『世界』メールマガジン/2025年2月号【特集1:マスコミはなぜ嫌われるのか】 【特集2:検察失墜】
2025/01/08 (Wed) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2025年2月号
■■ vol.#0116
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■『世界』2025年2月号(第990号)好評発売中
2025年1月8日発行
定価1045円(税込)
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集 1┃マスコミはなぜ嫌われるのか
┗━━━╋…────────────────────────────────
「敗北」の意味──兵庫県知事選から考える
林 香里(東京大学)
ソーシャルメディアが問い直す選挙の形
成原 慧(九州大学)
「オールドなもの」への敵意──左右対立の消失と新たな争点
伊藤昌亮(成蹊大学)
「アメリカ政治報道」の危機
渡辺将人(慶應義塾大学)
〈インタビュー〉
既存メディアは底力を見せるときだ
池上 彰(ジャーナリスト)
┏━━━┓
┃特集 2┃検察失墜
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈対談〉
「人質司法」打破の鍵
村山浩昭(弁護士)×須崎友里(弁護士)※「崎」の字は立となる「さき」
大阪地検の闇の奥
青木 理(ジャーナリスト)
〈インタビュー〉
袴田事件 「ねつ造」との闘い──支援者たちが動かした
小川秀世(弁護士)
刑事司法はなぜ変われないのか──冤罪事件と構造的改革のポイント
高平奇恵(一橋大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
韓国 女性たちの「消えない光」
趙慶喜(聖公会大学)
大統領の「内乱」
緒方義広(福岡大学)
アサド政権崩壊 シリア再建に立ちはだかる四つの問題
末近浩太(立命館大学)
〈リレー連載〉
隣のジャーナリズム 「停戦」の向こう側
白川優子(国境なき医師団看護師)
〈対談〉
年収の壁と働き方の壁
筒井淳也(立命館大学)×首藤若菜(立教大学)
〈連載〉
ひとりで暮らす私たち 第5回 家庭からの脱出
和田靜香(ライター)
ノーモア・ヒバクシャを受け継ぐために──オスロで考えたこと
畠山澄子(NGOピースボート共同代表)
情報は民主主義の血液──知る権利をめぐる二つの闘い
三宅玲子(ノンフィクションライター)
〈ルポ〉
「危険な抗議活動」だったのか──沖縄・安和桟橋事故は問いかける
南 彰(琉球新報)
〈新連載〉
アウシュヴィッツの焼却炉──隠された悪と向き合う 第1回 トップフ家の末裔に生まれて
中村真人(フリーライター)
〈新連載〉
ファシズムは読書で、レイシズムは旅で治る 第1回 ラ・マンチャから埼玉へ
前川仁之(ノンフィクション作家)
〈連載〉
アジアとアメリカのあいだ 第2回 東洋人たちの街、リベルダージ
望月優大(ライター)
メキシコ映画に溺れたい──特集上映「メキシコ映画の大回顧」
星野智幸(作家)
〈最終回〉
ルポ 埼玉クルド人コミュニティ 第6回 ふつうに生きてみたい
安田浩一(ノンフィクションライター)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇自民党の“屋台骨”、法案事前審査のゆくえ
星 浩(ジャーナリスト)
◇危険運転致死傷罪に数値基準を導入?
