『世界』メールマガジン/2026年1月号【特集1: 創刊80年 それでも人間を信じる】 【特集2:ハラスメントの現在地】
2025/12/08 (Mon) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2026年1月号
■■ vol.#0127
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■『世界』2026年1月号(第1001号)好評発売中
2025年12月8日発行
定価1045円(税込)
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/読者談話室・投稿募集/イベント情報/『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集 1┃創刊80年 それでも人間を信じる
┗━━━╋…────────────────────────────────
人はなぜ真実に生きたいと思うのか
森本あんり(東京女子大学学長)
〈対談〉
ガザ・ジェノサイドに日本から応答する
金城美幸(名古屋学院大学)×根岸陽太(西南学院大学)
核開発と人間──ラッセル=アインシュタイン宣言に立ち戻る
高橋博子(奈良大学)
〈インタビュー〉
「ノー・キングス」デモの水脈──トランプのアメリカに抗う草の根運動
土屋和代(東京大学)
いいとこ取りはできない──水俣が私に問うもの
永野三智(相思社)
〈対談〉
劇薬とオールドメディア
安藤優子(ジャーナリスト)×林香里(東京大学)
いまこそ〈マジョリティの哲学〉を構想する
朱喜哲(大阪大学)
言語化万能というイデオロギー
大澤 聡(近畿大学)
応援歌としてのジャーナリズムへの提言
根津朝彦(立命館大学)
「人間の国」を求めて──作家・小田実の思想と行動
玄順恵(水墨画家)
┏━━━┓
┃特集 2┃ハラスメントの現在地
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈対談〉
「人を大事にする企業」しか生き残れない
圷由美子(弁護士)×木下潮音(弁護士)
神ハラに耐え続けて
辛酸なめ子(漫画家/コラムニスト)
ハラスメントを「翻訳」する──法の現在
滝原啓允(大東文化大学)
居直り市長──ルポ 南城市ハラスメント問題
南 彰(琉球新報)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
高市首相「台湾有事」発言 本当に考えなければならないこと
布施祐仁(ジャーナリスト)
「曖昧な弱者」とその敵意
伊藤昌亮(成蹊大学)
「身を切る」のは誰か──議員定数削減論を疑う
大山礼子(駒澤大学名誉教授)
何がマムダニをニューヨーク市長に押し上げたか
渡辺将人(慶應義塾大学)
緊迫のインド・パキスタン情勢──高まる“核報復”リスク
伊藤 融(防衛大学校)
〈スケッチ〉
あなたはあなたの血を見ることができるか
小林エリカ(作家、アーティスト)
〈シリーズ夜店〉
赤ちゃんの心を科学する
奥村優子(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
フェミニストが高市首相を歓迎できないこれだけの理由
上野千鶴子(東京大学名誉教授)
〈新連載〉
戦争国家アメリカの平和 第1回 戦争なくして平和なし
阿部幸大(筑波大学助教)
イミン、イミグレ、イミグランツ 第1回 移民の実存
ブレイディみかこ(ライター)
非人間とのレッスン 第1回 微生物を巡るテクノロジーとテクニック
ドミニク・チェン(早稲田大学)
この社会の社会学 第11回 「女と男はやはり違う」のつくられ方
平山 亮(大阪公立大学)
シリーズ ストーカー対策最前線──自治体にできること
内澤旬子(文筆家)
親愛なる身体へ 第5回 自分自身であるという苦難、あるいはアウティングの加害性
李琴峰(作家)
隣のジャーナリズム 日本のメディアは黙らない
山本豊彦(しんぶん赤旗日曜版編集長)
最後は教育なのか? 第13回 先生は楽しくもつらい──沼田拓弥さんに聞く
武田砂鉄(ライター)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇柏崎刈羽原発再稼働と「新潟県民の信」のゆくえ
佐々木寛(新潟国際情報大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇本との出会い
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇自由な読書、読書の自由 第1回 「読めないのは仕方ない」のか
二羽泰子(静岡県立大学)
◇読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
朴沙羅(京都大学)
◇言葉と言葉のかくれんぼ 第21回 苦い杏
チョン・スユン(翻訳家)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
アジアとアメリカのあいだ 第12回 このたった一つの家で
望月優大(ライター)
あたふたと身支度 第15回 政治リーダーの真贋
高橋純子(朝日新聞)
午前1時のメディアタイムズ 第10回 ロンドン・イズ・バーニング
若林 恵(編集者/黒鳥社)
気候再生のために 第39回 COP30 多国間協調への決意
高村ゆかり(東京大学)
脳力のレッスン(282)≪特別篇≫ 新しい「政治の季節」への予感(中篇)
寺島実郎
片山善博の「日本を診る」(194) 高市政権が引き継ぐべき石破前政権の遺産
片山善博(大正大学)
ドキュメント激動の南北朝鮮 第341回(25・10~11)
