『世界』メールマガジン/2019年5月号 【特集:生きている大学自治】
2019/04/10 (Wed) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2019年5月号
■■ vol.#0047
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■『世界』2019年5月号(第920号)好評発売中
2019年4月8日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/世界の潮/注目記事/連載/グラビア/編集後記/
『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃ 特集 ┃生きている大学自治
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈問題提起〉
ポスト「教授会自治」時代における大学自治
広田照幸(日本大学)
〈対談〉
大学自治をアップデートする――新たな「公」の確立を目指して
寺崎昌男(東京大学名誉教授)×羽田貴史(東北大学名誉教授)
〈メッセージ〉
私の「大学自治論」――譲れない自由の領域を探り、自由を生き続ける
田中優子(法政大学総長)
〈インタビュー〉
大学は未来を作るコミュニティである――建築が開く可能性
山本理顕(建築家)
〈自由のまなざし〉
タテカンの空間論――大学の縁に立つということ
西郷南海子(京都大学大学院生)
〈改革の視座〉
学生が勉強できる大学へ
大内裕和(中京大学)
〈衝突と和解〉
多様性を生かす学生自治――国際混住寮の課題と挑戦
阿部仁(一橋大学)
〈インタビュー〉
岐阜大学地域科学部はなぜ“生き延びた”のか?――共創のコミュニティに立つ共闘
富樫幸一(岐阜大学),南出吉祥(岐阜大学),聞き手=石黒好美(ライター)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈異色対談〉
「枠」をハミ出し,打って出る(上・人間篇)――ベトナム反戦・ガンダム・精神医療
安彦良和(漫画家)×蟻塚亮二(精神科医)
〈異形の政権〉
アベノミクス 病理の淵源――五つの特徴から
伊東光晴(京都大学名誉教授)
〈民営化する政府〉
歪められる政策形成――企業ロビイ 新たな利権構造
内田聖子(PARC)
〈総括〉
県民投票はどのような地平を拓いたか
武田真一郎(成蹊大学)
〈三・一運動百年 歴史と向き合う〉
○韓国・徴用工判決 原告勝訴後の課題と葛藤
堀山明子(毎日新聞)
○インタビュー 徴用工問題 日韓の「共通項」から道を開く
崔鳳泰(弁護士)
○向き合うこと,顔をそむけること――三・一運動百周年と日本の植民地支配責任
板垣竜太(同志社大学)
〈警鐘〉
労働運動への共謀罪型弾圧が始まっている
海渡雄一(弁護士)
〈大国の動向〉
ナイジェリアの選択――大統領選挙と示されたメッセージ
島田周平(名古屋外国語大学)
〈「炎上」から考える〉
表象はなぜフェミニズムの問題になるのか
小宮友根(東北学院大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇「森林環境・譲与税」という新たな税は森を救うか
橋本淳司(水ジャーナリスト)
◇緊張高まるインド・パキスタン関係
笠井亮平(横浜市立大学非常勤講師)
◇一橋大学アウティング訴訟――大学側の不作為とは何だったのか
川口遼(首都大学東京)
◇ポーランド・グダンスク市長選――ビェドロンの「春」の衝撃
宮崎悠(北海道教育大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●【新連載・第1回】但馬日記
コウノトリの里へ
平田オリザ(劇作家)
●ルポ 孤塁――消防士たちの3・11【第3回】
3号機爆発
吉田千亜(ジャーナリスト)
●自衛隊と災害救助【第6回】
二つの大震災をこえて
島本慈子(ジャーナリスト)
●我が総括――体験的戦後メディア史【第5回】
「風見鶏」中曽根の政治哲学
田原総一朗(ジャーナリスト)
●【イギリス エッセイ選】お許しいただければ
「記憶喪失」(ガードナー)
訳=行方昭夫(東京大学名誉教授)
●日没【第13回】
桐野夏生(作家)
●アパレル興亡【第21回】
黒木 亮(作家)
●映像世界の冒険者たち【第12回】
迫り来る死と世界の没落――デレク・ジャーマン
四方田犬彦(比較文学・映画研究家)
●中国新建築文化論【第23回】
アジア的猥雑さを醸成する空間──「西部の建築家」劉家〓(コン)の西村大院
市川紘司(明治大学助教)
●ハンセン病回復者の語り・家族の語り【第8回】
出会いが導く人生
福岡安則(埼玉大学名誉教授),黒坂愛衣(東北学院大学)
●沖縄(シマ)という窓
平和を一番望んでいるのは障がい者
