『世界』メールマガジン/2019年4月号 【特集1:権威主義という罠】 【特集2:民主主義を鍛える地方自治】
2019/03/12 (Tue) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2019年4月号
■■ vol.#0046
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■『世界』2019年4月号(第919号)好評発売中
2019年3月8日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/世界の潮/注目記事/連載/グラビア/編集後記/
『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集1┃権威主義という罠
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈ラテンアメリカの経験〉
独裁と権威主義をどう批判するか
太田昌国(現代企画室)
〈分析〉
進化する権威主義――なぜ民主主義は劣化してきたのか
宇山智彦(北海道大学)
〈法則性〉
「ポピュリスト統治」がもたらすもの
ヤシャ・モンク(ジョンズ・ホプキンス大学),ジョーダン・カイル(トニー・ブレア・グローバルチェンジ研究所),訳=吉田徹(北海道大学),増田穂
〈検証〉
「強い大統領」エルドアンに導かれるトルコ
今井宏平(JETROアジア経済研究所)
〈対談〉
グローバル化と民主主義の危機――タイ政治史が物語るもの
トンチャイ・ウィニッチャクン(ウィスコンシン大学マディソン校)×山本信人(慶應義塾大学)
〈革命政権の現在〉
ニカラグア,かくも猛々しきまでに夢見られた革命
ファブリシオ・メヒア=マドリ(文筆家) 訳・解説=飯島みどり(立教大学)
〈日本の今〉
見過ごされる「ポピュリストなき独裁」――日本における対米追随型の権威主義化
中野晃一(上智大学)
┏━━━┓
┃特集2┃民主主義を鍛える地方自治
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈ディストピア〉
都構想・万博・カジノ――分断都市大阪の民主主義
森 裕之(立命館大学)
〈連載「日本を診る」(第113回)〉
公聴機能の回復が,地方自治健全化の第一歩だ――地方教育行政から考える
片山善博(早稲田大学)
〈ハイテクエリートの街?〉
「創造都市」が生む未曽有の格差社会――アマゾンのニューヨーク進出騒動から読む
矢作 弘(龍谷大学)
〈ルポ〉
地域をつくる図書館
大江正章(ジャーナリスト・編集者)
〈心の復興へ〉
被災地復興と幸福感
五十嵐敬喜(法政大学名誉教授)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈米国は何を狙うか〉
ベネズエラで何が起きているか
伊高浩昭(ジャーナリスト)
〈手記〉
いま再び民衆の裁きと闘いを――「破局の後」八年を生きて
村田 弘(福島原発かながわ訴訟原告団)
〈記憶・真実・正義〉
○記憶を正義のために――アルゼンチン 国家性暴力サバイバーの告発
グラシエラ・ガルシア=ロメロ(「強制失踪」生還者),訳・解説=石田智恵(早稲田大学)
○不処罰の連鎖・無責任の体制に抗する――アルゼンチンの闘いに触れて
渡辺美奈(wam館長),石田智恵(早稲田大学)
〈次の課題〉
辺野古に積み重ねられた記憶について――住民たちの二三年、そして六四年
熊本博之(明星大学)
〈インタビュー〉
百年前のアナキストからの「贈物」――映画『金子文子と朴烈(パクヨル)』日本公開に寄せて
イ・ジュンイク(映画監督)+チェ・ヒソ(俳優)(聞き手・構成=林るみ(朝日新聞))
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇ローマ法王の外交戦略――多様化重視で教会改革
植田粧子
◇結婚の自由と平等を求めて――同性婚訴訟の要点
南川麻由子
◇不正統計の何が問題なのか―統計法の理念から離れる行政
池上洋通
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●【新連載・第1回】すぐそこにある世界―
ノコギリに笑う人々
師岡カリーマ・エルサムニー(文筆家)
●ルポ 孤塁【第2回】
消防士たちの3・11――1号機爆発
吉田千亜(ジャーナリスト)
●沖縄(シマ)という窓
実現不可能な新基地 沖縄の強さは増した
松元 剛(琉球新報)
●我が総括――体験的戦後メディア史【第4回】
特異の政治家・田中角栄
田原総一朗(ジャーナリスト)
●麻薬現代史【第4回】
麻薬規制条約と人びとの物語
藤野 彰(元国連職員)
●アパレル興亡【第20回】
黒木 亮(作家)
●海の底から【第24回・最終回】
金石範(作家)
●自衛隊と災害救助【第5回】
さとうきび畑がざわめく島で
島本慈子(ジャーナリスト)
