『世界』メールマガジン/2018年11月号 【特集1:軍縮――とるべき選択】 【特集2:〈道徳化〉する学校】
2018/10/10 (Wed) 15:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2018年11月号
■■ vol.#0041
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■『世界』2018年11月号(第914号)好評発売中
2018年10月6日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/世界の潮/注目記事/連載/グラビア/編集後記/
『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集1┃軍縮――とるべき選択
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈インタビュー〉
我々の未来を守るために――国連事務総長の軍縮アジェンダをめぐって
中満 泉(国連軍縮担当事務次長)
〈資料〉
軍縮アジェンダ・私たちの共通の未来を守る
〈全方位の軍拡〉
安倍軍拡はどこへ向かうか――防衛大綱と概算要求にみる,新段階
前田哲男(軍事ジャーナリスト)
〈検証〉
武器輸出――もうやめたほうがいいのでは?
望月衣塑子(東京新聞)
〈アカデミズムと軍事〉
軍学共同の現段階――「軍産学複合体」を形成させないために
池内 了(総合研究大学院大学名誉教授)
〈事例報告〉
軍縮交渉と市民社会――武器貿易条約の事例に見る多様なアクターの参加と疎外
榎本珠良(明治大学国際武器移転史研究所)
┏━━━┓
┃特集2┃〈道徳化〉する学校
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈心の統制への道〉
学校の〈道徳化〉とは何か――新学習指導要領に見る、生き方コントロールの未来形
児美川孝一郎(法政大学)
〈対談〉
“いじめの加害”という文脈の中で――教育は子どもに何を問いかける
荻原浩(小説家)×阿部泰尚(T.I.U. 総合探偵社代表)
〈歴史をひもとく〉
つくられた「臣民の手本」像――明治維新一五〇年の節目に復活した道徳教科書と二宮金次郎
小澤祥司(環境ジャーナリスト)
〈「改革」の虚妄〉
「特別の教科」道徳の深刻な矛盾――徳目主義へ進む教科書と教師用指導書
高橋陽一(武蔵野美術大学)
〈市民社会に向き合う教育〉
マイノリティと道徳教育――多文化共生・シティズンシップの視点から
藤原孝章(同志社女子大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈座談会〉
非行少年を立ち直らせる社会を描く
八田次郎(元法務教官)×五十嵐弘志(NPO法人マザーハウス)×田丸雅智(ショートショート作家)
〈座談会〉
手話という言葉,ろう者の世界――映画『ヴァンサンへの手紙』
レティシア・カートン(映画監督)×河崎佳子(神戸大学)×牧原依里(映画作家)
〈緊急勅令復活?〉
改正された緊急事態条項の危険
永井幸寿(弁護士)
〈戦後史の裏側で〉
“公益”に奪われた人権――日本国憲法と優生保護法
藤野 豊(敬和学園大学)
〈報告〉
海洋プラスチック汚染とは何か(上) ――二一世紀最悪の環境問題の一つ,深刻化するその状況
枝廣淳子(大学院大学至善館)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇苦境のパレスチナ――出口の見えないトンネル
奈良本英佑
◇イラン 核合意と国内政局の行方
坂梨 祥
◇国際法はロヒンギャ問題を裁けるか?――国際刑事裁判所の苦悩と未来
阿部浩己
◇ブラジル国立博物館火災――失われた現在,過去,未来
古谷嘉章
◇「万年筆」は捏造証拠だった――狭山再審の新証拠
菅野良司
◇卸売市場法改定と豊洲市場移転――食の流通の変容
三國英實
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●【新連載・第1回】自衛隊と災害救助
1953年――誕生前夜の大災害
島本慈子(ジャーナリスト)
●脳力のレッスン【199・特別篇】
二〇一八年秋の不吉な予感――臨界点に迫るリスクと日本の劣化
寺島実郎
●スペイン発「もうひとつの世界」を創る【第3回・最終回】
多様性を豊かさに変える
工藤律子(ジャーナリスト)
●ハンセン病回復者の語り・家族の語り【第3回】
高校生の娘に背中を押されて
福岡安則(埼玉大学名誉教授),黒坂愛衣(東北学院大学)
●神を捨て,神になった男 確定死刑囚・袴田巖【第21回】
「清水に行けば自由になる道がある」
青柳雄介(ジャーナリスト)
●アパレル興亡【第15回】
黒木 亮(作家)
●日 没【第11回】
桐野夏生(作家)
●海の底から【第19回】
金石範(作家)
●私的小豆島名所【その40】
内澤旬子(イラストルポライター)
●映像世界の冒険者たち【第7回】
強制収容所は描きうるか?――ジャン=リュック・ゴダール(前篇)
四方田犬彦(比較文学・映画研究家)
