『世界』メールマガジン/2019年7月号 【特集1:原子力産業の終焉】【特集2:中国と民主主義】
2019/06/10 (Mon) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2019年7月号
■■ vol.#0049
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■『世界』2019年7月号(第922号)好評発売中
2019年6月8日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/世界の潮/注目記事/連載/グラビア/編集後記/
『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集1┃原子力産業の終焉
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈正視すべき実像〉
絶滅寸前のテクノロジー種
マイケル・シュナイダー(アナリスト),訳=田窪雅文(「核情報」主宰)
〈総論〉
原子力発電の凋落――脱炭素社会は自然エネルギーが実現する
大野輝之(自然エネルギー財団常務理事)
〈各国事情〉
世界で競争力を失う原子力発電――最大の米国でも運転終了が相次ぐ
石田雅也(自然エネルギー財団)
〈最新データ〉
原発の本当のコストを評価する
大島堅一(龍谷大学)
〈座談会〉
原発輸出という大失敗――なぜ突き進むのか
鈴木真奈美(ジャーナリスト),深草亜悠美(FoEJAPAN),松久保肇(原子力資料情報室)
〈轍を踏む〉
小型モジュール炉 過ち繰り返す経産省・原子力産業
小澤祥司(環境ジャーナリスト)
〈また「想定外」?〉
原発は温暖化する地球の「時限爆弾」である
鮎川ゆりか(千葉商科大学名誉教授)
〈出口戦略〉
原子力政策の展望――「負の遺産」清算を柱に
鈴木達治郎(長崎大学核兵器廃絶研究センター)
┏━━━┓
┃特集2┃中国と民主主義
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈インタビュー〉
精神の独立と思想の自由を覆い隠せはしない
郭于華(清華大学)
〈発言する覚悟〉
中国知識人たちの言論闘争
𠮷岡桂子(朝日新聞)
〈論考〉
我々の目下の恐れと期待
許章潤(清華大学),訳・解説=阿古智子(東京大学)
〈知られざる記録画〉
天安門に斃れし民衆を北京飯店から俯瞰す――水上勉の見た天安門事件
加藤千洋(平安女学院大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈重ねて説く〉
辺野古新基地は頓挫する――想像以上に深刻な軟弱地盤問題
北上田 毅(沖縄平和市民連絡会)
〈座談会〉
生きづらさに立ち向かう (上)――教育篇
前川喜平(元文部科学事務次官)・三浦まり(上智大学)・福島みずほ(参議院議員)
〈新展開〉
スーダン民衆革命――中東・アフリカにおける変革の可能性
栗田禎子(千葉大学)
〈知的格闘を辿る〉
丸山眞男の永久革命
柄谷行人(思想家)
〈インタビュー〉
政党・政治家への直言―-政党よ,もっと強くなれ
河野洋平
〈インタビュー〉
支配されず,支配せず――全体小説の新たな地平へ
金石範(作家),聞き手=関正則(編集者)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇ウクライナ大統領選 圧勝劇の背景
大串 敦(慶應義塾大学)
◇ゲノム編集食品がやってくる――安全審査は?
