『世界』メールマガジン/2018年9月号 【特集1:人びとの沖縄】【特集2:非核アジアへの構想】
2018/08/09 (Thu) 13:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2018年9月号
■■ vol.#0039
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■『世界』2018年9月号(第912号)好評発売中
2018年8月8日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/世界の潮/注目記事/連載/グラビア/編集後記/
『世界』から生まれた本/イベント情報
┏━━━┓
┃特集1┃人びとの沖縄
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈インタビュー〉
沖縄の子どもたち/子どもたちの沖縄
加藤彰彦(沖縄大学名誉教授)
〈若年出産女性調査から〉
私たちには見えない人びとの存在とそのネットワークのこと
上間陽子(琉球大学)
〈さらなる施策の充実を〉
子どもの貧困,解決への道――三年間の調査を通じて見えてきたもの
山野良一(沖縄大学)・二宮千賀子(沖縄県学童・保育支援センター)
〈ピンクドットの実践〉
マイノリティから社会を開く
砂川秀樹(文化人類学者)
〈検証〉
沖縄が問う民主主義
前泊博盛(沖縄国際大学)
〈座談会〉
沖縄を戦場にはさせない――映画『沖縄スパイ戦史』をめぐって
森口豁(ジャーナリスト)×三上智恵(映画監督)×大矢英代(映画監督)
┏━━━┓
┃特集2┃非核アジアへの構想
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈提言〉
北東アジア新秩序へ――非核兵器地帯化への積極関与を
梅林宏道(ピースデポ)
〈現実的選択〉
朝鮮半島の非核化と核兵器禁止条約
川崎哲(ICAN国際運営委員)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈インタビュー〉
正念場迎える辺野古,沖縄
山城博治(沖縄平和運動センター)
〈死刑大量執行の異常〉
死刑違憲論を考える――「存在してはならない生」の概念
木村草太(首都大学東京)
宗教的動機を解明せぬまま
藤田庄市(フォトジャーナリスト)
〈ルポ〉
シリア内戦・兵器供与の闇(上)――秘密作戦
村瀬健介(TBS中東支局長)
〈知られざる戦史〉
戦前日本の武器輸出――軍部の思惑と専門商社
纐纈 厚(明治大学)
「軍事機密費」――権力の闇を支えるもの
渡辺延志(朝日新聞)
〈対談〉
「カタルーニャ独立」論議の落とし穴
狐崎知己(専修大学)×山道佳子(慶應義塾大学) 司会=飯島みどり(立教大学)
〈新証言〉
神を捨て,神になった男 確定死刑囚・袴田巖 特別篇
--「私,本当は袴田さんを見ていないんです」
青柳雄介(ジャーナリスト)
〈トンデモ司法〉
裁判所を大炎上させるくらいの世論を
やくみつる(漫画家)
〈ルポ〉
プラスチック社会からの転換
杉本裕明(ジャーナリスト)
〈いつまで偏見を?〉
刺青と日本文化--危機に瀕する伝統美
宮下規久朗(神戸大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇メキシコ総選挙――「左派」勝利の背景
馬場香織(北海道大学)
◇難民とポピュリズムで揺らぐ欧州連合とドイツ
梶村太一郎(ジャーナリスト)
◇南スーダン和平合意のゆくえ
今井高樹(JVC)
◇アイルランド・人工中絶めぐる国民投票--社会変化の分水嶺?