●新語解題【第9回】
親しみやすさが,その命
杉山享司(日本民藝館)
●中国新建築文化論【第18回】
中国近代建築の初期設定(2)――実務にいそしむ外国人建築家たち
市川紘司(明治大学助教)
●メディア批評【第131回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●沖縄(シマ)という窓
宮古島「アリランの碑」「女たちへ」――建立一〇周年の集い
山城紀子(フリーライター)
●片山善博の「日本を診る」【第108回】
ふるさと納税は何が問題なのか――総務省のフェイクを鵜呑みにするマスコミ
片山善博(早稲田大学)
●世界論壇月評
朱建栄・竹田いさみ・吉田文彦・石郷岡建
●ドキュメント激動の南北朝鮮(255)(18・8~9)
編集部
●原発月報――(18・8~9)
福島原発事故記録チーム
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○グラビア
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○公募作品 170
HIROSHIMAS ――関釜航路
山田 諭(写真家)
○A SHOT OF THE WORLD
○表紙の言葉
鈴木邦弘(写真家)
○表紙写真= 鈴木邦弘 デザイン= 赤崎正一+ 佐野裕哉
○グラビアについて(公募規定)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○読者投句・岩波俳句
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
選・文 池田澄子(俳人)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
機会があり,ある大学で半年だけ「編集出版論」という講義を受け持
つこととなった.受講する学生には,出版という分野に進もうかという
希望を持つ学生も少なくない.あらためて出版とは何か,編集とは何か,
ということを考えさせられている.
自分の話となり恐縮だが,編集者になるには,という質問を受けて,
はたと気づいた.私自身は編集者に「なった」という感覚がついにない.
インターネット黎明期の1990年代半ばに過ごした学生時代,魯迅や本
多勝一などを読みながら,仲間たちといくつも同人誌を作り散らした.
どれも話にならないほど稚拙だったと思うが,反論や批判,共鳴など,
言説を通じてコミュニティが広がっていく感覚にのめりこんだ.
その後,職業としての編集者には「なった」が,基本的な思考と行動
のパターンは変わっていないと思う.言論を通じて社会に参加し,より
良い社会をつくっていこうとする共同作業において自分も何らかの貢献
をしたい.――こんなことは口に出して言うようなものではなく,とにか
く毎号の編集作業を通じて実践をしていけばいい性質のものかもしれな
い.だが,あえて言いたい.いったい何のために雑誌を編んでいるのか.
その答えが,ただ「商売の成功だけだというのであったら,そこからは
重大な帰結が引き出されるであろう」(W・スティード).
本誌前号で,『新潮45』8月号に掲載された杉田水脈氏の発言への批判
を岡野八代氏,倉橋耕平氏に寄せていただいた.その後,さらに同誌は
「炎上」を商機と考えたのか,杉田発言擁護特集を10月号で組んだ.
その後の展開ついてはご存じの通りだ.社会的批判の広がりもあり,新
潮社は『新潮45』の休刊を決めた.
人間を「生産性」の有無で論じる杉田氏の発言が,どのような「重大
な帰結」につながりかねないか.本号の藤野豊氏の論文を読んでほしい.
これは,子どもを「産ませない」ために,国家が,障害を持つ市民など
に不妊手術を強制してきた経過を,その推進者たちの発言を中心に解明
した労作だ.藤野論文は,人間を,その不可侵の尊厳ではなく,「生産性」
や「公益性」によって国家が差別していくことの恐ろしさを浮き彫りに
する.藤野氏が結論部分で警鐘を鳴らされているが,この論文全体が,
安倍政権のめざす改憲への本質的な批判であろう.杉田氏を比例名簿の
上位に置くことで国会議員へと引き立てたのが,安倍総裁のもとの自民
党であることは,偶然ではない.
今回で連載199回を迎えた寺島実郎氏の今号の特別篇も力作である.
現在の内外の複雑な状況を整理し,その底流を数値的なデータをもとに
大局的に分析したうえで,日本が安倍政権のもとで何を失い,どのよう
に劣化してきたのか,明晰に述べている.情勢を見る際の判断に資する
ところ,きわめて大と思われる.このような原稿を読者にお届けできる
ことが編集者として喜びである.
現在,出版界が直面する構造不況は,従来の出版モデルの崩壊過程と
さえ言える.本誌とてその例外に身を置いているわけでは決してない.
安易な打開策などありようもないが,本誌を手にとって下さる読者と真
摯に向き合い,自らも学びながら,自分たちの良心に恥じない誌面を編
んでいくことに徹したい.少なくとも,この状況において,なお出版を
めざそうという若い世代を失望させるようなことだけはするまい,と思う.
