『世界』メールマガジン/2025年6月号【特集1: 科学VS政治】 【特集2:老いる社会】
2025/05/08 (Thu) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2025年6月号
■■ vol.#0120
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■『世界』2025年6月号(第994号)好評発売中
2025年5月8日発行
定価1045円(税込)
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集 1┃ 科学VS政治
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈対談〉
科学という制度の破壊
隠岐さや香(東京大学)×松村一志(大阪大学)
〈インタビュー〉
学術会議解体法案は、日本の科学の死だ
山極壽一(総合地球環境学研究所所長、日本学術会議元会長)
〈ルポ〉
トランプ2・0 文化戦争と気候危機
八田浩輔(毎日新聞)
「多様性」の蹉跌──アメリカの大学で何が起きているのか
宮本ゆき(デュポール大学)
┏━━━┓
┃特集 2┃老いる社会
┗━━━╋…────────────────────────────────
インタビュー
就職氷河期世代の老後
近藤絢子(東京大学)
少子化・地方創生・ジェンダー──「高齢社会」の袋小路
松浦 司(中央大学)
「国民の選択」としてのインフラ老朽化
杉浦 勉(関西大学)
「まち」も歳をとっていく──北海道周縁からみえる生活基盤の臨界
勝木晃之郎(北海道新聞)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「思想家」J.D.ヴァンスを読み解く
井上弘貴(神戸大学)
午前1時のメディアタイムズ 第3回 「MAGA左翼」の衝撃
若林 恵(編集者/黒鳥社)
そして、「渚」へ──辺野古 軟弱地盤と呼ばれるものから
赤坂真理(作家)
〈新連載〉
原発事故 検証の空白 第1回 「安定ヨウ素剤投与指示」はどこで止まったのか?
吉田千亜(ライター)
中国の“天は崩れない”か──第二次貿易戦争を見通す視座
高口康太(ジャーナリスト)
ネタニヤフ政権の延命策──ガザ 遠ざけられた恒久停戦
鈴木啓之(東京大学)
戦争を糧に増殖を遂げるロシア経済
服部倫卓(北海道大学)
韓国政治と「民主主義の後退」
磯崎典世(学習院大学)
採掘をめぐる“ディール”──終わりなきコンゴ民主東部紛争
今泉 奏(朝日新聞)
〈リレー連載〉
隣のジャーナリズム 私の「八月ジャーナリズム」
栗原俊雄(毎日新聞)
〈スケッチ〉
雑誌の庭
しりあがり寿(漫画家)
〈シリーズ夜店〉
立場性を引き受けること──「慰安婦」問題に関わる日本人男性たちの語りから
朴沙羅(ヘルシンキ大学)
〈連載小説〉
不屈のひと 物語「女工哀史」 第2回 それぞれの紡績工場
石田陽子(文筆業、編集者)
〈戦後80年対談〉
田中角栄は何を見ていたのか
田中眞紀子(元外務大臣)×真山 仁(小説家)
虚構の黙秘権 取調べ拒否できない日本
デイビッド・T.ジョンソン(ハワイ大学) 訳=秋元由紀(翻訳家)
〈シリーズ〉
「戦後」解体 第3回 自発的優生思想の源流を探る
横山 尊(広島大学)
ヨーロッパで踊りながら採集したクルド移民の物語
金井真紀(文筆家、イラストレーター)
〈連載〉
この社会の社会学 第5回 「三歳児神話」に挑む
柴田 悠(京都大学)
「この糸につかまりなさい」──『編むことは力』著者インタビュー
ロレッタ・ナポリオーニ(エコノミスト)、聞き手=佐久間裕美子(ライター)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇トランプ関税 国際経済体制を揺るがす政権内対立
高橋和宏(法政大学)
◇軍政下のミャンマー大地震──人道支援のジレンマ
今村真央(山形大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇本との出会い
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇中国ディアスポラ書店の風
よし岡桂子(朝日新聞)※「よし」の字は、いわゆる「土よし」。上が「士」ではなく「土」
◇本とチェック 第25回 社長の仕事
金承福(クオン代表)
◇言葉と言葉のかくれんぼ 第14回 「サラン」を使うとき
斎藤真理子(翻訳家)
◇読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
長谷部恭男(早稲田大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
アジアとアメリカのあいだ 第6回 敵でもなく友でもなく、ただの隣人として
望月優大(ライター)
あたふたと身支度 第9回 若作り
高橋純子(朝日新聞)
彼女たちの「戦後」 第9回 吉田ルイ子──Something we can do
山本昭宏(神戸市外国語大学)
「変わらない」を変える 第25回 「超現実」のアメリカ
三浦まり(上智大学)
気候再生のために 第33回 米国 気候科学の危機
高村ゆかり(東京大学)
片山善博の「日本を診る」(187) 図書館閉館問題から見えてくる自治体のモラル欠如
片山善博(大正大学)
脳力のレッスン(276) 「北の黒船」ロシアの来航再考
寺島実郎
いじめ後遺症 第4回 長期的影響のエビデンス──旭川市いじめ自殺(3)
斎藤 環(精神科医)
ドキュメント激動の南北朝鮮 第334回(25・3~4)
