『世界』メールマガジン/2020年1月号 【特集:抵抗の民主主義】
2019/12/17 (Tue) 16:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2020年1月号
■■ vol.#0055
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■『世界』2020年1月号(第928号)好評発売中
2019年12月7日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/注目記事/世界の潮/Sekai review of Books/連載/グラビア/編集後記/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特 集┃抵抗の民主主義
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈ポピュリズムに抗する〉
リベラル・デモクラシーをいかに維持するか
ヤシャ・モンク(ジョンズ・ホプキンス大学)、聞き手=吉田 徹(北海道大学)、武田宏子(名古屋大学)
〈闘技か敵対か〉
批判なき時代の民主主義――なぜアンタゴニズムが問題なのか
山本 圭(立命館大学)
〈提起〉
気候危機の時代における資本主義vs民主主義
斎藤幸平(大阪市立大学)
〈地域からの変革〉
〈文明〉転換への挑戦――エネルギー・デモクラシーの論理と実践
佐々木 寛(新潟国際情報大学)
〈参照軸〉
統一30年――危機と対峙するドイツ市民
梶村太一郎(ジャーナリスト)
〈インタビュー〉
「新たな規範」を打ち立てる市民の力――グローバル・トレンドを読む
目加田説子(中央大学)
〈“草の根”の可能性〉
世界と暮らしをつなぐこと――核兵器廃絶に向けた地方自治体の可能性
中村桂子(長崎大学RECNA)
〈問われる人権意識〉
醜悪で滑稽な覇権志向――多国間主義を忌避する日本
三島憲一(大阪大学名誉教授)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈便利さの裏で〉
ルポ コンビニ絶望経営(上)――服従を強いられる「一国一城の主」
斎藤貴男(ジャーナリスト)
〈被害を語れる社会に〉
闘うことは生きること――原発事故避難者のPTSD
蟻塚亮二(精神科医)
〈町長インタビュー〉
「選ばれる町」にイージス・アショアはいらない――山口県阿武町の決意
花田憲彦(阿武町長)
〈ルポ〉
教皇フランシスコのメッセージ
藤盛一朗(北海道新聞)
〈座談会〉
一五〇日のサマー・ウォーズ――英語民間入試延期に向けて僕たちがやったこと
服部剛士(ひっきたい)、音晴(こばると)、健(クリス)
〈直言〉
〇 お許しいただければ(特別編) 英語教育、「それ本当?」
行方昭夫(英文学者)
〇 ルポ 保育園株式会社 第5回 疲弊する小規模保育
小林美希(ジャーナリスト)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇二〇一九年英国総選挙――コービンの「春」は、世界を変えるか
藤澤みどり(ライター)
◇政治的激動つづくラテンアメリカ
伊高浩昭(ジャーナリスト)
◇関西電力の“ひどすぎる”企業ガバナンス
今沢 真(毎日新聞)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇Sekai review of Books《NEW!》
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆国際冷戦レジームと第三世界
三宅芳夫(千葉大学)
☆人物が、時代が、動き出す――思想表現としての伝記 黒川創著『鶴見俊輔伝』
小森陽一
☆「ネット右派」――その複合的な思想・文化基盤を摘出した労作 伊藤昌亮著『ネット右派の歴史社会学』
早川タダノリ
☆読書の要諦――サイエンス ヒトゲノム研究の行方
植木不等式(サイエンスライター)
☆〈新連載〉読書会という幸福 1 読書会とはなにか
向井和美
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●〈連載小説〉
日 没【第17回】
桐野夏生
●〈新連載〉
プリズン・サークル【第1回】
傍観者から参加者へ
坂上 香(映画監督)
●〈新連載〉
いま、この惑星で起きていること【第1回】
アラビア海の最強サイクロン
森さやか(気象予報士)
●〈新連載〉
移民奔流――グローバル化時代の国境と人【第1回】
南の国境
工藤律子(ジャーナリスト)
●〈新連載〉
花粉症と人類【第1講】
花粉発見史
小塩海平(東京農業大学)
●メディア批評【第145回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●脳力のレッスン【213】
明治近代化と日本人の精神――一七世紀オランダからの視界、その63
寺島実郎
●片山善博の「日本を診る」【122】
「桜を見る会」で重要な論点――予算を上回る経費は具体的にどこから工面したのか
片山善博(早稲田大学)
●但馬日記【第9回】
敗れた者を癒やし養う郷
平田オリザ(劇作家)
●すぐそこにある世界【第10回】
魅惑のオクシデンタリズム(上)
師岡カリーマ・エルサムニー(文筆家)
●我が総括――体験的戦後メディア史【第13回】
安倍一強体制と政治の変質
田原総一朗(ジャーナリスト)
●慰安婦がいた時代――新資料とともに改めてたどる【第5回】
北の部隊 危うき統制
