『世界』メールマガジン/2025年3月号【特集1:マイノリティを生きる】 【特集2:政治と生活再建】
2025/02/07 (Fri) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2025年3月号
■■ vol.#0117
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■『世界』2025年3月号(第991号)好評発売中
2025年2月7日発行
定価1045円(税込)
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集 1┃マイノリティを生きる
┗━━━╋…────────────────────────────────
親愛なる身体
李琴峰(作家)
反同性愛、そして反トランスへ──日本政治の一〇年
二階堂友紀(朝日新聞)
個人の尊厳をひらく
岡野八代(同志社大学)
私はあなたの「マイノリティ」を生きられない──私自身のためのクィア・アメラジアン宣言
下地ローレンス吉孝(社会学者)
〈サイレントアイヌ〉とはなにか──植民地主義/レイシズムの忘却と痛む身体
石原真衣(北海道大学)
「透明化」しない/されない、ということ
ハン・トンヒョン(日本映画大学)
「あなたは私で、私はあなた」
山本美里(写真家)
┏━━━┓
┃特集 2┃政治と生活再建
┗━━━╋…────────────────────────────────
「私生活の責任」に委ねられているもの──生活戦略と公的サービスの関係性を見つめなおす
岩田正美(日本女子大学名誉教授)
ポピュリズムの本質──政治経済学からの考察
吉弘憲介(桃山学院大学)
子どもを産み育てられない社会──ジェンダーが埋め込まれた日本の働き方
永瀬伸子(お茶の水女子大学)
イノベーティブ福祉国家の可能性
倉地真太郎(明治大学)、佐藤一光(東京経済大学)、徐一睿(専修大学)
政策が引き起こす不可逆的変化──暮らしを政策から考える
北山俊哉(関西学院大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ガザ停戦合意発効 「トランプ流」介入の行方
錦田愛子(慶應義塾大学)
国際刑事裁判所 危機の深層
尾崎久仁子(中央大学)※「崎」の字は立となる「さき」
450時間の痛みを生き直す──なぜ『Black Box Diaries』を撮ったか
伊藤詩織(映像ジャーナリスト)
ポスト真実時代の韓国極右勢力──非常戒厳と保守のジレンマ
堀山明子(毎日新聞)
戒厳令とK-POP──韓国の「歌う民主主義」を考える
金成ミン(北海道大学)※ミンの字は王へんに文
K-POP界を揺るがした性接待問題──バーニングサン事件と韓国社会
守 真弓(朝日新聞)
〈スケッチ〉
ガラスのいるか
水沢なお(詩人、作家)
〈シリーズ夜店〉
出生前検査と「生きられた障害」の時間
二階堂祐子(奈良先端科学技術大学院大学)
〈対談〉
“最後の独裁者”の素顔──渡邉恒雄は何を遺したか(※邉は一点しんにょう)
魚住 昭(ジャーナリスト)╳清武英利(ノンフィクション作家)
渡邉恒雄論──戦中派リベラリストの「悪名」(※邉は一点しんにょう)
山本昭宏(神戸市外国語大学)
日本は性暴力をどう裁くのか──米兵少女暴行事件が示すもの
小川たまか(ライター)
〈新連載〉
いじめ後遺症 第1回 見えない長期的被害
斎藤 環(精神科医)
アウシュヴィッツの焼却炉 第2回 社会の中の共犯者
中村真人(フリーライター)
ファシズムは読書で、レイシズムは旅で治る 第2回 文化、このやっかいなもの
前川仁之(ノンフィクション作家)
イデオロギーを溶かす──「脱北者」アーティスト・ソンムの表現
古川美佳(朝鮮美術文化研究者)
この社会の社会学 第2回 人々から問いを引き受ける
筒井淳也(立命館大学)╳亀田達也(明治学院大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇日本学術会議「法人化」論の四つの誤謬
小森田秋夫(東京大学名誉教授)
◇エネルギー基本計画 熟議抜きの原発回帰でよいのか
添田孝史(サイエンスライター)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇本との出会い
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇本とチェック 第22回 Poem Post
金承福(クオン代表)
◇読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
中村佑子(作家/映像作家)
◇言葉と言葉のかくれんぼ 第11回 私の言葉を守るために
チョン・スユン(翻訳家)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ひとりで暮らす私たち 第6回 生涯暮らせる住まいが欲しい
和田靜香(ライター)
最後は教育なのか? 第8回 不登校が映し出す学校像──酒井朗さんに聞く
武田砂鉄(ライター)
隣のジャーナリズム──「科学的根拠」の罠
須田桃子(科学ジャーナリスト)
あたふたと身支度 第6回 自分では編まないけれど
高橋純子(朝日新聞)
「変わらない」を変える 第22回 ボランティアという抵抗 トランプ大統領就任の日に
三浦まり(上智大学)
脳力のレッスン(273)日本の一九二〇年代──戦間期の日本と石橋湛山
寺島実郎
片山善博の「日本を診る」(184) 新首長が自信をもって就任できるためには
片山善博(大正大学)
アジアとアメリカのあいだ 第3回 戦争がそのあとに残すもの
望月優大(ライター)
ドキュメント激動の南北朝鮮 第331回(24・12~25・1)
