『世界』メールマガジン/2020年5月号 【特集1:コロナショック・ドクトリン】【特集2:デジタル教育の虚実】
2020/04/08 (Wed) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2020年5月号
■■ vol.#0059
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■『世界』2020年5月号(第932号)好評発売中
2020年4月8日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/注目記事/世界の潮/Sekai Review of Books/連載/グラビア/編集後記/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集1┃コロナショック・ドクトリン
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈バブル崩壊〉
新コロナ大恐慌にどう立ち向かうか
金子 勝(立教大学特任教授)
〈分断を超えて〉
疫病の年に
マイク・デイヴィス(歴史家)/訳=マニュエル・ヤン/解説=酒井隆史
〈災厄の本質〉
緊急事態とエコロジー闘争――「戦い」の向きを変える
西谷 修(東京外国語大学名誉教授)
〈専門家会議委員に聞く〉
日本なりの方法で感染拡大を防ぐ――新型コロナウイルスの現在とこれから
舘田一博(東邦大学)
〈人権へのリスク〉
新型コロナウイルスと緊急事態条項――法律制度を整理する
永井幸寿(弁護士)
〈緊急対談〉
感染症と排外主義――新型コロナウイルスが可視化したもの
森千香子(同志社大学)、小島祥美(愛知淑徳大学)
〈問われるメディア〉
情報コントロールが危機を増幅させる――緊急事態体制に向き合う
田島泰彦(元上智大学教授)
〈特別篇〉
○片山善博の「日本を診る」(126) これまでの新型コロナウイルス対策で検証すべきことは何か
○脳力のレッスン(217) 新型コロナウイルス危機の本質――理性ある対応とは何か
(寺島実郎)
┏━━━┓
┃特集2┃デジタル教育の虚実
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈検証「一人一台」〉
教育政策と経済政策は区別せよ――GIGAスクール構想の行方をめぐって
前川喜平(元文部科学事務次官)
〈教育効果を再考する〉
デジタル教科書は万能か?――情報を減らす教育の再評価を
辻 元(上智大学)
〈いびつな財政措置〉
ICT教育は教育スタンダードになるか?
中村文夫(教育行財政研究所)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈インタビュー〉
政治のリフォームが必要だ――持続可能な地域のために
石破 茂(衆議院議員)、聞き手=佐藤 章
〈抄訳〉
気候のティッピングポイント――危険すぎる賭け
ティモシー・レントン、ヨハン・ロックストローム他 訳=荒井雅子
〈議論を次のステージへ〉
最終確認 地球温暖化は本当なんですよね?
江守正多(国立環境研究所)
〈現地情勢〉
アフガニスタン和平の同床異夢
宮内篤志(NHK報道局国際部)
〈哀悼〉
中村哲先生の死に世界中のアフガニスタン人が泣いている
バシール・モハバット(駐日アフガニスタン大使)
〈韓国の思潮をめぐって〉
“親日残滓の清算”について
白楽晴(ソウル大学名誉教授)/訳=青柳純一
〈辺野古新基地の無理無体〉
○隠蔽される調査データ――このままでは護岸は崩壊する
北上田 毅(沖縄平和市民連絡会)
○辺野古新基地周辺の活断層と軟弱地盤
立石雅昭(新潟大学名誉教授)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇マレーシア政権交代――マハティール後継問題を動かすマレー人の「不安」
伊賀 司
◇続発する世界規模の森林火災は何を意味するのか?
