『世界』メールマガジン/2019年9月号 【特集1:なぜ賃金が上がらないのか】【特集2:アフリカ 人々が変える大陸】
2019/08/13 (Tue) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2019年9月号
■■ vol.#0051
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■『世界』2019年9月号(第924号)好評発売中
2019年8月8日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/世界の潮/注目記事/連載/グラビア/編集後記/
『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集1┃なぜ賃金が上がらないのか
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈働き手のための経済を〉
なぜ日本の賃金は上がらないのか――企業ファースト化で推進される「賃下げ」政策
竹信三恵子(ジャーナリスト)
〈悪循環から抜け出すために〉
新・賃上げ論――その条件は何なのか
金子 勝(立教大学大学院特任教授)
〈対談〉
呪縛を解いて声を上げる――脱・上からの働き方改革
神津里季生(連合会長),上西充子(法政大学)
〈座談会〉
労働組合の意義はどこにあるのか
河添 誠(労働運動家)×本田一成(國學院大學)×鈴木剛(全国ユニオン会長)
〈法で生活を守る〉
職場の差別禁止に向けた法整備を――ILO創設一〇〇年,日本の課題
シン・ヘボン(青山学院大学,ヒューマンライツ・ナウ理事長)
┏━━━┓
┃特集2┃アフリカ 「開発」でも「援助」でもなく向き合う
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈内発的なダイナミズム〉
世界の中のアフリカ――人々が変える大陸
勝俣 誠(明治学院大学名誉教授)
〈変革のための「知」とは何か〉
アフリカ・大学・植民地主義
マフムート・マムダニ(マケレレ大学),訳=楠 和樹(京都大学特任助教)
〈資本主義再考の新たな道筋〉
アフリカらしさとは何か――ウブントゥという思想
フランシス・B・ニャムンジョ(ケープタウン大学),訳=梅屋 潔(神戸大学,ケープタウン大学)
〈占領地・西サハラ〉
◇ルポ アフリカ最後の植民地と人びと
岩崎有一(ジャーナリスト)
◇西サハラ独立問題の歴史と展望
松野明久(大阪大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈参院選検証〉
低調な論戦は何を失わせたか
松原文枝(テレビ朝日)
〈人類的リスク〉
先鋭化するトランプ核戦略――限定核使用を想定する新戦闘ドクトリン
太田昌克(共同通信)
〈避けられぬ決断〉
ゾウの存続を絶たない責任(上)――日本は象牙市場を閉鎖しないのか
坂元雅行(「トラ・ゾウ保護基金」事務局長)
〈対談〉
国語教育崩壊は回避できるか?
小森陽一(東京大学名誉教授)・紅野謙介(日本大学)
〈日米FTA〉
◇片務的かつ非対称な異形の貿易交渉
内田聖子(PARC共同代表)
◇失うだけの日米FTA
鈴木宣弘(東京大学)
◇米韓FTA改正は何を示唆するか
柳京熙(酪農学園大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇緊張深まる米・イラン関係――対話による解決は可能か
松永泰行(東京外国語大学)
◇差別を犯罪とする日本初の川崎市条例素案
師岡康子(弁護士)
◇大崎事件「再審取り消し」 最高裁決定の異様
桐山桂一(東京新聞)
◇大阪G20サミットと市民社会
三輪敦子(2019C20共同議長,アジア・太平洋人権情報センター所長)
◇漂流するスルガ銀行――再建の見通し立たず
今沢 真(毎日新聞)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●【新連載・第1回】ルポ 保育園株式会社――職業としての保育2
情報公開資料から探る賃金実態
小林美希(ジャーナリスト)
●【最終回・第7回】ルポ 孤塁――消防士たちの3・11
孤塁を守る
吉田千亜(ジャーナリスト)
●【最終回・第11回】ハンセン病回復者の語り・家族の語り
思いよ届け!
