『世界』メールマガジン/2024年10月号【特集1:暴力と政治】 【特集2:核危機の人新世】
2024/09/06 (Fri) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2024年10月号
■■ vol.#0112
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■『世界』2024年10月号(第986号)好評発売中
2024年9月6日発行
定価1045円(税込)
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集 1┃暴力と政治
┗━━━╋…────────────────────────────────
「トランプ王国」は続くのか
金成隆一(朝日新聞)
欧州・右翼政党の台頭は暴力を引き起こすか?
古賀光生(中央大学)
「丁寧な説明」──形式的デモクラシーの〈他者〉の不在
米山リサ(トロント大学)
パワハラ知事の虚像と実像──内部告発と兵庫県政の混乱
松本 創(ノンフィクションライター)
アディクションの解放区へ──金融資本主義と「即時的報酬」の時代
鈴木 直(元東京経済大学教授・翻訳家)
┏━━━┓
┃特集 2┃核危機の人新世
┗━━━╋…────────────────────────────────
沈黙の廃墟──人新世に宿る植民地主義
石山徳子(明治大学)
「放射能とともに歩む」──マーシャル諸島 折り重なる気候危機
竹峰誠一郎(明星大学)
核の平和利用──福島原発事故と開発をめぐって
鴫原敦子(東北大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
大島理森・元衆院議長インタビュー 「民主主義の本質」を問う
聞き手=青木 理(ジャーナリスト)
米軍基地を恒久化させる「費用肩代わり」
中澤 誠(東京新聞)
「騒然さ」が民主主義に活力を与える──地方政治から見える風景
木寺 元(明治大学)
〈新連載〉
ひとりで暮らす私たち──中高年シングル女性の生活 第1回 つまるところは尊厳
和田靜香(ライター)
静かな“被災地”──能登を歩く
瀬尾夏美(アーティスト)
ハマース指導者暗殺は何をもたらすか
山本健介(静岡県立大学)
アンハールへの手紙──ガザ出身女性との対話から
金城美幸(立命館大学生存学研究所)
ドイツ「罪の克服」とはなんだったのか──イスラエルへの「偏愛」が生むレイシズム
駒林歩美(ドイツ在住ライター)
旭川いじめ自殺と「いじめ後遺症」
斎藤 環(精神科医)
〈スケッチ〉
反トランスの魔女狩り
李琴峰(作家)
〈シリーズ夜店〉
転がる石に苔は生える──「返還」以降の香港文化史のために
小栗宏太(東京外国語大学)
沖縄 女性たちの基地被害
山城紀子(ジャーナリスト)
抑圧の歌 解放の歌──植民地朝鮮のハンセン病療養所 フィールド・ノート
沢 知恵(歌手)
日本でレイプは犯罪なのか?
デイビッド・T・ジョンソン(ハワイ大学) 訳=秋元由紀(翻訳家)
「少子化対策」としての卵子凍結
柘植あづみ(明治学院大学)
教員の「定額働かせ放題」はなくせるか──給特法改正をめぐる迷走
嶋さき 量(日本労働弁護団常任幹事)※さきは、やまへんに竒
〈連載〉
隣のジャーナリズム スタイルなき新聞と政治報道のこれから
西村カリン(ジャーナリスト)
〈新連載〉
あたふたと身支度 第1回 詩集のためのポケット
高橋純子(朝日新聞)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇佐渡金山 世界遺産登録が置き去りにしたもの
田玉恵美(朝日新聞)
◇バングラデシュ政変 学生デモ発の政権崩壊
日下部尚徳(立教大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇本との出会い
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇言葉と言葉のかくれんぼ 第7回 日本文学の旅
チョン・スユン(翻訳家)
◇読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
長谷部恭男(早稲田大学)
◇本とチェック 第17回 友だちになること
金承福(クオン代表)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
島に帰る 第9回 旧盆エイサーの祈り
榎本 空(エスノグラファー)
〈小さな物語〉の復興 『フランケンシュタイン』をよむ 第9回 ケアの倫理
小川公代(上智大学)
彼女たちの 「戦後」 第2回 土井たか子──子憲法の子
山本昭宏(神戸市外国語大学)
ルポ 埼玉クルド人コミュニティ 第3回 解体業に生きる
安田浩一(ノンフィクションライター)
「変わらない」を変える 第17回 女性たちの活動をアーカイブする
三浦まり(上智大学)
片山善博の「日本を診る」(179) 愚かなり 「ふるさと納税」
片山善博(大正大学)
気候再生のために 第29回 日本人は原子力と縁を切れるか
江守正多(東京大学)
脳力のレッスン(268) 中国と正対する視座──近代史における教訓
寺島実郎
ドキュメント激動の南北朝鮮 第326回(24・7~8)
編集部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○記憶をもった鏡──上吉川祐一『かわと生きる』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○編集後記
