『世界』メールマガジン/2017年10月号【特集:「一強」は崩壊したのか】
2017/09/08 (Fri) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2017年10月号
■■ vol.#0028
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■『世界』2017年10月号(第900号)好評発売中
2017年9月8日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/世界の潮/注目記事/連載/グラビア/編集後記/
『世界』から生まれた本
┏━━━┓
┃ 特集 ┃「一強」は崩壊したのか
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈対談〉
政党政治の底上げは可能か――揺れる安倍政権と野党の活路
中北浩爾(一橋大学)×中野晃一(上智大学)
〈自民党とは何か〉
保守政党よ、「中庸の精神」たれ――「ポスト安倍」時代への提言
園田耕司(朝日新聞)
〈「女性活躍」の裏側〉
女性の「利用」と「男性性の回復」――安倍内閣と民進党のジェンダー感度
辻 由希(東海大学)
〈成長より社会の扶養力を〉
アベノミクス「景気拡大」の死角――統計を見て、「人」を見ない経済政策
高橋伸彰(立命館大学)
〈そして日本は?〉
ネオ・リベラリズムの終焉?――コービン、サンダース、メランションから見る政治変動
田端博邦(東京大学名誉教授)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇「ロシア・ゲート」があぶり出すアメリカ社会
石郷岡 建
◇制憲議会を開設、危機打開図るベネズエラ政権
伊高浩昭
◇創設半世紀を迎えたASEAN
柴田直治
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈座談会〉
報道の「沈黙」が社会を壊す――プロフェッショナリズムの不在について
田島泰彦(上智大学)×服部孝章(立教大学)×美浦克教(記者)
〈ルポ〉
虚像を捨てて――不戦を選ぶ元米兵たち
大矢英代(ビデオジャーナリスト)
〈インタビュー〉
「天皇観の相剋」と現代――武田清子氏に聞く
聞き手=阿部菜穂子(ジャーナリスト)
〈考古学からの問い〉
世界遺産候補「百舌鳥・古市古墳群」の天皇陵古墳名称を問う
今尾文昭(関西大学非常勤講師)
〈「バニラエア」問題を考える〉
「困らせている」社会を変える――障害者差別解消法が求めているもの
飯野由里子(東京大学)
〈ルポ〉
歴史的だが「当たり前」の一歩――朝鮮学校無償化訴訟大阪判決の意味
中村一成(ジャーナリスト)
〈法の精神を生かすには〉
参加型アセスへの道――環境アセスメント法二〇年(下)
杉本裕明(ジャーナリスト)
〈海岸と人間〉
東日本大震災の災害復旧事業における防潮堤問題を考える
清野聡子(九州大学)
防潮堤、このままでいいですか?――「海といきる」人々の思いと復興行政
加藤裕則(朝日新聞)
〈対談〉
吉田調書を超えて 第3回 原発事故と自衛隊(下)
七沢潔(NHK)×中村勝美(元陸上自衛隊研究本部特殊武器研究室長)
〈事故経過の解明〉
2号機はなぜ破損したのか――解き明かされる謎
田辺文也(社会技術システム安全研究所)
〈核禁条約への筋道〉
地雷から核兵器禁止へ――人道的軍縮の進化
目加田説子(中央大学)
〈ICBM完成?〉
米朝危機の現段階――抑止関係は成立するか
井上智太郎(共同通信)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●【新連載】〈周縁〉の「小さなアメリカ」
第1回:「辺境」の先住民――鎌田 遵との対話
中村 寛(多摩美術大学)
●小説 アパレル興亡【第2回】
黒木 亮(作家)
●それぞれの出ウチナー記 海を越えるアイデンティティー【第2話】
“夢の跡”に生まれた戦後村計画
三山喬(ジャーナリスト)
●日本軍「慰安婦」問題解決運動史【第8回・最終回】
李娜榮(韓国・中央大学)、訳=梁澄子
●海の底から【第11回】
金石範(作家)
●脳力のレッスン【186】特別篇
二〇一七年夏への思索――内外の退嬰の中で
寺島実郎
●片山善博の「日本を診る」【第95回】
官制デフレが罷り通る
片山善博(早稲田大学)
●イングリッシュ・レッスン――お試し難民流英語学習伝【16】――ぺらぺらになりたい
中村和恵(明治大学)
●メディア批評【第118回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●中国新建築文化論【第6回】
中国人建築家の近現代史――四つの世代とその先
市川紘司(東京藝術大学)
