『世界』メールマガジン/2024年5月号【特集1:地方対中央】【特集2:暴力の起源──植民地主義を問う】
2024/04/08 (Mon) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2024年5月号
■■ vol.#0107
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■『世界』2024年5月号(第981号)好評発売中
2024年4月8日発行
定価1045円(税込)
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集 1┃地方対中央
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈対談〉
それでも沖縄は声をあげ続ける
玉城デニー(沖縄県知事)×片山善博(大正大学特任教授)
田舎党宣言
藤原辰史(京都大学)
〈対談〉
人口減少時代の課題がひらく未来
田中輝美(島根県立大学)×永岡里菜(株式会社おてつたび)
分権型社会への遠い途
金井利之(東京大学)
ふるさと納税という幻想
土山希美枝(法政大学)
生きやすさと生きづらさのあいだ──「自殺希少地域」をめぐる旅
森川すいめい(精神科医)
┏━━━┓
┃特集 2┃暴力の起源──植民地主義を問う
┗━━━╋…────────────────────────────────
ガザ攻撃はシオニズムに一貫した民族浄化政策である
早尾貴紀(東京経済大学)
〈詩〉
現在のためのプロローグ──ガザ
ディオンヌ・ブランド(詩人)、訳・解説=ハーン小路恭子
西アフリカのクーデターは約一世紀続くフランス支配の終わりを告げている
アシル・ンベンベ(思想家)、訳・解説=中村隆之
沖縄から先住民族の権利を求めて
親川志奈子(沖縄大学非常勤講師)
反戦・非暴力思想と脱植民地化の失敗
阿部小涼(琉球大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈対談〉
事件に「飢え」た公安警察と司法の歪み
高田 剛(弁護士)×青木 理(ジャーナリスト)
さらば! 異次元の金融政策──植田日銀の「解体作業」を追う
西野智彦(ジャーナリスト)
「ALS嘱託殺人」と隠蔽されたもうひとつの事件 前編
渡邉 琢(介助士)
女性の過労死はなぜ見えないのか
竹信三恵子(ジャーナリスト)
〈スケッチ〉
「喪」
三宅 唱(映画監督)
〈シリーズ 夜店〉
就職氷河期世代の現在とこれから
近藤絢子(東京大学)
ロスジェネとは誰のことか
浅野智彦(東京学芸大学)
対談
「負の歴史」をなぜ教えるか──横浜での朝鮮人・中国人虐殺事件から考える
後藤 周(横浜市立中学校元教員)×平井美津子(吹田市立中学校教員)、聞き手=木村元彦(ジャーナリスト)
ルポ
ストーカー加害者治療は可能か 後編
内澤旬子(文筆家)
ストーカー行為規制を巡る日本と台湾の対話
深町晋也(立教大学)
能登半島地震 「人命救助の遅れ」は本当に「仕方なかった」のか?
奥山俊宏(ジャーナリスト)
いまさら「アメリカの民主主義」を? 「変わらないアメリカ」を?
