『世界』メールマガジン/2018年12月号 【特集1:移民社会への覚悟】 【特集2:米国政治の変化と基層】
2018/11/12 (Mon) 11:00
■■---------------------------------------------------------
■■ 『世界』メールマガジン/2018年12月号
■■ vol.#0042
■■---------------------------------------------------------
=============================================================
■『世界』2018年12月号(第915号)好評発売中
2018年11月8日発行
定価(本体850円+税)
=============================================================
▼本号の目次
特集/世界の潮/注目記事/連載/グラビア/編集後記/
『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集1┃移民社会への覚悟
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈インタビュー〉
移民社会という新しい広場へ
平田オリザ(劇作家)
〈提言〉
持続可能な多文化共生社会に向けた移民統合政策
近藤 敦(名城大学)
〈徹底検証〉
外国人労働者受入れ制度の新方針
指宿昭一(弁護士)
〈報告〉
移民社会の〈闘う民主主義〉――移住者から見たドイツの苦闘
辛淑玉(人材育成コンサルタント)
〈歪みの淵源〉
戦後日本の外国人政策を検証し,現在を憂う
田中 宏(一橋大学名誉教授)
〈インタビュー〉
日本型移民社会は可能か
坂中英徳(移民政策研究所所長)
〈もうひとつのイシュー〉
難民が来ない国の難民鎖国――このままでいいのか?
長有紀枝(立教大学)
〈地域社会の挑戦〉
〈ジモト〉をつくる外国人教育――不就学ゼロをめざして
小島祥美(愛知淑徳大学)
┏━━━┓
┃特集2┃米国政治の変化と基層
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈報告〉
海洋プラスチック汚染とは何か(下)――「使い捨て」は許されない時代へ
枝廣淳子(大学院大学至善館)
〈提起〉
「分断のナラティブ」を超えて――多文化都市の新たな挑戦
森千香子(一橋大学)
〈中間選挙に見る変動〉
○民主党を変革しつつある社会主義者たち――グラスルーツの運動はアメリカを変えるか
宮前ゆかり(リサーチャー・翻訳家)
○トランプ化する共和党――アメリカにおける保守主義運動の変質、もしくは終焉
中山俊宏(慶應義塾大学)
〈対談〉
アメリカという「国」をつくるもの――冷戦後の世界に通底する地域主義
コリン・ウッダード(歴史家・ジャーナリスト)×松原宏之(立教大学)
〈検証〉
危険な中国?--トランプ政権の軍事戦略
西川純子(獨協大学名誉教授)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈沖縄の選択〉
○インタビュー・沖縄は自治と平和を選びとった
稲嶺 進(前名護市長)
○メディアが捕まえきれない「若者」――ネット〈デマ戦争〉の始まり
與那覇里子(沖縄タイムス)・下地由実子(沖縄タイムス)
○沖縄アイデンティティのポジティブな変容
三山 喬(ジャーナリスト)
○もっと風を吹かせる――県民投票で民意を重ねて示す
元山仁士郎(「辺野古」県民投票代表)
〈直言〉
体験的『新潮45』論――保守論壇の劣化の軌跡
斎藤貴男(ジャーナリスト)
〈背景を問う〉
「対話」論の陥穽――差別をはびこらせる言説とは
二階堂友紀(朝日新聞)
〈〈1968〉の射程〉
「われらを救済したまうな」――〈1968〉ファム・コン・ティエンのベトナム戦争
野平宗弘(東京外国語大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇異形の条例が照射する現実--東京都人権尊重条例をどう見るか
大石泰彦(青山学院大学)
◇二〇一八年夏,異常気象時代への警笛
木本昌秀(東京大学)
◇シリア「世紀の取引」――内戦収束後のゆくえ
青山弘之(東京外国語大学)
◇“最後の関頭”香港の報道・言論の自由――外国人記者会副会長のビザ拒否
高橋政陽(著述家)
◇相次ぐ生活保護基準の引き下げにどう対抗するか