○表紙木版画
久保舎己(犬とふたり 2006、裏表紙 この人を知らない 1989)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+安賀裕子
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
八月一五日、岸田首相退陣との各紙報道を眺めながら、きょう考えるべきは政局なのか、と違和感をもった。九月の自民党総裁選に向け、不出馬を表明するなら今しかない。引き際でも公に対する意識のなさを印象づけた。
内部告発への「対応は適切だった」、そう繰り返す兵庫県知事の答弁も、自身のリスク管理を最優先する意図が透けてみえる(特集1 松本創さんルポ)。県政の混乱で二人もの職員が亡くなるなか、「負託を受けた」とする県民に向け自身の言葉で語らない。閉じられたコミュニケーションのありようは総裁選にも通じる。「党を変える」と行き交うものの、候補者乱立の様相に、都知事選の荒廃が思い出される。
SNSで好きなときに好きなことだけ発信し、質問も反論も受けつけない──新たな政治のスタイルが人々を引きつけるなか、「敵」「既得権益」と切り捨てられつつある既存メディアは何をどう伝えていくべきか。スタイルを磨くこと。生で政治家が発言する場を確保すること。西村カリンさんの指摘から、まだまだやるべきことはあると学んだ(「隣のジャーナリズム」)。
夏休み明け、思いがけないお便りをいただいた。広島で被爆後、ブラジルに移住し、原爆症の治療を受けながら、在外被爆者の権利を求める運動を続けてきた森田隆さんが八月一二日、一〇〇歳でお亡くなりになった。直接お目にかかったことはないが、実は森田さんが、船便で届く「世界」を楽しみにされていたという。サンパウロで森田さんと交流をもった尾西康充さんがそうメールで教えてくださった。
尾西さんによる今号の読者談話室投稿によれば、兵士としての戦争体験をもつ森田さんは戦後こう語っていた。
「原爆という人類未曽有の惨事を前に、国家を護らなければならないとの考えはなくなってしまった」
ことしは米国によるビキニ環礁での水爆実験から七〇年の年だ。マグロ漁船・第五福竜丸の被ばくは日本の人々に大きな衝撃を与えたが、マーシャル諸島では、その後一九五八年までに六七回もの実験が繰り返された。人々は放射能汚染に苦しめられ、多くが「核の難民」となることを強いられてきた。そうして移り住んだ土地が、海面上昇の影響で新たな脅威にさらされている。
核実験も気候危機も、植民地を支配してきた先進国の「遺産」だ──三月、マーシャル諸島での核被害者追悼記念日の式典に参加した竹峰誠一郎さんが、現地の若者の言葉を伝えている。
核危機も気候変動も、迫りくる未来のもの、ととらえがちだ。しかしその危機を日常とする人たちがいる。不可視化されてきた核の被害から「人新世」を見つめなおす試みとして特集2を編んだが、今後も、複眼的な形で核の問題をめぐる議論を継続していきたい。
今月から和田靜香さん、高橋純子さんの新連載が始まります。また本誌では読者からのお便りを募集しています。ご感想、いま気になっていること、ぜひ談話室までお寄せください。
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~~『世界』臨時増刊号のご案内~~
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争――世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
https://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
https://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
https://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
https://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
https://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
https://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11
吉田千亜
定価1,100円
https://iwnm.jp/603333
死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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■『世界』2024年10月号(第986号)好評発売中
2024年9月6日発行
定価1045円(税込)
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
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┃特集 1┃暴力と政治
┗━━━╋…────────────────────────────────
「トランプ王国」は続くのか
金成隆一(朝日新聞)
欧州・右翼政党の台頭は暴力を引き起こすか?