熊谷伸一郎(本誌編集長)
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎ひとはなぜ戦争をするのか 脳力のレッスンV
寺島 実郎
定価(本体1700円+税)
http://iwnm.jp/024533
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のウェブマガジン、「WEB世界」をはじめました
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
*WEB版もぜひ、ご覧ください
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▼本号の目次
特集/世界の潮/注目記事/連載/グラビア/編集後記/
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┃特集1┃軍縮――とるべき選択
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈インタビュー〉
我々の未来を守るために――国連事務総長の軍縮アジェンダをめぐって
中満 泉(国連軍縮担当事務次長)
〈資料〉
軍縮アジェンダ・私たちの共通の未来を守る
〈全方位の軍拡〉
安倍軍拡はどこへ向かうか――防衛大綱と概算要求にみる,新段階
前田哲男(軍事ジャーナリスト)
〈検証〉
武器輸出――もうやめたほうがいいのでは?
望月衣塑子(東京新聞)
〈アカデミズムと軍事〉
軍学共同の現段階――「軍産学複合体」を形成させないために
池内 了(総合研究大学院大学名誉教授)
〈事例報告〉
軍縮交渉と市民社会――武器貿易条約の事例に見る多様なアクターの参加と疎外
榎本珠良(明治大学国際武器移転史研究所)
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┃特集2┃〈道徳化〉する学校
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈心の統制への道〉
学校の〈道徳化〉とは何か――新学習指導要領に見る、生き方コントロールの未来形
児美川孝一郎(法政大学)
〈対談〉
“いじめの加害”という文脈の中で――教育は子どもに何を問いかける
荻原浩(小説家)×阿部泰尚(T.I.U. 総合探偵社代表)
〈歴史をひもとく〉
つくられた「臣民の手本」像――明治維新一五〇年の節目に復活した道徳教科書と二宮金次郎
小澤祥司(環境ジャーナリスト)
〈「改革」の虚妄〉
「特別の教科」道徳の深刻な矛盾――徳目主義へ進む教科書と教師用指導書
高橋陽一(武蔵野美術大学)
〈市民社会に向き合う教育〉
マイノリティと道徳教育――多文化共生・シティズンシップの視点から
藤原孝章(同志社女子大学)
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◆注目記事
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〈座談会〉
非行少年を立ち直らせる社会を描く
八田次郎(元法務教官)×五十嵐弘志(NPO法人マザーハウス)×田丸雅智(ショートショート作家)
〈座談会〉
手話という言葉,ろう者の世界――映画『ヴァンサンへの手紙』
レティシア・カートン(映画監督)×河崎佳子(神戸大学)×牧原依里(映画作家)
〈緊急勅令復活?〉
改正された緊急事態条項の危険
永井幸寿(弁護士)
〈戦後史の裏側で〉
“公益”に奪われた人権――日本国憲法と優生保護法
藤野 豊(敬和学園大学)
〈報告〉
海洋プラスチック汚染とは何か(上) ――二一世紀最悪の環境問題の一つ,深刻化するその状況
枝廣淳子(大学院大学至善館)
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◇世界の潮
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◇苦境のパレスチナ――出口の見えないトンネル
奈良本英佑
◇イラン 核合意と国内政局の行方
坂梨 祥
◇国際法はロヒンギャ問題を裁けるか?――国際刑事裁判所の苦悩と未来
阿部浩己
◇ブラジル国立博物館火災――失われた現在,過去,未来
古谷嘉章
◇「万年筆」は捏造証拠だった――狭山再審の新証拠
菅野良司
◇卸売市場法改定と豊洲市場移転――食の流通の変容
三國英實
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●連載
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●【新連載・第1回】自衛隊と災害救助
1953年――誕生前夜の大災害
島本慈子(ジャーナリスト)
●脳力のレッスン【199・特別篇】
二〇一八年秋の不吉な予感――臨界点に迫るリスクと日本の劣化
寺島実郎
●スペイン発「もうひとつの世界」を創る【第3回・最終回】
多様性を豊かさに変える
工藤律子(ジャーナリスト)
●ハンセン病回復者の語り・家族の語り【第3回】
高校生の娘に背中を押されて
福岡安則(埼玉大学名誉教授),黒坂愛衣(東北学院大学)
●神を捨て,神になった男 確定死刑囚・袴田巖【第21回】
「清水に行けば自由になる道がある」
青柳雄介(ジャーナリスト)
●アパレル興亡【第15回】
黒木 亮(作家)
●日 没【第11回】
桐野夏生(作家)
●海の底から【第19回】
金石範(作家)
●私的小豆島名所【その40】
内澤旬子(イラストルポライター)
●映像世界の冒険者たち【第7回】