編集部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○記憶をもった鏡 西野嘉憲『熊を撃つ』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○編集後記
○表紙画
土屋未久(表紙 残光、裏表紙 ほどく)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○表紙デザイン
大原由衣
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+都井美穂子+國分 陽
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ドーナツ状の囲いに腰をかけ、内側のくぼみに流れる映像を覗き込む人。巨大なマット上で横になりくつろぐ親子……東京都現代美術館の「日常のコレオ(振付け)」は、見知らぬ人と同じ空間を共にする、その時間自体も展示の一部のように感じるものだった。
ゲバ棒が壁に何本も立てかけられた不穏な油絵(佐々木健さん画)の近くには、手術台のような装置とドローイングからなる大和楓さんの作品《仰向けで背負う》。装置に横たわると、抗議の座り込みから強制的に連れて行かれる際の姿勢になる。背後の壁面にひろがる横長のドローイングでは、辺野古新基地建設反対運動で、仰向けにされてなお排除に抗う人たちと機動隊員とが、水平方向に長い列をなすように描かれている。背負われ、背負う姿勢の連なりは、基地負担の不条理と同時に、人々が確かに残してきた足跡を浮かび上がらせる。
「私たちは身体をもった人間だから」。一一月、台湾有事をめぐる高市首相発言を受け、ある憲法学者にお話をうかがうなか、ここでも生身の身体に根ざした思考に出会った。
安保法制の違憲性が今、正面から問われないのはなぜなのか。歯止めのない軍拡は、安全保障が憲法論と切り離して扱われるようになったことの帰結である――この一〇年の変化についての分析に頷(うなず)きながら、長く頭にある問いをつい漏らしてしまった。
戦争を経て生まれた憲法は、身をもってその惨禍を知る人がいなくなれば碇(いかり)を失うのでしょうか。質問への答えは、身体の自由――自分の身体が決しておかされてはならないという基盤から、戦争に抗い、また戦禍に苛まれる人々の苦難を他人事としない姿勢が生まれる、ということだった。
今号「ガザ・ジェノサイドに日本から応答する」と題した対談では、金城美幸さんが、パレスチナ問題を植民地主義の文脈から理解することは、日本がたどってきた道を振り返ることでもあると述べている。
吉野源三郎は、敗戦、そして「世界」創刊から時を経た一九六〇年代半ば、新聞で目にしたベトナム戦争の写真から考えたことを長いエッセイにまとめている(『人間を信じる』岩波現代文庫所収)。銃を携え小川の中に立つアメリカ兵。その後方に、赤ちゃんを抱いた母親ともう一人の小さな娘が、銃弾を逃れようと水の中にしゃがんでいる。この親子の感じている現実の重さ、これをもし秤(はかり)の一方の皿にのせ、もう一方の皿に、私たちの目にふれる小説や論文をのせてみたらどう傾くか、と。
同時代の問題をみずから引き受ける。八〇年前に編集長だった吉野さんの姿勢を、今いっそう切実なものに感じる。
今号より阿部幸大さん、ドミニク・チェンさん、ブレイディみかこさんの連載、読書バリアフリーをめぐる「自由な読書、読書の自由」(初回執筆者は二羽泰子さん)が始まります。新執筆陣の「読んで、観て、聴いて」(今号は朴沙羅さん)もぜひお読みください。
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読者談話室・投稿募集
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投稿要項:800字以内
身近な話題や本誌へのご意見、ご感想などをお寄せください。住所・氏名・年齢・職業・電話番号を明記の上、「世界」編集部読者談話室係まで。掲載者には「世界」オリジナル図書カードを進呈。投稿原稿の返却、採否の連絡はいたしません。二重投稿はお断りします。また、文意を損なわない範囲で手を加えさせていただくことがあります。どうぞご了承ください。
WEB投稿:https://www.iwanami.co.jp/sekai_lounge/
メール投稿:sekai@iwanami.co.jp
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる(岩波新書)
小川 公代
定価1100円
https://iwnm.jp/432071
強者が押しつける「正義」の物語ではなく、尊厳を踏みにじられた人々が紡ぐ〈小さな物語〉を求めて。
◎ブラック・カルチャー──大西洋を旅する声と音(岩波新書)
中村 隆之
定価1056円
https://iwnm.jp/432061
ブラック・カルチャーを貫く、アフリカ帰還という主題。音楽、文学、アートからその歴史と現在を旅する。
◎魂の教育──よい本は時を超えて人を動かす
森本 あんり
定価3190円
https://iwnm.jp/061669
『世界』好評連載「ボナエ・リテラエ」で紡がれた、実存をかけた神学遍歴の先の、ある救済の物語。
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
https://websekai.iwanami.co.jp/
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2025年12月8日発行
定価1045円(税込)
