『世界』メールマガジン/2025年9月号【特集1: 政党政治の果て】 【特集2:ガザのいま、中東の未来】
2025/08/08 (Fri) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2025年9月号
■■ vol.#0123
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■『世界』2025年9月号(第997号)好評発売中
2025年8月8日発行
定価1045円(税込)
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/読者談話室・投稿募集/イベント情報/『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集 1┃政党政治の果て
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈ルポ〉
埼玉クルド人コミュニティ「最悪の選挙」が残したもの
安田浩一(ノンフィクションライター)
「外国人デマ」に向き合う──参院選の重い教訓
橋本直子(国際基督教大学)
〈ルポ〉
「声なき声」の参政党支持──分断と対話のゆくえ
宮原ジェフリー(選挙ライター)
ソーシャルメディアと陰謀論の伝播──「財務省ヘイト」のメカニズム
秦正樹(大阪経済大学)
計数感覚をもって政策を語るための財政学
掛貝祐太(茨城大学)
〈インタビュー〉
既成政党の世界的敗北
水島治郎(千葉大学)
社会保険料 誰の負担が重いのか
大沢真理(東京大学名誉教授)
┏━━━┓
┃特集 2┃ガザのいま、中東の未来
┗━━━╋…────────────────────────────────
世界はイラク戦争を忘れたか─書き換えられる中東の顔
酒井啓子(千葉大学)
飢餓の構造──ガザ人道財団という「死の罠」
清田明宏(UNRWA保健局長)、解題=金子由佳(立教大学講師)
〈インタビュー〉
パレスチナから目を離すな
ハミッド・ダバシ(コロンビア大学)、聞き手・解説=早尾貴紀(東京経済大学)
〈対談〉
ガザ、“巨大な炉” ──パレスチナ連帯と気候正義の複合性
中村峻太郎(翻訳者)×松下新土(詩人)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈ルポ〉
「齋藤旋風」兵庫の傷痕
松本 創(ノンフィクションライター)
「アジア太平洋諸島戦争」の視座──植民地支配、戦争、核実験
竹峰誠一郎(明星大学)
〈新連載〉
親愛なる身体へ 第1回 私と友達になりたいなら
李琴峰(作家)
法の支配を誰が守るのか──国際刑事裁判所 赤根智子所長に聞く
駒林歩美(ドイツ在住ライター)
〈対談〉
ジェノサイドの種は「平時」に生まれる
長 有紀枝(立教大学)×廣瀬陽子(慶應義塾大学)
〈連載〉
脳力のレッスン(278) 特別篇 戦後八〇年への沈思熟考(前篇)
寺島実郎
共感は敵だ──収奪のトランプ政治
三牧聖子(同志社大学)
〈スケッチ〉
呪われたエレベーターホール
金原ひとみ(作家)
〈シリーズ夜店〉
到来する呼びかけ──森崎和江と「わが沖縄」
大畑 凜(大阪大学)
〈リレー連載〉
シリーズ「戦後」解体 座談会 労働と戦争の距離
大澤絢子(東北大学)×佐々木 啓(東洋大学)、司会=古波藏 契(東京科学大学)
〈連載最終回〉
「変わらない」を変える 第28回 新自由主義の焼け野から
三浦まり(上智大学)
〈インタビュー〉
フェイクの時代に抗して──デジタル・アーカイブの力
渡邉英徳(東京大学)
日本版「AI法」のゆくえ
堀口悟郎(神戸大学)
猛暑こそ活きる断熱住宅
高橋真樹(ノンフィクションライター)
〈連載〉
原発事故 検証の空白 第3回 公表されなかった放射線量測定値
吉田千亜(ライター)
〈連載〉
最後は教育なのか? 第11回 部活動を誰が担えるのか──内田良さんに聞く
武田砂鉄(ライター)
〈リレー連載〉
隣のジャーナリズム──映画記者の格闘
石飛徳樹(映画評論家)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇死刑執行再開──法務省が当てにした「世論」
佐藤大介(共同通信)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇本との出会い
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇言葉と言葉のかくれんぼ 第17回 未来の前書き
チョン・スユン(翻訳家)
◇読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
新城和博(編集者)
◇本とチェック 第28回 桃のような人
金承福(クオン代表)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
午前1時のメディアタイムズ 第6回 ポピュリストたちの夢の跡
若林 恵(編集者/黒鳥社)
アジアとアメリカのあいだ 第9回 ニューヨーク、ヌエバヨル、そして
望月優大(ライター)
彼女たちの「戦後」 第11回 中山千夏──アマチュアが輝いた時代
山本昭宏(神戸市外国語大学)
あたふたと身支度 第12回 党首のいでたち
高橋純子(朝日新聞)
片山善博の「日本を診る」(190) 選挙の公正さへの疑念を払拭するには
片山善博(大正大学)
この社会の社会学 第8回 「日本人は無宗教」なのか
横井桃子(愛知大学)
気候再生のために 第36回 争点にならぬ「気候」──参院選と日本政治の現在地
江守正多(東京大学)
いじめ後遺症 第6回(最終回) 被害者中心主義へ
斎藤 環(精神科医)
ドキュメント激動の南北朝鮮 第337回(25・6~7)