尾藤廣喜(弁護士)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●パチンコ哀歌(エレジー)【第8回・最終回】
大衆娯楽か、ギャンブルか
古川美穂(フリーライター)
●神を捨て,神になった男 確定死刑囚・袴田巖【第22回・最終回】
坂を登りつづける気魄
青柳雄介(ジャーナリスト)
●新語解題【第10回・最終回】
「スポ根」――敗れゆく者たちの「物語」
稲泉 連(ノンフィクション作家)
●アパレル興亡【第16回】
黒木 亮(作家)
●海の底から【第20回】
金石範(作家)
●私的小豆島名所【その41】
内澤旬子(イラストルポライター)
●映像世界の冒険者たち【第8回】
復活の時に映像は到来する――ジャン=リュック・ゴダール(後篇)
四方田犬彦(比較文学・映画研究家)
●中国新建築文化論【第19回】
建築プレファブ化を目指して――国と建築家,並走する取り組み
市川紘司(明治大学助教)
●沖縄(シマ)という窓
ヤマトもピッチに立っている
親川志奈子(オキスタ107)
●原発月報――(18・9~10)
福島原発事故記録チーム
●片山善博の「日本を診る」【第109回】
日本は法治国家か――消費税率「首相判断」報道にみる租税法定主義の崩壊
片山善博(早稲田大学)
●脳力のレッスン【200】
人類史における宗教の淵源--一七世紀オランダからの視界(その52)
寺島実郎
●世界論壇月評
朱建栄・竹田いさみ・吉田文彦・石郷岡建
●ドキュメント激動の南北朝鮮(256)(18・9~10)
編集部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○グラビア
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○特別招待作品
聖地の憂い
中筋 純(フリーカメラマン)
○A SHOT OF THE WORLD
○表紙の言葉
鈴木邦弘(写真家)
○表紙写真= 鈴木邦弘 デザイン= 赤崎正一+ 佐野裕哉
○グラビアについて(公募規定)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○読者投句・岩波俳句
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
選・文 池田澄子(俳人)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
神ならぬ私たちは,メディアを通じてしか世界で何が起きているのかを
認識することはできない.正確な事実を掘り起こして伝え,権力を監視し,
あらゆる出来事について解釈し,論評し,討議する.それがメディアの役
割であるが,むろんのこと,そのすべては個々の,生きている人間が担っ
ている.不正や腐敗を追及され批判されることを権力の側が厭い,口を開
く人間を弾圧しようとすることは避けられない.
10月2日,結婚のために書類をとりにきた一人のジャーナリスト,婚約
者を外に残して領事館の中に入ったジャマル・カショギ氏を,サウジアラ
ビア政府は計画的に殺害した.許されざる蛮行である.
カショギ氏は,生前に発表した最後の論考となったワシントン・ポスト
紙への寄稿で,サウジアラビア政府によるイエメンへの軍事介入が,子ど
もたちをはじめイエメンの無辜の民衆を殺害していると強く批判し,「残酷
なこの戦争が長く続くほど……イエメンの人々は貧困やコレラ禍,水不足
を克服し,国を再建することに忙殺されることになるだろう.(サウジア
ラビアのムハンマド・ビン・サルマン)皇太子は暴力を終わらせ,イスラ
ム教発祥の地としての尊厳を回復すべきだ」と述べた.これが絶筆となっ
た.
本誌はこれまで繰り返しサウジアラビアによるイエメン介入――世界で
もっとも厳しい困難に直面しているイエメンの民衆への爆撃――を取り上
げてきた(2017年1月号の佐藤寛「人道危機に直面するイエメン」,同8月
号「忘れられた戦争 イエメンの人々を襲う人道的崩壊」,9月号の村田
慎二郎「継続する空爆,蔓延するコレラ いま,イエメンで起きているこ
と」).生命を奪われたカショギ氏の冥福を祈りつつ,これまで以上にこ
の地域の状況を誤りなく伝えていく役割を果たしたいと思う.
この殺害事件にかかわる日本の報道は,ここでも「政局的」で浅薄なも
のに終始している.今号の論壇月評で紹介されている記事と比較すれば一
目瞭然である.本質に迫る言説は,東京新聞(10月20日付)に掲載され
た師岡カリーマ氏の「『死』に加担したのは」と題するコラムなど,ごく
一部に例外的に見られるだけであった.