●沖縄(シマ)という窓――いつか落ちる危険機種 誰が責任を取るのか
松元 剛(琉球新報)
●私的小豆島名所【その28】
内澤旬子(イラストルポライター)
●神を捨て、神になった男 確定死刑囚・袴田巖【第8回】
――「弟の無実を信じていた」
青柳雄介(ジャーナリスト)
●原発月報【第29回】
17・06~08
福島原発事故記録チーム
●世界論壇月評
朱建栄・竹田いさみ・吉田文彦・石郷岡建
●ドキュメント激動の南北朝鮮(242)
編集部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○グラビア
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○グラビア――公募作品160
重重 消せない痕跡――アジアの日本軍性奴隷被害女性たち
安世鴻(写真家)
○A SHOT OF THE WORLD
○表紙の言葉
鈴木邦弘(写真家)
○表紙写真= 鈴木邦弘 デザイン= 赤崎正一+ 佐野裕哉
○グラビアについて(公募規定)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
日本では報道が少な目だった印象があるが、八月下旬、アメリカ南
部テキサス州を中心に、巨大ハリケーン「ハービー」による豪雨で壊
滅的な被害が出た。ヒューストンでは全ての高速道路が水没したとい
う。多数の人が逃げ遅れた二〇〇五年の「カトリーナ」の猛威を想起
させる。
テキサス州は全米有数の石油化学産業の集積地。多くの製油施設が
閉鎖され、今後、燃料不足も懸念されるというが、さらに心配なのは、
石油や化学物質による二次汚染だ。二〇一〇年のメキシコ湾原油流出
事故を思い出す。大手エクソンモービルもテキサス州にある国内で二
番目に大きな石油精製施設の稼働を停止したというが、化石燃料会社
が温暖化・気候変動の影響で自らの操業に支障をきたすのなら、まさ
にブーメランだ。
……とここまで書いてきて、先月号の続きで恐縮だが、八月三〇日
刊行のN.クライン『これがすべてを変える―資本主義vs.気候変動』
( http://iwnm.jp/022956 )を読むと、いまアメリカや日本、
世界各地で進行中の極端な気候現象が何を意味するかがよくわかる。
「カトリーナ」では、時のブッシュ政権の無為無策が批判されたが、
トランプはどうか。ティラーソン国務長官(エクソンモービル前会長)
も気が気ではなかろう。
地球環境問題にはとんと関心のない大統領だが、八月にはもう一つ
の「ハリケーン」が吹き荒れた。東部バージニア州シャーロッツビル
で起きた、白人至上主義団体と反対派の衝突事件である。トランプの
「双方に非がある」発言が批判を浴びたが、差別と分断の上に成り立
つ政権だからこその出来事に思える。移民への人種差別的取締りで有
罪となっていた元保安官に恩赦を与えたに至っては、法の支配をも揺
るがす、弾劾に値する行為との批判も出ている。どだい差別主義者が
国を率いてはならないのだ(なお、「トランプのアメリカ」に周縁か
らじっくり接近する中村寛氏の新連載に注目されたい)。
だが、私たちにとっても対岸の火事ではない。大阪などで繰り返さ
れるヘイトスピーチを批判することなく、昨年七月の「相模原事件」
でもすぐさま批判の公式コメントを出さなかったのが、日本の首相だ
った。司法が官製差別を裁けるか注目された、朝鮮学校無償化訴訟の
大阪判決で、朝鮮学校側が勝訴したのは大きな一歩だったが(本号、
中村一成氏)、九月一三日予定の東京判決を注視したい。
本号は、安倍政権の支持率低下を受けての特集を編んだが、「風」
を呼び寄せ都議選で自民に完勝した小池都知事も、就任から一年、
「本音」が少しずつ露わになってきたようだ。「日本ファースト」も
名前通り右翼政党化するのか。
安倍官邸も着々と巻き返しを図っている。メディアの過熱ぶりに驚
いたのが、八月二八日早朝(通勤にほぼ影響しない絶妙な時間帯)、
北朝鮮が発射した弾道ミサイルの日本上空通過だ。安倍首相は「これ
までにない深刻かつ重大な脅威」と顔を曇らせつつ「発射直後から北
朝鮮ミサイルの動きは完全に把握していた」と意味不明の発言。関東
防空大演習を嗤った桐生悠々もびっくりの事態が進行しているが、与
党の政治家の皆さんは、今夏、すばらしい頑張りを見せたNHKの戦
争特集番組を一本でもご覧になっただろうか(本号、神保氏)。不穏
な夏が過ぎた。
***********
二〇一八年一月号より「読者投句コーナー」を始めます。選者は俳
人の池田澄子さんです。二一五頁の要項をご覧のうえ、ふるってご参
加ください。
清宮美稚子(本誌編集長)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
