『世界』メールマガジン/2020年7月号 【特集1:転換点としてのコロナ危機】【特集2:共犯のマスメディア】
2020/06/11 (Thu) 17:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2020年7月号
■■ vol.#0061
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■『世界』2020年7月号(第934号)好評発売中
2020年6月8日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/注目記事/世界の潮/Sekai Review of Books/連載/グラビア/編集後記/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集1┃転換点としてのコロナ危機
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈人間と境界〉
窓
オルガ・トカルチュク(作家)、訳=小椋彩(東洋大学)
〈変革へ〉
パンデミック後の未来を選択する――ウイルスの目線からの考察
山本太郎(長崎大学)
〈これからの統治〉
コロナ時代のデモクラシー
吉田 徹(北海道大学)
〈ウイルスと中東情勢〉
コロナを生きる中東――世界の「例外?」から考える、ウィズ・コロナを生き延びる術
酒井啓子(千葉大学)
〈危機における言葉の倫理〉
生の弱さの底に降りて行く――カミュ『ペスト』に寄せて
田中 純(東京大学)
〈当然の政策課題〉
食料自給という政治責任の再確認
鈴木宣弘(東京大学)
〈座談会〉
生活保障のさらなる徹底を――現場からの報告と提言
藤田孝典(NPO法人ほっとプラス)、今野晴貴(NPO法人POSSE)、渡辺寛人(NPO法人POSSE)、猪股 正(弁護士)、竹信三恵子(ジャーナリスト)、指宿昭一(弁護士)、大内裕和(中京大学)
〈緊急に実現を〉
生存する権利を保障するための政策提言 Ver.2
生存のためのコロナ対策ネットワーク
〈人間の未来へ〉
「危機の時代」と財政の使命――ポスト・コロナの「新しき時代」のために
神野直彦(日本社会事業大学学長)
〈科学コミュニケーションの不在〉
感染症対策「日本モデル」を検証する――その隠された恣意性
田中重人(東北大学)
┏━━━┓
┃特集2┃共犯のマスメディア
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈再確認すべき課題〉
デジタル・メディアとアナログ・ジャーナリズム
河原仁志(ジャーナリスト)
〈失われた距離感覚〉
危機に自ら陥るマスメディア――権力との共犯関係を自覚できるか
立岩陽一郎(ジャーナリスト)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈気候変動の難問〉
人類は原料革命から卒業できるのか?――温暖化問題あるいは産業革命観への一視角
小野塚知二(東京大学)
〈「改革」の結末〉
可視化された医療崩壊――なぜ、かくも脆く?
伊藤周平(鹿児島大学)
〈法治国家の危機〉
片山善博の「日本を診る」(128) 「緊急事態宣言」をめぐる法律のとんでもない読み間違い
片山善博(早稲田大学)
〈特別篇〉
ルポ 保育園株式会社――緊急事態がもたらした分断
小林美希(ジャーナリスト)
〈進化する韓国〉
○ 新たなる一〇〇年へ――コロナ、総選挙、光州民主化運動四〇年
李泳采(恵泉女学園大学)
○ 韓国はいま何を「清算」しようとしているのか?
金東椿(韓国・聖公会大学)、訳=佐相洋子
○ 韓国労働運動の新地平へ――キャンドル革命が甦らせたもの
金元重(元・千葉商科大学教授)
〈総括〉
カジノの話はもう終わりにしよう
鳥畑与一(静岡大学)
〈留学生ビジネスの内幕〉
手記 東京福祉大学留学生「失踪」事件――その内幕と構造 第1章 真の教育 我ら築かん?
元東京福祉大学教員有志
〈立ち止まって考えるべきこと〉
電磁波に満ちる教育――子どもたちの健康への影響は?