天笠啓祐(ジャーナリスト)
◇F35A機墜落――日米軍事戦略への衝撃
斉藤光政(東奥日報論説編集委員)
◇スリランカ連続爆破事件――その後の世界を生きる
中村沙絵(京都大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●麻薬現代史【第6回・最終回】
乱用をどう防ぐか――今日の課題
藤野 彰(元国連職員)
●ルポ 孤塁――消防士たちの3・11【第5回】
4号機火災
吉田千亜(ジャーナリスト)
●日 没【第14回】
桐野夏生(作家)
●アパレル興亡【第23回】
黒木 亮(作家)
●メディア批評【第139回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●脳力のレッスン【207】
イスラムの世界化とアジア, そして日本―一七世紀オランダからの視界 (その57)
寺島実郎
●片山善博の「日本を診る」【116】
「議会だより」の空虚にみる,地方議会改革のピント外れ
片山善博(早稲田大学)
●すぐそこにある世界【第4回】
ノートルダムの偽善,パルミラの欺瞞
師岡カリーマ・エルサムニー(文筆家)
●但馬日記【第3回】
世界のアーティストが集う街へ
平田オリザ(劇作家)
●我が総括――体験的戦後メディア史【第7回】
乱世の仕掛人 小沢一郎
田原総一朗(ジャーナリスト)
●沖縄(シマ)という窓
不都合な真実覆い隠す ドローン規制法の改悪
松元 剛(琉球新報)
●原発月報――(19・4~5)
福島原発事故記録チーム
●ドキュメント激動の南北朝鮮(263)(19・4~5)
編集部
●世界論壇月評
朱建栄・竹田いさみ・吉田文彦・石郷岡建
●ハンセン病回復者の語り・家族の語り【第10回】
予防法が母を殺した
福岡安則(埼玉大学名誉教授),黒坂愛衣(東北学院大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○グラビア
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○特別招待作品
The New Londoners――多様化する家族
クリス・スティール=パーキンス(写真家)
○ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
デザイン= 赤崎正一+ 佐野裕哉
○グラビアについて(公募規定)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
*読者談話室
*アムネスティ通信
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
レミングの群れが断崖もしくは湖水などに突き進んで自殺するということは俗説にすぎないが,不合理性のゆえに破綻することが目に見えていても,方向転換ができず,あたかも慣性の法則に支配されているかのように粛々と破局に向かって行進していくのは,戦前から綿々と続く日本政府のお家芸であるようだ.
批判や警告,別の選択肢を示す声が存在しないわけではない.だが,8・15の前には異議を申し立てる人々を政府は物理的に壊滅させた.3・11の前にも警告の声は決して小さいものではなかった(本誌もその声を少なからず伝えてきた)が,政府と原子力ムラは「過酷事故は想定できない」として「原子力ルネサンス」なる虚構に突き進み,破局を迎えた.
今号では,昨年三月号,一〇月号につづいて北上田毅氏に,沖縄・辺野古新基地をめぐる現在の状況をご報告いただいた.氏は,行政側で建設計画を審査する立場にいた.その経験を活かし,粘り強い交渉や情報公開請求などを通じて,政府が隠蔽しようとする「不都合な事実」を突きつけている.その説くところは,きわめて明快である.民意の反対に取り巻かれた,技術的に難易度のきわめて高い公共工事が成功を収めることは難しい.
辺野古を筆頭に,方向転換が切実な課題となっているテーマは複数あるが,今号では原子力産業を特集した.
本来,「起きない」と言っていた事故を起こし,多くの人々の生活を破綻させ,金額に換算できない被害と悲嘆を生み出した時点で,原子力の推進は倫理的に許されない領域に入り,私たちは別の道筋の構築に注力すべきであったはずである.
だが,柄谷論文が伝える丸山眞男が喝破した無責任の体系は今も続き,日本の重電産業は方向転換の決断ができない.今号特集で重ねて説かれている内容を見れば,その不決断が信じられない.「儲かるからやめられない」というなら,まだ主張としては理解可能なのだが,実際には膨大な損害を出し,東芝のように企業の存続すら危機的になる事例を現出させているのだ.にもかかわらず,日本経団連は今年四月,「日本を支える電力システムを再構築する」として,再稼働さらには新設への「取り組みを一層強化」していくとの「提言」を公表した.日本の経済が失速するのも当然と思う.
警鐘や別の選択肢を示す声が重要であることは当然,日本だけに限った話ではない.今号では,中国における異議申し立てをめぐる小特集を編んだ.冷戦構造が残る東アジアにおいて,中国と民主主義,あるいは中国における人権問題を論じることは,発言する側の意図せぬ政治的効果を帯びることがある.とりわけ歴史問題が,侵略した側の責任において未解決のままとなっている日中間においては,なおさら注意が必要であろう.だが,狭まる言論の自由の中で発言を続けることについて私たちが学ぶ意味もこめて,特集した.翻訳掲載をご快諾いただいた許章潤氏,徹夜で訳出の労をとられた阿古智子氏,発言を快諾された郭于華氏とインタビューをまとめていただいた吉岡桂子氏に感謝を申し上げます.
今号は普段にもまして多くの方々の協力を得て完成した.加藤千洋氏の文章に添えた故水上勉氏の画は,氏のご息女である蕗子さんのご好意により使用させていただいた.信州の居宅にうかがって実物を見せていただき,作家の晩年の書斎と蔵書も拝見する機会を得た.重ねて感謝を申し上げます.
