『世界』メールマガジン/2024年8月号【特集1:教育とジェンダー】【特集2:癒えない傷、終わらない戦争】
2024/08/08 (Thu) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2024年9月号
■■ vol.#0111
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■『世界』2024年9月号(第985号)好評発売中
2024年8月8日発行
定価1045円(税込)
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集 1┃教育とジェンダー
┗━━━╋…────────────────────────────────
大学「一般入試」は公平か?
打越文弥(ハーバード大学アカデミー・スカラー)
学校が不平等を再生産しないために──教員世界と隠れたカリキュラム
木村育恵(北海道教育大学)
都道府県版ジェンダー・ギャップ指数が示す二つの不平等
山脇絵里子(共同通信)・河野銀子(九州大学)
理系女性はなぜ少ない
横山広美(東京大学)
幼児期から性の学びを
北山ひと美(和光小学校・和光幼稚園 前校園長)
┏━━━┓
┃特集 2┃癒えない傷、終わらない戦争
┗━━━╋…────────────────────────────────
戦争のトラウマを可視化する
中村江里(上智大学)
「加害責任」の世代間伝播──「満蒙開拓」と祖父と私
胡桃澤伸(精神科医)
〈対談〉
戦争で壊れた父親と向き合う
黒井秋夫(「PTSDの日本兵家族会・寄り添う市民の会」代表)×藤岡美千代(同関西支部)
自衛隊と戦場ストレス
布施祐仁(ジャーナリスト)
対談
紛争地の生とかかわり続けて──イラク戦争、シリア内戦のその後
金本麻理子(ディレクター)×高遠菜穂子(エイドワーカー)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈対談〉
ニライカナイには行けない──沖縄「犠牲の物語」の外へ
上間陽子(琉球大学)×兼島拓也(劇作家)
政党というブラックボックス──憲法学から考える政党・政治資金・政党法
林 知更(東京大学)
石丸現象とTikTok──若者世代のリアリティ
伊藤昌亮(成蹊大学)
カマラ・ハリスは脱皮できるか──フェミニスト大統領への道
三牧聖子(同志社大学)
スターマー労働党政権の誕生──ポピュリズム時代の「狭き門」
今井貴子(成蹊大学)
「まともな人間の証」を求めて──フランス、農村の極右支持を読む
森千香子(同志社大学)
〈ルポ〉
埼玉クルド人コミュニティ 第2回 「標的」の変遷
安田浩一(ノンフィクションライター)
〈スケッチ〉
住みかを探す
高瀬隼子(小説家)
〈シリーズ夜店〉
「日本人」の自画像を描く──戸籍・国籍・移動
李英美(京都大学)
〈新連載〉
彼女たちの「戦後」 第1回 黒柳徹子──テレビ司会者の本領
山本昭宏(神戸市外国語大学)
『セクシー田中さん』とジェンダー問題
津田 環(テレビプロデューサー)
三淵忠彦最高裁長官はいかに誕生したか──日本国憲法の制定と最高裁の始動
赤坂幸一(九州大学)
〈「虎に翼 」〉
三淵嘉子が駆け抜けた生涯
本橋由紀(毎日新聞)
日韓 死刑廃止までの距離
佐藤大介(共同通信)
〈対談〉
アートは長く続く──道具化されない時間と空間
アイザック・ジュリアン(アーティスト)×小笠原博毅(神戸大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇旧優生保護法違憲判決──最高裁は「創造の担い手」であれ
新里宏二(弁護士)
◇ニューカレドニア 民衆はなぜ蜂起したのか
友寄元樹(同志社大学大学院博士後期課程)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇本との出会い
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
新城和博(編集者)
◇言葉と言葉のかくれんぼ 第6回 活字の濁流へ
斎藤真理子(翻訳家)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
島に帰る 第8回 乞食(ムヌフーヤ)たちの日誌
榎本 空(エスノグラファー)
〈小さな物語〉の復興 『フランケンシュタイン』をよむ 第8回 エコロジー
小川公代(上智大学)
本とチェック 第16回 ソウル国際ブックフェア
金承福(クオン代表)
「変わらない」を変える 第16回 都知事選 ミソジニーとシスターフッド
三浦まり(上智大学)
「拉致問題」風化に抗して 第11回 日本人拉致被害者に与えられた「革命任務」(その2)
蓮池 薫(新潟産業大学)
片山善博の「日本を診る」(178) 兵庫県政の混乱から得るべき教訓
片山善博(大正大学)
脳力のレッスン(267) 江戸期日本と中国の微妙な関係
寺島実郎
気候再生のために 第28回 デジタル化と脱炭素は両立するか
高村ゆかり(東京大学)
ドキュメント激動の南北朝鮮 第325回(24・6~7)