佐藤 純(大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター)
●戦闘機の政治経済史【特別編】
不透明さを増す将来戦闘機――開発・選定の主導権はどこに
福好昌治(軍事評論家)
●沖縄(シマ)という窓
首里城焼失とアイデンティティ
松元 剛(琉球新報)
●原発月報――(19・10~11)
福島原発事故記録チーム
●世界論壇月評
朱建栄・竹田いさみ・吉田文彦・石郷岡建
●ドキュメント激動の南北朝鮮【第269回】(19・10~11)
編集部
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○グラビア
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○公募作品176
Handfish in our hands――世界でもっとも絶滅に近い海水魚
高久 至(写真家)
○ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
デザイン= 赤崎正一 + 佐野裕哉
○グラビアについて(公募規定)
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○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
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*読者談話室
*アムネスティ通信
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◇編集後記
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グレタ・トゥンベリの、気候行動サミットでの言葉が頭から離れない。
「人々は苦しみ、死にかけ、生態系全体が崩壊しかけている。私たちは絶滅にさしかかっているのに、あなたたちが話すのは金のことと、永遠の経済成長というおとぎ話だけ」
二〇一八年の温室効果ガス排出量は、二酸化炭素換算で五五三億トン、前年に続き過去最高を更新したという。この数値を国連環境計画が公表するのとほぼ同時に、世界気象機関も、温室効果ガスの大気中の平均濃度が観測史上もっとも高い数値を更新したと発表している。
現在の約1℃上昇という状況のもとでも多大な犠牲と被害が出ているというのに、このままでは1・5℃上昇に抑えるというパリ協定の努力目標の達成は難しく、2℃も危ない。なにしろ排出量が減少に転じてさえいない。グレタは二〇一九年一月の世界経済フォーラムで、「大人たちにはパニックになってほしいのです」と述べた。それにふさわしい状況だ。
先月号で大特集を編んだが、二〇一九年は、気候変動という危機が、人類の課題として可視化された年であった。
同規模の課題として、核兵器と軍拡の問題がある。依然としてこの「文明」は自分たちを何度も何度も絶滅させられる武器を蓄え、新たに開発し、それを正当化している。
「今日の世界では、何百万という子どもや家族が人間以下の生活を強いられています。しかし、武器の製造、改良、維持、商いに財が費やされ、築かれ、日ごと武器は、いっそう破壊的になっています。神に歯向かうテロ行為です」。藤盛一朗氏の報告が紹介する教皇フランシスコの激しい言葉が深く胸に突き刺さる。フランシスコは広島でも、「最新鋭の強力な武器をつくりながら、なぜ平和について話せるのか」と痛烈に批判した。
気候変動も、軍縮の停滞も、あるいは格差の拡大や多国間主義の後退も、きわめて深刻だ。ただ、絶望的な状況だとは思わない。グレタや教皇フランシスコだけではない、状況に抗し、街頭に出て声をあげる人々が世界中にいる。本質的な課題が見え、共有されつつある現在、問題はむしろ、この意思とプログラムをどう政治的決定の場に持ち込んでいくか、すなわち民主主義こそ焦点なのだろう。
さて、この新年号からは、五人の執筆者の方々の多様な新しい連載をお届けするとともに、書評欄を新設することとした。本なしの人生など考えられないという個人的スタンスからだけではなく、活字の持つ可能性、喚起力にあらためて焦点をあて、公共的な議論を深めていく場にしていければ、と願っている。意欲的で特徴ある新刊の紹介や批評はもちろん、今号の三宅芳夫氏の論考のように、その本の提起への応答を通じて議論をさらに展開していく論考を掲載していきたい。
また、これは少しずつ改善をしてきていることではあるが、少なくない読者の方々のご要望に応えるべく、本誌の文字を少し大きくするなどのレイアウト変更を、今号でも可能な記事から行なっている。次号以降、順次拡大していく予定である。
二〇二〇年一二月で、本誌は創刊から七五年となる。一朝一夕で築くことのできないこの蓄積も、読者の方々の支持と励ましがあればこそだ。二〇二〇年も本誌は、「金のことと、永遠の経済成長というおとぎ話」以外の言葉を語る雑誌でありつづけたい。
熊谷伸一郎(本誌編集長)
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎ひとはなぜ戦争をするのか 脳力のレッスンV
寺島 実郎
定価(本体1700円+税)
http://iwnm.jp/024533
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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■『世界』2020年1月号(第928号)好評発売中