福岡安則(埼玉大学名誉教授),黒坂愛衣(東北学院大学)
●戦友会狂騒曲(ラプソディ)――おじいさんと若者たちの日々【第2回】
若者たちの「来襲」
遠藤美幸(神田外語大学)
●慰安婦がいた時代――新資料とともに改めてたどる【第2回】
奴隷 売買春システムの腐敗
佐藤 純(大阪経済法科大学 アジア太平洋研究センター)
●戦闘機の政治経済史【第2回】
第二次F‐X選定とダグラス・グラマン疑獄の勃発
福好昌治(軍事評論家)
●日 没【第15回】
桐野夏生(作家)
●片山善博の「日本を診る」【118】
参院選・対抗軸なき野党の敗北――今こそ真摯で地道な議論を
片山善博(早稲田大学)
●メディア批評【第141回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●脳力のレッスン【209】
仏教伝来 漢字になった経典の意味 17世紀オランダからの視界(その59)
寺島実郎
●すぐそこにある世界【第6回】
夫婦喧嘩はジョークの宝庫
師岡カリーマ・エルサムニー(文筆家)
●但馬日記【第5回】
地域に根差した教育改革の挑戦
平田オリザ(劇作家)
●我が総括――体験的戦後メディア史【第9回】
小泉純一郎 「改革」への信念
田原総一朗(ジャーナリスト)
●原発月報――(19・6~7)
福島原発事故記録チーム
●ドキュメント激動の南北朝鮮(265)(19・6~7)
編集部
●世界論壇月評
朱建栄・竹田いさみ・吉田文彦・石郷岡建
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○グラビア
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○特別招待作品
Circus love-- 移動サーカス団が織りなす別世界
システファニー・ジェンゴッチ(写真家)
○ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
デザイン= 赤崎正一+ 佐野裕哉
○グラビアについて(公募規定)
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○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
*読者談話室
*アムネスティ通信
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◇編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今年の梅雨は長かった.果てなく続く雨に気が滅入ったが,豪雨災害に今年もまた襲われた西日本各地ではそれどころではなかっただろう.被災された方々に心よりお見舞い申し上げます.
関東では七月も下旬になってようやく太平洋高気圧がやってきて,青い夏空が広がった.それだけで解放的な気分になる.夏という季節が――おそらく夏休みという概念と分かちがたく結びついているからだと思うが――非常に好きである.
ただ,年を追うごとに,その到来に不安を覚えるようになっていることも認めなければならない.言うまでもなく,気候変動の影響が,年々,強く感じられるようになっているからだ.年齢を重ねるごとに激しやすく怒りっぽくなる人がいるが,そのような人に生殺与奪の権を握られている気分というのだろうか.ヨーロッパでもこの夏,記録的猛暑が続き,最高気温が次々に塗り替えられている.
気候変動こそ,大問題であるはずだ.子どもたち,またその子どもらが健やかに暮らせる惑星であってほしい.そのような地球を残すために残された時間は多くない.そして,ナオミ・クラインが言うように,気候変動対策は「すべてを変える」.経済成長だけが自己目的化した「今だけ,自分だけ,カネだけ」の政治と経済とを根本的に転換する契機になりうるし,そうしなければならない.
その点から考えると,今回の参議院選挙で,気候変動対策がほとんどまったく議論されなかったのは,ただ遺憾という以上に,異常と言うべきだろう.日本は世界で第五位の二酸化炭素排出国であり,国際社会において相応の責任を果たすべき位置にあるはずなのだ.
現与党および政府は,気候変動対策を口実として原発再稼働を推し進めようとしているが,3・11の責任に頬かむりをし,東京電力などのゾンビ企業を生かし続ける政策が日本経済の衰退の一要因となっていると,今号で金子勝氏は明快に指摘する.日本政治にとっては「脱原発」も,産業政策やエネルギー政策,震災復興のありかた,政・官・財の癒着などの「すべてを変える」テーマの一つである.
だからこそ私たちは,実現可能性を持ち,国際社会においても説得力を持つ気候変動対策を議論していく必要があるだろう(その際,脱原発を優先するあまりに「エネルギーの主力は火力」などと後退してはならないことは,言うまでもない).
参院選で遺憾に思ったことのもう一つは,五〇%を下回った低投票率である.今号で松原文枝氏,片山善博氏が揃って指摘するように,野党側の論戦力,訴求力が発揮される場面が乏しかったことも,低投票率の一因だろう.「共闘」はそれとして,もっと野党間で積極的に政策論争をしたほうがいいのではないか.また,一人区などでの候補者調整は当然,巨大与党に対抗するために不可欠であろうが,政党間の交渉による決定は,構造的に,市民の関与,したがってその政治的エネルギーを結集できる形になっていないように感じられる.片山氏の言葉をお借りして,「政権交代可能な政治を望む上からも,折角の精進を期待」したい.
長い曇天の下,出版界もどこか元気なく見えた.しかし,書店の皆様のご尽力もあり,本誌先月号は例月以上に多くの方に手にとっていただき,普段に倍する多くの御感想も頂戴しました.今夏も平年より気温が高くなりそうですので,読者の皆様におかれても,どうぞご自愛下さいますよう,お願いします.