石神圭子(福岡女子大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇プーチン再選と個人支配のゆくえ
大串 敦(慶應義塾大学)
◇NTT法改正の論点──通信のユニバーサルサービスを中心に
林 秀弥(名古屋大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇本との出会い
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
新城和博(編集者)
本とチェック 第12回 朴景利先生の『土地』
金承福(クオン代表)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈対談〉
最後は教育なのか? 第3回 西倉実季さんに聞く
武田砂鉄(ライター)
「拉致問題」風化に抗して 第9回 日本人被害者への思想教育(その2)
蓮池 薫(新潟産業大学)
〈往復エッセイ〉
言葉と言葉のかくれんぼ 第2回 金星旅館のころ
斎藤真理子(翻訳家)
〈隣のジャーナリズム〉
二五〇歳宇宙の旅──不老長寿とエイジズム
長田杏奈(ライター)
●ボナエ・リテラエ──私の読書遍歴 第18回 『光の子と闇の子』
森本あんり(東京女子大学長)
●「変わらない」を変える 第12回 忘れられた国会改革 ジェンダーへの配慮が急務
三浦まり(上智大学)
●脳力のレッスン(263) 一九九四シンドロームを超えて
寺島実郎
●島に帰る 第4回 伊江島写真小史
榎本 空(エスノグラファー)
●ルポ 軍事優先社会 第2回 自衛隊に自治体が若者名簿を提供
吉田敏浩(ジャーナリスト)
●滅びゆく日本、再生への道 第7回 教育・子育て・災害対応
星 浩(ジャーナリスト)
●香港からの通信 第21回 ガラスのようなチャイナ
リュウ・イケン
●気候再生のために 第24回 複合的な環境危機にいかに対応するか
高村ゆかり(東京大学)
●ドキュメント激動の南北朝鮮 第321回(24・2~3)
編集部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○記憶をもった鏡─沼田 学『築地魚河岸ブルース』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○編集後記
○表紙木版画─ 久保舎己(麦 1981、裏表紙 ふみにじられし顔 1980)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+安賀裕子
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
薄曇りで寒い日の多かった三月、用事が重なりあちこちに旅に出た。
家族と訪れた山梨県立美術館では、所蔵されているミレーのコレクションをみた。本誌キャラクターは種まくクマだが、「種をまく人」の身体には、イメージと異なり不穏な力が漲っている。一九世紀半ばのフランスでは、農民が働く姿を正面から描いたこの絵に批判も沸き起こったという。
上旬訪れた沖縄では、前日朝から米海軍ミサイル駆逐艦が石垣港に寄港し、港湾労働組合がストを決行したと報じられていた。その日夜、元山仁士郎さんらが企画した那覇でのイベントには、石垣市での住民投票をめぐる訴訟の原告三人の姿があった。
石垣では二〇二三年に陸上自衛隊の駐屯地が開設、ミサイルや弾薬が搬入された。遡って一八年、自衛隊配備を問う住民投票を行なおうと約一万四〇〇〇筆の署名を集めたにもかかわらず、市議会は実施の条例案を否決。市長には住民投票実施の義務がある――そう求めた裁判だ。二一年に議会は、住民投票に関する市自治基本条例の条項自体を削除している。原告の農家、川満起史さんは、駐屯地ができ夜もずっと明るくなったと語っていた。駐屯地が島の景色を変える。駆逐艦が民間港に寄港する。そうした日常が続いている。
「いろんな人がいる」。日本の「自殺希少地域」に暮らす人たちは、自分たちの街のことをこう話すという(特集1 森川すいめいさん)。同じような人たちだけで集まっても問題は解決しない、会話から新しい発見が生まれる、と。
私たちの周りに、本当にいろんな人がいるだろうか。車椅子ユーザーの女性が、映画鑑賞後、劇場スタッフに段差や人員の問題から今後はよそで観てもらいたいといわれた旨をXに稿すると、リプライには、一人で映画館に行った女性を非難する言葉が溢れた。今号、渡邉琢さんのルポでは、京都でおきたALS患者嘱託殺人事件の被告人である医師らの会話が記録されている。その言葉のトーンは自分のスマホとも地続きで、障害や年齢による差別(長田杏奈さん)の浸透に驚かされる。
三月の旅の締めくくりは信州だった。創業者岩波茂雄ゆかりの風樹文庫を拠点に活動するふうじゅの会の方に諏訪大社も案内していただいたが、訊けば諏訪藩の古文書をグループで読んでいるという。三〇〇年前の土地の歴史を昨日のことのように語り、県の文化行政にもくわしい。誰が地域をつくっているか、地の塩という言葉がうかんだ。
元中学校教員の後藤周さんは、地元の横浜市で調査を重ね、生徒たちがよく知る地名も挙げながら、関東大震災後の朝鮮人虐殺について社会の時間で伝えてきた。隠され、文字にされなかった「負の記憶」を掘り起こしてきた人たちの足跡からは、植民地主義が遠い戦地の話でも抽象的なものでもなく、ごく身近な歴史につながっていることがわかる(特集2)。地域をたずね、会話すること。土地の歴史に目をこらし、埋もれた声に耳を傾けること。
旅はまだ始まったばかりだ。
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~~『世界』臨時増刊号のご案内~~
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争――世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
https://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
https://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
https://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
https://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
https://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
https://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11
吉田千亜
定価1,100円
https://iwnm.jp/603333
死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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◇本誌のご注文はお近くの書店か小社営業部宛てにお願いいたします.