2019年12月7日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/注目記事/世界の潮/Sekai review of Books/連載/グラビア/編集後記/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
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┃特 集┃抵抗の民主主義
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〈ポピュリズムに抗する〉
リベラル・デモクラシーをいかに維持するか
ヤシャ・モンク(ジョンズ・ホプキンス大学)、聞き手=吉田 徹(北海道大学)、武田宏子(名古屋大学)
〈闘技か敵対か〉
批判なき時代の民主主義――なぜアンタゴニズムが問題なのか
山本 圭(立命館大学)
〈提起〉
気候危機の時代における資本主義vs民主主義
斎藤幸平(大阪市立大学)
〈地域からの変革〉
〈文明〉転換への挑戦――エネルギー・デモクラシーの論理と実践
佐々木 寛(新潟国際情報大学)
〈参照軸〉
統一30年――危機と対峙するドイツ市民
梶村太一郎(ジャーナリスト)
〈インタビュー〉
「新たな規範」を打ち立てる市民の力――グローバル・トレンドを読む
目加田説子(中央大学)
〈“草の根”の可能性〉
世界と暮らしをつなぐこと――核兵器廃絶に向けた地方自治体の可能性
中村桂子(長崎大学RECNA)
〈問われる人権意識〉
醜悪で滑稽な覇権志向――多国間主義を忌避する日本
三島憲一(大阪大学名誉教授)
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◆注目記事
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〈便利さの裏で〉
ルポ コンビニ絶望経営(上)――服従を強いられる「一国一城の主」
斎藤貴男(ジャーナリスト)
〈被害を語れる社会に〉
闘うことは生きること――原発事故避難者のPTSD
蟻塚亮二(精神科医)
〈町長インタビュー〉
「選ばれる町」にイージス・アショアはいらない――山口県阿武町の決意
花田憲彦(阿武町長)
〈ルポ〉
教皇フランシスコのメッセージ
藤盛一朗(北海道新聞)
〈座談会〉
一五〇日のサマー・ウォーズ――英語民間入試延期に向けて僕たちがやったこと
服部剛士(ひっきたい)、音晴(こばると)、健(クリス)
〈直言〉
〇 お許しいただければ(特別編) 英語教育、「それ本当?」
行方昭夫(英文学者)
〇 ルポ 保育園株式会社 第5回 疲弊する小規模保育
小林美希(ジャーナリスト)
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◇世界の潮
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◇二〇一九年英国総選挙――コービンの「春」は、世界を変えるか
藤澤みどり(ライター)
◇政治的激動つづくラテンアメリカ
伊高浩昭(ジャーナリスト)
◇関西電力の“ひどすぎる”企業ガバナンス
今沢 真(毎日新聞)
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◇Sekai review of Books《NEW!》
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☆国際冷戦レジームと第三世界
三宅芳夫(千葉大学)
☆人物が、時代が、動き出す――思想表現としての伝記 黒川創著『鶴見俊輔伝』
小森陽一
☆「ネット右派」――その複合的な思想・文化基盤を摘出した労作 伊藤昌亮著『ネット右派の歴史社会学』
早川タダノリ
☆読書の要諦――サイエンス ヒトゲノム研究の行方
植木不等式(サイエンスライター)
☆〈新連載〉読書会という幸福 1 読書会とはなにか
向井和美
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●連載
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●〈連載小説〉
日 没【第17回】
桐野夏生
●〈新連載〉
プリズン・サークル【第1回】
傍観者から参加者へ
坂上 香(映画監督)
●〈新連載〉
いま、この惑星で起きていること【第1回】
アラビア海の最強サイクロン
森さやか(気象予報士)
●〈新連載〉
移民奔流――グローバル化時代の国境と人【第1回】
南の国境
工藤律子(ジャーナリスト)
●〈新連載〉
花粉症と人類【第1講】
花粉発見史
小塩海平(東京農業大学)
●メディア批評【第145回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●脳力のレッスン【213】
明治近代化と日本人の精神――一七世紀オランダからの視界、その63
寺島実郎
●片山善博の「日本を診る」【122】
「桜を見る会」で重要な論点――予算を上回る経費は具体的にどこから工面したのか
片山善博(早稲田大学)
●但馬日記【第9回】
敗れた者を癒やし養う郷
平田オリザ(劇作家)
●すぐそこにある世界【第10回】
魅惑のオクシデンタリズム(上)
師岡カリーマ・エルサムニー(文筆家)
●我が総括――体験的戦後メディア史【第13回】
安倍一強体制と政治の変質
田原総一朗(ジャーナリスト)
●慰安婦がいた時代――新資料とともに改めてたどる【第5回】
北の部隊 危うき統制