編集部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○記憶をもった鏡 ジェーン・エヴリン・アトウッド『Darya』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○編集後記
○表紙画
土屋未久(表紙 道 2025、裏表紙 揺れる 2025)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+都井美穂子
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
作業のためよく行く喫茶店がいくつかある。数カ月前、隣のテーブルに並んだ四〇代くらいの男性たちは週末の旅行を振り返り「中国人の運転マナー」を諦めるような口ぶりで話していた。先週、同じ店でやはり隣に座った学生の一人は、周りに参政党への投票を薦められChatGPTで調べた、と言っていた。別の喫茶店で高齢の男性ふたりが「慰安婦は売春婦だよ!」などと大声で話し、まだこんな人がと不快だったことは覚えていたが、参院選後、すでにさまざまな兆候がBGMのように耳に入っていたと気づかされた。
「選挙が終わっても、まだ恐怖が残っている」。埼玉県南部のクルド人コミュニティに通い続ける安田浩一さんに、大学生のバランさんはこう語った。選挙の名の下にヘイトが街頭でばら撒かれ、子どもたちの耳をふさいだ親もいる。新興政党、小政党だけではない。自民党も公約で「違法外国人ゼロ」とした。あたかも声をもたない人のように「外国人」を都合よく扱い続ける。そんな政治を変えなければならない。
評判を聞き東京・竹橋にある国立近代美術館の「記録をひらく 記憶をつむぐ」展に出かけた。戦争と美術の関わりを立体的に浮かび上がらせる構成で、気づけば猛暑の疲労を忘れていた。
三階の日本画コーナーでも、海南島を出発する輸送船団に南十字星を重ねた川端龍子(りゅうし)の作品が展示され、洋画日本画問わずこれほど多くの画家たちが戦争画に関わったのかと改めて驚かされた。中国で子どもたちの冷ややかな視線を描き残した作品もあれば(猪熊弦一郎「長江埠の子供達」)、成都上空の戦闘機をダイナミックな構図で捉えた作品もあり、自身の責任と向き合い続けた小川原脩(おがわらしゅう)の言葉も映像で紹介されていた。地面で被害を受ける人に思い至らなかったか、との問いに、戦時は「もっと厳しいですよ。目の前に出てくるもののことしか考えられない」。今この時代と共振するようだった。
熱心に作品や紹介文を観る人々の姿は、堀川理万子さんの絵本『いま、日本は戦争をしている』原画展でも印象に残った。同書は一七人の戦争体験者への取材を基に、原爆、空襲、引揚げなどの場面をそれぞれが子どもだった頃の視点から再現している。淡々とした日記のようなつくりだが、ページをめくるうち「しばらく赤い絵の具を使えなかった」という、ギャラリートークでの著者の言葉が胸におちていった。
平時と戦時、そのつながりをジェノサイドの視点から問う今号対談の冒頭で、廣瀬陽子さんは、国際社会が注視する人道危機の一方で、長く放置され続ける不条理もある、と述べていた。ホロコーストを二度と繰り返さないという出発点をもつジェノサイド条約だが、その認定は、長い敵対関係や紛争の歴史における一断面を切り取るものにすぎないという指摘もある。見過ごされてきた不正義の蓄積、国際社会の歪みを最も表すのがガザではないか。食料を求める人々に銃が向けられる。その構造を記した清田明宏さん、金子由佳さんの寄稿を読んでいただきたい。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
読者談話室・投稿募集
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
投稿要項:800字以内
身近な話題や本誌へのご意見、ご感想などをお寄せください。
住所・氏名・年齢・職業・電話番号を明記の上、「世界」編集部読者談話室係まで。
掲載者には「世界」オリジナル図書カードを進呈。
投稿原稿の返却、採否の連絡はいたしません。二重投稿はお断りします。
また、文意を損なわない範囲で手を加えさせていただくことがあります。
どうぞご了承ください。
WEB投稿:https://www.iwanami.co.jp/sekai_lounge/
メール投稿:sekai@iwanami.co.jp
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◇◆イベント情報 「戦後80年 その基点を確かめる」◆◇
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1913年の創業以来、岩波書店は出版物をとおして戦争と向き合ってきました。敗戦から80年を迎える2025年、岩波書店は「戦後の基点」に立ち返るとともに、人間とは、社会とは、平和とは何か、読者のみなさまと考えることができたらと願っております。
◇8月4日(月)19:00~
『百武三郎日記』刊行記念トークイベント
「昭和天皇侍従長の日記から読み解く、近現代日本の戦争」
登壇者:古川隆久(隆の字は、生の上に一が入る字体)、茶谷誠一
会場:紀伊國屋書店新宿本店
お申込み・詳細はこちら
≫https://store.kinokuniya.co.jp/event/1751540747/
◇8月25日(月)19:00~
『スガモプリズン──占領下の「異空間」』 刊行記念
「誰が、どうやって、戦争の責任をとったのか?──スガモの跡地で考える」
登壇者:内海愛子、吉田裕
会場:ジュンク堂書店池袋本店
お申込み・詳細はこちら
