『世界』メールマガジン/2020年3月号 【特集1:災害列島改造論】 【特集2:もはや不可避の脱石炭】
2020/02/07 (Fri) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2020年3月号
■■ vol.#0057
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■『世界』2020年3月号(第930号)好評発売中
2020年2月7日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/注目記事/世界の潮/Sekai review of Books/連載/グラビア/編集後記/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集1┃災害列島改造論
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈真の危機とは〉
超広域大震災にどう備えるか――大地動乱・人口減少時代の成長信仰が衰亡をまねく
石橋克彦(神戸大学名誉教授)
〈破局に備える〉
災害で誰が犠牲になるのか――行政責任と予防政策
宮入興一(愛知大学名誉教授)
〈インタビュー〉
水害多発の時代に命を守る――滋賀県流域治水条例の挑戦から
嘉田由紀子(参議院議員)
〈災後では遅い〉
「事前復興計画」による社会変革
五十嵐敬喜(法政大学名誉教授)
┏━━━┓
┃特集2┃もはや不可避の脱石炭
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈決断の時〉
すでに過去の技術となった石炭火力――日本はなぜ止められないのか?
平田仁子(気候ネットワーク)
〈国際的懸念〉
日本の石炭火力輸出支援と高まる国際的批判
田辺有輝(「環境・持続社会」研究センター理事)
〈住民座談会〉
まだ建設をつづけるのか?
小西由希子、永野 勇、富樫孝夫、鈴木陸郎
〈地域から声を〉
「石炭列島」から脱却するために
桃井貴子(気候ネットワーク東京事務所長)
〈有効な切り口〉
石炭火力と損害保険
横山隆美(350Japan代表)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈世界を結び直す想像力〉
ノーベル賞受賞記念講演 優しい語り手
オルガ・トカルチュク、訳=小椋彩(東洋大学)
〈対米従属と司法〉
砂川最高裁判決の「呪縛」は解けるか――日米安保体制を根本から問う国賠訴訟
吉田敏浩(ジャーナリスト)
〈民主主義への福音か?〉
○台湾総統選――対中恐怖感を背景に蔡英文再選
本田善彦(ジャーナリスト)
○台湾人の「民意」とカルチャー――ミリオンヒット映画『返校』にみる台湾人アイデンティティの行方
近藤弥生子(ライター)
〈上映開始〉
○プリズンサークル第3回 サンクチュアリの不在
坂上香(ジャーナリスト、映画監督)
○インタビュー いつか来る春を待ちながら――受刑者の心の変化と『プリズン・サークル』
ナヤ・アービター、ロッド・ムレン(アミティ共同代表)、聞き手=小松原織香(龍谷大学嘱託研究員)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇再びアフガニスタンを忘れないために
登利谷正人(上智大学)
◇歯止めなき海外派遣――自衛隊、“火薬庫”へ
石井 暁(共同通信)
◇原発のリスクを確認した司法判断――伊方原発運転差止め仮処分
井戸謙一(弁護士)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇Sekai review of Books
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆気候変動と「人新世」
酒井隆史(大阪府立大学)
☆読書の要諦――文芸 「凡」の中の「奇」
藤沢 周(小説家)
☆忘れられたパレスチナの声を届ける――渡辺 丘著『パレスチナを生きる』
錦田愛子(慶應義塾大学)
☆胞子が語る資本主義――アナ・チン著『マツタケ』
松村圭一郎(岡山大学)
☆読書会という幸福〈第3回〉
読書会潜入ルポ (1)翻訳ミステリー読書会
向井和美(翻訳家、司書)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●〈最終回〉【第18回】
日 没
桐野夏生
●〈最終回〉
世界論壇月評――特別座談会
朱建栄 竹田いさみ 吉田文彦 石郷岡建
●〈集中連載〉
ルポ 労組破壊――「関西生コン事件」とは何か(中) 労働分野で進められる解釈改憲
竹信三恵子(ジャーナリスト)
◇好評連載◇-----------------
●花粉症と人類【第3講】
ヴィクトリア朝の貴族病?