~~『世界』から生まれた本~~
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◎海をわたる手紙 ノンフィクションの「身の内」
澤地久枝・ドウス昌代
定価(本体1700円+税)
http://iwnm.jp/022234
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『世界』から生まれた本
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┃ 特集 ┃「一強」は崩壊したのか
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈対談〉
政党政治の底上げは可能か――揺れる安倍政権と野党の活路
中北浩爾(一橋大学)×中野晃一(上智大学)
〈自民党とは何か〉
保守政党よ、「中庸の精神」たれ――「ポスト安倍」時代への提言
園田耕司(朝日新聞)
〈「女性活躍」の裏側〉
女性の「利用」と「男性性の回復」――安倍内閣と民進党のジェンダー感度
辻 由希(東海大学)
〈成長より社会の扶養力を〉
アベノミクス「景気拡大」の死角――統計を見て、「人」を見ない経済政策
高橋伸彰(立命館大学)
〈そして日本は?〉
ネオ・リベラリズムの終焉?――コービン、サンダース、メランションから見る政治変動
田端博邦(東京大学名誉教授)
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◇世界の潮
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◇「ロシア・ゲート」があぶり出すアメリカ社会
石郷岡 建
◇制憲議会を開設、危機打開図るベネズエラ政権
伊高浩昭
◇創設半世紀を迎えたASEAN
柴田直治
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈座談会〉
報道の「沈黙」が社会を壊す――プロフェッショナリズムの不在について
田島泰彦(上智大学)×服部孝章(立教大学)×美浦克教(記者)
〈ルポ〉
虚像を捨てて――不戦を選ぶ元米兵たち
大矢英代(ビデオジャーナリスト)
〈インタビュー〉
「天皇観の相剋」と現代――武田清子氏に聞く
聞き手=阿部菜穂子(ジャーナリスト)
〈考古学からの問い〉
世界遺産候補「百舌鳥・古市古墳群」の天皇陵古墳名称を問う
今尾文昭(関西大学非常勤講師)
〈「バニラエア」問題を考える〉
「困らせている」社会を変える――障害者差別解消法が求めているもの
飯野由里子(東京大学)
〈ルポ〉
歴史的だが「当たり前」の一歩――朝鮮学校無償化訴訟大阪判決の意味
中村一成(ジャーナリスト)
〈法の精神を生かすには〉
参加型アセスへの道――環境アセスメント法二〇年(下)
杉本裕明(ジャーナリスト)
〈海岸と人間〉
東日本大震災の災害復旧事業における防潮堤問題を考える
清野聡子(九州大学)
防潮堤、このままでいいですか?――「海といきる」人々の思いと復興行政
加藤裕則(朝日新聞)
〈対談〉
吉田調書を超えて 第3回 原発事故と自衛隊(下)
七沢潔(NHK)×中村勝美(元陸上自衛隊研究本部特殊武器研究室長)
〈事故経過の解明〉
2号機はなぜ破損したのか――解き明かされる謎
田辺文也(社会技術システム安全研究所)
〈核禁条約への筋道〉
地雷から核兵器禁止へ――人道的軍縮の進化
目加田説子(中央大学)
〈ICBM完成?〉
米朝危機の現段階――抑止関係は成立するか
井上智太郎(共同通信)
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●連載
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●【新連載】〈周縁〉の「小さなアメリカ」
第1回:「辺境」の先住民――鎌田 遵との対話
中村 寛(多摩美術大学)
●小説 アパレル興亡【第2回】
黒木 亮(作家)
●それぞれの出ウチナー記 海を越えるアイデンティティー【第2話】
“夢の跡”に生まれた戦後村計画
三山喬(ジャーナリスト)
●日本軍「慰安婦」問題解決運動史【第8回・最終回】
李娜榮(韓国・中央大学)、訳=梁澄子
●海の底から【第11回】
金石範(作家)
●脳力のレッスン【186】特別篇
二〇一七年夏への思索――内外の退嬰の中で
寺島実郎
●片山善博の「日本を診る」【第95回】
官制デフレが罷り通る
片山善博(早稲田大学)
●イングリッシュ・レッスン――お試し難民流英語学習伝【16】――ぺらぺらになりたい
中村和恵(明治大学)
●メディア批評【第118回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●中国新建築文化論【第6回】