≫https://online.maruzenjunkudo.co.jp/products/j70019-250825
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~~『世界』臨時増刊号のご案内~~
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争──世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
https://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
~~『世界』から生まれた本~~
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◎ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる(岩波新書)
小川 公代
定価1100円
https://iwnm.jp/432071
強者が押しつける「正義」の物語ではなく、尊厳を踏みにじられた人々が紡ぐ〈小さな物語〉を求めて。
◎ブラック・カルチャー──大西洋を旅する声と音(岩波新書)
中村 隆之
定価1056円
https://iwnm.jp/432061
ブラック・カルチャーを貫く、アフリカ帰還という主題。音楽、文学、アートからその歴史と現在を旅する。
◎魂の教育──よい本は時を超えて人を動かす
森本 あんり
定価3190円
https://iwnm.jp/061669
『世界』好評連載「ボナエ・リテラエ」で紡がれた、実存をかけた神学遍歴の先の、ある救済の物語。
◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
https://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
https://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
https://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
https://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
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世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11(岩波現代文庫)
吉田千亜
定価1,100円
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死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
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■■ vol.#0123
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■『世界』2025年9月号(第997号)好評発売中
2025年8月8日発行
定価1045円(税込)
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/読者談話室・投稿募集/イベント情報/『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
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┃特集 1┃政党政治の果て
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈ルポ〉
埼玉クルド人コミュニティ「最悪の選挙」が残したもの
安田浩一(ノンフィクションライター)
「外国人デマ」に向き合う──参院選の重い教訓
橋本直子(国際基督教大学)
〈ルポ〉
「声なき声」の参政党支持──分断と対話のゆくえ
宮原ジェフリー(選挙ライター)
ソーシャルメディアと陰謀論の伝播──「財務省ヘイト」のメカニズム
秦正樹(大阪経済大学)
計数感覚をもって政策を語るための財政学
掛貝祐太(茨城大学)
〈インタビュー〉
既成政党の世界的敗北
水島治郎(千葉大学)
社会保険料 誰の負担が重いのか
大沢真理(東京大学名誉教授)
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┃特集 2┃ガザのいま、中東の未来
┗━━━╋…────────────────────────────────
世界はイラク戦争を忘れたか─書き換えられる中東の顔
酒井啓子(千葉大学)
飢餓の構造──ガザ人道財団という「死の罠」
清田明宏(UNRWA保健局長)、解題=金子由佳(立教大学講師)
〈インタビュー〉
パレスチナから目を離すな
ハミッド・ダバシ(コロンビア大学)、聞き手・解説=早尾貴紀(東京経済大学)
〈対談〉
ガザ、“巨大な炉” ──パレスチナ連帯と気候正義の複合性
中村峻太郎(翻訳者)×松下新土(詩人)
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◆注目記事
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〈ルポ〉
「齋藤旋風」兵庫の傷痕
松本 創(ノンフィクションライター)
「アジア太平洋諸島戦争」の視座──植民地支配、戦争、核実験
竹峰誠一郎(明星大学)
〈新連載〉
親愛なる身体へ 第1回 私と友達になりたいなら