熊谷伸一郎(本誌編集長)
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎ひとはなぜ戦争をするのか 脳力のレッスンV
寺島 実郎
定価(本体1700円+税)
http://iwnm.jp/024533
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■『世界』2019年9月号(第924号)好評発売中
2019年8月8日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/世界の潮/注目記事/連載/グラビア/編集後記/
『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集1┃なぜ賃金が上がらないのか
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈働き手のための経済を〉
なぜ日本の賃金は上がらないのか――企業ファースト化で推進される「賃下げ」政策
竹信三恵子(ジャーナリスト)
〈悪循環から抜け出すために〉
新・賃上げ論――その条件は何なのか
金子 勝(立教大学大学院特任教授)
〈対談〉
呪縛を解いて声を上げる――脱・上からの働き方改革
神津里季生(連合会長),上西充子(法政大学)
〈座談会〉
労働組合の意義はどこにあるのか
河添 誠(労働運動家)×本田一成(國學院大學)×鈴木剛(全国ユニオン会長)
〈法で生活を守る〉
職場の差別禁止に向けた法整備を――ILO創設一〇〇年,日本の課題
シン・ヘボン(青山学院大学,ヒューマンライツ・ナウ理事長)
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┃特集2┃アフリカ 「開発」でも「援助」でもなく向き合う
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈内発的なダイナミズム〉
世界の中のアフリカ――人々が変える大陸
勝俣 誠(明治学院大学名誉教授)
〈変革のための「知」とは何か〉
アフリカ・大学・植民地主義
マフムート・マムダニ(マケレレ大学),訳=楠 和樹(京都大学特任助教)
〈資本主義再考の新たな道筋〉
アフリカらしさとは何か――ウブントゥという思想
フランシス・B・ニャムンジョ(ケープタウン大学),訳=梅屋 潔(神戸大学,ケープタウン大学)
〈占領地・西サハラ〉
◇ルポ アフリカ最後の植民地と人びと
岩崎有一(ジャーナリスト)
◇西サハラ独立問題の歴史と展望
松野明久(大阪大学)
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◆注目記事
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〈参院選検証〉
低調な論戦は何を失わせたか
松原文枝(テレビ朝日)
〈人類的リスク〉
先鋭化するトランプ核戦略――限定核使用を想定する新戦闘ドクトリン
太田昌克(共同通信)
〈避けられぬ決断〉
ゾウの存続を絶たない責任(上)――日本は象牙市場を閉鎖しないのか
坂元雅行(「トラ・ゾウ保護基金」事務局長)
〈対談〉
国語教育崩壊は回避できるか?
小森陽一(東京大学名誉教授)・紅野謙介(日本大学)
〈日米FTA〉
◇片務的かつ非対称な異形の貿易交渉
内田聖子(PARC共同代表)
◇失うだけの日米FTA
鈴木宣弘(東京大学)
◇米韓FTA改正は何を示唆するか
柳京熙(酪農学園大学)
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◇世界の潮
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◇緊張深まる米・イラン関係――対話による解決は可能か
松永泰行(東京外国語大学)
◇差別を犯罪とする日本初の川崎市条例素案
師岡康子(弁護士)
◇大崎事件「再審取り消し」 最高裁決定の異様
桐山桂一(東京新聞)
◇大阪G20サミットと市民社会
三輪敦子(2019C20共同議長,アジア・太平洋人権情報センター所長)
◇漂流するスルガ銀行――再建の見通し立たず
今沢 真(毎日新聞)
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●連載
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●【新連載・第1回】ルポ 保育園株式会社――職業としての保育2
情報公開資料から探る賃金実態
小林美希(ジャーナリスト)
●【最終回・第7回】ルポ 孤塁――消防士たちの3・11
孤塁を守る
吉田千亜(ジャーナリスト)
●【最終回・第11回】ハンセン病回復者の語り・家族の語り
思いよ届け!