中国人建築家の近現代史――四つの世代とその先
市川紘司(東京藝術大学)
●沖縄(シマ)という窓――いつか落ちる危険機種 誰が責任を取るのか
松元 剛(琉球新報)
●私的小豆島名所【その28】
内澤旬子(イラストルポライター)
●神を捨て、神になった男 確定死刑囚・袴田巖【第8回】
――「弟の無実を信じていた」
青柳雄介(ジャーナリスト)
●原発月報【第29回】
17・06~08
福島原発事故記録チーム
●世界論壇月評
朱建栄・竹田いさみ・吉田文彦・石郷岡建
●ドキュメント激動の南北朝鮮(242)
編集部
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○グラビア
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○グラビア――公募作品160
重重 消せない痕跡――アジアの日本軍性奴隷被害女性たち
安世鴻(写真家)
○A SHOT OF THE WORLD
○表紙の言葉
鈴木邦弘(写真家)
○表紙写真= 鈴木邦弘 デザイン= 赤崎正一+ 佐野裕哉
○グラビアについて(公募規定)
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◇編集後記
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日本では報道が少な目だった印象があるが、八月下旬、アメリカ南
部テキサス州を中心に、巨大ハリケーン「ハービー」による豪雨で壊
滅的な被害が出た。ヒューストンでは全ての高速道路が水没したとい
う。多数の人が逃げ遅れた二〇〇五年の「カトリーナ」の猛威を想起
させる。
テキサス州は全米有数の石油化学産業の集積地。多くの製油施設が
閉鎖され、今後、燃料不足も懸念されるというが、さらに心配なのは、
石油や化学物質による二次汚染だ。二〇一〇年のメキシコ湾原油流出
事故を思い出す。大手エクソンモービルもテキサス州にある国内で二
番目に大きな石油精製施設の稼働を停止したというが、化石燃料会社
が温暖化・気候変動の影響で自らの操業に支障をきたすのなら、まさ
にブーメランだ。
……とここまで書いてきて、先月号の続きで恐縮だが、八月三〇日
刊行のN.クライン『これがすべてを変える―資本主義vs.気候変動』
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世界各地で進行中の極端な気候現象が何を意味するかがよくわかる。
「カトリーナ」では、時のブッシュ政権の無為無策が批判されたが、
トランプはどうか。ティラーソン国務長官(エクソンモービル前会長)
も気が気ではなかろう。
地球環境問題にはとんと関心のない大統領だが、八月にはもう一つ
の「ハリケーン」が吹き荒れた。東部バージニア州シャーロッツビル
で起きた、白人至上主義団体と反対派の衝突事件である。トランプの
「双方に非がある」発言が批判を浴びたが、差別と分断の上に成り立
つ政権だからこその出来事に思える。移民への人種差別的取締りで有
罪となっていた元保安官に恩赦を与えたに至っては、法の支配をも揺
るがす、弾劾に値する行為との批判も出ている。どだい差別主義者が
国を率いてはならないのだ(なお、「トランプのアメリカ」に周縁か
らじっくり接近する中村寛氏の新連載に注目されたい)。
だが、私たちにとっても対岸の火事ではない。大阪などで繰り返さ
れるヘイトスピーチを批判することなく、昨年七月の「相模原事件」
でもすぐさま批判の公式コメントを出さなかったのが、日本の首相だ
った。司法が官製差別を裁けるか注目された、朝鮮学校無償化訴訟の
大阪判決で、朝鮮学校側が勝訴したのは大きな一歩だったが(本号、
中村一成氏)、九月一三日予定の東京判決を注視したい。
本号は、安倍政権の支持率低下を受けての特集を編んだが、「風」
を呼び寄せ都議選で自民に完勝した小池都知事も、就任から一年、
「本音」が少しずつ露わになってきたようだ。「日本ファースト」も
名前通り右翼政党化するのか。
安倍官邸も着々と巻き返しを図っている。メディアの過熱ぶりに驚
いたのが、八月二八日早朝(通勤にほぼ影響しない絶妙な時間帯)、
北朝鮮が発射した弾道ミサイルの日本上空通過だ。安倍首相は「これ
までにない深刻かつ重大な脅威」と顔を曇らせつつ「発射直後から北
朝鮮ミサイルの動きは完全に把握していた」と意味不明の発言。関東
防空大演習を嗤った桐生悠々もびっくりの事態が進行しているが、与
党の政治家の皆さんは、今夏、すばらしい頑張りを見せたNHKの戦
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