酒井朋子(東北学院大)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●【新連載ルポ】
スペイン発「もうひとつの世界」を創る 第1回――「怒れる者たち」の今
工藤律子(ジャーナリスト)
●【新連載】
ハンセン病回復者の語り・家族の語り 第1回--奇跡のいのち
福岡安則(埼玉大学名誉教授)、黒坂愛衣(東北学院大学)
●沖縄(シマ)という窓
――安室引退――沖縄への視線は変わったか
親川志奈子(オキスタ107)
●新語解題【第7回】
「上から目線」――辞書は「上から目線」なのか
武田砂鉄(ライター)
●アパレル興亡【第13回】
黒木 亮(作家)
●日 没【第10回】
桐野夏生(作家)
●海の底から【第17回】
金石範(作家)
●私的小豆島名所【その38】
内澤旬子(イラストルポライター)
●パチンコ哀歌(エレジー)【第6回】
依存症と子どもたち
古川美穂(フリーライター)
●映像世界の冒険者たち【第5回】
神聖なる怪物――アレクセイ・ゲルマン
四方田犬彦(比較文学・映画研究家)
●中国新建築文化論【第16回】
戦争・文革・大地震――四川・建川博物館集落と「集群設計」
市川紘司(明治大学助教)
●読者投句・岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)
●片山善博「日本を診る」【第106回】
西日本集中豪雨災害から得るべき教訓
片山善博(早稲田大学)
●脳力のレッスン【197】
グローバル・ヒストリーへの入口を探って―― 一七世紀オランダからの視界(その五〇)
寺島実郎
●原発月報――(18・6~7)
福島原発事故記録チーム
●メディア批評【第129回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●世界論壇月評
朱建栄・竹田いさみ・吉田文彦・石郷岡建
●ドキュメント激動の南北朝鮮(253)(18・6~7)
編集部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○グラビア
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○公募作品【169】
Postman
松岡拓海(写真家)
○A SHOT OF THE WORLD
○表紙の言葉
鈴木邦弘(写真家)
○表紙写真= 鈴木邦弘 デザイン= 赤崎正一+ 佐野裕哉
○グラビアについて(公募規定)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今号,青柳雄介氏の報告に瞠目した.今から半世紀前の1967年7月,
いわゆる袴田事件の法廷において検察側の証人に立った高橋みどりさん
の,驚くべき証言をスクープしている.
当時,刃物店を営んでいた高橋さんは,捜査中の警察官から袴田さん
の写真を見せられ,その顔に見覚えがあり,何かを売った記憶があると
証言した.その証言が,「袴田の自白を裏づける形となっていた」(青柳氏).
しかし,実際は違った.詳細は青柳氏の報告をお読みいただきたいが,
事件発生から半世紀を超え,なお真実に迫り冤罪を晴らそうというジャ
ーナリストの執念,それに応えたご高齢の証言者の思いに頭が下がる.
現在も「確定死刑囚」としての立場を強いられている袴田さんの再審無
罪に向け,「裁判所を大炎上させるくらいの世論を」(やくみつる氏).
本誌としても引き続き注目していきたい.
一方,オウム真理教による一連の事件に連座した人々の罪は,冤罪と
はいえない.だが,罪を犯したとはいえ,権力により多数の市民の生命
を奪うことが,これほど軽々しく考えられていいのか.今号「メディア
批評」などで検証され批判されているように,死刑執行の命令を下した
上川法務大臣をはじめ,政権与党の面々は執行の前夜,酒宴に興じていた.
本誌校了の7月26日には,6日の7人に続き,残る6人の死刑も執行された.
恐ろしいのは,同時に多くの刑が執行されたことで,生命を奪われた一
人ひとりの顔が,さらに見えづらくなっていることだ.
今から10年近くも前になるが,今号に論考を寄せていただいた藤田庄
市さんの手引きで,オウム真理教の事件に連座した被告に拘置所で接見
した.自らの罪を見つめ,人間性を失っていった自分の過ちを教訓にし
てほしいと,若い世代に向けて手紙を書き続けていた彼も,今回,その
生命を奪われた.
オウム真理教に入信し,罪を犯すに至った人々の内面的な動機の解明
に取り組んできた藤田氏の論文を読むと,「高い世界へ生まれ変わらせる」
「縁が深くなれば救済できる」といった,異常としか思えない論理と,
さまざまな宗教的体験の中で,犯行が動機づけられ,正当化されていっ
たことがわかる.
だが,こうしたオウム真理教の論理と,「特殊な社会悪の根元を絶ち,
これをもつて社会を防衛せん」という最高裁の死刑合憲の論理(木村論
文参照)と,本質的な違いはどこにあるのだろうか.
「死刑は,対象を『尊重されるべき個人』ではなく,『存在してはなら
ない生』と位置づける」,一度そのような「概念を認めてしまえば,時の
政治権力が『社会にとって無益な人間』や『有害な民族』などを,その
概念に含めてしまう危険が生じる」.木村論文の指摘は鋭い.
人間を人間として扱わないでよいとする論理が,戦争や差別,貧困・
格差といった,私たちが乗り越えるべき多くの問題に共通していること
は,言うまでもない.本誌は,そのような論理と対峙し,生命を守ろう
とする側とともに立ちつづけるメディアでありたいと思う.