山城紀子(フリーライター)
●原発月報――(19・2~3)
福島原発事故記録チーム
●メディア批評【第137回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●片山善博の「日本を診る」【114】
地方議会に告ぐ――みっともない議会からワクワクする議会に変わろう
片山善博(早稲田大学)
●脳力のレッスン【205】
中東一神教の近親憎悪 イスラムVS.キリスト教,ユダヤ教
寺島実郎
●世界論壇月評
朱建栄・竹田いさみ・吉田文彦・石郷岡建
●ドキュメント激動の南北朝鮮【261】(一九・二~三)
編集部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○グラビア
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○公募作品174
サンディマンディラム――終の住処
齊藤小弥太(写真家)
○ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
○表紙写真=イスラエルが設置したパレスチナ西岸地区を分断する壁.アーティスト,
バンクシー作品などが描かれている.二〇一八年七月.(Thomas Dworzak/Magnum Photos)
デザイン= 赤崎正一+ 佐野裕哉
○グラビアについて(公募規定)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
*読者談話室
*アムネスティ通信
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
年度末,小学生の息子が通知表とともに持ち帰ってきた,教科化された「道
徳」のプリント.現政権が好みそうな徳目に沿ったコトバを,あの手この手で,
公園遊びを生きがいとする実写版「おさるのジョージ」から引き出そうとして
いる.ご苦労なことと思う.
私が小学生だったとき,通知表の先生のコメントは手書きで,その達筆から,
これが大人の書く文字,コトバなのだな,と感じていた.いまそれを求めるの
は,現場教員の,非人道的でさえある多忙な状況を思えば難しいだろう.
明らかに過大な業務と長時間労働に苦しむ教員,同様に過大な量の宿題に苦
しむ子どもの姿が,今号特集の大内論文で報告されている,明らかに過大な経
済的負担に苦しむ学生たちの姿に重なる.いったい何のための教育なのか,こ
れが私たちの求める教育の姿なのか,と思う.
二度の悲惨な世界大戦を経て,反省したその時の大人たちは,国際連合教育
科学文化機関(ユネスコ)を設立した.その憲章では,冒頭の「戦争は人の心
の中で生まれるものであるから,人の心の中に平和のとりでを築かなければな
らない」という言葉が広く知られるが,それに続く同憲章の次の言葉も印象深い.
「文化の広い普及と正義・自由・平和のための人類の教育とは,人間の尊厳
に欠くことのできないものであり,かつ,すべての国民が相互の援助及び相互
の関心の精神をもって,果たさなければならない神聖な義務である」
子ども自身を主体とする視点に乏しいという時代的制約はあろうが,少なく
とも,小賢しい偽善的打算しかもたらさないのではないかと思われる現「道徳」
のようなものとは雲泥の思想に裏打ちされていることが理解されよう.
思想の欠如.それこそ,教育政策だけではない,現政権の際立った特徴と思
う.現政権から,国際的に通用する思想に裏打ちされた言葉というものを,目
にしたことがない.
対照的な政治の言葉が,今号「メディア批評」や堀山論文で紹介されている,
韓国・文在寅大統領の演説での言葉だ.ここでも記したい.
「過去は変えられないが,未来は変えられる.力を合わせ被害者の苦痛を実
質的に癒すとき日韓は真の親友になる」
過去の植民地支配にかかわる日韓の間の「歴史問題」について,あるべき基
本的な構えはこの言葉に尽きるように思う.
だが,この言葉を受け止めて応答すべき何らの思想も持たない現政権の反応
は,文演説で触れられている犠牲者の人数に噛み付くという,およそ考えうる
限りもっともマンガ的なものであった.三・一運動をめぐる事実関係は今号で
板垣竜太氏が詳細に検証されているので,ぜひお読みいただきたい.
無思想と冷笑の政治,そして今号で海渡雄一氏が警鐘を鳴らしている労組弾
圧のような強権政治が長く続く中で,何を言っても仕方ないという無力感が広
がり,それが少しずつ,この社会の民主主義を根腐れさせていっているように
思われてならない.
その閉塞状況を打開していく力こそ,今号特集のキーワードである,自治と
いう態度にあるのではないかと思う.
武田真一郎氏が,その経過とともに報告されている沖縄県民投票は,その自
治のエネルギーが,若い世代を中心に炸裂した場面でもあった.次号でも引き
続き取り上げたい.