●ハンセン病回復者の語り・家族の語り【第7回】
助け合って社会で生きる
黒坂愛衣(東北学院大学),福岡安則(埼玉大学名誉教授)
●原発月報――(19・1~2)
福島原発事故記録チーム
●中国新建築文化論【第22回】
胡同の想像力──「網紅建築師」と呼ばれる建築家,青山周平
市川紘司(明治大学助教)
●メディア批評【第136回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●脳力のレッスン【204】
キリスト教の東方展開の基点としてのビザンツ帝国
―― 一七世紀オランダからの視界(その55)
寺島実郎
●世界論壇月評
朱建栄・竹田いさみ・吉田文彦・石郷岡建
●ドキュメント激動の南北朝鮮【第260回】(一九・一~二)
米朝首脳会談をめぐる活発な外交
編集部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○グラビア
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○特別招待作品
When The Water Rises
エミン・オズメン(写真家)
○ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
○表紙写真=ケニア・マガディ湖.二〇一八年三月二一日。
(Solent News/アフロ)
デザイン= 赤崎正一+ 佐野裕哉
○グラビアについて(公募規定)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
*読者談話室
*アムネスティ通信
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
舞台裏の話で恐縮だが,今号の編集にはさまざまな難しさがあった.本誌の
校了作業はおおむね毎月末に行なわれるのだが,解説記事を掲載予定であった
ナイジェリア大統領選挙が一週間延期されて二三日実施,いまだ結果は未公表
で記事は掲載できず,二四日に沖縄県民投票が実施され,ベネズエラ情勢は明
日どうなるかもわからず,米朝首脳会談はまさに本稿執筆当日夜に開催と,月
刊誌としてはやりにくい日程であった.
本誌の社会的役割が速報性にあるのではないことは明らかだが,いま世界で
起きていることの意味を深く考えようという読者に情報と論考を提供するうえ
で,タイミングはやはり無視できない重要な要素である.執筆者の方々や印刷
所などの協力を得ながら,今後とも時宜を得た論考の掲載に努力していきたい.
ベネズエラ情勢をめぐっては,トランプ政権の目線を自明のものとして内在
化した情報があまりに目につくが,今号では,伊高浩昭氏の情勢分析,および
特集1において太田昌国氏の論考を掲載した.二つの論考をあわせ読んでいた
だければ,と思う.余談だが,故チャベス大統領の訪日時,偶然,都内のホテ
ルのロビーで見かけたことがある.周囲の人々の求めに応じて誰彼となく握手
し,屈強な体躯をかがめてベビーカーの赤ん坊の頬をなでていた.民衆の絶大
な支持を得て「ボリバル革命」を成功裏に進め,国際外交の舞台でも脚光を浴
びていた時期――だが,わずか一〇年前のことである.
すでに多くの血が流れている.「経済制裁をしながら援助とは何事」(伊高論
文)という矛盾もさることながら,アメリカの対外干渉が生み出してきた,今
も生み出している,数々の暴力を想起すべきだろう.
今号に掲載したアルゼンチンの性暴力被害者,グラシエラ・ガルシア=ロメ
ロさんの証言,そして最終回を迎えた「海の底から」で,作家により息を吹き
込まれ再び証言を我々に伝えている安正恵の体験,そのどちらとも,私たちが
暮らし,許容しているこの現在と社会につながっている.
個々の,凄絶としか言いようのない体験を相対化することはできないし,安
易な類型化はまた別の暴力性を含むだろう.だが,いまベネズエラで起きつつ
あることと,それらの暴力の体験を切り離して考えないほうがいいのではないか.
超大国の干渉とそれに隷従する軍政や独裁政権の暴力――魯迅の言った「暴
君治下の臣民は,たいてい暴君よりもっと暴である」という言葉を思い出させ
るこの構図は,今号特集で中野晃一氏が鋭く指摘するように,さまざまなバリ
エーションをとりつつ,日本でも確実に根を張っている.辺野古新基地建設を
めぐる現政権の横暴は,その象徴だろう.
その沖縄で,辺野古の埋め立てに反対する民意が,決定的な形で示された.
一時は与党議員の介入などにより投票の全県実施が危ぶまれたが,本誌昨年
一二月号に寄稿してもらった元山仁士郎さんら若い世代の懸命の取り組みによっ
て状況が大きく動いた.脱帽して敬意を表したい.ここには「精神と実践のリ
レー」(太田昌国論文参照)が確実に息づいている.投票翌日から工事を強行さ
せた政府には着帽するしかないが,いま問われているのは,今号読者投稿欄で
大学院生の方が指摘されているように,「本土」側がどう応答するか,だろう.