* * *
一年の締めくくりとなるこの12月号で,「パチンコ哀歌」「神を捨て,神
になった男 確定死刑囚・袴田巖」「私的小豆島名所」「新語解題」と4つ
の連載が終了する.どれも好評の連載で,編集部も毎号,原稿が届くのを
楽しみにしていた.袴田さんの冤罪再審をめぐっては,今後も継続的に取
り上げていきたいと思っている.ご執筆いただいた著者の方々に心より御礼
を申し上げます.
次号,2019年1月号では,新しい連載をはじめ,いくつかの試みを編集部
で議論をしながら準備を進めている.ご期待ください.
* * *
韓国光州市の「5・18民主化運動記録館」より連絡があり,1980年5月の
光州事件に関する各国の報道についての展示コーナーがあるが,日本の報道
では「暴動」と報ずる某全国紙の展示しかないため,当時の『世界』の現物
を展示したい,とのことであった.1980年7月号~12月号の希望だが,編集
部にもすでに原本しか存在しないため,寄贈してもよいという読者の方がお
られましたら編集部までご一報ください.
熊谷伸一郎(本誌編集長)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
~~『世界』から生まれた本~~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎ひとはなぜ戦争をするのか 脳力のレッスンV
寺島 実郎
定価(本体1700円+税)
http://iwnm.jp/024533
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
~~「WEB世界」のご案内~~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
雑誌『世界』のウェブマガジン、「WEB世界」をはじめました
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
*WEB版もぜひ、ご覧ください
===============================================================
◇「webいわなみ たねをまく」(岩波書店のウェブマガジン)もはじめました
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
------------------------------------------------------------
登録情報の編集・解除は,こちらよりお願いいたします.
http://iwnm.jp/MM
---------------------------------------------------------------
□『世界』メールマガジン
〒101-8002 東京都千代田区一ツ橋2-5-5
E-Mail: sekai@iwanami.co.jp
WEB: http://iwnm.jp/sekai
Twitter: https://twitter.com/WEB_SEKAI
◇本誌のご注文はお近くの書店か小社営業部宛てにお願いいたします.
岩波書店営業部読者係(TEL:03-5210-4111,FAX:03-3263-6999)
===============================================================
■■ 『世界』メールマガジン/2018年12月号
■■ vol.#0042
■■---------------------------------------------------------
=============================================================
■『世界』2018年12月号(第915号)好評発売中
2018年11月8日発行
定価(本体850円+税)
=============================================================
▼本号の目次
特集/世界の潮/注目記事/連載/グラビア/編集後記/
『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集1┃移民社会への覚悟
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈インタビュー〉
移民社会という新しい広場へ
平田オリザ(劇作家)
〈提言〉
持続可能な多文化共生社会に向けた移民統合政策
近藤 敦(名城大学)
〈徹底検証〉
外国人労働者受入れ制度の新方針
指宿昭一(弁護士)
〈報告〉
移民社会の〈闘う民主主義〉――移住者から見たドイツの苦闘
辛淑玉(人材育成コンサルタント)
〈歪みの淵源〉
戦後日本の外国人政策を検証し,現在を憂う
田中 宏(一橋大学名誉教授)
〈インタビュー〉
日本型移民社会は可能か
坂中英徳(移民政策研究所所長)
〈もうひとつのイシュー〉
難民が来ない国の難民鎖国――このままでいいのか?