古賀光生(中央大学)
「丁寧な説明」──形式的デモクラシーの〈他者〉の不在
米山リサ(トロント大学)
パワハラ知事の虚像と実像──内部告発と兵庫県政の混乱
松本 創(ノンフィクションライター)
アディクションの解放区へ──金融資本主義と「即時的報酬」の時代
鈴木 直(元東京経済大学教授・翻訳家)
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┃特集 2┃核危機の人新世
┗━━━╋…────────────────────────────────
沈黙の廃墟──人新世に宿る植民地主義
石山徳子(明治大学)
「放射能とともに歩む」──マーシャル諸島 折り重なる気候危機
竹峰誠一郎(明星大学)
核の平和利用──福島原発事故と開発をめぐって
鴫原敦子(東北大学)
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◆注目記事
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大島理森・元衆院議長インタビュー 「民主主義の本質」を問う
聞き手=青木 理(ジャーナリスト)
米軍基地を恒久化させる「費用肩代わり」
中澤 誠(東京新聞)
「騒然さ」が民主主義に活力を与える──地方政治から見える風景
木寺 元(明治大学)
〈新連載〉
ひとりで暮らす私たち──中高年シングル女性の生活 第1回 つまるところは尊厳
和田靜香(ライター)
静かな“被災地”──能登を歩く
瀬尾夏美(アーティスト)
ハマース指導者暗殺は何をもたらすか
山本健介(静岡県立大学)
アンハールへの手紙──ガザ出身女性との対話から
金城美幸(立命館大学生存学研究所)
ドイツ「罪の克服」とはなんだったのか──イスラエルへの「偏愛」が生むレイシズム
駒林歩美(ドイツ在住ライター)
旭川いじめ自殺と「いじめ後遺症」
斎藤 環(精神科医)
〈スケッチ〉
反トランスの魔女狩り
李琴峰(作家)
〈シリーズ夜店〉
転がる石に苔は生える──「返還」以降の香港文化史のために
小栗宏太(東京外国語大学)
沖縄 女性たちの基地被害
山城紀子(ジャーナリスト)
抑圧の歌 解放の歌──植民地朝鮮のハンセン病療養所 フィールド・ノート
沢 知恵(歌手)
日本でレイプは犯罪なのか?
デイビッド・T・ジョンソン(ハワイ大学) 訳=秋元由紀(翻訳家)
「少子化対策」としての卵子凍結
柘植あづみ(明治学院大学)
教員の「定額働かせ放題」はなくせるか──給特法改正をめぐる迷走
嶋さき 量(日本労働弁護団常任幹事)※さきは、やまへんに竒
〈連載〉
隣のジャーナリズム スタイルなき新聞と政治報道のこれから
西村カリン(ジャーナリスト)
〈新連載〉
あたふたと身支度 第1回 詩集のためのポケット
高橋純子(朝日新聞)
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◇世界の潮
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◇佐渡金山 世界遺産登録が置き去りにしたもの
田玉恵美(朝日新聞)
◇バングラデシュ政変 学生デモ発の政権崩壊
日下部尚徳(立教大学)
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◇本との出会い
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◇言葉と言葉のかくれんぼ 第7回 日本文学の旅
チョン・スユン(翻訳家)
◇読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
長谷部恭男(早稲田大学)
◇本とチェック 第17回 友だちになること
金承福(クオン代表)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
島に帰る 第9回 旧盆エイサーの祈り
榎本 空(エスノグラファー)
〈小さな物語〉の復興 『フランケンシュタイン』をよむ 第9回 ケアの倫理
小川公代(上智大学)
彼女たちの 「戦後」 第2回 土井たか子──子憲法の子
山本昭宏(神戸市外国語大学)
ルポ 埼玉クルド人コミュニティ 第3回 解体業に生きる
安田浩一(ノンフィクションライター)
「変わらない」を変える 第17回 女性たちの活動をアーカイブする
三浦まり(上智大学)
片山善博の「日本を診る」(179) 愚かなり 「ふるさと納税」
片山善博(大正大学)
気候再生のために 第29回 日本人は原子力と縁を切れるか
江守正多(東京大学)
脳力のレッスン(268) 中国と正対する視座──近代史における教訓
寺島実郎
ドキュメント激動の南北朝鮮 第326回(24・7~8)
編集部
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○記憶をもった鏡──上吉川祐一『かわと生きる』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○編集後記