次号でも引き続き取り上げていきたい.
熊谷伸一郎(本誌編集長)
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~~『世界』から生まれた本~~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎ひとはなぜ戦争をするのか 脳力のレッスンV
寺島 実郎
定価(本体1700円+税)
http://iwnm.jp/024533
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のウェブマガジン、「WEB世界」をはじめました
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
*WEB版もぜひ、ご覧ください
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2019年3月8日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/世界の潮/注目記事/連載/グラビア/編集後記/
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┃特集1┃権威主義という罠
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈ラテンアメリカの経験〉
独裁と権威主義をどう批判するか
太田昌国(現代企画室)
〈分析〉
進化する権威主義――なぜ民主主義は劣化してきたのか
宇山智彦(北海道大学)
〈法則性〉
「ポピュリスト統治」がもたらすもの
ヤシャ・モンク(ジョンズ・ホプキンス大学),ジョーダン・カイル(トニー・ブレア・グローバルチェンジ研究所),訳=吉田徹(北海道大学),増田穂
〈検証〉
「強い大統領」エルドアンに導かれるトルコ
今井宏平(JETROアジア経済研究所)
〈対談〉
グローバル化と民主主義の危機――タイ政治史が物語るもの
トンチャイ・ウィニッチャクン(ウィスコンシン大学マディソン校)×山本信人(慶應義塾大学)
〈革命政権の現在〉
ニカラグア,かくも猛々しきまでに夢見られた革命
ファブリシオ・メヒア=マドリ(文筆家) 訳・解説=飯島みどり(立教大学)
〈日本の今〉
見過ごされる「ポピュリストなき独裁」――日本における対米追随型の権威主義化
中野晃一(上智大学)
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┃特集2┃民主主義を鍛える地方自治
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈ディストピア〉
都構想・万博・カジノ――分断都市大阪の民主主義
森 裕之(立命館大学)
〈連載「日本を診る」(第113回)〉
公聴機能の回復が,地方自治健全化の第一歩だ――地方教育行政から考える
片山善博(早稲田大学)
〈ハイテクエリートの街?〉
「創造都市」が生む未曽有の格差社会――アマゾンのニューヨーク進出騒動から読む
矢作 弘(龍谷大学)
〈ルポ〉
地域をつくる図書館
大江正章(ジャーナリスト・編集者)
〈心の復興へ〉
被災地復興と幸福感
五十嵐敬喜(法政大学名誉教授)
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◆注目記事
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〈米国は何を狙うか〉
ベネズエラで何が起きているか
伊高浩昭(ジャーナリスト)
〈手記〉
いま再び民衆の裁きと闘いを――「破局の後」八年を生きて
村田 弘(福島原発かながわ訴訟原告団)
〈記憶・真実・正義〉
○記憶を正義のために――アルゼンチン 国家性暴力サバイバーの告発
グラシエラ・ガルシア=ロメロ(「強制失踪」生還者),訳・解説=石田智恵(早稲田大学)
○不処罰の連鎖・無責任の体制に抗する――アルゼンチンの闘いに触れて
渡辺美奈(wam館長),石田智恵(早稲田大学)
〈次の課題〉
辺野古に積み重ねられた記憶について――住民たちの二三年、そして六四年
熊本博之(明星大学)
〈インタビュー〉
百年前のアナキストからの「贈物」――映画『金子文子と朴烈(パクヨル)』日本公開に寄せて
イ・ジュンイク(映画監督)+チェ・ヒソ(俳優)(聞き手・構成=林るみ(朝日新聞))
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◇世界の潮
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◇ローマ法王の外交戦略――多様化重視で教会改革
植田粧子
◇結婚の自由と平等を求めて――同性婚訴訟の要点
南川麻由子
◇不正統計の何が問題なのか―統計法の理念から離れる行政
池上洋通
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●連載
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●【新連載・第1回】すぐそこにある世界―
ノコギリに笑う人々
師岡カリーマ・エルサムニー(文筆家)
●ルポ 孤塁【第2回】
消防士たちの3・11――1号機爆発
吉田千亜(ジャーナリスト)
●沖縄(シマ)という窓
実現不可能な新基地 沖縄の強さは増した
松元 剛(琉球新報)
●我が総括――体験的戦後メディア史【第4回】
特異の政治家・田中角栄
田原総一朗(ジャーナリスト)
●麻薬現代史【第4回】