李琴峰(作家)
法の支配を誰が守るのか──国際刑事裁判所 赤根智子所長に聞く
駒林歩美(ドイツ在住ライター)
〈対談〉
ジェノサイドの種は「平時」に生まれる
長 有紀枝(立教大学)×廣瀬陽子(慶應義塾大学)
〈連載〉
脳力のレッスン(278) 特別篇 戦後八〇年への沈思熟考(前篇)
寺島実郎
共感は敵だ──収奪のトランプ政治
三牧聖子(同志社大学)
〈スケッチ〉
呪われたエレベーターホール
金原ひとみ(作家)
〈シリーズ夜店〉
到来する呼びかけ──森崎和江と「わが沖縄」
大畑 凜(大阪大学)
〈リレー連載〉
シリーズ「戦後」解体 座談会 労働と戦争の距離
大澤絢子(東北大学)×佐々木 啓(東洋大学)、司会=古波藏 契(東京科学大学)
〈連載最終回〉
「変わらない」を変える 第28回 新自由主義の焼け野から
三浦まり(上智大学)
〈インタビュー〉
フェイクの時代に抗して──デジタル・アーカイブの力
渡邉英徳(東京大学)
日本版「AI法」のゆくえ
堀口悟郎(神戸大学)
猛暑こそ活きる断熱住宅
高橋真樹(ノンフィクションライター)
〈連載〉
原発事故 検証の空白 第3回 公表されなかった放射線量測定値
吉田千亜(ライター)
〈連載〉
最後は教育なのか? 第11回 部活動を誰が担えるのか──内田良さんに聞く
武田砂鉄(ライター)
〈リレー連載〉
隣のジャーナリズム──映画記者の格闘
石飛徳樹(映画評論家)
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◇世界の潮
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◇死刑執行再開──法務省が当てにした「世論」
佐藤大介(共同通信)
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◇本との出会い
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◇言葉と言葉のかくれんぼ 第17回 未来の前書き
チョン・スユン(翻訳家)
◇読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
新城和博(編集者)
◇本とチェック 第28回 桃のような人
金承福(クオン代表)
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●連載
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午前1時のメディアタイムズ 第6回 ポピュリストたちの夢の跡
若林 恵(編集者/黒鳥社)
アジアとアメリカのあいだ 第9回 ニューヨーク、ヌエバヨル、そして
望月優大(ライター)
彼女たちの「戦後」 第11回 中山千夏──アマチュアが輝いた時代
山本昭宏(神戸市外国語大学)
あたふたと身支度 第12回 党首のいでたち
高橋純子(朝日新聞)
片山善博の「日本を診る」(190) 選挙の公正さへの疑念を払拭するには
片山善博(大正大学)
この社会の社会学 第8回 「日本人は無宗教」なのか
横井桃子(愛知大学)
気候再生のために 第36回 争点にならぬ「気候」──参院選と日本政治の現在地
江守正多(東京大学)
いじめ後遺症 第6回(最終回) 被害者中心主義へ
斎藤 環(精神科医)
ドキュメント激動の南北朝鮮 第337回(25・6~7)
編集部
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○記憶をもった鏡 ジェーン・エヴリン・アトウッド『Darya』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○編集後記
○表紙画
土屋未久(表紙 道 2025、裏表紙 揺れる 2025)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+都井美穂子
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編集後記
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作業のためよく行く喫茶店がいくつかある。数カ月前、隣のテーブルに並んだ四〇代くらいの男性たちは週末の旅行を振り返り「中国人の運転マナー」を諦めるような口ぶりで話していた。先週、同じ店でやはり隣に座った学生の一人は、周りに参政党への投票を薦められChatGPTで調べた、と言っていた。別の喫茶店で高齢の男性ふたりが「慰安婦は売春婦だよ!」などと大声で話し、まだこんな人がと不快だったことは覚えていたが、参院選後、すでにさまざまな兆候がBGMのように耳に入っていたと気づかされた。
「選挙が終わっても、まだ恐怖が残っている」。埼玉県南部のクルド人コミュニティに通い続ける安田浩一さんに、大学生のバランさんはこう語った。選挙の名の下にヘイトが街頭でばら撒かれ、子どもたちの耳をふさいだ親もいる。新興政党、小政党だけではない。自民党も公約で「違法外国人ゼロ」とした。あたかも声をもたない人のように「外国人」を都合よく扱い続ける。そんな政治を変えなければならない。
評判を聞き東京・竹橋にある国立近代美術館の「記録をひらく 記憶をつむぐ」展に出かけた。戦争と美術の関わりを立体的に浮かび上がらせる構成で、気づけば猛暑の疲労を忘れていた。
三階の日本画コーナーでも、海南島を出発する輸送船団に南十字星を重ねた川端龍子(りゅうし)の作品が展示され、洋画日本画問わずこれほど多くの画家たちが戦争画に関わったのかと改めて驚かされた。中国で子どもたちの冷ややかな視線を描き残した作品もあれば(猪熊弦一郎「長江埠の子供達」)、成都上空の戦闘機をダイナミックな構図で捉えた作品もあり、自身の責任と向き合い続けた小川原脩(おがわらしゅう)の言葉も映像で紹介されていた。地面で被害を受ける人に思い至らなかったか、との問いに、戦時は「もっと厳しいですよ。目の前に出てくるもののことしか考えられない」。今この時代と共振するようだった。