小塩海平(東京農業大学)
●ルポ 保育園株式会社【第6回】
規制緩和が保育にもたらしたもの
小林美希(ジャーナリスト)
-------------------------------------
●脳力のレッスン【215】
令和の暁鐘が問いかけるもの(下)―― 日本の内なる再生の基軸
寺島実郎
●メディア批評【第147回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●片山善博の「日本を診る」【124】
まやかしといい加減さが目立つ首相施政方針演説
片山善博(早稲田大学)
●いま、この惑星で起きていること【第3回】
動物たちの受難と生存への努力
森さやか(気象予報士)
●すぐそこにある世界【第12回】
白黒つけられるはずだったこと
師岡カリーマ・エルサムニー(文筆家)
●但馬日記【第11回】
江原河畔劇場オープンに向けて
平田オリザ(劇作家)
●お許しいただければ
「温度計随想」(A.A.ミルン)
訳=行方昭夫(英文学者)
●原発月報――(19・12~20・1)
福島原発事故記録チーム
●ドキュメント激動の南北朝鮮【271】(19・12~20・1)
編集部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○グラビア
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○公募作品178
情け島――八丈島と向き合う
香取 声(写真家)
○ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
デザイン= 赤崎正一 + 佐野裕哉
○グラビアについて
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
*読者談話室
*アムネスティ通信
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
いきなり熱湯に入れれば飛び上がるが、少しずつ熱していけば――このゆでがえるの比喩は、どこまで真実なのだろうか。中学の理科の授業で、カエルの解剖の際には欠席した性格なので、実験して試すつもりにはならない。
生物学的真実はともかく、日本の為政者や大企業に、ゆでがえる的傾向が強いのは事実と思わざるをえない。
枚挙にいとまはないが、その第一は、気候変動である。この編集後記を書いている一月二九日、小社のある東京・神保町の気温は19℃、昼は半袖で町を歩く人もいた。大阪では一〇四年ぶりに一月の最高気温を更新とのこと。単なる「晴れてあたたかい日」ではなく、ゆで上がっていく一過程と思うが、日本政府とエネルギー企業は二酸化炭素を大量に排出する石炭火力発電をやめようとしない。
友人が、「憲法や貧困問題などと比べて、気候変動にかかわる講演会や勉強会がまだ少ない」と言っていた。たしかに、そうかもしれない。今号で寄稿をいただいた平田仁子氏、桃井貴子氏、田辺有輝氏など、早くからこの問題に取り組んできた方々の知見を共有しながら、国際社会の潮流とつながっていく市民的な動きを、本誌は継続して取り上げていきたい。
同じく今号で、気候変動と損害保険をめぐる興味深い論考を寄せていただいた横山隆美氏の行動には、胸を打たれた。AIU日本代表、富士火災海上保険社長兼CEO、日本損害保険協会副会長を歴任されてきた実業家だが、気候変動の進行に危機感を抱いて、環境NGOの代表に「転身」された。そのきっかけは、ナオミ・クライン『これがすべてを変える』(小社刊)を読んだことだったという。
ゆでがえる的性質が見られる第二は、原発である。今号で元裁判官の井戸謙一氏が報告している伊方原発の運転差し止め決定は、3・11後の「司法の反省」を久しぶりに顕在化させた画期的な判断であった。伊方原発をめぐっては、この一月、原子炉内の制御棒を誤って引き抜く、さらには、短時間で復旧したとはいえ、全電源喪失というトラブルまであった。これなどはむしろ「いきなり熱湯」に近いと思うのだが、それでも電力会社も政府も、再稼働させる方針を変えない。
第三に今号特集で取り上げた、これから起こりうる大災害への対応である。新型コロナウイルスが小さな問題とは思わないが、「いきなり熱湯」型のニュースは大騒ぎされるものの、「いつか来る破局」に対する息の長い取り組みは軽視されがちだ。石橋克彦氏、宮入興一氏、五十嵐敬喜氏の論考などでは、繰り返し吟味されるべき重要な提起がなされている。
さて、今月も多数のお便りを頂戴いたしました。まだすべての方にお返事をできておりませんが、その意志は持っております。ここでは寄せられたご質問の中から、いくつかお返事申し上げます。
表紙写真についてですが、「世界につながる窓」であることを意識して、編集部でセレクションをしています。その解説の場所は、お気づきの方もいらっしゃると思いますが、目次の最後に小さな文字で記載しております。本当に小さな文字で申し訳ありません。前号では、グラビアの解説の文字が小さい、老人いじめである、というお叱りも頂戴しました。改善してまいります。
編集者も世代が変わっていきます。頂戴しました愛読者の方々からのお手紙は、大切に保存し、受け継いでまいりたいと思っています。
熊谷伸一郎(本誌編集長)
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎ひとはなぜ戦争をするのか 脳力のレッスンV
寺島 実郎
定価(本体1700円+税)
http://iwnm.jp/024533
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
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■『世界』2020年3月号(第930号)好評発売中
2020年2月7日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/注目記事/世界の潮/Sekai review of Books/連載/グラビア/編集後記/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
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┃特集1┃災害列島改造論
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈真の危機とは〉
超広域大震災にどう備えるか――大地動乱・人口減少時代の成長信仰が衰亡をまねく
石橋克彦(神戸大学名誉教授)
〈破局に備える〉
災害で誰が犠牲になるのか――行政責任と予防政策
宮入興一(愛知大学名誉教授)
〈インタビュー〉
水害多発の時代に命を守る――滋賀県流域治水条例の挑戦から
嘉田由紀子(参議院議員)
〈災後では遅い〉
「事前復興計画」による社会変革
五十嵐敬喜(法政大学名誉教授)
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┃特集2┃もはや不可避の脱石炭
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈決断の時〉
すでに過去の技術となった石炭火力――日本はなぜ止められないのか?
