『世界』メールマガジン/2025年10月号【特集1: 働き続ける私たち】 【特集2:居場所なき子ども】
2025/09/08 (Mon) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2025年10月号
■■ vol.#0124
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■『世界』2025年10月号(第998号)好評発売中
2025年9月8日発行
定価1045円(税込)
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/読者談話室・投稿募集/イベント情報/『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集 1┃働き続ける私たち
┗━━━╋…────────────────────────────────
七〇歳でも働く社会
玄田有史(東京大学)
女性「活躍」はもうやめよう──働き方の普通を変える
濱口桂一郎(労働政策研究・研修機構)
短時間正社員──労働力不足時代の働き方アップデート
田中洋子(筑波大学名誉教授)
危うくてもスピードを落とせない自転車たちを救うこと
小山内園子(韓日翻訳者)
ケアをもっとシンプルに──ヘルパーの現場から
柳本文貴(NPOグレースケア代表)
「転勤」制度の岐路──新しい個人主義とジェンダー秩序の交差点
伊藤将人(国際大学)
履歴書無価値
長田杏奈(ライター)
┏━━━┓
┃特集 2┃居場所なき子ども
┗━━━╋…────────────────────────────────
地元で生きる若者たち──学校教育論の陥穽と日本社会の広がり
知念 渉(大阪大学)
教室が子どもの枷になるとき
川上康則(杉並区立済美養護学校)
少年院 排除の構造を手放せるか
仲野由佳理(日本大学非常勤講師)
学校にも図書館がある──子どもの居場所に人と本を
木下通子(オフィスみちねこ代表)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「主婦的なるもの」の政治性──参政党現象から考える
鈴木彩加(筑波大学)
参政党「真ん中」からの反革命
伊藤昌亮(成蹊大学)
香港 国安法体制下の五年──「中国式」への「和平演変」
倉田 徹(立教大学)
ポスト・アメリカ主導の国際秩序──「責任ある大国」としての日本へ
玉置敦彦(中央大学)
〈連載〉
午前1時のメディアタイムズ 第7回 エプスティーンと戦後の終わり
若林 恵(編集者/黒鳥社)
万博は実験のためにある──大阪・関西万博の建築を考える
市川紘司(建築史家)
〈連載〉
親愛なる身体へ 第2回 汝はチャイニーズなりや
李琴峰(作家)
〈スケッチ〉
海流に乗って
甫木元空(映画監督、ミュージシャン)
〈シリーズ夜店〉
外見への差別はどうやってなかったことにされてきたか
矢吹康夫(中京大学)
ドル支配体制は揺らぐか
黒田東彦(前日本銀行総裁)×河合正弘(東京大学名誉教授)
〈トランプ関税〉
日本のプランBとは──アメリカなき国際通商秩序へ
司会=須網隆夫(早稲田大学名誉教授)
川瀬剛志(上智大学)×前嶋和弘(上智大学)×大河内美紀(名古屋大学)
〈新連載〉
ハンセン病詩人 韓何雲の素顔 第1回 北のムンドゥンイ、ソウルで華麗な転身
吉川 凪(作家、翻訳家)
民の犠牲を許すな──進む「戦争準備」と受忍論
吉田敏浩(ジャーナリスト)
〈最終回〉
彼女たちの「戦後」 第12回 吉永小百合「理想」は死なない
山本昭宏(神戸市外国語大学)
「天皇陵」と民主主義──世界遺産登録と大山古墳立入り観察から
高木博志(京都大学名誉教授)
〈対談〉
「戦争が廊下の奥に立つ」時代の俳句のこと
池田澄子(俳人)×福島申二(記者)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇ガザ 狙われるジャーナリストたち──市民社会の抵抗はいま
川上泰徳(中東ジャーナリスト)
◇「忘れられた紛争国」ミャンマー──非常事態宣言解除の思惑
中西嘉宏(京都大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇本との出会い
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇言葉と言葉のかくれんぼ 第18回 夏の日記
斎藤真理子(翻訳家)
◇読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
長谷部恭男(早稲田大学)
◇本とチェック 第29回 広告コピーで学んだ日本語
金承福(クオン代表)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
アジアとアメリカのあいだ 第10回 分断と共存のはざま
望月優大(ライター)
この社会の社会学 第9回 血縁と家族のジレンマ
野辺陽子(日本女子大学)
隣のジャーナリズム 学校らしさを打破する
佐藤明彦(教育ジャーナリスト)
原発事故 検証の空白 第4回 プルーム汚染は解明されたか
添田孝史(科学ジャーナリスト)
あたふたと身支度 第13回 されどムダ毛
高橋純子(朝日新聞)
「戦後」解体 第7回 自分磨きと女性たち──女工・国婦・主婦の修養
大澤絢子(東北大学)
脳力のレッスン(279) 特別篇 戦後八〇年への沈思熟考(中篇)
寺島実郎
片山善博の「日本を診る」(191)傍から勝手に自民党の敗因を総括する
片山善博(大正大学)
気候再生のために 第37回 気候を保護する国家の義務──ICJ勧告的意見が示す到達点
高村ゆかり(東京大学)
ドキュメント激動の南北朝鮮 第338回(25・7~8)