熊谷伸一郎(本誌編集長)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
~~『世界』から生まれた本~~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎ひとはなぜ戦争をするのか 脳力のレッスンV
寺島 実郎
定価(本体1700円+税)
http://iwnm.jp/024533
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*WEB版もぜひ、ご覧ください
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2019年4月8日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/世界の潮/注目記事/連載/グラビア/編集後記/
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┃ 特集 ┃生きている大学自治
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈問題提起〉
ポスト「教授会自治」時代における大学自治
広田照幸(日本大学)
〈対談〉
大学自治をアップデートする――新たな「公」の確立を目指して
寺崎昌男(東京大学名誉教授)×羽田貴史(東北大学名誉教授)
〈メッセージ〉
私の「大学自治論」――譲れない自由の領域を探り、自由を生き続ける
田中優子(法政大学総長)
〈インタビュー〉
大学は未来を作るコミュニティである――建築が開く可能性
山本理顕(建築家)
〈自由のまなざし〉
タテカンの空間論――大学の縁に立つということ
西郷南海子(京都大学大学院生)
〈改革の視座〉
学生が勉強できる大学へ
大内裕和(中京大学)
〈衝突と和解〉
多様性を生かす学生自治――国際混住寮の課題と挑戦
阿部仁(一橋大学)
〈インタビュー〉
岐阜大学地域科学部はなぜ“生き延びた”のか?――共創のコミュニティに立つ共闘
富樫幸一(岐阜大学),南出吉祥(岐阜大学),聞き手=石黒好美(ライター)
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◆注目記事
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〈異色対談〉
「枠」をハミ出し,打って出る(上・人間篇)――ベトナム反戦・ガンダム・精神医療
安彦良和(漫画家)×蟻塚亮二(精神科医)
〈異形の政権〉
アベノミクス 病理の淵源――五つの特徴から
伊東光晴(京都大学名誉教授)
〈民営化する政府〉
歪められる政策形成――企業ロビイ 新たな利権構造
内田聖子(PARC)
〈総括〉
県民投票はどのような地平を拓いたか
武田真一郎(成蹊大学)
〈三・一運動百年 歴史と向き合う〉
○韓国・徴用工判決 原告勝訴後の課題と葛藤
堀山明子(毎日新聞)
○インタビュー 徴用工問題 日韓の「共通項」から道を開く
崔鳳泰(弁護士)
○向き合うこと,顔をそむけること――三・一運動百周年と日本の植民地支配責任
板垣竜太(同志社大学)
〈警鐘〉
労働運動への共謀罪型弾圧が始まっている
海渡雄一(弁護士)
〈大国の動向〉
ナイジェリアの選択――大統領選挙と示されたメッセージ
島田周平(名古屋外国語大学)
〈「炎上」から考える〉
表象はなぜフェミニズムの問題になるのか
小宮友根(東北学院大学)
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◇世界の潮
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◇「森林環境・譲与税」という新たな税は森を救うか
橋本淳司(水ジャーナリスト)
◇緊張高まるインド・パキスタン関係
笠井亮平(横浜市立大学非常勤講師)
◇一橋大学アウティング訴訟――大学側の不作為とは何だったのか
川口遼(首都大学東京)
◇ポーランド・グダンスク市長選――ビェドロンの「春」の衝撃
宮崎悠(北海道教育大学)
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●連載
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●【新連載・第1回】但馬日記
コウノトリの里へ
平田オリザ(劇作家)
●ルポ 孤塁――消防士たちの3・11【第3回】
3号機爆発
吉田千亜(ジャーナリスト)
●自衛隊と災害救助【第6回】
二つの大震災をこえて
島本慈子(ジャーナリスト)
●我が総括――体験的戦後メディア史【第5回】
「風見鶏」中曽根の政治哲学
田原総一朗(ジャーナリスト)
●【イギリス エッセイ選】お許しいただければ
「記憶喪失」(ガードナー)
訳=行方昭夫(東京大学名誉教授)
●日没【第13回】
桐野夏生(作家)
●アパレル興亡【第21回】
黒木 亮(作家)
●映像世界の冒険者たち【第12回】
迫り来る死と世界の没落――デレク・ジャーマン
四方田犬彦(比較文学・映画研究家)
●中国新建築文化論【第23回】
アジア的猥雑さを醸成する空間──「西部の建築家」劉家〓(コン)の西村大院
市川紘司(明治大学助教)
●ハンセン病回復者の語り・家族の語り【第8回】
出会いが導く人生
福岡安則(埼玉大学名誉教授),黒坂愛衣(東北学院大学)
●沖縄(シマ)という窓
平和を一番望んでいるのは障がい者
山城紀子(フリーライター)
●原発月報――(19・2~3)
福島原発事故記録チーム