平田仁子(気候ネットワーク)
〈国際的懸念〉
日本の石炭火力輸出支援と高まる国際的批判
田辺有輝(「環境・持続社会」研究センター理事)
〈住民座談会〉
まだ建設をつづけるのか?
小西由希子、永野 勇、富樫孝夫、鈴木陸郎
〈地域から声を〉
「石炭列島」から脱却するために
桃井貴子(気候ネットワーク東京事務所長)
〈有効な切り口〉
石炭火力と損害保険
横山隆美(350Japan代表)
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◆注目記事
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〈世界を結び直す想像力〉
ノーベル賞受賞記念講演 優しい語り手
オルガ・トカルチュク、訳=小椋彩(東洋大学)
〈対米従属と司法〉
砂川最高裁判決の「呪縛」は解けるか――日米安保体制を根本から問う国賠訴訟
吉田敏浩(ジャーナリスト)
〈民主主義への福音か?〉
○台湾総統選――対中恐怖感を背景に蔡英文再選
本田善彦(ジャーナリスト)
○台湾人の「民意」とカルチャー――ミリオンヒット映画『返校』にみる台湾人アイデンティティの行方
近藤弥生子(ライター)
〈上映開始〉
○プリズンサークル第3回 サンクチュアリの不在
坂上香(ジャーナリスト、映画監督)
○インタビュー いつか来る春を待ちながら――受刑者の心の変化と『プリズン・サークル』
ナヤ・アービター、ロッド・ムレン(アミティ共同代表)、聞き手=小松原織香(龍谷大学嘱託研究員)
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◇世界の潮
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◇再びアフガニスタンを忘れないために
登利谷正人(上智大学)
◇歯止めなき海外派遣――自衛隊、“火薬庫”へ
石井 暁(共同通信)
◇原発のリスクを確認した司法判断――伊方原発運転差止め仮処分
井戸謙一(弁護士)
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◇Sekai review of Books
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☆気候変動と「人新世」
酒井隆史(大阪府立大学)
☆読書の要諦――文芸 「凡」の中の「奇」
藤沢 周(小説家)
☆忘れられたパレスチナの声を届ける――渡辺 丘著『パレスチナを生きる』
錦田愛子(慶應義塾大学)
☆胞子が語る資本主義――アナ・チン著『マツタケ』
松村圭一郎(岡山大学)
☆読書会という幸福〈第3回〉
読書会潜入ルポ (1)翻訳ミステリー読書会
向井和美(翻訳家、司書)
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●連載
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●〈最終回〉【第18回】
日 没
桐野夏生
●〈最終回〉
世界論壇月評――特別座談会
朱建栄 竹田いさみ 吉田文彦 石郷岡建
●〈集中連載〉
ルポ 労組破壊――「関西生コン事件」とは何か(中) 労働分野で進められる解釈改憲
竹信三恵子(ジャーナリスト)
◇好評連載◇-----------------
●花粉症と人類【第3講】
ヴィクトリア朝の貴族病?