編集部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○記憶をもった鏡──ショーン・リー『Young Love』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○編集後記
○表紙木版画
久保舎己(なにもしなくていいんだよ 1991、裏表紙 妻とミッキーとルル 2020)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+安賀裕子
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
聴きたくなかった音をまた耳にすることになった。青空に轟(とどろ)く銃声、流血、叫び。トランプ氏銃撃の映像を目にしたのは、滞在先の那覇のホテルを出発する直前のことだった。
その前夜、教育学者の上間陽子さんと劇作家の兼島拓也さんは、演劇のこと、米兵による性的暴行事件の初公判のこと、そして沖縄が本土の「バックヤード」とされ続ける構造と絶望を言葉にする、ということをめぐって、静かに語りつづけた。
対話が身体に残るなか飛び込んできた暗殺未遂の禍々(まがまが)しさを、太平洋の向こう、銃社会の出来事と切り離してみることができなかった。ひたすらアメリカに追従してきた国に住む自分もまた、暴力の円環に取り込まれている。その事実に改めて呆然とした。
帰りの飛行機では豊永浩平さん著『月(ちち)ぬ走(は)いや、馬(うんま)ぬ走(は)い』の頁を繰る手がとまらず(新城和博さん「読んで、観て、聴いて」をぜひお読みください)、東京でむせ返るような湿気に迎えられた。
銃撃事件後、米大統領選は急展開をみせ、民主党候補としてカマラ・ハリスへの支持が固まりつつある。フェミニストを自負しながら、パレスチナの甚大な苦しみに沈黙してきた──草の根フェミニストたちからの批判に、氏は応えられるだろうか。三牧聖子さんの論考は今後の争点を指し示している。
「選挙イヤー」の今年、七月の英、仏での選挙をめぐる今井貴子さん、森千賀子さんの分析は、有権者の選択から窺えるポピュリズムの現在地を冷徹に描きだす。従来の構図では語り切れない複雑な様相が表れている点では、日本も同様だ(伊藤昌亮さん論考)。
連日の猛暑、つい仕事から離脱し、近所にある子どもの本専門店ブックハウスカフェに足が向かう。入ると、いい香りと子どもたちの声がする。
『ラマダーン』は少し前に入手した一冊で、断食のあと最初に食べるイフタールのごちそうの切り絵を息子はよく眺めていた。六月刊『ウンム・アーザルのキッチン』はイスラエルのハイファに住むアラブ人女性の歩みを、料理を交え紹介する。自分の幼少期より、さらに多くの地域から絵本が翻訳されている。子どもたちにどんな世界を伝えたいか。作り手の姿勢がみえてくる。
「ても あしも あたまも おなかも ぜんぶ りくの からだは りくのもの」(『うみとりくの からだのはなし 』)。北山ひと美さんのお話から、絵本の一節を思い出した。身体を肯定的に受けとめるために、性器の名称を知ることは不可欠で、隠語でのみ語られるのは、それが女性のものでなかったからだという。
自分の身体を大切に思うことは、ほかの誰かが大切にされない状況を許してはならない、と思うことにつながる。その教育は、自分にも大人にも、遅すぎることはないと信じたい。
今号より山本昭宏さんの新連載「彼女たちの『戦後』」が始まります。秋口にかけ新連載が控えています。ご期待ください。
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~~『世界』臨時増刊号のご案内~~
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争――世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
https://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
~~『世界』から生まれた本~~
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
https://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
https://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
https://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
https://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
https://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11
吉田千亜
定価1,100円
https://iwnm.jp/603333
死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
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┃特集 1┃教育とジェンダー
┗━━━╋…────────────────────────────────
大学「一般入試」は公平か?