編集部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○記憶をもった鏡──山本美里『透明人間 Invisible Mom』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○読者談話室
○編集後記
○表紙木版画
久保舎己(表紙 55年の自画像 1981、裏表紙 涙のうしろ姿 1981)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+安賀裕子
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
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九龍城砦を舞台にした香港映画『トワイライト・ウォリアーズ』を観に行った。冒頭、ネオンの輝く大通りを疾走する場面から映画史へのオマージュが滲み、浴びるようなアクションシーンを楽しんだ。
「魔窟」「無法地帯」と呼ばれながら、一時は約五万人が暮らすなど、行き場のない人たちを長く包摂してきた特異な空間は、香港返還を前に取り壊された。主人公たちは劇中、やがて失われる景色を淡々と目に焼きつけている。共同体の記憶ということを思った。
同じく一月に観たドキュメンタリー『どうすればよかったか?』も、設定はまったく異なるが時間軸が心に残る作品だった。自身の姉と家族との関わりを二〇年にわたり記録している。
統合失調症が疑われるにもかかわらず、両親は姉の精神科受診を避け、家の中だけで対応し続ける。その姿に強い疑問を抱くのだが、時を追うにつれ、映し出される世界が正しさや社会問題の解決という枠ではおさまりきらないことに圧倒される。姉と弟の関係性、記念日を過ごす家族の風景に、今号のシリーズ「夜店」で二階堂祐子さんが指摘する、身体や時間概念を伴う「生きられた障害」の意味を思い起こした。
今号口絵でも紹介されている写真集『透明人間 Invisible Mom』は、山本美里さんが、重度心身障害があり「医療的ケア児」とされる息子と通った小学校で撮影された写真集だ。制度の不条理により、長時間の学校待機を始め、あらゆる献身が前提とされ、社会から切り離されてゆく──その過酷さを知っているとは言えない。だが写真の中に自分がいる、と感じた。自由なポートレートからは、「母」でも「女」でもない自分がいること、同時に、「母」としてこれでいいのか、と自らに向け続ける視線がみえてくる。
「カメラのファインダーを覗(のぞ)いている間は、確かにそこには『私』が存在していると気付かせてくれた」(山本さん寄稿より)。マイノリティを生きる人々が、それぞれのファインダーからみた世界を共有したいと特集1を編んだ。
多くの人々の目の届かないところで、それまでの景色を変質させようとする動きがある。
「軟弱地盤改良に着手 辺野古 国の代執行後初」。早めの冬休みで家族と訪れた旅先で、知人が送ってくれた沖縄タイムス一面の写真を目にした。一二月二八日、仕事納めの翌日に、例のない難工事として根本的な疑義のある工事を強行する。米兵の性暴力事件はこの一月にも起きている。首相が変わっても受け継がれる傲慢な姿勢に、昨年九月号対談での 「底が抜けた感じ」(上間陽子さん)という言葉がよみがえる。
エネルギー基本計画の改定案では、「原発依存度を低減」との文言が削られ、原発回帰がより鮮明になっている。添田孝史さんがいうように、リスクがごまかされたまま「原発の失敗の歴史」をまたたどるというのか。
今号から斎藤環さんの新連載「いじめ後遺症」が始まります。読者談話室へのお便りもお待ちしています。
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~~『世界』臨時増刊号のご案内~~
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争──世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
https://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
https://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
https://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
https://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
https://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
https://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11
吉田千亜
定価1,100円
https://iwnm.jp/603333
死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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岩波書店営業部読者係(TEL:03-5210-4111,FAX:03-3263-6999)
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■『世界』2025年3月号(第991号)好評発売中
2025年2月7日発行
定価1045円(税込)
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