編集部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○記憶をもった鏡 岩波友紀『Blue Persimmons』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○編集後記
○表紙画
土屋未久(表紙 何処へ 2025、裏表紙 残る 2025)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+安賀裕子
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
旅先のレストラン、家の近くの喫茶店やクリーニング、総菜屋さん……ワンオペのお店で待つことが気づけば日常になった。外食後、いつもの通りを歩きながら、この街灯(まちあか)りは一〇年後どうなっているだろうと不安がよぎる。
埼玉県八潮市の道路陥没事故から約三カ月、転落したトラックの運転席部分はいまだ下水道管に取り残されている。当初、県内で下水道の使用制限が呼びかけられるなど、インフラ老朽化問題の深刻さが改めて浮かび上がる。
建設業界の高齢化と人手不足、それによる技術継承の困難から、仮に「お金があっても、インフラの修理や建て替えができない」。日本はもはや危機に向かっているのではなく只中にある、と杉浦勉さんは指摘する(特集2)。行政上、道路付属物と位置づけられる街路樹の倒木が全国で相次いでいるのも、この延長線上にある問題といえそうだ。
まだ桜が咲いていた四月初旬、リレー連載「スケッチ」に以前寄稿いただいた折坂悠太さんのコンサートに出かけた。渋谷の大盛堂書店で待ち合わせ、夕空に代々木競技場第一体育館の曲線を眺めながらNHKホールに向かう。
未就学児も入場可能な公演で、休憩中に四歳の女の子とそのお母さんと話したり、集まった人たちと時間と空間を共にする静かな歓びがあった。社会がこんなふうだったら、と友人と言いあい帰路についた翌週、折坂さんは次の公演を前に文章を発表した。小さな子連れの来場者から、近くの人に威圧的な態度をとられ怖い思いをしたとの声が寄せられたことを受けてのものだ。
「私の音楽は、広場でスポーツに躍動する人々の傍らでひっそりと生まれた。子供の声。環境音や気配。……あの通りと地続きの舞台の上から、今日も歌ってみる」。保護者の緊張感と同時に、周りの人との相互の影響に目を配り、誰の機会も奪わないために何が必要かを書いている。
復活祭の翌日、教皇フランシスコが亡くなった。二〇一三年の就任直後から、難民は数ではない、みな顔と名前と物語をもつ人間だ、と欧州難民危機の最中にも強力なメッセージを発してきた。今号、長谷部恭男さんが回想録を読んだメルケル首相、あるいはオバマ大統領の時代は去り、第二次トランプ政権下ではアメリカの大学が弾圧に直面している。反ユダヤ主義を理由にデモに参加した大学生らが逮捕され、留学生のビザが取り消される。多様性を掲げたプログラムは廃止、署名活動を行なう教員の雇用が脅かされている。
だが、こうした解体的危機にもかかわらず、多くの人々が懸念を抱く事態とはなっていない、学問の自由の侵害というより「都市部の問題」「既得権益の凋落」とみられている──宮本ゆきさんの指摘は日本にも通じる。今国会に提出された日本学術会議法案について、会長経験者のふたりは「科学の死」「学術の終わりの始まり」と述べる。
リベラルな指導者なき時代に、開かれた空間を、広場をどう育むのか。真の多様性とは何かを共に考えることから始めたい。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
~~『世界』臨時増刊号のご案内~~
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争──世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
https://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎ブラック・カルチャー──大西洋を旅する声と音(岩波新書)
中村 隆之
定価1056円
https://iwnm.jp/432061
ブラック・カルチャーを貫く、アフリカ帰還という主題。音楽、文学、アートからその歴史と現在を旅する。
2025年4月18日発売
*地域によって、書店店頭に並ぶまで数日かる場合がございます。ご理解をいただけますと幸いです。
◎魂の教育──よい本は時を超えて人を動かす
森本 あんり
定価3190円
https://iwnm.jp/061669
『世界』好評連載「ボナエ・リテラエ」で紡がれた、実存をかけた神学遍歴の先の、ある救済の物語。
◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
https://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
https://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
https://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
https://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
https://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11(岩波現代文庫)
吉田千亜
定価1,100円
https://iwnm.jp/603333
死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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岩波書店営業部読者係(TEL:03-5210-4111,FAX:03-3263-6999)