佐藤 純(大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター)
●戦闘機の政治経済史【特別編】
不透明さを増す将来戦闘機――開発・選定の主導権はどこに
福好昌治(軍事評論家)
●沖縄(シマ)という窓
首里城焼失とアイデンティティ
松元 剛(琉球新報)
●原発月報――(19・10~11)
福島原発事故記録チーム
●世界論壇月評
朱建栄・竹田いさみ・吉田文彦・石郷岡建
●ドキュメント激動の南北朝鮮【第269回】(19・10~11)
編集部
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○グラビア
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○公募作品176
Handfish in our hands――世界でもっとも絶滅に近い海水魚
高久 至(写真家)
○ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
デザイン= 赤崎正一 + 佐野裕哉
○グラビアについて(公募規定)
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○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
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*読者談話室
*アムネスティ通信
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◇編集後記
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グレタ・トゥンベリの、気候行動サミットでの言葉が頭から離れない。
「人々は苦しみ、死にかけ、生態系全体が崩壊しかけている。私たちは絶滅にさしかかっているのに、あなたたちが話すのは金のことと、永遠の経済成長というおとぎ話だけ」
二〇一八年の温室効果ガス排出量は、二酸化炭素換算で五五三億トン、前年に続き過去最高を更新したという。この数値を国連環境計画が公表するのとほぼ同時に、世界気象機関も、温室効果ガスの大気中の平均濃度が観測史上もっとも高い数値を更新したと発表している。
現在の約1℃上昇という状況のもとでも多大な犠牲と被害が出ているというのに、このままでは1・5℃上昇に抑えるというパリ協定の努力目標の達成は難しく、2℃も危ない。なにしろ排出量が減少に転じてさえいない。グレタは二〇一九年一月の世界経済フォーラムで、「大人たちにはパニックになってほしいのです」と述べた。それにふさわしい状況だ。
先月号で大特集を編んだが、二〇一九年は、気候変動という危機が、人類の課題として可視化された年であった。
同規模の課題として、核兵器と軍拡の問題がある。依然としてこの「文明」は自分たちを何度も何度も絶滅させられる武器を蓄え、新たに開発し、それを正当化している。
「今日の世界では、何百万という子どもや家族が人間以下の生活を強いられています。しかし、武器の製造、改良、維持、商いに財が費やされ、築かれ、日ごと武器は、いっそう破壊的になっています。神に歯向かうテロ行為です」。藤盛一朗氏の報告が紹介する教皇フランシスコの激しい言葉が深く胸に突き刺さる。フランシスコは広島でも、「最新鋭の強力な武器をつくりながら、なぜ平和について話せるのか」と痛烈に批判した。
気候変動も、軍縮の停滞も、あるいは格差の拡大や多国間主義の後退も、きわめて深刻だ。ただ、絶望的な状況だとは思わない。グレタや教皇フランシスコだけではない、状況に抗し、街頭に出て声をあげる人々が世界中にいる。本質的な課題が見え、共有されつつある現在、問題はむしろ、この意思とプログラムをどう政治的決定の場に持ち込んでいくか、すなわち民主主義こそ焦点なのだろう。
さて、この新年号からは、五人の執筆者の方々の多様な新しい連載をお届けするとともに、書評欄を新設することとした。本なしの人生など考えられないという個人的スタンスからだけではなく、活字の持つ可能性、喚起力にあらためて焦点をあて、公共的な議論を深めていく場にしていければ、と願っている。意欲的で特徴ある新刊の紹介や批評はもちろん、今号の三宅芳夫氏の論考のように、その本の提起への応答を通じて議論をさらに展開していく論考を掲載していきたい。
また、これは少しずつ改善をしてきていることではあるが、少なくない読者の方々のご要望に応えるべく、本誌の文字を少し大きくするなどのレイアウト変更を、今号でも可能な記事から行なっている。次号以降、順次拡大していく予定である。
二〇二〇年一二月で、本誌は創刊から七五年となる。一朝一夕で築くことのできないこの蓄積も、読者の方々の支持と励ましがあればこそだ。二〇二〇年も本誌は、「金のことと、永遠の経済成長というおとぎ話」以外の言葉を語る雑誌でありつづけたい。
熊谷伸一郎(本誌編集長)
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎ひとはなぜ戦争をするのか 脳力のレッスンV
寺島 実郎
定価(本体1700円+税)
http://iwnm.jp/024533
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岩波書店営業部読者係(TEL:03-5210-4111,FAX:03-3263-6999)
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