長有紀枝(立教大学)
〈地域社会の挑戦〉
〈ジモト〉をつくる外国人教育――不就学ゼロをめざして
小島祥美(愛知淑徳大学)
┏━━━┓
┃特集2┃米国政治の変化と基層
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈報告〉
海洋プラスチック汚染とは何か(下)――「使い捨て」は許されない時代へ
枝廣淳子(大学院大学至善館)
〈提起〉
「分断のナラティブ」を超えて――多文化都市の新たな挑戦
森千香子(一橋大学)
〈中間選挙に見る変動〉
○民主党を変革しつつある社会主義者たち――グラスルーツの運動はアメリカを変えるか
宮前ゆかり(リサーチャー・翻訳家)
○トランプ化する共和党――アメリカにおける保守主義運動の変質、もしくは終焉
中山俊宏(慶應義塾大学)
〈対談〉
アメリカという「国」をつくるもの――冷戦後の世界に通底する地域主義
コリン・ウッダード(歴史家・ジャーナリスト)×松原宏之(立教大学)
〈検証〉
危険な中国?--トランプ政権の軍事戦略
西川純子(獨協大学名誉教授)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈沖縄の選択〉
○インタビュー・沖縄は自治と平和を選びとった
稲嶺 進(前名護市長)
○メディアが捕まえきれない「若者」――ネット〈デマ戦争〉の始まり
與那覇里子(沖縄タイムス)・下地由実子(沖縄タイムス)
○沖縄アイデンティティのポジティブな変容
三山 喬(ジャーナリスト)
○もっと風を吹かせる――県民投票で民意を重ねて示す
元山仁士郎(「辺野古」県民投票代表)
〈直言〉
体験的『新潮45』論――保守論壇の劣化の軌跡
斎藤貴男(ジャーナリスト)
〈背景を問う〉
「対話」論の陥穽――差別をはびこらせる言説とは
二階堂友紀(朝日新聞)
〈〈1968〉の射程〉
「われらを救済したまうな」――〈1968〉ファム・コン・ティエンのベトナム戦争
野平宗弘(東京外国語大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇異形の条例が照射する現実--東京都人権尊重条例をどう見るか
大石泰彦(青山学院大学)
◇二〇一八年夏,異常気象時代への警笛
木本昌秀(東京大学)
◇シリア「世紀の取引」――内戦収束後のゆくえ
青山弘之(東京外国語大学)
◇“最後の関頭”香港の報道・言論の自由――外国人記者会副会長のビザ拒否
高橋政陽(著述家)
◇相次ぐ生活保護基準の引き下げにどう対抗するか
尾藤廣喜(弁護士)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●パチンコ哀歌(エレジー)【第8回・最終回】
大衆娯楽か、ギャンブルか
古川美穂(フリーライター)
●神を捨て,神になった男 確定死刑囚・袴田巖【第22回・最終回】
坂を登りつづける気魄
青柳雄介(ジャーナリスト)
●新語解題【第10回・最終回】
「スポ根」――敗れゆく者たちの「物語」
稲泉 連(ノンフィクション作家)
●アパレル興亡【第16回】
黒木 亮(作家)
●海の底から【第20回】
金石範(作家)
●私的小豆島名所【その41】
内澤旬子(イラストルポライター)
●映像世界の冒険者たち【第8回】
復活の時に映像は到来する――ジャン=リュック・ゴダール(後篇)
四方田犬彦(比較文学・映画研究家)
●中国新建築文化論【第19回】
建築プレファブ化を目指して――国と建築家,並走する取り組み
市川紘司(明治大学助教)
●沖縄(シマ)という窓
ヤマトもピッチに立っている
親川志奈子(オキスタ107)
●原発月報――(18・9~10)
福島原発事故記録チーム
●片山善博の「日本を診る」【第109回】
日本は法治国家か――消費税率「首相判断」報道にみる租税法定主義の崩壊
片山善博(早稲田大学)
●脳力のレッスン【200】
人類史における宗教の淵源--一七世紀オランダからの視界(その52)
寺島実郎
●世界論壇月評
朱建栄・竹田いさみ・吉田文彦・石郷岡建
●ドキュメント激動の南北朝鮮(256)(18・9~10)
編集部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○グラビア
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○特別招待作品
聖地の憂い
中筋 純(フリーカメラマン)
○A SHOT OF THE WORLD
○表紙の言葉
鈴木邦弘(写真家)
○表紙写真= 鈴木邦弘 デザイン= 赤崎正一+ 佐野裕哉
○グラビアについて(公募規定)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○読者投句・岩波俳句
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
選・文 池田澄子(俳人)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
神ならぬ私たちは,メディアを通じてしか世界で何が起きているのかを
認識することはできない.正確な事実を掘り起こして伝え,権力を監視し,
あらゆる出来事について解釈し,論評し,討議する.それがメディアの役
割であるが,むろんのこと,そのすべては個々の,生きている人間が担っ
ている.不正や腐敗を追及され批判されることを権力の側が厭い,口を開
く人間を弾圧しようとすることは避けられない.