編集部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○記憶をもった鏡 アーネスト・コール『House of Bondage』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○編集後記
○表紙画
土屋未久(表紙 灯る 2025、裏表紙 ひとり 2025)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+都井美穂子
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
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観光客が餌をあげすぎて、鹿たちはもう煎餅をたべない、と噂に聞いていたが、鹿の食欲は旺盛だった。帰省中、久々に奈良公園に出かけ、糞を踏まないよう注意しながら、涼を求め奈良国立博物館に入った。
「世界探検の旅 美と驚異の遺産」と題する特別展では子ども向けのワークシートが用意され、息子も「宝物」を探してクイズに答えようと歩き回っていた。あくまでゲーム感覚で、熱心に鑑賞するわけではない。ただ子どもを来場者として歓迎するメッセージは伝わり、我が物顔で過ごしていた。
もっとも多くの時間を過ごす学校に、子どもたちは「自分の居場所がある」、と思えているだろうか。特別支援学校教員の川上康則さんは、子どもたちを受けとめ、育ちにつきものの「想定外」「予想外」を楽しむよりも、管理し追い詰めてしまう教育現場のありようを解説している(特集2)。
「こうあるべき」を一つずつ手放していくことこそ変化への道との指摘は、学校以外にも通ずる。「会社の命令で何でもやる男性無限定正社員」モデル(特集1濱口桂一郎さん)の縛りは根強い。
育休明け以降、仕事が時間内には一向に片付かない。そもそも九時半~五時半で終わらない前提で働いてきたと改めて思い知った。体力的に長時間労働前提のチームにもうついていけない、やめるしかないかも、そんな葛藤が、友人との会話でも頻繁に話題にのぼる。育児・看病・介護など「ダブルケア」をひとりで担う人もいる。柳本文貴さんが指摘するとおり、既存の制度を持続させるためではなく、人間が働き続けられるよう、ケアをめぐる制度をもっとシンプルに使いやすくできないか。
夏の読書がふだんより充実したのは、最初に手に取ったアンゲラ・メルケルの自伝『自由』の吸引力のおかげだった。ウクライナ戦争前史にあたる二〇一四年クリミア併合前後の記述に特に厚みを感じるが、首相としての転換点は、二〇一五年、ハンガリーからドイツ・オーストリア国境にやってきた難民たちの入国を拒否しないと決めた時だった、と冒頭で書いている。
今年ドイツでは移民排斥を訴える極右政党が連邦議会第二党となり、日本でも、自治体首長らが差別を助長し、出入国在留管理庁は親子分離もともなう強制送還を加速させている。移民や難民、「外国人」をヘイトの標的にする動きがさらに強まる今、一〇年前の決断をどうとらえるべきか、複雑な気持ちになるが、当時、首相として残した言葉は今も力をもっている。
「ドイツ国民であるか……最終的に難民申請が承認される見通しがあるかどうかにかかわらず、私たちはすべての人に対して、その人の人間としての尊厳を重んじます」
帰省の終わり、人いきれで蒸す京都駅の新幹線乗り場で、観光客の人たちは日本に来て本当に楽しいんだろうか? と父に話しかけた。「自分が海外旅行した時はどうだった?」。その返事に、「あの人たち」、といつの間にか見方が固まっていたことに気づかされた。
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読者談話室・投稿募集
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投稿要項:800字以内
身近な話題や本誌へのご意見、ご感想などをお寄せください。住所・氏名・年齢・職業・電話番号を明記の上、「世界」編集部読者談話室係まで。掲載者には「世界」オリジナル図書カードを進呈。投稿原稿の返却、採否の連絡はいたしません。二重投稿はお断りします。また、文意を損なわない範囲で手を加えさせていただくことがあります。どうぞご了承ください。
WEB投稿:https://www.iwanami.co.jp/sekai_lounge/
メール投稿:sekai@iwanami.co.jp
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◇◆イベント情報 「戦後80年 その基点を確かめる」◆◇
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1913年の創業以来、岩波書店は出版物をとおして戦争と向き合ってきました。敗戦から80年を迎える2025年、岩波書店は「戦後の基点」に立ち返るとともに、人間とは、社会とは、平和とは何か、読者のみなさまと考えることができたらと願っております。
◇9月21日(日)18:30~
『体験者「ゼロ」時代の戦争責任論』 刊行記念
「今の戦争に向き合い、次の戦争を起こさないため――私たちの戦争責任論」
登壇者:宇田川幸大、金ヨンロン、永井玲衣
会場:UNITÉ(ユニテ)
お申込み・詳細はこちら
≫https://unite-books.shop/items/68a410a27beeeb742ff7166c
オンライン参加はこちら
≫https://unite-books.shop/items/68a412214adcc281e43c13cd
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる(岩波新書)
小川 公代
定価1100円
https://iwnm.jp/432071