麻薬規制条約と人びとの物語
藤野 彰(元国連職員)
●アパレル興亡【第20回】
黒木 亮(作家)
●海の底から【第24回・最終回】
金石範(作家)
●自衛隊と災害救助【第5回】
さとうきび畑がざわめく島で
島本慈子(ジャーナリスト)
●ハンセン病回復者の語り・家族の語り【第7回】
助け合って社会で生きる
黒坂愛衣(東北学院大学),福岡安則(埼玉大学名誉教授)
●原発月報――(19・1~2)
福島原発事故記録チーム
●中国新建築文化論【第22回】
胡同の想像力──「網紅建築師」と呼ばれる建築家,青山周平
市川紘司(明治大学助教)
●メディア批評【第136回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●脳力のレッスン【204】
キリスト教の東方展開の基点としてのビザンツ帝国
―― 一七世紀オランダからの視界(その55)
寺島実郎
●世界論壇月評
朱建栄・竹田いさみ・吉田文彦・石郷岡建
●ドキュメント激動の南北朝鮮【第260回】(一九・一~二)
米朝首脳会談をめぐる活発な外交
編集部
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○グラビア
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○特別招待作品
When The Water Rises
エミン・オズメン(写真家)
○ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
○表紙写真=ケニア・マガディ湖.二〇一八年三月二一日。
(Solent News/アフロ)
デザイン= 赤崎正一+ 佐野裕哉
○グラビアについて(公募規定)
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○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
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*読者談話室
*アムネスティ通信
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◇編集後記
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舞台裏の話で恐縮だが,今号の編集にはさまざまな難しさがあった.本誌の
校了作業はおおむね毎月末に行なわれるのだが,解説記事を掲載予定であった
ナイジェリア大統領選挙が一週間延期されて二三日実施,いまだ結果は未公表
で記事は掲載できず,二四日に沖縄県民投票が実施され,ベネズエラ情勢は明
日どうなるかもわからず,米朝首脳会談はまさに本稿執筆当日夜に開催と,月
刊誌としてはやりにくい日程であった.
本誌の社会的役割が速報性にあるのではないことは明らかだが,いま世界で
起きていることの意味を深く考えようという読者に情報と論考を提供するうえ
で,タイミングはやはり無視できない重要な要素である.執筆者の方々や印刷
所などの協力を得ながら,今後とも時宜を得た論考の掲載に努力していきたい.
ベネズエラ情勢をめぐっては,トランプ政権の目線を自明のものとして内在
化した情報があまりに目につくが,今号では,伊高浩昭氏の情勢分析,および
特集1において太田昌国氏の論考を掲載した.二つの論考をあわせ読んでいた
だければ,と思う.余談だが,故チャベス大統領の訪日時,偶然,都内のホテ
ルのロビーで見かけたことがある.周囲の人々の求めに応じて誰彼となく握手
し,屈強な体躯をかがめてベビーカーの赤ん坊の頬をなでていた.民衆の絶大
な支持を得て「ボリバル革命」を成功裏に進め,国際外交の舞台でも脚光を浴
びていた時期――だが,わずか一〇年前のことである.
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文)という矛盾もさることながら,アメリカの対外干渉が生み出してきた,今
も生み出している,数々の暴力を想起すべきだろう.
今号に掲載したアルゼンチンの性暴力被害者,グラシエラ・ガルシア=ロメ
ロさんの証言,そして最終回を迎えた「海の底から」で,作家により息を吹き
込まれ再び証言を我々に伝えている安正恵の体験,そのどちらとも,私たちが
暮らし,許容しているこの現在と社会につながっている.
個々の,凄絶としか言いようのない体験を相対化することはできないし,安
易な類型化はまた別の暴力性を含むだろう.だが,いまベネズエラで起きつつ
あることと,それらの暴力の体験を切り離して考えないほうがいいのではないか.
超大国の干渉とそれに隷従する軍政や独裁政権の暴力――魯迅の言った「暴
君治下の臣民は,たいてい暴君よりもっと暴である」という言葉を思い出させ
るこの構図は,今号特集で中野晃一氏が鋭く指摘するように,さまざまなバリ
エーションをとりつつ,日本でも確実に根を張っている.辺野古新基地建設を
めぐる現政権の横暴は,その象徴だろう.
その沖縄で,辺野古の埋め立てに反対する民意が,決定的な形で示された.
一時は与党議員の介入などにより投票の全県実施が危ぶまれたが,本誌昨年
一二月号に寄稿してもらった元山仁士郎さんら若い世代の懸命の取り組みによっ
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次号でも引き続き取り上げていきたい.
熊谷伸一郎(本誌編集長)
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