熱心に作品や紹介文を観る人々の姿は、堀川理万子さんの絵本『いま、日本は戦争をしている』原画展でも印象に残った。同書は一七人の戦争体験者への取材を基に、原爆、空襲、引揚げなどの場面をそれぞれが子どもだった頃の視点から再現している。淡々とした日記のようなつくりだが、ページをめくるうち「しばらく赤い絵の具を使えなかった」という、ギャラリートークでの著者の言葉が胸におちていった。
平時と戦時、そのつながりをジェノサイドの視点から問う今号対談の冒頭で、廣瀬陽子さんは、国際社会が注視する人道危機の一方で、長く放置され続ける不条理もある、と述べていた。ホロコーストを二度と繰り返さないという出発点をもつジェノサイド条約だが、その認定は、長い敵対関係や紛争の歴史における一断面を切り取るものにすぎないという指摘もある。見過ごされてきた不正義の蓄積、国際社会の歪みを最も表すのがガザではないか。食料を求める人々に銃が向けられる。その構造を記した清田明宏さん、金子由佳さんの寄稿を読んでいただきたい。
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読者談話室・投稿募集
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投稿要項:800字以内
身近な話題や本誌へのご意見、ご感想などをお寄せください。
住所・氏名・年齢・職業・電話番号を明記の上、「世界」編集部読者談話室係まで。
掲載者には「世界」オリジナル図書カードを進呈。
投稿原稿の返却、採否の連絡はいたしません。二重投稿はお断りします。
また、文意を損なわない範囲で手を加えさせていただくことがあります。
どうぞご了承ください。
WEB投稿:https://www.iwanami.co.jp/sekai_lounge/
メール投稿:sekai@iwanami.co.jp
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◇◆イベント情報 「戦後80年 その基点を確かめる」◆◇
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1913年の創業以来、岩波書店は出版物をとおして戦争と向き合ってきました。敗戦から80年を迎える2025年、岩波書店は「戦後の基点」に立ち返るとともに、人間とは、社会とは、平和とは何か、読者のみなさまと考えることができたらと願っております。
◇8月4日(月)19:00~
『百武三郎日記』刊行記念トークイベント
「昭和天皇侍従長の日記から読み解く、近現代日本の戦争」
登壇者:古川隆久(隆の字は、生の上に一が入る字体)、茶谷誠一
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◇8月25日(月)19:00~
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「誰が、どうやって、戦争の責任をとったのか?──スガモの跡地で考える」
登壇者:内海愛子、吉田裕
会場:ジュンク堂書店池袋本店
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◎ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる(岩波新書)
小川 公代
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◎ブラック・カルチャー──大西洋を旅する声と音(岩波新書)
中村 隆之
定価1056円
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ブラック・カルチャーを貫く、アフリカ帰還という主題。音楽、文学、アートからその歴史と現在を旅する。
◎魂の教育──よい本は時を超えて人を動かす
森本 あんり
定価3190円
https://iwnm.jp/061669
『世界』好評連載「ボナエ・リテラエ」で紡がれた、実存をかけた神学遍歴の先の、ある救済の物語。
◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
https://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
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日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
https://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
https://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
https://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11(岩波現代文庫)
吉田千亜
定価1,100円
https://iwnm.jp/603333
死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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