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/読者談話室・投稿募集/イベント情報/『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
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┃特集 1┃創刊80年 それでも人間を信じる
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人はなぜ真実に生きたいと思うのか
森本あんり(東京女子大学学長)
〈対談〉
ガザ・ジェノサイドに日本から応答する
金城美幸(名古屋学院大学)×根岸陽太(西南学院大学)
核開発と人間──ラッセル=アインシュタイン宣言に立ち戻る
高橋博子(奈良大学)
〈インタビュー〉
「ノー・キングス」デモの水脈──トランプのアメリカに抗う草の根運動
土屋和代(東京大学)
いいとこ取りはできない──水俣が私に問うもの
永野三智(相思社)
〈対談〉
劇薬とオールドメディア
安藤優子(ジャーナリスト)×林香里(東京大学)
いまこそ〈マジョリティの哲学〉を構想する
朱喜哲(大阪大学)
言語化万能というイデオロギー
大澤 聡(近畿大学)
応援歌としてのジャーナリズムへの提言
根津朝彦(立命館大学)
「人間の国」を求めて──作家・小田実の思想と行動
玄順恵(水墨画家)
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┃特集 2┃ハラスメントの現在地
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈対談〉
「人を大事にする企業」しか生き残れない
圷由美子(弁護士)×木下潮音(弁護士)
神ハラに耐え続けて
辛酸なめ子(漫画家/コラムニスト)
ハラスメントを「翻訳」する──法の現在
滝原啓允(大東文化大学)
居直り市長──ルポ 南城市ハラスメント問題
南 彰(琉球新報)
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◆注目記事
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高市首相「台湾有事」発言 本当に考えなければならないこと
布施祐仁(ジャーナリスト)
「曖昧な弱者」とその敵意
伊藤昌亮(成蹊大学)
「身を切る」のは誰か──議員定数削減論を疑う
大山礼子(駒澤大学名誉教授)
何がマムダニをニューヨーク市長に押し上げたか
渡辺将人(慶應義塾大学)
緊迫のインド・パキスタン情勢──高まる“核報復”リスク
伊藤 融(防衛大学校)
〈スケッチ〉
あなたはあなたの血を見ることができるか
小林エリカ(作家、アーティスト)
〈シリーズ夜店〉
赤ちゃんの心を科学する
奥村優子(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
フェミニストが高市首相を歓迎できないこれだけの理由
上野千鶴子(東京大学名誉教授)
〈新連載〉
戦争国家アメリカの平和 第1回 戦争なくして平和なし
阿部幸大(筑波大学助教)
イミン、イミグレ、イミグランツ 第1回 移民の実存
ブレイディみかこ(ライター)
非人間とのレッスン 第1回 微生物を巡るテクノロジーとテクニック
ドミニク・チェン(早稲田大学)
この社会の社会学 第11回 「女と男はやはり違う」のつくられ方
平山 亮(大阪公立大学)
シリーズ ストーカー対策最前線──自治体にできること
内澤旬子(文筆家)
親愛なる身体へ 第5回 自分自身であるという苦難、あるいはアウティングの加害性
李琴峰(作家)
隣のジャーナリズム 日本のメディアは黙らない
山本豊彦(しんぶん赤旗日曜版編集長)
最後は教育なのか? 第13回 先生は楽しくもつらい──沼田拓弥さんに聞く
武田砂鉄(ライター)
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◇世界の潮
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◇柏崎刈羽原発再稼働と「新潟県民の信」のゆくえ
佐々木寛(新潟国際情報大学)
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◇本との出会い
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◇自由な読書、読書の自由 第1回 「読めないのは仕方ない」のか
二羽泰子(静岡県立大学)
◇読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
朴沙羅(京都大学)
◇言葉と言葉のかくれんぼ 第21回 苦い杏
チョン・スユン(翻訳家)
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●連載
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アジアとアメリカのあいだ 第12回 このたった一つの家で
望月優大(ライター)
あたふたと身支度 第15回 政治リーダーの真贋
高橋純子(朝日新聞)
午前1時のメディアタイムズ 第10回 ロンドン・イズ・バーニング
若林 恵(編集者/黒鳥社)
気候再生のために 第39回 COP30 多国間協調への決意
高村ゆかり(東京大学)
脳力のレッスン(282)≪特別篇≫ 新しい「政治の季節」への予感(中篇)
寺島実郎
片山善博の「日本を診る」(194) 高市政権が引き継ぐべき石破前政権の遺産
片山善博(大正大学)