加藤やすこ(環境ジャーナリスト)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇油価が低迷し、コロナ禍であがくサウジアラビア
保坂修司
◇ベネズエラ大統領誘拐未遂事件――コロナ禍の中の米国干渉
新藤通弘
◇入管の「新型ウイルス対策」――非常事態下も変わらない非道
織田朝日
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇SEKAI Review of Books
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆メディアの変容と民主主義
山田健太(専修大学)
☆読書の要諦――サイエンス 時間ですよ
植木不等式(サイエンスライター)
☆新刊
○貧困の現場から社会へ問う――稲葉剛著『閉ざされた扉をこじ開ける』
河添 誠(労働運動活動家)
☆〈連載〉読書会という幸福【第7回】
学校の読書会(2)
向井和美(翻訳家・司書)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
--- 好評連載 --------------------
●プリズン・サークル【第7回】
性暴力の被害と加害をめぐる語り
坂上 香(ジャーナリスト、映画監督)
●移民奔流【第5回】
流浪を抜け出す
工藤律子(ジャーナリスト)
---------------------------------------
●脳力のレッスン【219】
国家神道による天皇親政という呪縛
寺島実郎
●いま、この惑星で起きていること【第7回】
夏のはじめの異常気象
森さやか(気象予報士)
●メディア批評【第151回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●但馬日記【第15回】
見えない敵と戦う(3)
平田オリザ(劇作家)
●すぐそこにある世界【第16回】
それでも笑えるということ
師岡カリーマ・エルサムニー(文筆家)
●沖縄(シマ)という窓
沖縄戦継承の場 コロナ禍が直撃
松元 剛(琉球新報)
●ドキュメント激動の南北朝鮮【275】(20・4~5)
編集部
●原発月報――(20・4~5)
福島原発事故記録チーム
●お許しいただければ
「髭剃りの教訓」(R.リンド)
訳=行方昭夫(英文学者)
●ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○表紙写真
「社会的距離」のためのサークル内でくつろぐ市民。アメリカ・サンフランシスコ市。2020年5月20日。Justin Sullivan/Getty Images/共同通信イメージズ
デザイン= 赤崎正一 + 佐野裕哉
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○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
*読者談話室
*アムネスティ通信
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実は、今号のマスメディア特集を編むにあたって、相談や依頼をした複数の執筆者から、「もはや既存のマスメディアに言うべきことは何もない」という反応を得た。その絶望の深さに私も依頼の言葉を重ねることができなかった。そしてこれは、『週刊文春』誌が「賭け麻雀」の特報を放つ前のことである。
今号の河原論文、メディア批評などで論じられている通りだが、「賭け麻雀」の件は、突っ込みどころが多すぎる。週刊文春が得た元運転手のコメントによれば、深夜の賭け麻雀を終えて新聞社の用意したハイヤーで帰る中、黒川氏は「このあいだ韓国に行って女を買ったんだけどさ」などと話していたという。漂ってくる腐臭のきつさに、顔を背けたくなる。
一般論として取材相手の「懐に飛び込む」ことは必要かつ重要と思うが、この件についてはそういう文脈で正当化できる話ではないのではないか。取材対象と一緒に自らも腐ってしまっているようにしか見えないからだ。しかし、メディア関係者から「よくある話」と繰り返し聞かされると、「もはや言うべきことは何もない」という気持ちに、私もなる。
メディア状況で似る韓国でも『共犯者』という映画が製作されたが、しかし今号特集は、それでも共犯ではあってほしくない、という思いで編んでいる。
さて、この後記を書いている五月末の段階では、緊急事態宣言が解除され、感染拡大は、少なくとも日本国内では穏やかになってきている。だが、このまま終息するのか、懸念される第二波はどうか、ワクチン開発はできるのかなど、ウイルスをめぐっては、一カ月先どころか一週間先の見通しも得られない状況は続きそうだ(月刊誌を編む上では胃の痛む状況だ)。
それにしても謎が多い。我が家にも昨日ようやくアベノマスク二枚が届いたが、場当たり的な対策を続けた日本で犠牲が比較的少なく済んでいるのはなぜか。今後もこのまま推移するのか。今号に寄稿していただいた長崎大学の山本太郎教授によれば、かつて人類を震撼させてきた多くのパンデミックにおいても、実は解明されていない謎が多く残されているとのことだ。氏の著書『感染症と文明』(岩波新書)をひもとくと、たとえば麻疹の感染率や致死率がなぜ地域や時代によって大きく異なるのか、なぜハンセン病の罹患者が時代とともに減っていったのかなども解明されていないという。
いずれにしても、今号で神野直彦氏が指摘するように「持久戦」の構えが求められるのだろう。「危機を克服する過程での社会学習は、必ず次の時代に履歴効果として作用する」(神野氏)。この危機の時代にあって、私たちはどのような方向へ社会を進めようとするのかが問われている。今号の書評で評者の河添誠氏が、今回のパンデミックを大地震に、そして来るべき「コロナ大失業」を津波に喩えていて、印象的であった。まずは何より、市民の生存権の保障を政治の根底に位置付けることを求めたい。
「生存のために」と特集した前号は、幸い多くの読者に迎えられた。オンライン書店では即日完売し、街の書店の休業もあって、入手に苦労された話を多くうかがい、申し訳なく思った。ある知人は営業している書店を四つも回ったという。本誌の年間購読の申込数も増え、過去最高を記録している。二〇一一年の3・11の時も同様に感じたが、今後も、社会の転換点にあって信頼され、求められるメディアでありたいと思う。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎孤塁 双葉郡消防士たちの3.11
吉田千亜
定価(本体1800円+税)
http://iwnm.jp/022969
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~~「WEB世界」のご案内~~
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◇本誌のご注文はお近くの書店か小社営業部宛てにお願いいたします.