打越文弥(ハーバード大学アカデミー・スカラー)
学校が不平等を再生産しないために──教員世界と隠れたカリキュラム
木村育恵(北海道教育大学)
都道府県版ジェンダー・ギャップ指数が示す二つの不平等
山脇絵里子(共同通信)・河野銀子(九州大学)
理系女性はなぜ少ない
横山広美(東京大学)
幼児期から性の学びを
北山ひと美(和光小学校・和光幼稚園 前校園長)
┏━━━┓
┃特集 2┃癒えない傷、終わらない戦争
┗━━━╋…────────────────────────────────
戦争のトラウマを可視化する
中村江里(上智大学)
「加害責任」の世代間伝播──「満蒙開拓」と祖父と私
胡桃澤伸(精神科医)
〈対談〉
戦争で壊れた父親と向き合う
黒井秋夫(「PTSDの日本兵家族会・寄り添う市民の会」代表)×藤岡美千代(同関西支部)
自衛隊と戦場ストレス
布施祐仁(ジャーナリスト)
対談
紛争地の生とかかわり続けて──イラク戦争、シリア内戦のその後
金本麻理子(ディレクター)×高遠菜穂子(エイドワーカー)
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◆注目記事
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〈対談〉
ニライカナイには行けない──沖縄「犠牲の物語」の外へ
上間陽子(琉球大学)×兼島拓也(劇作家)
政党というブラックボックス──憲法学から考える政党・政治資金・政党法
林 知更(東京大学)
石丸現象とTikTok──若者世代のリアリティ
伊藤昌亮(成蹊大学)
カマラ・ハリスは脱皮できるか──フェミニスト大統領への道
三牧聖子(同志社大学)
スターマー労働党政権の誕生──ポピュリズム時代の「狭き門」
今井貴子(成蹊大学)
「まともな人間の証」を求めて──フランス、農村の極右支持を読む
森千香子(同志社大学)
〈ルポ〉
埼玉クルド人コミュニティ 第2回 「標的」の変遷
安田浩一(ノンフィクションライター)
〈スケッチ〉
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高瀬隼子(小説家)
〈シリーズ夜店〉
「日本人」の自画像を描く──戸籍・国籍・移動
李英美(京都大学)
〈新連載〉
彼女たちの「戦後」 第1回 黒柳徹子──テレビ司会者の本領
山本昭宏(神戸市外国語大学)
『セクシー田中さん』とジェンダー問題
津田 環(テレビプロデューサー)
三淵忠彦最高裁長官はいかに誕生したか──日本国憲法の制定と最高裁の始動
赤坂幸一(九州大学)
〈「虎に翼 」〉
三淵嘉子が駆け抜けた生涯
本橋由紀(毎日新聞)
日韓 死刑廃止までの距離
佐藤大介(共同通信)
〈対談〉
アートは長く続く──道具化されない時間と空間
アイザック・ジュリアン(アーティスト)×小笠原博毅(神戸大学)
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◇世界の潮
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◇旧優生保護法違憲判決──最高裁は「創造の担い手」であれ
新里宏二(弁護士)
◇ニューカレドニア 民衆はなぜ蜂起したのか
友寄元樹(同志社大学大学院博士後期課程)
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◇本との出会い
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◇読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
新城和博(編集者)
◇言葉と言葉のかくれんぼ 第6回 活字の濁流へ
斎藤真理子(翻訳家)
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●連載
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島に帰る 第8回 乞食(ムヌフーヤ)たちの日誌
榎本 空(エスノグラファー)
〈小さな物語〉の復興 『フランケンシュタイン』をよむ 第8回 エコロジー
小川公代(上智大学)
本とチェック 第16回 ソウル国際ブックフェア
金承福(クオン代表)
「変わらない」を変える 第16回 都知事選 ミソジニーとシスターフッド
三浦まり(上智大学)
「拉致問題」風化に抗して 第11回 日本人拉致被害者に与えられた「革命任務」(その2)
蓮池 薫(新潟産業大学)
片山善博の「日本を診る」(178) 兵庫県政の混乱から得るべき教訓
片山善博(大正大学)
脳力のレッスン(267) 江戸期日本と中国の微妙な関係
寺島実郎
気候再生のために 第28回 デジタル化と脱炭素は両立するか
高村ゆかり(東京大学)
ドキュメント激動の南北朝鮮 第325回(24・6~7)
編集部