小池信太郎(慶應義塾大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇本との出会い
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇オープンダイアローグの謎をめぐる冒険──斎藤環著『イルカと否定神学』
佐藤良明(音楽研究者・翻訳家)
◇読んで、観て、聴いて
長谷部恭男(早稲田大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本とチェック 第21回 戒厳令の夜
金承福(クオン代表)
彼女たちの「戦後」 第6回 山崎豊子──恋と戦災
山本昭宏(神戸市外国語大学)
言葉と言葉のかくれんぼ 第10回 11年目の抱負
斎藤真理子(翻訳家)
あたふたと身支度 第5回 作り直してみる
高橋純子(朝日新聞)
片山善博の「日本を診る」(183) 慌ただしい政権移行過程が生む脆弱な政治
片山善博(大正大学)
脳力のレッスン(272) オレンジ計画と運命の一九二〇年代
寺島実郎
気候再生のために 第30回 日本の「野心度」は誰が決めるのか
江守正多(東京大学)
「変わらない」を変える 第21回 「反現職」に沸く世界 2025年の展望
三浦まり(上智大学)
ドキュメント激動の南北朝鮮 第330回(24・11~12)
編集部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○記憶をもった鏡──米田知子『After the Thaw 雪解けのあとに』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○編集後記
○表紙木版画
久保舎己(三羽のカラス 1978、裏表紙 にんげんまめ 1982)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+安賀裕子
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
強い寒風が吹きつけた一二月の夜。観劇後に駅そばを食べていると、隣に座った盲目のおばあさんが、合唱の練習帰りだという。上野で第九を歌う本番までもう少し、練習がつい長引いた、とコロッケそばがおいしそうだった。
その日観たのは、劇団普通の「病室」。舞台には四つのベッドが置かれ、年齢も病状も家族関係もそれぞれの、男性患者たちの人間模様が描かれる。全編茨城弁で、俳優たちの声と一緒に、たわいのないやりとりの底にある、孤独な心のありようが伝わってきた。
二〇二五年を前に、世界がいっそう流動的になっていると感じる。一四年にもわたり紛争が続いたシリアでアサド政権が崩壊し(末近浩太さん論考)、連携を深めてきた日米韓の首脳の顔ぶれはがらりと変わることになる。
突如宣布された非常戒厳、国会へ急ぐ議員と市民たち──その様子を伝えたあと、日韓外交への影響を懸念する声を紹介する。それがこの間、日本の報道の定型だった。
尹錫悦(ユンソンニョル)大統領周辺の疑惑、政治停滞はこれまでほとんど伝えられてこなかった。日本は保守政権でない「もうひとつの韓国」をなぜ見ようとしないのか。権容ソク(クォンヨンソク)(※「ソク」の字は、大の左右に百)さんの問い(本誌二〇二三年九月号)が浮かぶ。
セウォル号事件を経て、やはり冬空の下でのキャンドルデモが朴槿恵(パククネ)大統領の弾劾を導いてから八年。本誌一月号でリチャード・ロイド・パリーさんは日本社会の特徴に「対立を嫌う」傾向を挙げたが、隣国の人々の姿から、民主主義の危機に立ち向かう、そのために必要なエネルギーの大きさに改めて圧倒される。民主主義は大変だ、かつてそう口にしたのは、映画監督の周防正行さんだった。
周防さんは、大阪地検特捜部の証拠改竄事件を受け設置された法制審議会の特別部会に参加した。不祥事を出発点に改革を議論するはずが、現状の刑事司法に問題なしとの姿勢を崩さない委員たち。三年間、埋まらない溝を前に言葉を尽くした後、吐露した言葉だ。
特別部会が決定した答申案には一部事件での取調べの可視化などが盛り込まれたものの、通信傍受をはじめ多くの果実を得たのは捜査機関だった。長く聖域とされてきた捜査の歪みが、またも露になっている(今号、特集2)。
校了前日、読売新聞主筆の渡邉恒雄氏の訃報が飛び込んできた。政治と権力、また発行部数一〇〇〇万部台という新聞の時代を象徴した人物だ。デジタル化の浸透により、新聞や出版業界は岐路に立つ。苦境をどう捉えるか、自分たちの立ち位置は──。今号特集1のタイトルをめぐっても編集部で議論が続いた。マスコミが影響力を失い、既得権益とみられるに至った理由は時代の趨勢か、構造的な問題か。現実を解剖したいと特集を編んだ。
「必要なもの」とされるために、ジャーナリズムの姿を見つめなおしたい。
アウシュヴィッツ解放八〇年の今年、中村真人さん、また前川仁之さんの短期集中連載が始まります。本年もどうぞよろしくお願いします。
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~~『世界』臨時増刊号のご案内~~