強制収容所は描きうるか?――ジャン=リュック・ゴダール(前篇)
四方田犬彦(比較文学・映画研究家)
●新語解題【第9回】
親しみやすさが,その命
杉山享司(日本民藝館)
●中国新建築文化論【第18回】
中国近代建築の初期設定(2)――実務にいそしむ外国人建築家たち
市川紘司(明治大学助教)
●メディア批評【第131回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●沖縄(シマ)という窓
宮古島「アリランの碑」「女たちへ」――建立一〇周年の集い
山城紀子(フリーライター)
●片山善博の「日本を診る」【第108回】
ふるさと納税は何が問題なのか――総務省のフェイクを鵜呑みにするマスコミ
片山善博(早稲田大学)
●世界論壇月評
朱建栄・竹田いさみ・吉田文彦・石郷岡建
●ドキュメント激動の南北朝鮮(255)(18・8~9)
編集部
●原発月報――(18・8~9)
福島原発事故記録チーム
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○グラビア
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○公募作品 170
HIROSHIMAS ――関釜航路
山田 諭(写真家)
○A SHOT OF THE WORLD
○表紙の言葉
鈴木邦弘(写真家)
○表紙写真= 鈴木邦弘 デザイン= 赤崎正一+ 佐野裕哉
○グラビアについて(公募規定)
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○読者投句・岩波俳句
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選・文 池田澄子(俳人)
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◇編集後記
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機会があり,ある大学で半年だけ「編集出版論」という講義を受け持
つこととなった.受講する学生には,出版という分野に進もうかという
希望を持つ学生も少なくない.あらためて出版とは何か,編集とは何か,
ということを考えさせられている.
自分の話となり恐縮だが,編集者になるには,という質問を受けて,
はたと気づいた.私自身は編集者に「なった」という感覚がついにない.
インターネット黎明期の1990年代半ばに過ごした学生時代,魯迅や本
多勝一などを読みながら,仲間たちといくつも同人誌を作り散らした.
どれも話にならないほど稚拙だったと思うが,反論や批判,共鳴など,
言説を通じてコミュニティが広がっていく感覚にのめりこんだ.
その後,職業としての編集者には「なった」が,基本的な思考と行動
のパターンは変わっていないと思う.言論を通じて社会に参加し,より
良い社会をつくっていこうとする共同作業において自分も何らかの貢献
をしたい.――こんなことは口に出して言うようなものではなく,とにか
く毎号の編集作業を通じて実践をしていけばいい性質のものかもしれな
い.だが,あえて言いたい.いったい何のために雑誌を編んでいるのか.
その答えが,ただ「商売の成功だけだというのであったら,そこからは
重大な帰結が引き出されるであろう」(W・スティード).
本誌前号で,『新潮45』8月号に掲載された杉田水脈氏の発言への批判
を岡野八代氏,倉橋耕平氏に寄せていただいた.その後,さらに同誌は
「炎上」を商機と考えたのか,杉田発言擁護特集を10月号で組んだ.
その後の展開ついてはご存じの通りだ.社会的批判の広がりもあり,新
潮社は『新潮45』の休刊を決めた.
人間を「生産性」の有無で論じる杉田氏の発言が,どのような「重大
な帰結」につながりかねないか.本号の藤野豊氏の論文を読んでほしい.
これは,子どもを「産ませない」ために,国家が,障害を持つ市民など
に不妊手術を強制してきた経過を,その推進者たちの発言を中心に解明
した労作だ.藤野論文は,人間を,その不可侵の尊厳ではなく,「生産性」
や「公益性」によって国家が差別していくことの恐ろしさを浮き彫りに
する.藤野氏が結論部分で警鐘を鳴らされているが,この論文全体が,
安倍政権のめざす改憲への本質的な批判であろう.杉田氏を比例名簿の
上位に置くことで国会議員へと引き立てたのが,安倍総裁のもとの自民
党であることは,偶然ではない.
今回で連載199回を迎えた寺島実郎氏の今号の特別篇も力作である.
現在の内外の複雑な状況を整理し,その底流を数値的なデータをもとに
大局的に分析したうえで,日本が安倍政権のもとで何を失い,どのよう
に劣化してきたのか,明晰に述べている.情勢を見る際の判断に資する
ところ,きわめて大と思われる.このような原稿を読者にお届けできる
ことが編集者として喜びである.
現在,出版界が直面する構造不況は,従来の出版モデルの崩壊過程と
さえ言える.本誌とてその例外に身を置いているわけでは決してない.
安易な打開策などありようもないが,本誌を手にとって下さる読者と真
摯に向き合い,自らも学びながら,自分たちの良心に恥じない誌面を編
んでいくことに徹したい.少なくとも,この状況において,なお出版を
めざそうという若い世代を失望させるようなことだけはするまい,と思う.
熊谷伸一郎(本誌編集長)
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寺島 実郎
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