岩波書店営業部読者係(TEL:03-5210-4111,FAX:03-3263-6999)
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┃特集1┃転換点としてのコロナ危機
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〈人間と境界〉
窓
オルガ・トカルチュク(作家)、訳=小椋彩(東洋大学)
〈変革へ〉
パンデミック後の未来を選択する――ウイルスの目線からの考察
山本太郎(長崎大学)
〈これからの統治〉
コロナ時代のデモクラシー
吉田 徹(北海道大学)
〈ウイルスと中東情勢〉
コロナを生きる中東――世界の「例外?」から考える、ウィズ・コロナを生き延びる術
酒井啓子(千葉大学)
〈危機における言葉の倫理〉
生の弱さの底に降りて行く――カミュ『ペスト』に寄せて
田中 純(東京大学)
〈当然の政策課題〉
食料自給という政治責任の再確認
鈴木宣弘(東京大学)
〈座談会〉
生活保障のさらなる徹底を――現場からの報告と提言
藤田孝典(NPO法人ほっとプラス)、今野晴貴(NPO法人POSSE)、渡辺寛人(NPO法人POSSE)、猪股 正(弁護士)、竹信三恵子(ジャーナリスト)、指宿昭一(弁護士)、大内裕和(中京大学)
〈緊急に実現を〉
生存する権利を保障するための政策提言 Ver.2
生存のためのコロナ対策ネットワーク
〈人間の未来へ〉
「危機の時代」と財政の使命――ポスト・コロナの「新しき時代」のために
神野直彦(日本社会事業大学学長)
〈科学コミュニケーションの不在〉
感染症対策「日本モデル」を検証する――その隠された恣意性
田中重人(東北大学)
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┃特集2┃共犯のマスメディア
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈再確認すべき課題〉
デジタル・メディアとアナログ・ジャーナリズム
河原仁志(ジャーナリスト)
〈失われた距離感覚〉
危機に自ら陥るマスメディア――権力との共犯関係を自覚できるか
立岩陽一郎(ジャーナリスト)
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◆注目記事
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〈気候変動の難問〉
人類は原料革命から卒業できるのか?――温暖化問題あるいは産業革命観への一視角
小野塚知二(東京大学)
〈「改革」の結末〉
可視化された医療崩壊――なぜ、かくも脆く?
伊藤周平(鹿児島大学)
〈法治国家の危機〉
片山善博の「日本を診る」(128) 「緊急事態宣言」をめぐる法律のとんでもない読み間違い
片山善博(早稲田大学)
〈特別篇〉
ルポ 保育園株式会社――緊急事態がもたらした分断
小林美希(ジャーナリスト)
〈進化する韓国〉
○ 新たなる一〇〇年へ――コロナ、総選挙、光州民主化運動四〇年
李泳采(恵泉女学園大学)
○ 韓国はいま何を「清算」しようとしているのか?
金東椿(韓国・聖公会大学)、訳=佐相洋子
○ 韓国労働運動の新地平へ――キャンドル革命が甦らせたもの
金元重(元・千葉商科大学教授)
〈総括〉
カジノの話はもう終わりにしよう
鳥畑与一(静岡大学)
〈留学生ビジネスの内幕〉
手記 東京福祉大学留学生「失踪」事件――その内幕と構造 第1章 真の教育 我ら築かん?
元東京福祉大学教員有志
〈立ち止まって考えるべきこと〉
電磁波に満ちる教育――子どもたちの健康への影響は?