福岡安則(埼玉大学名誉教授),黒坂愛衣(東北学院大学)
●戦友会狂騒曲(ラプソディ)――おじいさんと若者たちの日々【第2回】
若者たちの「来襲」
遠藤美幸(神田外語大学)
●慰安婦がいた時代――新資料とともに改めてたどる【第2回】
奴隷 売買春システムの腐敗
佐藤 純(大阪経済法科大学 アジア太平洋研究センター)
●戦闘機の政治経済史【第2回】
第二次F‐X選定とダグラス・グラマン疑獄の勃発
福好昌治(軍事評論家)
●日 没【第15回】
桐野夏生(作家)
●片山善博の「日本を診る」【118】
参院選・対抗軸なき野党の敗北――今こそ真摯で地道な議論を
片山善博(早稲田大学)
●メディア批評【第141回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●脳力のレッスン【209】
仏教伝来 漢字になった経典の意味 17世紀オランダからの視界(その59)
寺島実郎
●すぐそこにある世界【第6回】
夫婦喧嘩はジョークの宝庫
師岡カリーマ・エルサムニー(文筆家)
●但馬日記【第5回】
地域に根差した教育改革の挑戦
平田オリザ(劇作家)
●我が総括――体験的戦後メディア史【第9回】
小泉純一郎 「改革」への信念
田原総一朗(ジャーナリスト)
●原発月報――(19・6~7)
福島原発事故記録チーム
●ドキュメント激動の南北朝鮮(265)(19・6~7)
編集部
●世界論壇月評
朱建栄・竹田いさみ・吉田文彦・石郷岡建
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○グラビア
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○特別招待作品
Circus love-- 移動サーカス団が織りなす別世界
システファニー・ジェンゴッチ(写真家)
○ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
デザイン= 赤崎正一+ 佐野裕哉
○グラビアについて(公募規定)
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○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
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*読者談話室
*アムネスティ通信
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◇編集後記
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今年の梅雨は長かった.果てなく続く雨に気が滅入ったが,豪雨災害に今年もまた襲われた西日本各地ではそれどころではなかっただろう.被災された方々に心よりお見舞い申し上げます.
関東では七月も下旬になってようやく太平洋高気圧がやってきて,青い夏空が広がった.それだけで解放的な気分になる.夏という季節が――おそらく夏休みという概念と分かちがたく結びついているからだと思うが――非常に好きである.
ただ,年を追うごとに,その到来に不安を覚えるようになっていることも認めなければならない.言うまでもなく,気候変動の影響が,年々,強く感じられるようになっているからだ.年齢を重ねるごとに激しやすく怒りっぽくなる人がいるが,そのような人に生殺与奪の権を握られている気分というのだろうか.ヨーロッパでもこの夏,記録的猛暑が続き,最高気温が次々に塗り替えられている.
気候変動こそ,大問題であるはずだ.子どもたち,またその子どもらが健やかに暮らせる惑星であってほしい.そのような地球を残すために残された時間は多くない.そして,ナオミ・クラインが言うように,気候変動対策は「すべてを変える」.経済成長だけが自己目的化した「今だけ,自分だけ,カネだけ」の政治と経済とを根本的に転換する契機になりうるし,そうしなければならない.
その点から考えると,今回の参議院選挙で,気候変動対策がほとんどまったく議論されなかったのは,ただ遺憾という以上に,異常と言うべきだろう.日本は世界で第五位の二酸化炭素排出国であり,国際社会において相応の責任を果たすべき位置にあるはずなのだ.
現与党および政府は,気候変動対策を口実として原発再稼働を推し進めようとしているが,3・11の責任に頬かむりをし,東京電力などのゾンビ企業を生かし続ける政策が日本経済の衰退の一要因となっていると,今号で金子勝氏は明快に指摘する.日本政治にとっては「脱原発」も,産業政策やエネルギー政策,震災復興のありかた,政・官・財の癒着などの「すべてを変える」テーマの一つである.
だからこそ私たちは,実現可能性を持ち,国際社会においても説得力を持つ気候変動対策を議論していく必要があるだろう(その際,脱原発を優先するあまりに「エネルギーの主力は火力」などと後退してはならないことは,言うまでもない).
参院選で遺憾に思ったことのもう一つは,五〇%を下回った低投票率である.今号で松原文枝氏,片山善博氏が揃って指摘するように,野党側の論戦力,訴求力が発揮される場面が乏しかったことも,低投票率の一因だろう.「共闘」はそれとして,もっと野党間で積極的に政策論争をしたほうがいいのではないか.また,一人区などでの候補者調整は当然,巨大与党に対抗するために不可欠であろうが,政党間の交渉による決定は,構造的に,市民の関与,したがってその政治的エネルギーを結集できる形になっていないように感じられる.片山氏の言葉をお借りして,「政権交代可能な政治を望む上からも,折角の精進を期待」したい.
長い曇天の下,出版界もどこか元気なく見えた.しかし,書店の皆様のご尽力もあり,本誌先月号は例月以上に多くの方に手にとっていただき,普段に倍する多くの御感想も頂戴しました.今夏も平年より気温が高くなりそうですので,読者の皆様におかれても,どうぞご自愛下さいますよう,お願いします.
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岩波書店営業部読者係(TEL:03-5210-4111,FAX:03-3263-6999)
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