熊谷伸一郎(本誌編集長)
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎ひとはなぜ戦争をするのか 脳力のレッスンV
寺島 実郎
定価(本体1700円+税)
http://iwnm.jp/024533
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*WEB版もぜひ、ご覧ください
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特集/世界の潮/注目記事/連載/グラビア/編集後記/
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┃特集1┃原子力産業の終焉
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈正視すべき実像〉
絶滅寸前のテクノロジー種
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〈総論〉
原子力発電の凋落――脱炭素社会は自然エネルギーが実現する
大野輝之(自然エネルギー財団常務理事)
〈各国事情〉
世界で競争力を失う原子力発電――最大の米国でも運転終了が相次ぐ
石田雅也(自然エネルギー財団)
〈最新データ〉
原発の本当のコストを評価する
大島堅一(龍谷大学)
〈座談会〉
原発輸出という大失敗――なぜ突き進むのか
鈴木真奈美(ジャーナリスト),深草亜悠美(FoEJAPAN),松久保肇(原子力資料情報室)
〈轍を踏む〉
小型モジュール炉 過ち繰り返す経産省・原子力産業
小澤祥司(環境ジャーナリスト)
〈また「想定外」?〉
原発は温暖化する地球の「時限爆弾」である
鮎川ゆりか(千葉商科大学名誉教授)
〈出口戦略〉
原子力政策の展望――「負の遺産」清算を柱に
鈴木達治郎(長崎大学核兵器廃絶研究センター)
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┃特集2┃中国と民主主義
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〈インタビュー〉
精神の独立と思想の自由を覆い隠せはしない
郭于華(清華大学)
〈発言する覚悟〉
中国知識人たちの言論闘争
𠮷岡桂子(朝日新聞)
〈論考〉
我々の目下の恐れと期待
許章潤(清華大学),訳・解説=阿古智子(東京大学)
〈知られざる記録画〉
天安門に斃れし民衆を北京飯店から俯瞰す――水上勉の見た天安門事件
加藤千洋(平安女学院大学)
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◆注目記事
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〈重ねて説く〉
辺野古新基地は頓挫する――想像以上に深刻な軟弱地盤問題
北上田 毅(沖縄平和市民連絡会)
〈座談会〉
生きづらさに立ち向かう (上)――教育篇
前川喜平(元文部科学事務次官)・三浦まり(上智大学)・福島みずほ(参議院議員)
〈新展開〉
スーダン民衆革命――中東・アフリカにおける変革の可能性
栗田禎子(千葉大学)
〈知的格闘を辿る〉
丸山眞男の永久革命
柄谷行人(思想家)
〈インタビュー〉
政党・政治家への直言―-政党よ,もっと強くなれ
河野洋平
〈インタビュー〉
支配されず,支配せず――全体小説の新たな地平へ
金石範(作家),聞き手=関正則(編集者)
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◇世界の潮
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◇ウクライナ大統領選 圧勝劇の背景
大串 敦(慶應義塾大学)
◇ゲノム編集食品がやってくる――安全審査は?
天笠啓祐(ジャーナリスト)
◇F35A機墜落――日米軍事戦略への衝撃
斉藤光政(東奥日報論説編集委員)
◇スリランカ連続爆破事件――その後の世界を生きる
中村沙絵(京都大学)
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●連載
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●麻薬現代史【第6回・最終回】
乱用をどう防ぐか――今日の課題
藤野 彰(元国連職員)
●ルポ 孤塁――消防士たちの3・11【第5回】
4号機火災
吉田千亜(ジャーナリスト)
●日 没【第14回】
桐野夏生(作家)
●アパレル興亡【第23回】
黒木 亮(作家)
●メディア批評【第139回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●脳力のレッスン【207】
イスラムの世界化とアジア, そして日本―一七世紀オランダからの視界 (その57)
寺島実郎
●片山善博の「日本を診る」【116】
「議会だより」の空虚にみる,地方議会改革のピント外れ
片山善博(早稲田大学)
●すぐそこにある世界【第4回】
ノートルダムの偽善,パルミラの欺瞞
師岡カリーマ・エルサムニー(文筆家)
●但馬日記【第3回】
世界のアーティストが集う街へ
平田オリザ(劇作家)
●我が総括――体験的戦後メディア史【第7回】
乱世の仕掛人 小沢一郎
田原総一朗(ジャーナリスト)
●沖縄(シマ)という窓
不都合な真実覆い隠す ドローン規制法の改悪
松元 剛(琉球新報)
●原発月報――(19・4~5)
福島原発事故記録チーム
●ドキュメント激動の南北朝鮮(263)(19・4~5)
編集部
●世界論壇月評
朱建栄・竹田いさみ・吉田文彦・石郷岡建
●ハンセン病回復者の語り・家族の語り【第10回】
予防法が母を殺した
福岡安則(埼玉大学名誉教授),黒坂愛衣(東北学院大学)
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○グラビア
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○特別招待作品
The New Londoners――多様化する家族
クリス・スティール=パーキンス(写真家)
○ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
デザイン= 赤崎正一+ 佐野裕哉
○グラビアについて(公募規定)
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○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
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*読者談話室
*アムネスティ通信
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◇編集後記
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レミングの群れが断崖もしくは湖水などに突き進んで自殺するということは俗説にすぎないが,不合理性のゆえに破綻することが目に見えていても,方向転換ができず,あたかも慣性の法則に支配されているかのように粛々と破局に向かって行進していくのは,戦前から綿々と続く日本政府のお家芸であるようだ.