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■『世界』2025年6月号(第994号)好評発売中
2025年5月8日発行
定価1045円(税込)
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集 1┃ 科学VS政治
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈対談〉
科学という制度の破壊
隠岐さや香(東京大学)×松村一志(大阪大学)
〈インタビュー〉
学術会議解体法案は、日本の科学の死だ
山極壽一(総合地球環境学研究所所長、日本学術会議元会長)
〈ルポ〉
トランプ2・0 文化戦争と気候危機
八田浩輔(毎日新聞)
「多様性」の蹉跌──アメリカの大学で何が起きているのか
宮本ゆき(デュポール大学)
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┃特集 2┃老いる社会
┗━━━╋…────────────────────────────────
インタビュー
就職氷河期世代の老後
近藤絢子(東京大学)
少子化・地方創生・ジェンダー──「高齢社会」の袋小路
松浦 司(中央大学)
「国民の選択」としてのインフラ老朽化
杉浦 勉(関西大学)
「まち」も歳をとっていく──北海道周縁からみえる生活基盤の臨界
勝木晃之郎(北海道新聞)
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◆注目記事
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「思想家」J.D.ヴァンスを読み解く
井上弘貴(神戸大学)
午前1時のメディアタイムズ 第3回 「MAGA左翼」の衝撃
若林 恵(編集者/黒鳥社)
そして、「渚」へ──辺野古 軟弱地盤と呼ばれるものから
赤坂真理(作家)
〈新連載〉
原発事故 検証の空白 第1回 「安定ヨウ素剤投与指示」はどこで止まったのか?
吉田千亜(ライター)
中国の“天は崩れない”か──第二次貿易戦争を見通す視座
高口康太(ジャーナリスト)
ネタニヤフ政権の延命策──ガザ 遠ざけられた恒久停戦
鈴木啓之(東京大学)
戦争を糧に増殖を遂げるロシア経済
服部倫卓(北海道大学)
韓国政治と「民主主義の後退」
磯崎典世(学習院大学)
採掘をめぐる“ディール”──終わりなきコンゴ民主東部紛争
今泉 奏(朝日新聞)
〈リレー連載〉
隣のジャーナリズム 私の「八月ジャーナリズム」
栗原俊雄(毎日新聞)
〈スケッチ〉
雑誌の庭
しりあがり寿(漫画家)
〈シリーズ夜店〉
立場性を引き受けること──「慰安婦」問題に関わる日本人男性たちの語りから
朴沙羅(ヘルシンキ大学)
〈連載小説〉
不屈のひと 物語「女工哀史」 第2回 それぞれの紡績工場
石田陽子(文筆業、編集者)
〈戦後80年対談〉
田中角栄は何を見ていたのか
田中眞紀子(元外務大臣)×真山 仁(小説家)
虚構の黙秘権 取調べ拒否できない日本
デイビッド・T.ジョンソン(ハワイ大学) 訳=秋元由紀(翻訳家)
〈シリーズ〉
「戦後」解体 第3回 自発的優生思想の源流を探る
横山 尊(広島大学)
ヨーロッパで踊りながら採集したクルド移民の物語
金井真紀(文筆家、イラストレーター)
〈連載〉
この社会の社会学 第5回 「三歳児神話」に挑む
柴田 悠(京都大学)
「この糸につかまりなさい」──『編むことは力』著者インタビュー
ロレッタ・ナポリオーニ(エコノミスト)、聞き手=佐久間裕美子(ライター)
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◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇トランプ関税 国際経済体制を揺るがす政権内対立
高橋和宏(法政大学)
◇軍政下のミャンマー大地震──人道支援のジレンマ
今村真央(山形大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇本との出会い
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇中国ディアスポラ書店の風
よし岡桂子(朝日新聞)※「よし」の字は、いわゆる「土よし」。上が「士」ではなく「土」
◇本とチェック 第25回 社長の仕事
金承福(クオン代表)
◇言葉と言葉のかくれんぼ 第14回 「サラン」を使うとき
斎藤真理子(翻訳家)
◇読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
長谷部恭男(早稲田大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
アジアとアメリカのあいだ 第6回 敵でもなく友でもなく、ただの隣人として
望月優大(ライター)
あたふたと身支度 第9回 若作り
高橋純子(朝日新聞)
彼女たちの「戦後」 第9回 吉田ルイ子──Something we can do
山本昭宏(神戸市外国語大学)
「変わらない」を変える 第25回 「超現実」のアメリカ
三浦まり(上智大学)
気候再生のために 第33回 米国 気候科学の危機
高村ゆかり(東京大学)
片山善博の「日本を診る」(187) 図書館閉館問題から見えてくる自治体のモラル欠如
片山善博(大正大学)
脳力のレッスン(276) 「北の黒船」ロシアの来航再考
寺島実郎
いじめ後遺症 第4回 長期的影響のエビデンス──旭川市いじめ自殺(3)
斎藤 環(精神科医)
ドキュメント激動の南北朝鮮 第334回(25・3~4)
編集部