早坂洋史
◇東京高検検事長の定年延長問題が意味するもの――進行する「三権分立」の空洞化
川邊克朗
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇SEKAI Review of Books
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆韓国ニューライトの残響――李栄薫著『反日種族主義――日韓危機の根源』
和田春樹(東京大学名誉教授)
☆人類とパンデミック
水溜真由美(北海道大学)
☆戦争を「継ぐ」こと――大矢英代著『沖縄「戦争マラリア」』
森口 豁(フリージャーナリスト)
☆沖縄の山々で何が起きていたか――三上智恵著『証言 沖縄スパイ戦史』
山城博治(沖縄平和運動センター事務局長)
☆読書の要諦――ノンフィクション メディアの使命を考えるノンフィクション
青木 理(ジャーナリスト)
☆読書会という幸福【5】 読書会潜入ルポ (2)猫町倶楽部
向井和美(翻訳家、司書)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●〈短期連載ルポ〉
復興予算26兆円の行方(下)――国策プロジェクト「福島イノベ構想」
古川美穂(ジャーナリスト)
◇好評連載◇-----------------
●ルポ 保育園株式会社【第8回】
変動の中の社会福祉法人
小林美希(ジャーナリスト)
●プリズン・サークル【第5回】
被害を語る
坂上 香(ジャーナリスト、映画監督)
●花粉症と人類【第5講】
スギ花粉症になることができた日本人
小塩海平(東京農業大学)
-------------------------------------
●メディア批評【第149回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●但馬日記【第13回】
見えない敵と戦う
平田オリザ(劇作家)
●沖縄(シマ)という窓
「希望の海」としての辺野古、大浦湾
山城紀子(ジャーナリスト)
●いま、この惑星で起きていること【第5回】
生きものたちの変調
森さやか(気象予報士)
●すぐそこにある世界【第14回】
タシケント人情劇場
師岡カリーマ・エルサムニー(文筆家)
●慰安婦がいた時代――新資料とともに改めてたどる【第8回・最終回】
主体 連綿と継承
佐藤 純(大阪経済法科大学 アジア太平洋研究センター)
●お許しいただければ
「芸術家の存在価値」(A・A・ミルン)
訳=行方昭夫(英文学者)
●ドキュメント激動の南北朝鮮【273】(20・2~3)
編集部
●原発月報――(20・2~3)
福島原発事故記録チーム
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○表紙写真=新型コロナウイルス感染地域へ祈るチベット自治区・ラサの僧侶。
二〇二〇年二月五日、新華社/共同通信イメージズ
○ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
デザイン= 赤崎正一 + 佐野裕哉
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
*読者談話室
*アムネスティ通信
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ショック・ドクトリンの本質について、その命名者であるジャーナリストのナオミ・クラインは、次のように述べている。
「壊滅的な出来事が発生した直後、災害処理をまたとない市場チャンスと捉え、公共領域にいっせいに群がるこのような行為を、私は『惨事便乗型資本主義』と呼ぶことにした」(『ショック・ドクトリン』上巻、六頁)
ここでクラインが述べる「このような行為」とは、二〇〇五年にアメリカ南部を襲ったハリケーン・カトリーナによる災害直後、たとえば共和党の下院議員が、低所得者向けの公営住宅は「さっぱり一掃できた……これぞ神の御業だ」と語ったようなメンタリティのもとで一気に進められた過激な民営化政策をさしている。
より敷衍して言えば、普段の社会状況では抵抗が強く実現が難しい政策課題を、発災後、人々が茫然自失の状態にあるうちに、一気に実現してしまおうとする思想・行為と言えるだろう。
クラインの著作では、チリやロシア、ポーランド、サッチャーのイギリスなどで遂行されてきた徹底的な公共領域の解体と民営化の諸相が追及されているが、現在のコロナショックのもと、日本の政治社会の文脈で警戒されるべきは、市民の自由・人権の強権的な制限と、相互監視体制のなし崩し的な拡大ではないか。
それぞれの社会は固有の文脈を持つから、感染拡大の抑止のために「都市封鎖」を行なったり、外出を禁止して違反者に刑事罰を与えたりすることの是非は、それぞれで論議され、検証されればよいと思う。ただ、日本社会では少なくとも、永井幸寿氏が今号で整理されているように、そうしたことがなされうる法的根拠はない。戦時中の経験を思い出すまでもなく、行政が「お上」として強く捉えられがちなこの社会の思潮――「戦後教育のせいで権利ばかり声高に主張される」といった言説で今も再生産される――では、市民的自由を制限する行政の権限は最低限にとどめるべきだと思う。
小池都知事が、「何もせずにこのまま推移すれば、海外のようにロックダウン(都市封鎖)を招く」という、誰が封鎖を実施するのかという肝心の主体を曖昧にした言い回しをするのは、法的根拠の不在を知っているからだろう。しかし、いま行政がするべきは、(カタカナ語だらけでよくわからない)強硬策で市民を威迫することではなく、合理的・合法的な感染拡大抑止策の説明、確実な検査とデータの公開、そして医療体制の整備であろう。少なくとも小池都政は、「無駄のない医療」を掲げて推進する都立病院の独立行政法人化を見直すべきではないか。