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┃特集 1┃マイノリティを生きる
┗━━━╋…────────────────────────────────
親愛なる身体
李琴峰(作家)
反同性愛、そして反トランスへ──日本政治の一〇年
二階堂友紀(朝日新聞)
個人の尊厳をひらく
岡野八代(同志社大学)
私はあなたの「マイノリティ」を生きられない──私自身のためのクィア・アメラジアン宣言
下地ローレンス吉孝(社会学者)
〈サイレントアイヌ〉とはなにか──植民地主義/レイシズムの忘却と痛む身体
石原真衣(北海道大学)
「透明化」しない/されない、ということ
ハン・トンヒョン(日本映画大学)
「あなたは私で、私はあなた」
山本美里(写真家)
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┃特集 2┃政治と生活再建
┗━━━╋…────────────────────────────────
「私生活の責任」に委ねられているもの──生活戦略と公的サービスの関係性を見つめなおす
岩田正美(日本女子大学名誉教授)
ポピュリズムの本質──政治経済学からの考察
吉弘憲介(桃山学院大学)
子どもを産み育てられない社会──ジェンダーが埋め込まれた日本の働き方
永瀬伸子(お茶の水女子大学)
イノベーティブ福祉国家の可能性
倉地真太郎(明治大学)、佐藤一光(東京経済大学)、徐一睿(専修大学)
政策が引き起こす不可逆的変化──暮らしを政策から考える
北山俊哉(関西学院大学)
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◆注目記事
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ガザ停戦合意発効 「トランプ流」介入の行方
錦田愛子(慶應義塾大学)
国際刑事裁判所 危機の深層
尾崎久仁子(中央大学)※「崎」の字は立となる「さき」
450時間の痛みを生き直す──なぜ『Black Box Diaries』を撮ったか
伊藤詩織(映像ジャーナリスト)
ポスト真実時代の韓国極右勢力──非常戒厳と保守のジレンマ
堀山明子(毎日新聞)
戒厳令とK-POP──韓国の「歌う民主主義」を考える
金成ミン(北海道大学)※ミンの字は王へんに文
K-POP界を揺るがした性接待問題──バーニングサン事件と韓国社会
守 真弓(朝日新聞)
〈スケッチ〉
ガラスのいるか
水沢なお(詩人、作家)
〈シリーズ夜店〉
出生前検査と「生きられた障害」の時間
二階堂祐子(奈良先端科学技術大学院大学)
〈対談〉
“最後の独裁者”の素顔──渡邉恒雄は何を遺したか(※邉は一点しんにょう)
魚住 昭(ジャーナリスト)╳清武英利(ノンフィクション作家)
渡邉恒雄論──戦中派リベラリストの「悪名」(※邉は一点しんにょう)
山本昭宏(神戸市外国語大学)
日本は性暴力をどう裁くのか──米兵少女暴行事件が示すもの
小川たまか(ライター)
〈新連載〉
いじめ後遺症 第1回 見えない長期的被害
斎藤 環(精神科医)
アウシュヴィッツの焼却炉 第2回 社会の中の共犯者
中村真人(フリーライター)
ファシズムは読書で、レイシズムは旅で治る 第2回 文化、このやっかいなもの
前川仁之(ノンフィクション作家)
イデオロギーを溶かす──「脱北者」アーティスト・ソンムの表現
古川美佳(朝鮮美術文化研究者)
この社会の社会学 第2回 人々から問いを引き受ける
筒井淳也(立命館大学)╳亀田達也(明治学院大学)
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◇世界の潮
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◇日本学術会議「法人化」論の四つの誤謬
小森田秋夫(東京大学名誉教授)
◇エネルギー基本計画 熟議抜きの原発回帰でよいのか
添田孝史(サイエンスライター)
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◇本との出会い
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◇本とチェック 第22回 Poem Post
金承福(クオン代表)
◇読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
中村佑子(作家/映像作家)
◇言葉と言葉のかくれんぼ 第11回 私の言葉を守るために
チョン・スユン(翻訳家)
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●連載
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ひとりで暮らす私たち 第6回 生涯暮らせる住まいが欲しい
和田靜香(ライター)
最後は教育なのか? 第8回 不登校が映し出す学校像──酒井朗さんに聞く
武田砂鉄(ライター)
隣のジャーナリズム──「科学的根拠」の罠
須田桃子(科学ジャーナリスト)
あたふたと身支度 第6回 自分では編まないけれど
高橋純子(朝日新聞)
「変わらない」を変える 第22回 ボランティアという抵抗 トランプ大統領就任の日に
三浦まり(上智大学)
脳力のレッスン(273)日本の一九二〇年代──戦間期の日本と石橋湛山
寺島実郎
片山善博の「日本を診る」(184) 新首長が自信をもって就任できるためには
片山善博(大正大学)
アジアとアメリカのあいだ 第3回 戦争がそのあとに残すもの
望月優大(ライター)
ドキュメント激動の南北朝鮮 第331回(24・12~25・1)