岩波書店営業部読者係(TEL:03-5210-4111,FAX:03-3263-6999)
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■『世界』2024年5月号(第981号)好評発売中
2024年4月8日発行
定価1045円(税込)
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
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┃特集 1┃地方対中央
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈対談〉
それでも沖縄は声をあげ続ける
玉城デニー(沖縄県知事)×片山善博(大正大学特任教授)
田舎党宣言
藤原辰史(京都大学)
〈対談〉
人口減少時代の課題がひらく未来
田中輝美(島根県立大学)×永岡里菜(株式会社おてつたび)
分権型社会への遠い途
金井利之(東京大学)
ふるさと納税という幻想
土山希美枝(法政大学)
生きやすさと生きづらさのあいだ──「自殺希少地域」をめぐる旅
森川すいめい(精神科医)
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┃特集 2┃暴力の起源──植民地主義を問う
┗━━━╋…────────────────────────────────
ガザ攻撃はシオニズムに一貫した民族浄化政策である
早尾貴紀(東京経済大学)
〈詩〉
現在のためのプロローグ──ガザ
ディオンヌ・ブランド(詩人)、訳・解説=ハーン小路恭子
西アフリカのクーデターは約一世紀続くフランス支配の終わりを告げている
アシル・ンベンベ(思想家)、訳・解説=中村隆之
沖縄から先住民族の権利を求めて
親川志奈子(沖縄大学非常勤講師)
反戦・非暴力思想と脱植民地化の失敗
阿部小涼(琉球大学)
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◆注目記事
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〈対談〉
事件に「飢え」た公安警察と司法の歪み
高田 剛(弁護士)×青木 理(ジャーナリスト)
さらば! 異次元の金融政策──植田日銀の「解体作業」を追う
西野智彦(ジャーナリスト)
「ALS嘱託殺人」と隠蔽されたもうひとつの事件 前編
渡邉 琢(介助士)
女性の過労死はなぜ見えないのか
竹信三恵子(ジャーナリスト)
〈スケッチ〉
「喪」
三宅 唱(映画監督)
〈シリーズ 夜店〉
就職氷河期世代の現在とこれから
近藤絢子(東京大学)
ロスジェネとは誰のことか
浅野智彦(東京学芸大学)
対談
「負の歴史」をなぜ教えるか──横浜での朝鮮人・中国人虐殺事件から考える
後藤 周(横浜市立中学校元教員)×平井美津子(吹田市立中学校教員)、聞き手=木村元彦(ジャーナリスト)
ルポ
ストーカー加害者治療は可能か 後編
内澤旬子(文筆家)
ストーカー行為規制を巡る日本と台湾の対話
深町晋也(立教大学)
能登半島地震 「人命救助の遅れ」は本当に「仕方なかった」のか?
奥山俊宏(ジャーナリスト)
いまさら「アメリカの民主主義」を? 「変わらないアメリカ」を?