* * *
今月号より本誌編集長に着任しました.吉野源三郎以来の創刊の志を
受け継ぎながら,時代の提起する新しい課題に果敢に挑む雑誌であるよ
う努めます.引き続きご愛読いただきますよう,お願いいたします.
熊谷伸一郎(本誌編集長)
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~~『世界』から生まれた本~~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎ひとはなぜ戦争をするのか 脳力のレッスンV
寺島 実郎
定価(本体1700円+税)
http://iwnm.jp/024533
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2018年8月8日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/世界の潮/注目記事/連載/グラビア/編集後記/
『世界』から生まれた本/イベント情報
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┃特集1┃人びとの沖縄
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈インタビュー〉
沖縄の子どもたち/子どもたちの沖縄
加藤彰彦(沖縄大学名誉教授)
〈若年出産女性調査から〉
私たちには見えない人びとの存在とそのネットワークのこと
上間陽子(琉球大学)
〈さらなる施策の充実を〉
子どもの貧困,解決への道――三年間の調査を通じて見えてきたもの
山野良一(沖縄大学)・二宮千賀子(沖縄県学童・保育支援センター)
〈ピンクドットの実践〉
マイノリティから社会を開く
砂川秀樹(文化人類学者)
〈検証〉
沖縄が問う民主主義
前泊博盛(沖縄国際大学)
〈座談会〉
沖縄を戦場にはさせない――映画『沖縄スパイ戦史』をめぐって
森口豁(ジャーナリスト)×三上智恵(映画監督)×大矢英代(映画監督)
┏━━━┓
┃特集2┃非核アジアへの構想
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈提言〉
北東アジア新秩序へ――非核兵器地帯化への積極関与を
梅林宏道(ピースデポ)
〈現実的選択〉
朝鮮半島の非核化と核兵器禁止条約
川崎哲(ICAN国際運営委員)
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◆注目記事
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〈インタビュー〉
正念場迎える辺野古,沖縄
山城博治(沖縄平和運動センター)
〈死刑大量執行の異常〉
死刑違憲論を考える――「存在してはならない生」の概念
木村草太(首都大学東京)
宗教的動機を解明せぬまま
藤田庄市(フォトジャーナリスト)
〈ルポ〉
シリア内戦・兵器供与の闇(上)――秘密作戦
村瀬健介(TBS中東支局長)
〈知られざる戦史〉
戦前日本の武器輸出――軍部の思惑と専門商社
纐纈 厚(明治大学)
「軍事機密費」――権力の闇を支えるもの
渡辺延志(朝日新聞)
〈対談〉
「カタルーニャ独立」論議の落とし穴
狐崎知己(専修大学)×山道佳子(慶應義塾大学) 司会=飯島みどり(立教大学)
〈新証言〉
神を捨て,神になった男 確定死刑囚・袴田巖 特別篇
--「私,本当は袴田さんを見ていないんです」
青柳雄介(ジャーナリスト)
〈トンデモ司法〉
裁判所を大炎上させるくらいの世論を
やくみつる(漫画家)
〈ルポ〉
プラスチック社会からの転換
杉本裕明(ジャーナリスト)
〈いつまで偏見を?〉
刺青と日本文化--危機に瀕する伝統美
宮下規久朗(神戸大学)
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◇世界の潮
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◇メキシコ総選挙――「左派」勝利の背景
馬場香織(北海道大学)
◇難民とポピュリズムで揺らぐ欧州連合とドイツ
梶村太一郎(ジャーナリスト)
◇南スーダン和平合意のゆくえ
今井高樹(JVC)
◇アイルランド・人工中絶めぐる国民投票--社会変化の分水嶺?