○表紙木版画
久保舎己(犬とふたり 2006、裏表紙 この人を知らない 1989)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+安賀裕子
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
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八月一五日、岸田首相退陣との各紙報道を眺めながら、きょう考えるべきは政局なのか、と違和感をもった。九月の自民党総裁選に向け、不出馬を表明するなら今しかない。引き際でも公に対する意識のなさを印象づけた。
内部告発への「対応は適切だった」、そう繰り返す兵庫県知事の答弁も、自身のリスク管理を最優先する意図が透けてみえる(特集1 松本創さんルポ)。県政の混乱で二人もの職員が亡くなるなか、「負託を受けた」とする県民に向け自身の言葉で語らない。閉じられたコミュニケーションのありようは総裁選にも通じる。「党を変える」と行き交うものの、候補者乱立の様相に、都知事選の荒廃が思い出される。
SNSで好きなときに好きなことだけ発信し、質問も反論も受けつけない──新たな政治のスタイルが人々を引きつけるなか、「敵」「既得権益」と切り捨てられつつある既存メディアは何をどう伝えていくべきか。スタイルを磨くこと。生で政治家が発言する場を確保すること。西村カリンさんの指摘から、まだまだやるべきことはあると学んだ(「隣のジャーナリズム」)。
夏休み明け、思いがけないお便りをいただいた。広島で被爆後、ブラジルに移住し、原爆症の治療を受けながら、在外被爆者の権利を求める運動を続けてきた森田隆さんが八月一二日、一〇〇歳でお亡くなりになった。直接お目にかかったことはないが、実は森田さんが、船便で届く「世界」を楽しみにされていたという。サンパウロで森田さんと交流をもった尾西康充さんがそうメールで教えてくださった。
尾西さんによる今号の読者談話室投稿によれば、兵士としての戦争体験をもつ森田さんは戦後こう語っていた。
「原爆という人類未曽有の惨事を前に、国家を護らなければならないとの考えはなくなってしまった」
ことしは米国によるビキニ環礁での水爆実験から七〇年の年だ。マグロ漁船・第五福竜丸の被ばくは日本の人々に大きな衝撃を与えたが、マーシャル諸島では、その後一九五八年までに六七回もの実験が繰り返された。人々は放射能汚染に苦しめられ、多くが「核の難民」となることを強いられてきた。そうして移り住んだ土地が、海面上昇の影響で新たな脅威にさらされている。
核実験も気候危機も、植民地を支配してきた先進国の「遺産」だ──三月、マーシャル諸島での核被害者追悼記念日の式典に参加した竹峰誠一郎さんが、現地の若者の言葉を伝えている。
核危機も気候変動も、迫りくる未来のもの、ととらえがちだ。しかしその危機を日常とする人たちがいる。不可視化されてきた核の被害から「人新世」を見つめなおす試みとして特集2を編んだが、今後も、複眼的な形で核の問題をめぐる議論を継続していきたい。
今月から和田靜香さん、高橋純子さんの新連載が始まります。また本誌では読者からのお便りを募集しています。ご感想、いま気になっていること、ぜひ談話室までお寄せください。
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~~『世界』臨時増刊号のご案内~~
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争――世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
https://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
https://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
https://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
https://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
https://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
https://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11
吉田千亜
定価1,100円
https://iwnm.jp/603333
死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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