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争──世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
https://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
https://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
https://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
https://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
https://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
https://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11
吉田千亜
定価1,100円
https://iwnm.jp/603333
死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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■『世界』2025年2月号(第990号)好評発売中
2025年1月8日発行
定価1045円(税込)
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
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┃特集 1┃マスコミはなぜ嫌われるのか
┗━━━╋…────────────────────────────────
「敗北」の意味──兵庫県知事選から考える
林 香里(東京大学)
ソーシャルメディアが問い直す選挙の形
成原 慧(九州大学)
「オールドなもの」への敵意──左右対立の消失と新たな争点
伊藤昌亮(成蹊大学)
「アメリカ政治報道」の危機
渡辺将人(慶應義塾大学)
〈インタビュー〉
既存メディアは底力を見せるときだ
池上 彰(ジャーナリスト)
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┃特集 2┃検察失墜
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈対談〉
「人質司法」打破の鍵
村山浩昭(弁護士)×須崎友里(弁護士)※「崎」の字は立となる「さき」
大阪地検の闇の奥
青木 理(ジャーナリスト)
〈インタビュー〉
袴田事件 「ねつ造」との闘い──支援者たちが動かした
小川秀世(弁護士)
刑事司法はなぜ変われないのか──冤罪事件と構造的改革のポイント
高平奇恵(一橋大学)
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◆注目記事
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韓国 女性たちの「消えない光」
趙慶喜(聖公会大学)
大統領の「内乱」
緒方義広(福岡大学)
アサド政権崩壊 シリア再建に立ちはだかる四つの問題
末近浩太(立命館大学)
〈リレー連載〉
隣のジャーナリズム 「停戦」の向こう側
白川優子(国境なき医師団看護師)
〈対談〉
年収の壁と働き方の壁
筒井淳也(立命館大学)×首藤若菜(立教大学)
〈連載〉
ひとりで暮らす私たち 第5回 家庭からの脱出
和田靜香(ライター)
ノーモア・ヒバクシャを受け継ぐために──オスロで考えたこと
畠山澄子(NGOピースボート共同代表)
情報は民主主義の血液──知る権利をめぐる二つの闘い
三宅玲子(ノンフィクションライター)
〈ルポ〉
「危険な抗議活動」だったのか──沖縄・安和桟橋事故は問いかける
南 彰(琉球新報)
〈新連載〉
アウシュヴィッツの焼却炉──隠された悪と向き合う 第1回 トップフ家の末裔に生まれて
中村真人(フリーライター)
〈新連載〉
ファシズムは読書で、レイシズムは旅で治る 第1回 ラ・マンチャから埼玉へ
前川仁之(ノンフィクション作家)
〈連載〉
アジアとアメリカのあいだ 第2回 東洋人たちの街、リベルダージ
望月優大(ライター)
メキシコ映画に溺れたい──特集上映「メキシコ映画の大回顧」
星野智幸(作家)
〈最終回〉
ルポ 埼玉クルド人コミュニティ 第6回 ふつうに生きてみたい
安田浩一(ノンフィクションライター)
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◇世界の潮
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◇自民党の“屋台骨”、法案事前審査のゆくえ
星 浩(ジャーナリスト)
◇危険運転致死傷罪に数値基準を導入?