ドキュメント激動の南北朝鮮 第341回(25・10~11)
編集部
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○記憶をもった鏡 西野嘉憲『熊を撃つ』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○編集後記
○表紙画
土屋未久(表紙 残光、裏表紙 ほどく)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○表紙デザイン
大原由衣
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+都井美穂子+國分 陽
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編集後記
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ドーナツ状の囲いに腰をかけ、内側のくぼみに流れる映像を覗き込む人。巨大なマット上で横になりくつろぐ親子……東京都現代美術館の「日常のコレオ(振付け)」は、見知らぬ人と同じ空間を共にする、その時間自体も展示の一部のように感じるものだった。
ゲバ棒が壁に何本も立てかけられた不穏な油絵(佐々木健さん画)の近くには、手術台のような装置とドローイングからなる大和楓さんの作品《仰向けで背負う》。装置に横たわると、抗議の座り込みから強制的に連れて行かれる際の姿勢になる。背後の壁面にひろがる横長のドローイングでは、辺野古新基地建設反対運動で、仰向けにされてなお排除に抗う人たちと機動隊員とが、水平方向に長い列をなすように描かれている。背負われ、背負う姿勢の連なりは、基地負担の不条理と同時に、人々が確かに残してきた足跡を浮かび上がらせる。
「私たちは身体をもった人間だから」。一一月、台湾有事をめぐる高市首相発言を受け、ある憲法学者にお話をうかがうなか、ここでも生身の身体に根ざした思考に出会った。
安保法制の違憲性が今、正面から問われないのはなぜなのか。歯止めのない軍拡は、安全保障が憲法論と切り離して扱われるようになったことの帰結である――この一〇年の変化についての分析に頷(うなず)きながら、長く頭にある問いをつい漏らしてしまった。
戦争を経て生まれた憲法は、身をもってその惨禍を知る人がいなくなれば碇(いかり)を失うのでしょうか。質問への答えは、身体の自由――自分の身体が決しておかされてはならないという基盤から、戦争に抗い、また戦禍に苛まれる人々の苦難を他人事としない姿勢が生まれる、ということだった。
今号「ガザ・ジェノサイドに日本から応答する」と題した対談では、金城美幸さんが、パレスチナ問題を植民地主義の文脈から理解することは、日本がたどってきた道を振り返ることでもあると述べている。
吉野源三郎は、敗戦、そして「世界」創刊から時を経た一九六〇年代半ば、新聞で目にしたベトナム戦争の写真から考えたことを長いエッセイにまとめている(『人間を信じる』岩波現代文庫所収)。銃を携え小川の中に立つアメリカ兵。その後方に、赤ちゃんを抱いた母親ともう一人の小さな娘が、銃弾を逃れようと水の中にしゃがんでいる。この親子の感じている現実の重さ、これをもし秤(はかり)の一方の皿にのせ、もう一方の皿に、私たちの目にふれる小説や論文をのせてみたらどう傾くか、と。
同時代の問題をみずから引き受ける。八〇年前に編集長だった吉野さんの姿勢を、今いっそう切実なものに感じる。
今号より阿部幸大さん、ドミニク・チェンさん、ブレイディみかこさんの連載、読書バリアフリーをめぐる「自由な読書、読書の自由」(初回執筆者は二羽泰子さん)が始まります。新執筆陣の「読んで、観て、聴いて」(今号は朴沙羅さん)もぜひお読みください。
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読者談話室・投稿募集
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投稿要項:800字以内
身近な話題や本誌へのご意見、ご感想などをお寄せください。住所・氏名・年齢・職業・電話番号を明記の上、「世界」編集部読者談話室係まで。掲載者には「世界」オリジナル図書カードを進呈。投稿原稿の返却、採否の連絡はいたしません。二重投稿はお断りします。また、文意を損なわない範囲で手を加えさせていただくことがあります。どうぞご了承ください。
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メール投稿:sekai@iwanami.co.jp
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◎ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる(岩波新書)
小川 公代
定価1100円
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強者が押しつける「正義」の物語ではなく、尊厳を踏みにじられた人々が紡ぐ〈小さな物語〉を求めて。
◎ブラック・カルチャー──大西洋を旅する声と音(岩波新書)
中村 隆之
定価1056円
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ブラック・カルチャーを貫く、アフリカ帰還という主題。音楽、文学、アートからその歴史と現在を旅する。
◎魂の教育──よい本は時を超えて人を動かす
森本 あんり
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