強者が押しつける「正義」の物語ではなく、尊厳を踏みにじられた人々が紡ぐ〈小さな物語〉を求めて。
◎ブラック・カルチャー──大西洋を旅する声と音(岩波新書)
中村 隆之
定価1056円
https://iwnm.jp/432061
ブラック・カルチャーを貫く、アフリカ帰還という主題。音楽、文学、アートからその歴史と現在を旅する。
◎魂の教育──よい本は時を超えて人を動かす
森本 あんり
定価3190円
https://iwnm.jp/061669
『世界』好評連載「ボナエ・リテラエ」で紡がれた、実存をかけた神学遍歴の先の、ある救済の物語。
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
https://websekai.iwanami.co.jp/
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登録情報の編集・解除は,こちらよりお願いいたします.
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〒101-8002 東京都千代田区一ツ橋2-5-5
E-Mail: sekai@iwanami.co.jp
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X(旧Twitter): https://twitter.com/WEB_SEKAI
◇本誌のご注文はお近くの書店か小社営業部宛てにお願いいたします.
岩波書店営業部読者係(TEL:03-5210-4111,FAX:03-3263-6999)
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2025年9月8日発行
定価1045円(税込)
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┃特集 1┃働き続ける私たち
┗━━━╋…────────────────────────────────
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危うくてもスピードを落とせない自転車たちを救うこと
小山内園子(韓日翻訳者)
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伊藤将人(国際大学)
履歴書無価値
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┃特集 2┃居場所なき子ども
┗━━━╋…────────────────────────────────
地元で生きる若者たち──学校教育論の陥穽と日本社会の広がり
知念 渉(大阪大学)
教室が子どもの枷になるとき
川上康則(杉並区立済美養護学校)
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仲野由佳理(日本大学非常勤講師)
学校にも図書館がある──子どもの居場所に人と本を
木下通子(オフィスみちねこ代表)
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◆注目記事
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「主婦的なるもの」の政治性──参政党現象から考える
鈴木彩加(筑波大学)
参政党「真ん中」からの反革命
伊藤昌亮(成蹊大学)
香港 国安法体制下の五年──「中国式」への「和平演変」
倉田 徹(立教大学)
ポスト・アメリカ主導の国際秩序──「責任ある大国」としての日本へ
玉置敦彦(中央大学)
〈連載〉
午前1時のメディアタイムズ 第7回 エプスティーンと戦後の終わり
若林 恵(編集者/黒鳥社)
万博は実験のためにある──大阪・関西万博の建築を考える
市川紘司(建築史家)
〈連載〉
親愛なる身体へ 第2回 汝はチャイニーズなりや
李琴峰(作家)
〈スケッチ〉
海流に乗って
甫木元空(映画監督、ミュージシャン)
〈シリーズ夜店〉
外見への差別はどうやってなかったことにされてきたか
矢吹康夫(中京大学)
ドル支配体制は揺らぐか
黒田東彦(前日本銀行総裁)×河合正弘(東京大学名誉教授)
〈トランプ関税〉
日本のプランBとは──アメリカなき国際通商秩序へ
司会=須網隆夫(早稲田大学名誉教授)
川瀬剛志(上智大学)×前嶋和弘(上智大学)×大河内美紀(名古屋大学)
〈新連載〉
ハンセン病詩人 韓何雲の素顔 第1回 北のムンドゥンイ、ソウルで華麗な転身
吉川 凪(作家、翻訳家)
民の犠牲を許すな──進む「戦争準備」と受忍論
吉田敏浩(ジャーナリスト)
〈最終回〉
彼女たちの「戦後」 第12回 吉永小百合「理想」は死なない
山本昭宏(神戸市外国語大学)
「天皇陵」と民主主義──世界遺産登録と大山古墳立入り観察から
高木博志(京都大学名誉教授)
〈対談〉
「戦争が廊下の奥に立つ」時代の俳句のこと
池田澄子(俳人)×福島申二(記者)
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◇世界の潮
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◇ガザ 狙われるジャーナリストたち──市民社会の抵抗はいま
川上泰徳(中東ジャーナリスト)
◇「忘れられた紛争国」ミャンマー──非常事態宣言解除の思惑
中西嘉宏(京都大学)
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◇本との出会い
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◇言葉と言葉のかくれんぼ 第18回 夏の日記
斎藤真理子(翻訳家)