酒井朋子(東北学院大)
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●連載
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●【新連載ルポ】
スペイン発「もうひとつの世界」を創る 第1回――「怒れる者たち」の今
工藤律子(ジャーナリスト)
●【新連載】
ハンセン病回復者の語り・家族の語り 第1回--奇跡のいのち
福岡安則(埼玉大学名誉教授)、黒坂愛衣(東北学院大学)
●沖縄(シマ)という窓
――安室引退――沖縄への視線は変わったか
親川志奈子(オキスタ107)
●新語解題【第7回】
「上から目線」――辞書は「上から目線」なのか
武田砂鉄(ライター)
●アパレル興亡【第13回】
黒木 亮(作家)
●日 没【第10回】
桐野夏生(作家)
●海の底から【第17回】
金石範(作家)
●私的小豆島名所【その38】
内澤旬子(イラストルポライター)
●パチンコ哀歌(エレジー)【第6回】
依存症と子どもたち
古川美穂(フリーライター)
●映像世界の冒険者たち【第5回】
神聖なる怪物――アレクセイ・ゲルマン
四方田犬彦(比較文学・映画研究家)
●中国新建築文化論【第16回】
戦争・文革・大地震――四川・建川博物館集落と「集群設計」
市川紘司(明治大学助教)
●読者投句・岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)
●片山善博「日本を診る」【第106回】
西日本集中豪雨災害から得るべき教訓
片山善博(早稲田大学)
●脳力のレッスン【197】
グローバル・ヒストリーへの入口を探って―― 一七世紀オランダからの視界(その五〇)
寺島実郎
●原発月報――(18・6~7)
福島原発事故記録チーム
●メディア批評【第129回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●世界論壇月評
朱建栄・竹田いさみ・吉田文彦・石郷岡建
●ドキュメント激動の南北朝鮮(253)(18・6~7)
編集部
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○グラビア
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○公募作品【169】
Postman
松岡拓海(写真家)
○A SHOT OF THE WORLD
○表紙の言葉
鈴木邦弘(写真家)
○表紙写真= 鈴木邦弘 デザイン= 赤崎正一+ 佐野裕哉
○グラビアについて(公募規定)
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◇編集後記
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今号,青柳雄介氏の報告に瞠目した.今から半世紀前の1967年7月,
いわゆる袴田事件の法廷において検察側の証人に立った高橋みどりさん
の,驚くべき証言をスクープしている.
当時,刃物店を営んでいた高橋さんは,捜査中の警察官から袴田さん
の写真を見せられ,その顔に見覚えがあり,何かを売った記憶があると
証言した.その証言が,「袴田の自白を裏づける形となっていた」(青柳氏).
しかし,実際は違った.詳細は青柳氏の報告をお読みいただきたいが,
事件発生から半世紀を超え,なお真実に迫り冤罪を晴らそうというジャ
ーナリストの執念,それに応えたご高齢の証言者の思いに頭が下がる.
現在も「確定死刑囚」としての立場を強いられている袴田さんの再審無
罪に向け,「裁判所を大炎上させるくらいの世論を」(やくみつる氏).
本誌としても引き続き注目していきたい.
一方,オウム真理教による一連の事件に連座した人々の罪は,冤罪と
はいえない.だが,罪を犯したとはいえ,権力により多数の市民の生命
を奪うことが,これほど軽々しく考えられていいのか.今号「メディア
批評」などで検証され批判されているように,死刑執行の命令を下した
上川法務大臣をはじめ,政権与党の面々は執行の前夜,酒宴に興じていた.
本誌校了の7月26日には,6日の7人に続き,残る6人の死刑も執行された.
恐ろしいのは,同時に多くの刑が執行されたことで,生命を奪われた一
人ひとりの顔が,さらに見えづらくなっていることだ.
今から10年近くも前になるが,今号に論考を寄せていただいた藤田庄
市さんの手引きで,オウム真理教の事件に連座した被告に拘置所で接見
した.自らの罪を見つめ,人間性を失っていった自分の過ちを教訓にし
てほしいと,若い世代に向けて手紙を書き続けていた彼も,今回,その
生命を奪われた.
オウム真理教に入信し,罪を犯すに至った人々の内面的な動機の解明
に取り組んできた藤田氏の論文を読むと,「高い世界へ生まれ変わらせる」
「縁が深くなれば救済できる」といった,異常としか思えない論理と,
さまざまな宗教的体験の中で,犯行が動機づけられ,正当化されていっ
たことがわかる.
だが,こうしたオウム真理教の論理と,「特殊な社会悪の根元を絶ち,
これをもつて社会を防衛せん」という最高裁の死刑合憲の論理(木村論
文参照)と,本質的な違いはどこにあるのだろうか.
「死刑は,対象を『尊重されるべき個人』ではなく,『存在してはなら
ない生』と位置づける」,一度そのような「概念を認めてしまえば,時の
政治権力が『社会にとって無益な人間』や『有害な民族』などを,その
概念に含めてしまう危険が生じる」.木村論文の指摘は鋭い.
人間を人間として扱わないでよいとする論理が,戦争や差別,貧困・
格差といった,私たちが乗り越えるべき多くの問題に共通していること
は,言うまでもない.本誌は,そのような論理と対峙し,生命を守ろう
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