAI Review of Books
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◇越境する世界史家(下)──リチャード・J・エヴァンズ著『エリック・ホブズボーム』
三宅芳夫(千葉大学)
◇アブドゥルラザク・グルナ、ノーベル文学賞受賞に寄せて
橋本智弘(青山学院大学)
◇読書の要諦──文芸 強靭な孤独
藤沢 周(小説家)
◇【連載】本とチェック 第3回 とてつもないこと
金承福(「クオン」代表)
◇新刊紹介
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●連載
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----〈好評連載〉----------
●分水嶺II コロナ緊急事態と専門家【第6回】
「病床二割増」計画
河合香織(ノンフィクション作家)
●亡所考【第12回】
水産市場の〈地霊〉
北條勝貴(上智大学)
----〈最終回〉----------
●県境の町【第10回】
今を生きる
吉田千亜(ライター)
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●脳力のレッスン特別篇
「新しい資本主義」への視界を拓く──日本経済・産業再生への筋道(下・1)
寺島実郎
●メディア批評【第168回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●片山善博の「日本を診る」【145】
新型コロナ対策のこれから──国も都道府県も特措法の原点に戻れ
片山善博(早稲田大学)
●いま、この惑星で起きていること【第24回】
暗く、熱くなる地球
森さやか(気象予報士)
●但馬日記【第31回】
繰り返された「トランプ型選挙」──豊岡市長選顛末記(4)
平田オリザ(劇作家)
●お許しいただければ──隣の連中(A. G. ガードナー)
訳=行方昭夫(英文学者)
●原発月報――(21・9~10)
福島原発事故記録チーム
●ドキュメント激動の南北朝鮮【292】(21・9~10)
編集部
●ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
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○読者投句・岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
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○表紙写真
アメリカの新型コロナ感染症の死者数と同じ、約67万本の白い旗が掲げられた米国ナショナル・モール国立公園。
ワシントンD.C.、2021年9月21日。 ロイター/アフロ
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
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編集後記
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日本学術会議への攻撃には、いくつかの政治的文脈があるように思われる。
一つには、政権への批判を辞さない独立的存在をどうしても許容できなかった安倍―菅政権の非民主主義的体質、精神的幼稚さ。
二つには、加藤陽子氏が深く検証しているように、軍事研究の是非をめぐり、きわめて周到な討議を経て慎重な姿勢を示したことへの直接的な報復。
三つに、学術と民間企業を軍事へと動員することを企図する「経済安保」の文脈があるように見える。その旗振りである甘利明氏(当時自民党税調会長)が自身のブログで「日本学術会議は防衛省予算を使った研究開発には参加を禁じていますが、中国の『外国人研究者ヘッドハンティングプラン』である『千人計画』には積極的に協力しています」などと、幾重にも虚偽と曲解の絡み合うデマゴギーを拡散し、ナショナリスティックな感情に訴えて学術会議への攻撃を煽ったのは、この文脈であろう。つまり、四の五の言わず軍事研究に邁進せよ、ということである。この傾向は、新内閣で甘利氏が幹事長に着任したことに象徴されるように、今後も継続するだろう。であればこそ、この任命拒否問題は今後も追及されなければならない。
今号特集を編む作業の中で、6名の方々の知的誠実さに頭の下がる思いを繰り返し抱いた。こうした知性と専門性が活かされる政治の実現を求めていきたい。
今月、やり取りの中で印象的だったのは、辛淑玉さんだ。サプリメント大手のDHCがスポンサーの「ニュース女子」による、現在の日本のもっともダメな成分を抽出して濃縮したような番組を、引用の原文確認のため、私も視聴せざるをえなかった。これは苦痛でしかなかった――メールでそう述べた私に、辛さんは「ごめん」と返事を書いてこられた。いやいや、もちろんそれは辛さんのせいではありません。
先に紹介した甘利氏の文章にも共通するのだが、むきだしの敵意や野卑さは、対話への契機はもちろん、批判的コミュニケーションへの意欲をも失わせる。だが、辛さんから届いた原稿を読んで驚いた。相手の差別性や責任逃れの姿勢を強く批判するばかりではなく、それでいいのか、と問いかける。
自らを顧みざるをえない。低劣な言説は唾棄するだけで済ませ、結果としてただ沈黙していることに終わっていることが少なくないのではないか。この場合、何らかの変化や止揚へと至る可能性はゼロだ。今日、校了した後も、辛さんの文章を再読し考えたいと思う。
さて、一年のしめくくりとなる今号、吉田千亜さんの「県境の町」が完結、扉絵の金井真紀さん「世界のことわざ」も終了する。周縁にあって軽視され補償を拒まれてきた原発事故の被害を可視化してきた吉田さんの連載も、世界中の多彩なコトバを通じて人や生きることの面白さを表現してきた金井さんのイラストも、まさに本誌の粋そのものでした。心より御礼申し上げます。また誌面でお会いしましょう。
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~~『世界』から生まれた本~~
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河合香織
定価1,980円
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https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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