◇読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
長谷部恭男(早稲田大学)
◇本とチェック 第29回 広告コピーで学んだ日本語
金承福(クオン代表)
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●連載
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アジアとアメリカのあいだ 第10回 分断と共存のはざま
望月優大(ライター)
この社会の社会学 第9回 血縁と家族のジレンマ
野辺陽子(日本女子大学)
隣のジャーナリズム 学校らしさを打破する
佐藤明彦(教育ジャーナリスト)
原発事故 検証の空白 第4回 プルーム汚染は解明されたか
添田孝史(科学ジャーナリスト)
あたふたと身支度 第13回 されどムダ毛
高橋純子(朝日新聞)
「戦後」解体 第7回 自分磨きと女性たち──女工・国婦・主婦の修養
大澤絢子(東北大学)
脳力のレッスン(279) 特別篇 戦後八〇年への沈思熟考(中篇)
寺島実郎
片山善博の「日本を診る」(191)傍から勝手に自民党の敗因を総括する
片山善博(大正大学)
気候再生のために 第37回 気候を保護する国家の義務──ICJ勧告的意見が示す到達点
高村ゆかり(東京大学)
ドキュメント激動の南北朝鮮 第338回(25・7~8)
編集部
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○記憶をもった鏡 アーネスト・コール『House of Bondage』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○編集後記
○表紙画
土屋未久(表紙 灯る 2025、裏表紙 ひとり 2025)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+都井美穂子
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編集後記
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観光客が餌をあげすぎて、鹿たちはもう煎餅をたべない、と噂に聞いていたが、鹿の食欲は旺盛だった。帰省中、久々に奈良公園に出かけ、糞を踏まないよう注意しながら、涼を求め奈良国立博物館に入った。
「世界探検の旅 美と驚異の遺産」と題する特別展では子ども向けのワークシートが用意され、息子も「宝物」を探してクイズに答えようと歩き回っていた。あくまでゲーム感覚で、熱心に鑑賞するわけではない。ただ子どもを来場者として歓迎するメッセージは伝わり、我が物顔で過ごしていた。
もっとも多くの時間を過ごす学校に、子どもたちは「自分の居場所がある」、と思えているだろうか。特別支援学校教員の川上康則さんは、子どもたちを受けとめ、育ちにつきものの「想定外」「予想外」を楽しむよりも、管理し追い詰めてしまう教育現場のありようを解説している(特集2)。
「こうあるべき」を一つずつ手放していくことこそ変化への道との指摘は、学校以外にも通ずる。「会社の命令で何でもやる男性無限定正社員」モデル(特集1濱口桂一郎さん)の縛りは根強い。
育休明け以降、仕事が時間内には一向に片付かない。そもそも九時半~五時半で終わらない前提で働いてきたと改めて思い知った。体力的に長時間労働前提のチームにもうついていけない、やめるしかないかも、そんな葛藤が、友人との会話でも頻繁に話題にのぼる。育児・看病・介護など「ダブルケア」をひとりで担う人もいる。柳本文貴さんが指摘するとおり、既存の制度を持続させるためではなく、人間が働き続けられるよう、ケアをめぐる制度をもっとシンプルに使いやすくできないか。
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帰省の終わり、人いきれで蒸す京都駅の新幹線乗り場で、観光客の人たちは日本に来て本当に楽しいんだろうか? と父に話しかけた。「自分が海外旅行した時はどうだった?」。その返事に、「あの人たち」、といつの間にか見方が固まっていたことに気づかされた。
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読者談話室・投稿募集
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投稿要項:800字以内
身近な話題や本誌へのご意見、ご感想などをお寄せください。住所・氏名・年齢・職業・電話番号を明記の上、「世界」編集部読者談話室係まで。掲載者には「世界」オリジナル図書カードを進呈。投稿原稿の返却、採否の連絡はいたしません。二重投稿はお断りします。また、文意を損なわない範囲で手を加えさせていただくことがあります。どうぞご了承ください。
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◇9月21日(日)18:30~
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登壇者:宇田川幸大、金ヨンロン、永井玲衣
会場:UNITÉ(ユニテ)
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小川 公代
定価1100円
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中村 隆之
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森本 あんり
定価3190円
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