●メディア批評【第137回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●片山善博の「日本を診る」【114】
地方議会に告ぐ――みっともない議会からワクワクする議会に変わろう
片山善博(早稲田大学)
●脳力のレッスン【205】
中東一神教の近親憎悪 イスラムVS.キリスト教,ユダヤ教
寺島実郎
●世界論壇月評
朱建栄・竹田いさみ・吉田文彦・石郷岡建
●ドキュメント激動の南北朝鮮【261】(一九・二~三)
編集部
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○グラビア
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○公募作品174
サンディマンディラム――終の住処
齊藤小弥太(写真家)
○ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
○表紙写真=イスラエルが設置したパレスチナ西岸地区を分断する壁.アーティスト,
バンクシー作品などが描かれている.二〇一八年七月.(Thomas Dworzak/Magnum Photos)
デザイン= 赤崎正一+ 佐野裕哉
○グラビアについて(公募規定)
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○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
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*読者談話室
*アムネスティ通信
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◇編集後記
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年度末,小学生の息子が通知表とともに持ち帰ってきた,教科化された「道
徳」のプリント.現政権が好みそうな徳目に沿ったコトバを,あの手この手で,
公園遊びを生きがいとする実写版「おさるのジョージ」から引き出そうとして
いる.ご苦労なことと思う.
私が小学生だったとき,通知表の先生のコメントは手書きで,その達筆から,
これが大人の書く文字,コトバなのだな,と感じていた.いまそれを求めるの
は,現場教員の,非人道的でさえある多忙な状況を思えば難しいだろう.
明らかに過大な業務と長時間労働に苦しむ教員,同様に過大な量の宿題に苦
しむ子どもの姿が,今号特集の大内論文で報告されている,明らかに過大な経
済的負担に苦しむ学生たちの姿に重なる.いったい何のための教育なのか,こ
れが私たちの求める教育の姿なのか,と思う.
二度の悲惨な世界大戦を経て,反省したその時の大人たちは,国際連合教育
科学文化機関(ユネスコ)を設立した.その憲章では,冒頭の「戦争は人の心
の中で生まれるものであるから,人の心の中に平和のとりでを築かなければな
らない」という言葉が広く知られるが,それに続く同憲章の次の言葉も印象深い.
「文化の広い普及と正義・自由・平和のための人類の教育とは,人間の尊厳
に欠くことのできないものであり,かつ,すべての国民が相互の援助及び相互
の関心の精神をもって,果たさなければならない神聖な義務である」
子ども自身を主体とする視点に乏しいという時代的制約はあろうが,少なく
とも,小賢しい偽善的打算しかもたらさないのではないかと思われる現「道徳」
のようなものとは雲泥の思想に裏打ちされていることが理解されよう.
思想の欠如.それこそ,教育政策だけではない,現政権の際立った特徴と思
う.現政権から,国際的に通用する思想に裏打ちされた言葉というものを,目
にしたことがない.
対照的な政治の言葉が,今号「メディア批評」や堀山論文で紹介されている,
韓国・文在寅大統領の演説での言葉だ.ここでも記したい.
「過去は変えられないが,未来は変えられる.力を合わせ被害者の苦痛を実
質的に癒すとき日韓は真の親友になる」
過去の植民地支配にかかわる日韓の間の「歴史問題」について,あるべき基
本的な構えはこの言葉に尽きるように思う.
だが,この言葉を受け止めて応答すべき何らの思想も持たない現政権の反応
は,文演説で触れられている犠牲者の人数に噛み付くという,およそ考えうる
限りもっともマンガ的なものであった.三・一運動をめぐる事実関係は今号で
板垣竜太氏が詳細に検証されているので,ぜひお読みいただきたい.
無思想と冷笑の政治,そして今号で海渡雄一氏が警鐘を鳴らしている労組弾
圧のような強権政治が長く続く中で,何を言っても仕方ないという無力感が広
がり,それが少しずつ,この社会の民主主義を根腐れさせていっているように
思われてならない.
その閉塞状況を打開していく力こそ,今号特集のキーワードである,自治と
いう態度にあるのではないかと思う.
武田真一郎氏が,その経過とともに報告されている沖縄県民投票は,その自
治のエネルギーが,若い世代を中心に炸裂した場面でもあった.次号でも引き
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~~『世界』から生まれた本~~
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岩波書店営業部読者係(TEL:03-5210-4111,FAX:03-3263-6999)
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