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○記憶をもった鏡 岩波友紀『Blue Persimmons』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○編集後記
○表紙画
土屋未久(表紙 何処へ 2025、裏表紙 残る 2025)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+安賀裕子
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編集後記
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旅先のレストラン、家の近くの喫茶店やクリーニング、総菜屋さん……ワンオペのお店で待つことが気づけば日常になった。外食後、いつもの通りを歩きながら、この街灯(まちあか)りは一〇年後どうなっているだろうと不安がよぎる。
埼玉県八潮市の道路陥没事故から約三カ月、転落したトラックの運転席部分はいまだ下水道管に取り残されている。当初、県内で下水道の使用制限が呼びかけられるなど、インフラ老朽化問題の深刻さが改めて浮かび上がる。
建設業界の高齢化と人手不足、それによる技術継承の困難から、仮に「お金があっても、インフラの修理や建て替えができない」。日本はもはや危機に向かっているのではなく只中にある、と杉浦勉さんは指摘する(特集2)。行政上、道路付属物と位置づけられる街路樹の倒木が全国で相次いでいるのも、この延長線上にある問題といえそうだ。
まだ桜が咲いていた四月初旬、リレー連載「スケッチ」に以前寄稿いただいた折坂悠太さんのコンサートに出かけた。渋谷の大盛堂書店で待ち合わせ、夕空に代々木競技場第一体育館の曲線を眺めながらNHKホールに向かう。
未就学児も入場可能な公演で、休憩中に四歳の女の子とそのお母さんと話したり、集まった人たちと時間と空間を共にする静かな歓びがあった。社会がこんなふうだったら、と友人と言いあい帰路についた翌週、折坂さんは次の公演を前に文章を発表した。小さな子連れの来場者から、近くの人に威圧的な態度をとられ怖い思いをしたとの声が寄せられたことを受けてのものだ。
「私の音楽は、広場でスポーツに躍動する人々の傍らでひっそりと生まれた。子供の声。環境音や気配。……あの通りと地続きの舞台の上から、今日も歌ってみる」。保護者の緊張感と同時に、周りの人との相互の影響に目を配り、誰の機会も奪わないために何が必要かを書いている。
復活祭の翌日、教皇フランシスコが亡くなった。二〇一三年の就任直後から、難民は数ではない、みな顔と名前と物語をもつ人間だ、と欧州難民危機の最中にも強力なメッセージを発してきた。今号、長谷部恭男さんが回想録を読んだメルケル首相、あるいはオバマ大統領の時代は去り、第二次トランプ政権下ではアメリカの大学が弾圧に直面している。反ユダヤ主義を理由にデモに参加した大学生らが逮捕され、留学生のビザが取り消される。多様性を掲げたプログラムは廃止、署名活動を行なう教員の雇用が脅かされている。
だが、こうした解体的危機にもかかわらず、多くの人々が懸念を抱く事態とはなっていない、学問の自由の侵害というより「都市部の問題」「既得権益の凋落」とみられている──宮本ゆきさんの指摘は日本にも通じる。今国会に提出された日本学術会議法案について、会長経験者のふたりは「科学の死」「学術の終わりの始まり」と述べる。
リベラルな指導者なき時代に、開かれた空間を、広場をどう育むのか。真の多様性とは何かを共に考えることから始めたい。
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争──世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
https://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎ブラック・カルチャー──大西洋を旅する声と音(岩波新書)
中村 隆之
定価1056円
https://iwnm.jp/432061
ブラック・カルチャーを貫く、アフリカ帰還という主題。音楽、文学、アートからその歴史と現在を旅する。
2025年4月18日発売
*地域によって、書店店頭に並ぶまで数日かる場合がございます。ご理解をいただけますと幸いです。
◎魂の教育──よい本は時を超えて人を動かす
森本 あんり
定価3190円
https://iwnm.jp/061669
『世界』好評連載「ボナエ・リテラエ」で紡がれた、実存をかけた神学遍歴の先の、ある救済の物語。
◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
https://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
https://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
https://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
https://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
https://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11(岩波現代文庫)
吉田千亜
定価1,100円
https://iwnm.jp/603333
死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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