石神圭子(福岡女子大学)
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◇世界の潮
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◇プーチン再選と個人支配のゆくえ
大串 敦(慶應義塾大学)
◇NTT法改正の論点──通信のユニバーサルサービスを中心に
林 秀弥(名古屋大学)
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◇本との出会い
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読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
新城和博(編集者)
本とチェック 第12回 朴景利先生の『土地』
金承福(クオン代表)
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●連載
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〈対談〉
最後は教育なのか? 第3回 西倉実季さんに聞く
武田砂鉄(ライター)
「拉致問題」風化に抗して 第9回 日本人被害者への思想教育(その2)
蓮池 薫(新潟産業大学)
〈往復エッセイ〉
言葉と言葉のかくれんぼ 第2回 金星旅館のころ
斎藤真理子(翻訳家)
〈隣のジャーナリズム〉
二五〇歳宇宙の旅──不老長寿とエイジズム
長田杏奈(ライター)
●ボナエ・リテラエ──私の読書遍歴 第18回 『光の子と闇の子』
森本あんり(東京女子大学長)
●「変わらない」を変える 第12回 忘れられた国会改革 ジェンダーへの配慮が急務
三浦まり(上智大学)
●脳力のレッスン(263) 一九九四シンドロームを超えて
寺島実郎
●島に帰る 第4回 伊江島写真小史
榎本 空(エスノグラファー)
●ルポ 軍事優先社会 第2回 自衛隊に自治体が若者名簿を提供
吉田敏浩(ジャーナリスト)
●滅びゆく日本、再生への道 第7回 教育・子育て・災害対応
星 浩(ジャーナリスト)
●香港からの通信 第21回 ガラスのようなチャイナ
リュウ・イケン
●気候再生のために 第24回 複合的な環境危機にいかに対応するか
高村ゆかり(東京大学)
●ドキュメント激動の南北朝鮮 第321回(24・2~3)
編集部
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○記憶をもった鏡─沼田 学『築地魚河岸ブルース』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○編集後記
○表紙木版画─ 久保舎己(麦 1981、裏表紙 ふみにじられし顔 1980)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+安賀裕子
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編集後記
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薄曇りで寒い日の多かった三月、用事が重なりあちこちに旅に出た。
家族と訪れた山梨県立美術館では、所蔵されているミレーのコレクションをみた。本誌キャラクターは種まくクマだが、「種をまく人」の身体には、イメージと異なり不穏な力が漲っている。一九世紀半ばのフランスでは、農民が働く姿を正面から描いたこの絵に批判も沸き起こったという。
上旬訪れた沖縄では、前日朝から米海軍ミサイル駆逐艦が石垣港に寄港し、港湾労働組合がストを決行したと報じられていた。その日夜、元山仁士郎さんらが企画した那覇でのイベントには、石垣市での住民投票をめぐる訴訟の原告三人の姿があった。
石垣では二〇二三年に陸上自衛隊の駐屯地が開設、ミサイルや弾薬が搬入された。遡って一八年、自衛隊配備を問う住民投票を行なおうと約一万四〇〇〇筆の署名を集めたにもかかわらず、市議会は実施の条例案を否決。市長には住民投票実施の義務がある――そう求めた裁判だ。二一年に議会は、住民投票に関する市自治基本条例の条項自体を削除している。原告の農家、川満起史さんは、駐屯地ができ夜もずっと明るくなったと語っていた。駐屯地が島の景色を変える。駆逐艦が民間港に寄港する。そうした日常が続いている。
「いろんな人がいる」。日本の「自殺希少地域」に暮らす人たちは、自分たちの街のことをこう話すという(特集1 森川すいめいさん)。同じような人たちだけで集まっても問題は解決しない、会話から新しい発見が生まれる、と。
私たちの周りに、本当にいろんな人がいるだろうか。車椅子ユーザーの女性が、映画鑑賞後、劇場スタッフに段差や人員の問題から今後はよそで観てもらいたいといわれた旨をXに稿すると、リプライには、一人で映画館に行った女性を非難する言葉が溢れた。今号、渡邉琢さんのルポでは、京都でおきたALS患者嘱託殺人事件の被告人である医師らの会話が記録されている。その言葉のトーンは自分のスマホとも地続きで、障害や年齢による差別(長田杏奈さん)の浸透に驚かされる。
三月の旅の締めくくりは信州だった。創業者岩波茂雄ゆかりの風樹文庫を拠点に活動するふうじゅの会の方に諏訪大社も案内していただいたが、訊けば諏訪藩の古文書をグループで読んでいるという。三〇〇年前の土地の歴史を昨日のことのように語り、県の文化行政にもくわしい。誰が地域をつくっているか、地の塩という言葉がうかんだ。
元中学校教員の後藤周さんは、地元の横浜市で調査を重ね、生徒たちがよく知る地名も挙げながら、関東大震災後の朝鮮人虐殺について社会の時間で伝えてきた。隠され、文字にされなかった「負の記憶」を掘り起こしてきた人たちの足跡からは、植民地主義が遠い戦地の話でも抽象的なものでもなく、ごく身近な歴史につながっていることがわかる(特集2)。地域をたずね、会話すること。土地の歴史に目をこらし、埋もれた声に耳を傾けること。
旅はまだ始まったばかりだ。
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争――世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
https://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
https://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
https://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
https://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
https://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
https://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11
吉田千亜
定価1,100円
https://iwnm.jp/603333
死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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