編集部
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○記憶をもった鏡──山本美里『透明人間 Invisible Mom』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○読者談話室
○編集後記
○表紙木版画
久保舎己(表紙 55年の自画像 1981、裏表紙 涙のうしろ姿 1981)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+安賀裕子
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編集後記
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九龍城砦を舞台にした香港映画『トワイライト・ウォリアーズ』を観に行った。冒頭、ネオンの輝く大通りを疾走する場面から映画史へのオマージュが滲み、浴びるようなアクションシーンを楽しんだ。
「魔窟」「無法地帯」と呼ばれながら、一時は約五万人が暮らすなど、行き場のない人たちを長く包摂してきた特異な空間は、香港返還を前に取り壊された。主人公たちは劇中、やがて失われる景色を淡々と目に焼きつけている。共同体の記憶ということを思った。
同じく一月に観たドキュメンタリー『どうすればよかったか?』も、設定はまったく異なるが時間軸が心に残る作品だった。自身の姉と家族との関わりを二〇年にわたり記録している。
統合失調症が疑われるにもかかわらず、両親は姉の精神科受診を避け、家の中だけで対応し続ける。その姿に強い疑問を抱くのだが、時を追うにつれ、映し出される世界が正しさや社会問題の解決という枠ではおさまりきらないことに圧倒される。姉と弟の関係性、記念日を過ごす家族の風景に、今号のシリーズ「夜店」で二階堂祐子さんが指摘する、身体や時間概念を伴う「生きられた障害」の意味を思い起こした。
今号口絵でも紹介されている写真集『透明人間 Invisible Mom』は、山本美里さんが、重度心身障害があり「医療的ケア児」とされる息子と通った小学校で撮影された写真集だ。制度の不条理により、長時間の学校待機を始め、あらゆる献身が前提とされ、社会から切り離されてゆく──その過酷さを知っているとは言えない。だが写真の中に自分がいる、と感じた。自由なポートレートからは、「母」でも「女」でもない自分がいること、同時に、「母」としてこれでいいのか、と自らに向け続ける視線がみえてくる。
「カメラのファインダーを覗(のぞ)いている間は、確かにそこには『私』が存在していると気付かせてくれた」(山本さん寄稿より)。マイノリティを生きる人々が、それぞれのファインダーからみた世界を共有したいと特集1を編んだ。
多くの人々の目の届かないところで、それまでの景色を変質させようとする動きがある。
「軟弱地盤改良に着手 辺野古 国の代執行後初」。早めの冬休みで家族と訪れた旅先で、知人が送ってくれた沖縄タイムス一面の写真を目にした。一二月二八日、仕事納めの翌日に、例のない難工事として根本的な疑義のある工事を強行する。米兵の性暴力事件はこの一月にも起きている。首相が変わっても受け継がれる傲慢な姿勢に、昨年九月号対談での 「底が抜けた感じ」(上間陽子さん)という言葉がよみがえる。
エネルギー基本計画の改定案では、「原発依存度を低減」との文言が削られ、原発回帰がより鮮明になっている。添田孝史さんがいうように、リスクがごまかされたまま「原発の失敗の歴史」をまたたどるというのか。
今号から斎藤環さんの新連載「いじめ後遺症」が始まります。読者談話室へのお便りもお待ちしています。
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争──世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
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※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
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芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
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◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
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本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
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三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
https://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11
吉田千亜
定価1,100円
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死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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