10月2日,結婚のために書類をとりにきた一人のジャーナリスト,婚約
者を外に残して領事館の中に入ったジャマル・カショギ氏を,サウジアラ
ビア政府は計画的に殺害した.許されざる蛮行である.
カショギ氏は,生前に発表した最後の論考となったワシントン・ポスト
紙への寄稿で,サウジアラビア政府によるイエメンへの軍事介入が,子ど
もたちをはじめイエメンの無辜の民衆を殺害していると強く批判し,「残酷
なこの戦争が長く続くほど……イエメンの人々は貧困やコレラ禍,水不足
を克服し,国を再建することに忙殺されることになるだろう.(サウジア
ラビアのムハンマド・ビン・サルマン)皇太子は暴力を終わらせ,イスラ
ム教発祥の地としての尊厳を回復すべきだ」と述べた.これが絶筆となっ
た.
本誌はこれまで繰り返しサウジアラビアによるイエメン介入――世界で
もっとも厳しい困難に直面しているイエメンの民衆への爆撃――を取り上
げてきた(2017年1月号の佐藤寛「人道危機に直面するイエメン」,同8月
号「忘れられた戦争 イエメンの人々を襲う人道的崩壊」,9月号の村田
慎二郎「継続する空爆,蔓延するコレラ いま,イエメンで起きているこ
と」).生命を奪われたカショギ氏の冥福を祈りつつ,これまで以上にこ
の地域の状況を誤りなく伝えていく役割を果たしたいと思う.
この殺害事件にかかわる日本の報道は,ここでも「政局的」で浅薄なも
のに終始している.今号の論壇月評で紹介されている記事と比較すれば一
目瞭然である.本質に迫る言説は,東京新聞(10月20日付)に掲載され
た師岡カリーマ氏の「『死』に加担したのは」と題するコラムなど,ごく
一部に例外的に見られるだけであった.
* * *
一年の締めくくりとなるこの12月号で,「パチンコ哀歌」「神を捨て,神
になった男 確定死刑囚・袴田巖」「私的小豆島名所」「新語解題」と4つ
の連載が終了する.どれも好評の連載で,編集部も毎号,原稿が届くのを
楽しみにしていた.袴田さんの冤罪再審をめぐっては,今後も継続的に取
り上げていきたいと思っている.ご執筆いただいた著者の方々に心より御礼
を申し上げます.
次号,2019年1月号では,新しい連載をはじめ,いくつかの試みを編集部
で議論をしながら準備を進めている.ご期待ください.
* * *
韓国光州市の「5・18民主化運動記録館」より連絡があり,1980年5月の
光州事件に関する各国の報道についての展示コーナーがあるが,日本の報道
では「暴動」と報ずる某全国紙の展示しかないため,当時の『世界』の現物
を展示したい,とのことであった.1980年7月号~12月号の希望だが,編集
部にもすでに原本しか存在しないため,寄贈してもよいという読者の方がお
られましたら編集部までご一報ください.
熊谷伸一郎(本誌編集長)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
~~『世界』から生まれた本~~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎ひとはなぜ戦争をするのか 脳力のレッスンV
寺島 実郎
定価(本体1700円+税)
http://iwnm.jp/024533
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
~~「WEB世界」のご案内~~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
雑誌『世界』のウェブマガジン、「WEB世界」をはじめました
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
*WEB版もぜひ、ご覧ください
===============================================================
◇「webいわなみ たねをまく」(岩波書店のウェブマガジン)もはじめました
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
------------------------------------------------------------
登録情報の編集・解除は,こちらよりお願いいたします.
http://iwnm.jp/MM
---------------------------------------------------------------
□『世界』メールマガジン
〒101-8002 東京都千代田区一ツ橋2-5-5
E-Mail: sekai@iwanami.co.jp
WEB: http://iwnm.jp/sekai
Twitter: https://twitter.com/WEB_SEKAI
◇本誌のご注文はお近くの書店か小社営業部宛てにお願いいたします.
岩波書店営業部読者係(TEL:03-5210-4111,FAX:03-3263-6999)
===============================================================