その小池都政の継続を問う都知事選挙が七月に迫る。国政野党は今回も都知事選での「共闘」を繰り返し確認しているようだが、政党の枠組みからではなく、小池都政の評価についての認識や、都民の生活を保障できる候補者、そして政策という点から、都民本位の議論を行なうべきではないか。都政について何も知らないに等しい候補者を告示日直前に担ぎ出し、スキャンダルを暴かれて失速するという前回の失態をまさか忘れてはいないだろうが、現在の枠組み優先の姿勢には危惧を禁じえない。
さて、「不要不急」の外出自粛が要請された状況下での今号校了作業では、印刷所や校正者の方々をはじめ、多くの方の協力のもとでこの雑誌が編まれていることを、普段にもまして痛感いたしました。心より御礼を申し上げる次第です。
熊谷伸一郎(本誌編集長)
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎ひとはなぜ戦争をするのか 脳力のレッスンV
寺島 実郎
定価(本体1700円+税)
http://iwnm.jp/024533
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
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岩波書店営業部読者係(TEL:03-5210-4111,FAX:03-3263-6999)
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2020年4月8日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/注目記事/世界の潮/Sekai Review of Books/連載/グラビア/編集後記/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
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┃特集1┃コロナショック・ドクトリン
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈バブル崩壊〉
新コロナ大恐慌にどう立ち向かうか
金子 勝(立教大学特任教授)
〈分断を超えて〉
疫病の年に
マイク・デイヴィス(歴史家)/訳=マニュエル・ヤン/解説=酒井隆史
〈災厄の本質〉
緊急事態とエコロジー闘争――「戦い」の向きを変える
西谷 修(東京外国語大学名誉教授)
〈専門家会議委員に聞く〉
日本なりの方法で感染拡大を防ぐ――新型コロナウイルスの現在とこれから
舘田一博(東邦大学)
〈人権へのリスク〉
新型コロナウイルスと緊急事態条項――法律制度を整理する
永井幸寿(弁護士)
〈緊急対談〉
感染症と排外主義――新型コロナウイルスが可視化したもの
森千香子(同志社大学)、小島祥美(愛知淑徳大学)
〈問われるメディア〉
情報コントロールが危機を増幅させる――緊急事態体制に向き合う
田島泰彦(元上智大学教授)
〈特別篇〉
○片山善博の「日本を診る」(126) これまでの新型コロナウイルス対策で検証すべきことは何か
○脳力のレッスン(217) 新型コロナウイルス危機の本質――理性ある対応とは何か
(寺島実郎)
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┃特集2┃デジタル教育の虚実
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈検証「一人一台」〉
教育政策と経済政策は区別せよ――GIGAスクール構想の行方をめぐって
前川喜平(元文部科学事務次官)
〈教育効果を再考する〉
デジタル教科書は万能か?――情報を減らす教育の再評価を
辻 元(上智大学)
〈いびつな財政措置〉
ICT教育は教育スタンダードになるか?
中村文夫(教育行財政研究所)
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◆注目記事
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〈インタビュー〉
政治のリフォームが必要だ――持続可能な地域のために
石破 茂(衆議院議員)、聞き手=佐藤 章
〈抄訳〉
気候のティッピングポイント――危険すぎる賭け
ティモシー・レントン、ヨハン・ロックストローム他 訳=荒井雅子
〈議論を次のステージへ〉
最終確認 地球温暖化は本当なんですよね?
江守正多(国立環境研究所)
〈現地情勢〉
アフガニスタン和平の同床異夢
宮内篤志(NHK報道局国際部)
〈哀悼〉
中村哲先生の死に世界中のアフガニスタン人が泣いている
バシール・モハバット(駐日アフガニスタン大使)
〈韓国の思潮をめぐって〉
“親日残滓の清算”について
白楽晴(ソウル大学名誉教授)/訳=青柳純一
〈辺野古新基地の無理無体〉
○隠蔽される調査データ――このままでは護岸は崩壊する
北上田 毅(沖縄平和市民連絡会)
○辺野古新基地周辺の活断層と軟弱地盤
立石雅昭(新潟大学名誉教授)
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◇世界の潮
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◇マレーシア政権交代――マハティール後継問題を動かすマレー人の「不安」
伊賀 司
◇続発する世界規模の森林火災は何を意味するのか?