加藤やすこ(環境ジャーナリスト)
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◇世界の潮
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◇油価が低迷し、コロナ禍であがくサウジアラビア
保坂修司
◇ベネズエラ大統領誘拐未遂事件――コロナ禍の中の米国干渉
新藤通弘
◇入管の「新型ウイルス対策」――非常事態下も変わらない非道
織田朝日
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◇SEKAI Review of Books
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☆メディアの変容と民主主義
山田健太(専修大学)
☆読書の要諦――サイエンス 時間ですよ
植木不等式(サイエンスライター)
☆新刊
○貧困の現場から社会へ問う――稲葉剛著『閉ざされた扉をこじ開ける』
河添 誠(労働運動活動家)
☆〈連載〉読書会という幸福【第7回】
学校の読書会(2)
向井和美(翻訳家・司書)
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●連載
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--- 好評連載 --------------------
●プリズン・サークル【第7回】
性暴力の被害と加害をめぐる語り
坂上 香(ジャーナリスト、映画監督)
●移民奔流【第5回】
流浪を抜け出す
工藤律子(ジャーナリスト)
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●脳力のレッスン【219】
国家神道による天皇親政という呪縛
寺島実郎
●いま、この惑星で起きていること【第7回】
夏のはじめの異常気象
森さやか(気象予報士)
●メディア批評【第151回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●但馬日記【第15回】
見えない敵と戦う(3)
平田オリザ(劇作家)
●すぐそこにある世界【第16回】
それでも笑えるということ
師岡カリーマ・エルサムニー(文筆家)
●沖縄(シマ)という窓
沖縄戦継承の場 コロナ禍が直撃
松元 剛(琉球新報)
●ドキュメント激動の南北朝鮮【275】(20・4~5)
編集部
●原発月報――(20・4~5)
福島原発事故記録チーム
●お許しいただければ
「髭剃りの教訓」(R.リンド)
訳=行方昭夫(英文学者)
●ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
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○表紙写真
「社会的距離」のためのサークル内でくつろぐ市民。アメリカ・サンフランシスコ市。2020年5月20日。Justin Sullivan/Getty Images/共同通信イメージズ
デザイン= 赤崎正一 + 佐野裕哉
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○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
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*読者談話室
*アムネスティ通信
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編集後記
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実は、今号のマスメディア特集を編むにあたって、相談や依頼をした複数の執筆者から、「もはや既存のマスメディアに言うべきことは何もない」という反応を得た。その絶望の深さに私も依頼の言葉を重ねることができなかった。そしてこれは、『週刊文春』誌が「賭け麻雀」の特報を放つ前のことである。
今号の河原論文、メディア批評などで論じられている通りだが、「賭け麻雀」の件は、突っ込みどころが多すぎる。週刊文春が得た元運転手のコメントによれば、深夜の賭け麻雀を終えて新聞社の用意したハイヤーで帰る中、黒川氏は「このあいだ韓国に行って女を買ったんだけどさ」などと話していたという。漂ってくる腐臭のきつさに、顔を背けたくなる。
一般論として取材相手の「懐に飛び込む」ことは必要かつ重要と思うが、この件についてはそういう文脈で正当化できる話ではないのではないか。取材対象と一緒に自らも腐ってしまっているようにしか見えないからだ。しかし、メディア関係者から「よくある話」と繰り返し聞かされると、「もはや言うべきことは何もない」という気持ちに、私もなる。
メディア状況で似る韓国でも『共犯者』という映画が製作されたが、しかし今号特集は、それでも共犯ではあってほしくない、という思いで編んでいる。
さて、この後記を書いている五月末の段階では、緊急事態宣言が解除され、感染拡大は、少なくとも日本国内では穏やかになってきている。だが、このまま終息するのか、懸念される第二波はどうか、ワクチン開発はできるのかなど、ウイルスをめぐっては、一カ月先どころか一週間先の見通しも得られない状況は続きそうだ(月刊誌を編む上では胃の痛む状況だ)。
それにしても謎が多い。我が家にも昨日ようやくアベノマスク二枚が届いたが、場当たり的な対策を続けた日本で犠牲が比較的少なく済んでいるのはなぜか。今後もこのまま推移するのか。今号に寄稿していただいた長崎大学の山本太郎教授によれば、かつて人類を震撼させてきた多くのパンデミックにおいても、実は解明されていない謎が多く残されているとのことだ。氏の著書『感染症と文明』(岩波新書)をひもとくと、たとえば麻疹の感染率や致死率がなぜ地域や時代によって大きく異なるのか、なぜハンセン病の罹患者が時代とともに減っていったのかなども解明されていないという。
いずれにしても、今号で神野直彦氏が指摘するように「持久戦」の構えが求められるのだろう。「危機を克服する過程での社会学習は、必ず次の時代に履歴効果として作用する」(神野氏)。この危機の時代にあって、私たちはどのような方向へ社会を進めようとするのかが問われている。今号の書評で評者の河添誠氏が、今回のパンデミックを大地震に、そして来るべき「コロナ大失業」を津波に喩えていて、印象的であった。まずは何より、市民の生存権の保障を政治の根底に位置付けることを求めたい。
「生存のために」と特集した前号は、幸い多くの読者に迎えられた。オンライン書店では即日完売し、街の書店の休業もあって、入手に苦労された話を多くうかがい、申し訳なく思った。ある知人は営業している書店を四つも回ったという。本誌の年間購読の申込数も増え、過去最高を記録している。二〇一一年の3・11の時も同様に感じたが、今後も、社会の転換点にあって信頼され、求められるメディアでありたいと思う。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎孤塁 双葉郡消防士たちの3.11
吉田千亜
定価(本体1800円+税)
http://iwnm.jp/022969
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岩波書店営業部読者係(TEL:03-5210-4111,FAX:03-3263-6999)
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