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○記憶をもった鏡──ショーン・リー『Young Love』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○編集後記
○表紙木版画
久保舎己(なにもしなくていいんだよ 1991、裏表紙 妻とミッキーとルル 2020)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+安賀裕子
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
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聴きたくなかった音をまた耳にすることになった。青空に轟(とどろ)く銃声、流血、叫び。トランプ氏銃撃の映像を目にしたのは、滞在先の那覇のホテルを出発する直前のことだった。
その前夜、教育学者の上間陽子さんと劇作家の兼島拓也さんは、演劇のこと、米兵による性的暴行事件の初公判のこと、そして沖縄が本土の「バックヤード」とされ続ける構造と絶望を言葉にする、ということをめぐって、静かに語りつづけた。
対話が身体に残るなか飛び込んできた暗殺未遂の禍々(まがまが)しさを、太平洋の向こう、銃社会の出来事と切り離してみることができなかった。ひたすらアメリカに追従してきた国に住む自分もまた、暴力の円環に取り込まれている。その事実に改めて呆然とした。
帰りの飛行機では豊永浩平さん著『月(ちち)ぬ走(は)いや、馬(うんま)ぬ走(は)い』の頁を繰る手がとまらず(新城和博さん「読んで、観て、聴いて」をぜひお読みください)、東京でむせ返るような湿気に迎えられた。
銃撃事件後、米大統領選は急展開をみせ、民主党候補としてカマラ・ハリスへの支持が固まりつつある。フェミニストを自負しながら、パレスチナの甚大な苦しみに沈黙してきた──草の根フェミニストたちからの批判に、氏は応えられるだろうか。三牧聖子さんの論考は今後の争点を指し示している。
「選挙イヤー」の今年、七月の英、仏での選挙をめぐる今井貴子さん、森千賀子さんの分析は、有権者の選択から窺えるポピュリズムの現在地を冷徹に描きだす。従来の構図では語り切れない複雑な様相が表れている点では、日本も同様だ(伊藤昌亮さん論考)。
連日の猛暑、つい仕事から離脱し、近所にある子どもの本専門店ブックハウスカフェに足が向かう。入ると、いい香りと子どもたちの声がする。
『ラマダーン』は少し前に入手した一冊で、断食のあと最初に食べるイフタールのごちそうの切り絵を息子はよく眺めていた。六月刊『ウンム・アーザルのキッチン』はイスラエルのハイファに住むアラブ人女性の歩みを、料理を交え紹介する。自分の幼少期より、さらに多くの地域から絵本が翻訳されている。子どもたちにどんな世界を伝えたいか。作り手の姿勢がみえてくる。
「ても あしも あたまも おなかも ぜんぶ りくの からだは りくのもの」(『うみとりくの からだのはなし 』)。北山ひと美さんのお話から、絵本の一節を思い出した。身体を肯定的に受けとめるために、性器の名称を知ることは不可欠で、隠語でのみ語られるのは、それが女性のものでなかったからだという。
自分の身体を大切に思うことは、ほかの誰かが大切にされない状況を許してはならない、と思うことにつながる。その教育は、自分にも大人にも、遅すぎることはないと信じたい。
今号より山本昭宏さんの新連載「彼女たちの『戦後』」が始まります。秋口にかけ新連載が控えています。ご期待ください。
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~~『世界』臨時増刊号のご案内~~
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争――世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
https://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
https://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
https://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
https://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
https://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
https://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11
吉田千亜
定価1,100円
https://iwnm.jp/603333
死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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