小塩海平(東京農業大学)
●ルポ 保育園株式会社【第6回】
規制緩和が保育にもたらしたもの
小林美希(ジャーナリスト)
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●脳力のレッスン【215】
令和の暁鐘が問いかけるもの(下)―― 日本の内なる再生の基軸
寺島実郎
●メディア批評【第147回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●片山善博の「日本を診る」【124】
まやかしといい加減さが目立つ首相施政方針演説
片山善博(早稲田大学)
●いま、この惑星で起きていること【第3回】
動物たちの受難と生存への努力
森さやか(気象予報士)
●すぐそこにある世界【第12回】
白黒つけられるはずだったこと
師岡カリーマ・エルサムニー(文筆家)
●但馬日記【第11回】
江原河畔劇場オープンに向けて
平田オリザ(劇作家)
●お許しいただければ
「温度計随想」(A.A.ミルン)
訳=行方昭夫(英文学者)
●原発月報――(19・12~20・1)
福島原発事故記録チーム
●ドキュメント激動の南北朝鮮【271】(19・12~20・1)
編集部
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○グラビア
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○公募作品178
情け島――八丈島と向き合う
香取 声(写真家)
○ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
デザイン= 赤崎正一 + 佐野裕哉
○グラビアについて
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○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
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*読者談話室
*アムネスティ通信
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◇編集後記
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いきなり熱湯に入れれば飛び上がるが、少しずつ熱していけば――このゆでがえるの比喩は、どこまで真実なのだろうか。中学の理科の授業で、カエルの解剖の際には欠席した性格なので、実験して試すつもりにはならない。
生物学的真実はともかく、日本の為政者や大企業に、ゆでがえる的傾向が強いのは事実と思わざるをえない。
枚挙にいとまはないが、その第一は、気候変動である。この編集後記を書いている一月二九日、小社のある東京・神保町の気温は19℃、昼は半袖で町を歩く人もいた。大阪では一〇四年ぶりに一月の最高気温を更新とのこと。単なる「晴れてあたたかい日」ではなく、ゆで上がっていく一過程と思うが、日本政府とエネルギー企業は二酸化炭素を大量に排出する石炭火力発電をやめようとしない。
友人が、「憲法や貧困問題などと比べて、気候変動にかかわる講演会や勉強会がまだ少ない」と言っていた。たしかに、そうかもしれない。今号で寄稿をいただいた平田仁子氏、桃井貴子氏、田辺有輝氏など、早くからこの問題に取り組んできた方々の知見を共有しながら、国際社会の潮流とつながっていく市民的な動きを、本誌は継続して取り上げていきたい。
同じく今号で、気候変動と損害保険をめぐる興味深い論考を寄せていただいた横山隆美氏の行動には、胸を打たれた。AIU日本代表、富士火災海上保険社長兼CEO、日本損害保険協会副会長を歴任されてきた実業家だが、気候変動の進行に危機感を抱いて、環境NGOの代表に「転身」された。そのきっかけは、ナオミ・クライン『これがすべてを変える』(小社刊)を読んだことだったという。
ゆでがえる的性質が見られる第二は、原発である。今号で元裁判官の井戸謙一氏が報告している伊方原発の運転差し止め決定は、3・11後の「司法の反省」を久しぶりに顕在化させた画期的な判断であった。伊方原発をめぐっては、この一月、原子炉内の制御棒を誤って引き抜く、さらには、短時間で復旧したとはいえ、全電源喪失というトラブルまであった。これなどはむしろ「いきなり熱湯」に近いと思うのだが、それでも電力会社も政府も、再稼働させる方針を変えない。
第三に今号特集で取り上げた、これから起こりうる大災害への対応である。新型コロナウイルスが小さな問題とは思わないが、「いきなり熱湯」型のニュースは大騒ぎされるものの、「いつか来る破局」に対する息の長い取り組みは軽視されがちだ。石橋克彦氏、宮入興一氏、五十嵐敬喜氏の論考などでは、繰り返し吟味されるべき重要な提起がなされている。
さて、今月も多数のお便りを頂戴いたしました。まだすべての方にお返事をできておりませんが、その意志は持っております。ここでは寄せられたご質問の中から、いくつかお返事申し上げます。
表紙写真についてですが、「世界につながる窓」であることを意識して、編集部でセレクションをしています。その解説の場所は、お気づきの方もいらっしゃると思いますが、目次の最後に小さな文字で記載しております。本当に小さな文字で申し訳ありません。前号では、グラビアの解説の文字が小さい、老人いじめである、というお叱りも頂戴しました。改善してまいります。
編集者も世代が変わっていきます。頂戴しました愛読者の方々からのお手紙は、大切に保存し、受け継いでまいりたいと思っています。
熊谷伸一郎(本誌編集長)
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎ひとはなぜ戦争をするのか 脳力のレッスンV
寺島 実郎
定価(本体1700円+税)
http://iwnm.jp/024533
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
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〒101-8002 東京都千代田区一ツ橋2-5-5
E-Mail: sekai@iwanami.co.jp
WEB: http://iwnm.jp/sekai
Twitter: https://twitter.com/WEB_SEKAI
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岩波書店営業部読者係(TEL:03-5210-4111,FAX:03-3263-6999)
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