早坂洋史
◇東京高検検事長の定年延長問題が意味するもの――進行する「三権分立」の空洞化
川邊克朗
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◇SEKAI Review of Books
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☆韓国ニューライトの残響――李栄薫著『反日種族主義――日韓危機の根源』
和田春樹(東京大学名誉教授)
☆人類とパンデミック
水溜真由美(北海道大学)
☆戦争を「継ぐ」こと――大矢英代著『沖縄「戦争マラリア」』
森口 豁(フリージャーナリスト)
☆沖縄の山々で何が起きていたか――三上智恵著『証言 沖縄スパイ戦史』
山城博治(沖縄平和運動センター事務局長)
☆読書の要諦――ノンフィクション メディアの使命を考えるノンフィクション
青木 理(ジャーナリスト)
☆読書会という幸福【5】 読書会潜入ルポ (2)猫町倶楽部
向井和美(翻訳家、司書)
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●連載
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●〈短期連載ルポ〉
復興予算26兆円の行方(下)――国策プロジェクト「福島イノベ構想」
古川美穂(ジャーナリスト)
◇好評連載◇-----------------
●ルポ 保育園株式会社【第8回】
変動の中の社会福祉法人
小林美希(ジャーナリスト)
●プリズン・サークル【第5回】
被害を語る
坂上 香(ジャーナリスト、映画監督)
●花粉症と人類【第5講】
スギ花粉症になることができた日本人
小塩海平(東京農業大学)
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●メディア批評【第149回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●但馬日記【第13回】
見えない敵と戦う
平田オリザ(劇作家)
●沖縄(シマ)という窓
「希望の海」としての辺野古、大浦湾
山城紀子(ジャーナリスト)
●いま、この惑星で起きていること【第5回】
生きものたちの変調
森さやか(気象予報士)
●すぐそこにある世界【第14回】
タシケント人情劇場
師岡カリーマ・エルサムニー(文筆家)
●慰安婦がいた時代――新資料とともに改めてたどる【第8回・最終回】
主体 連綿と継承
佐藤 純(大阪経済法科大学 アジア太平洋研究センター)
●お許しいただければ
「芸術家の存在価値」(A・A・ミルン)
訳=行方昭夫(英文学者)
●ドキュメント激動の南北朝鮮【273】(20・2~3)
編集部
●原発月報――(20・2~3)
福島原発事故記録チーム
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○表紙写真=新型コロナウイルス感染地域へ祈るチベット自治区・ラサの僧侶。
二〇二〇年二月五日、新華社/共同通信イメージズ
○ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
デザイン= 赤崎正一 + 佐野裕哉
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○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
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*読者談話室
*アムネスティ通信
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◇編集後記
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ショック・ドクトリンの本質について、その命名者であるジャーナリストのナオミ・クラインは、次のように述べている。
「壊滅的な出来事が発生した直後、災害処理をまたとない市場チャンスと捉え、公共領域にいっせいに群がるこのような行為を、私は『惨事便乗型資本主義』と呼ぶことにした」(『ショック・ドクトリン』上巻、六頁)
ここでクラインが述べる「このような行為」とは、二〇〇五年にアメリカ南部を襲ったハリケーン・カトリーナによる災害直後、たとえば共和党の下院議員が、低所得者向けの公営住宅は「さっぱり一掃できた……これぞ神の御業だ」と語ったようなメンタリティのもとで一気に進められた過激な民営化政策をさしている。
より敷衍して言えば、普段の社会状況では抵抗が強く実現が難しい政策課題を、発災後、人々が茫然自失の状態にあるうちに、一気に実現してしまおうとする思想・行為と言えるだろう。
クラインの著作では、チリやロシア、ポーランド、サッチャーのイギリスなどで遂行されてきた徹底的な公共領域の解体と民営化の諸相が追及されているが、現在のコロナショックのもと、日本の政治社会の文脈で警戒されるべきは、市民の自由・人権の強権的な制限と、相互監視体制のなし崩し的な拡大ではないか。
それぞれの社会は固有の文脈を持つから、感染拡大の抑止のために「都市封鎖」を行なったり、外出を禁止して違反者に刑事罰を与えたりすることの是非は、それぞれで論議され、検証されればよいと思う。ただ、日本社会では少なくとも、永井幸寿氏が今号で整理されているように、そうしたことがなされうる法的根拠はない。戦時中の経験を思い出すまでもなく、行政が「お上」として強く捉えられがちなこの社会の思潮――「戦後教育のせいで権利ばかり声高に主張される」といった言説で今も再生産される――では、市民的自由を制限する行政の権限は最低限にとどめるべきだと思う。
小池都知事が、「何もせずにこのまま推移すれば、海外のようにロックダウン(都市封鎖)を招く」という、誰が封鎖を実施するのかという肝心の主体を曖昧にした言い回しをするのは、法的根拠の不在を知っているからだろう。しかし、いま行政がするべきは、(カタカナ語だらけでよくわからない)強硬策で市民を威迫することではなく、合理的・合法的な感染拡大抑止策の説明、確実な検査とデータの公開、そして医療体制の整備であろう。少なくとも小池都政は、「無駄のない医療」を掲げて推進する都立病院の独立行政法人化を見直すべきではないか。
その小池都政の継続を問う都知事選挙が七月に迫る。国政野党は今回も都知事選での「共闘」を繰り返し確認しているようだが、政党の枠組みからではなく、小池都政の評価についての認識や、都民の生活を保障できる候補者、そして政策という点から、都民本位の議論を行なうべきではないか。都政について何も知らないに等しい候補者を告示日直前に担ぎ出し、スキャンダルを暴かれて失速するという前回の失態をまさか忘れてはいないだろうが、現在の枠組み優先の姿勢には危惧を禁じえない。
さて、「不要不急」の外出自粛が要請された状況下での今号校了作業では、印刷所や校正者の方々をはじめ、多くの方の協力のもとでこの雑誌が編まれていることを、普段にもまして痛感いたしました。心より御礼を申し上げる次第です。
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E-Mail: sekai@iwanami.co.jp
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