小池信太郎(慶應義塾大学)
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◇本との出会い
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇オープンダイアローグの謎をめぐる冒険──斎藤環著『イルカと否定神学』
佐藤良明(音楽研究者・翻訳家)
◇読んで、観て、聴いて
長谷部恭男(早稲田大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
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本とチェック 第21回 戒厳令の夜
金承福(クオン代表)
彼女たちの「戦後」 第6回 山崎豊子──恋と戦災
山本昭宏(神戸市外国語大学)
言葉と言葉のかくれんぼ 第10回 11年目の抱負
斎藤真理子(翻訳家)
あたふたと身支度 第5回 作り直してみる
高橋純子(朝日新聞)
片山善博の「日本を診る」(183) 慌ただしい政権移行過程が生む脆弱な政治
片山善博(大正大学)
脳力のレッスン(272) オレンジ計画と運命の一九二〇年代
寺島実郎
気候再生のために 第30回 日本の「野心度」は誰が決めるのか
江守正多(東京大学)
「変わらない」を変える 第21回 「反現職」に沸く世界 2025年の展望
三浦まり(上智大学)
ドキュメント激動の南北朝鮮 第330回(24・11~12)
編集部
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○記憶をもった鏡──米田知子『After the Thaw 雪解けのあとに』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○編集後記
○表紙木版画
久保舎己(三羽のカラス 1978、裏表紙 にんげんまめ 1982)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+安賀裕子
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編集後記
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強い寒風が吹きつけた一二月の夜。観劇後に駅そばを食べていると、隣に座った盲目のおばあさんが、合唱の練習帰りだという。上野で第九を歌う本番までもう少し、練習がつい長引いた、とコロッケそばがおいしそうだった。
その日観たのは、劇団普通の「病室」。舞台には四つのベッドが置かれ、年齢も病状も家族関係もそれぞれの、男性患者たちの人間模様が描かれる。全編茨城弁で、俳優たちの声と一緒に、たわいのないやりとりの底にある、孤独な心のありようが伝わってきた。
二〇二五年を前に、世界がいっそう流動的になっていると感じる。一四年にもわたり紛争が続いたシリアでアサド政権が崩壊し(末近浩太さん論考)、連携を深めてきた日米韓の首脳の顔ぶれはがらりと変わることになる。
突如宣布された非常戒厳、国会へ急ぐ議員と市民たち──その様子を伝えたあと、日韓外交への影響を懸念する声を紹介する。それがこの間、日本の報道の定型だった。
尹錫悦(ユンソンニョル)大統領周辺の疑惑、政治停滞はこれまでほとんど伝えられてこなかった。日本は保守政権でない「もうひとつの韓国」をなぜ見ようとしないのか。権容ソク(クォンヨンソク)(※「ソク」の字は、大の左右に百)さんの問い(本誌二〇二三年九月号)が浮かぶ。
セウォル号事件を経て、やはり冬空の下でのキャンドルデモが朴槿恵(パククネ)大統領の弾劾を導いてから八年。本誌一月号でリチャード・ロイド・パリーさんは日本社会の特徴に「対立を嫌う」傾向を挙げたが、隣国の人々の姿から、民主主義の危機に立ち向かう、そのために必要なエネルギーの大きさに改めて圧倒される。民主主義は大変だ、かつてそう口にしたのは、映画監督の周防正行さんだった。
周防さんは、大阪地検特捜部の証拠改竄事件を受け設置された法制審議会の特別部会に参加した。不祥事を出発点に改革を議論するはずが、現状の刑事司法に問題なしとの姿勢を崩さない委員たち。三年間、埋まらない溝を前に言葉を尽くした後、吐露した言葉だ。
特別部会が決定した答申案には一部事件での取調べの可視化などが盛り込まれたものの、通信傍受をはじめ多くの果実を得たのは捜査機関だった。長く聖域とされてきた捜査の歪みが、またも露になっている(今号、特集2)。
校了前日、読売新聞主筆の渡邉恒雄氏の訃報が飛び込んできた。政治と権力、また発行部数一〇〇〇万部台という新聞の時代を象徴した人物だ。デジタル化の浸透により、新聞や出版業界は岐路に立つ。苦境をどう捉えるか、自分たちの立ち位置は──。今号特集1のタイトルをめぐっても編集部で議論が続いた。マスコミが影響力を失い、既得権益とみられるに至った理由は時代の趨勢か、構造的な問題か。現実を解剖したいと特集を編んだ。
「必要なもの」とされるために、ジャーナリズムの姿を見つめなおしたい。
アウシュヴィッツ解放八〇年の今年、中村真人さん、また前川仁之さんの短期集中連載が始まります。本年もどうぞよろしくお願いします。
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~~『世界』臨時増刊号のご案内~~
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争──世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
https://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
https://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
https://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
https://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
https://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
https://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11
吉田千亜
定価1,100円
https://iwnm.jp/603333
死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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