批判や警告,別の選択肢を示す声が存在しないわけではない.だが,8・15の前には異議を申し立てる人々を政府は物理的に壊滅させた.3・11の前にも警告の声は決して小さいものではなかった(本誌もその声を少なからず伝えてきた)が,政府と原子力ムラは「過酷事故は想定できない」として「原子力ルネサンス」なる虚構に突き進み,破局を迎えた.
今号では,昨年三月号,一〇月号につづいて北上田毅氏に,沖縄・辺野古新基地をめぐる現在の状況をご報告いただいた.氏は,行政側で建設計画を審査する立場にいた.その経験を活かし,粘り強い交渉や情報公開請求などを通じて,政府が隠蔽しようとする「不都合な事実」を突きつけている.その説くところは,きわめて明快である.民意の反対に取り巻かれた,技術的に難易度のきわめて高い公共工事が成功を収めることは難しい.
辺野古を筆頭に,方向転換が切実な課題となっているテーマは複数あるが,今号では原子力産業を特集した.
本来,「起きない」と言っていた事故を起こし,多くの人々の生活を破綻させ,金額に換算できない被害と悲嘆を生み出した時点で,原子力の推進は倫理的に許されない領域に入り,私たちは別の道筋の構築に注力すべきであったはずである.
だが,柄谷論文が伝える丸山眞男が喝破した無責任の体系は今も続き,日本の重電産業は方向転換の決断ができない.今号特集で重ねて説かれている内容を見れば,その不決断が信じられない.「儲かるからやめられない」というなら,まだ主張としては理解可能なのだが,実際には膨大な損害を出し,東芝のように企業の存続すら危機的になる事例を現出させているのだ.にもかかわらず,日本経団連は今年四月,「日本を支える電力システムを再構築する」として,再稼働さらには新設への「取り組みを一層強化」していくとの「提言」を公表した.日本の経済が失速するのも当然と思う.
警鐘や別の選択肢を示す声が重要であることは当然,日本だけに限った話ではない.今号では,中国における異議申し立てをめぐる小特集を編んだ.冷戦構造が残る東アジアにおいて,中国と民主主義,あるいは中国における人権問題を論じることは,発言する側の意図せぬ政治的効果を帯びることがある.とりわけ歴史問題が,侵略した側の責任において未解決のままとなっている日中間においては,なおさら注意が必要であろう.だが,狭まる言論の自由の中で発言を続けることについて私たちが学ぶ意味もこめて,特集した.翻訳掲載をご快諾いただいた許章潤氏,徹夜で訳出の労をとられた阿古智子氏,発言を快諾された郭于華氏とインタビューをまとめていただいた吉岡桂子氏に感謝を申し上げます.
今号は普段にもまして多くの方々の協力を得て完成した.加藤千洋氏の文章に添えた故水上勉氏の画は,氏のご息女である蕗子さんのご好意により使用させていただいた.信州の居宅にうかがって実物を見せていただき,作家の晩年の書斎と蔵書も拝見する機会を得た.重ねて感謝を申し上げます.
熊谷伸一郎(本誌編集長)
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寺島 実郎
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