『世界』メールマガジン/2020年8月号 【特集1:グリーン・リカバリー】【特集2:パンデミック後の中国社会】
2020/07/09 (Thu) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2020年8月号
■■ vol.#0062
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■『世界』2020年8月号(第935号)好評発売中
2020年7月8日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/注目記事/世界の潮/Sekai Review of Books/連載/グラビア/編集後記/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集1┃グリーン・リカバリー
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈本質的課題〉
環境と生態系の回復へ――パンデミックが示した課題
井田徹治(共同通信)
〈ウイルス的観点〉
ブッシュミート――ウイルスにとっての「食肉市場」
ラッセル・ミッターマイヤー(霊長類学者)、訳=野口みどり
〈文明的転換を〉
コロナ危機は生態系からの警告である
湯本貴和(京都大学)
〈緑の未来構想〉
いまこそ〈健全な社会〉へ――コロナとともに考えるトランジション・デザイン
中野佳裕(早稲田大学)
┏━━━┓
┃特集2┃パンデミック後の中国社会
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈「共感」がなぜ「炎上」に?〉
『武漢日記』に宿る特殊の中の普遍――方方が綴る中国社会の現在地
吉岡桂子(朝日新聞)
〈ネット言論を読む〉
緊張高まる中国の世論動向――習近平体制との対決
辻 康吾(現代中国資料研究会)
〈寄せられた声〉
アムネスティ通信――漢民族が見た新疆ウイグル
〈短期連載〉
ウイグル日記(上)――監視下、消えた笑顔
川嶋久人(フォトジャーナリスト)
〈香港と自由〉
国家安全と民主主義――連帯は監視を超えられるか
阿古智子(東京大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈私たちの安全の保障を〉
パンデミックから軍縮へ
川崎 哲(ICAN)
〈本来的あり方へ〉
生存から考える「安全保障」――コロナと安保六〇年の年に
古関彰一(獨協大学名誉教授)
〈次の国際新秩序は?〉
コロナ・パンデミックと「歴史の教訓」
進藤榮一(筑波大学名誉教授)
〈科学者の倫理を問う〉
感染症専門家会議の「助言」は科学的・公平であったか
本堂 毅(東北大学)
〈政治利用の構造〉
片山善博の「日本を診る」(129) 新型コロナ対策専門家会議――政府はなぜ「議事録」を出さないのか
片山善博(早稲田大学)
〈歴史の原点へ〉
ブラック・ライヴズ・マター蜂起の可能性――「刑罰国家」アメリカとレイシズム
藤永康政(日本女子大学)
〈エッセイ〉
何が問題なのかわからない白人の友人たちへ
ヴィルジニー・デパント(作家、映画監督)、翻訳・解説=谷口亜沙子(明治大学)
〈緊急事態〉
パンデミックに襲われるラテン・アメリカ
所 康弘(明治大学)
〈ルポ〉
西サハラ 砂とマグロと解放闘争
岩崎有一(ジャーナリスト)
〈責任は誰に?〉
「正義連」バッシングの構図――報道と事実
梁澄子(希望のたね基金代表理事)
〈権力に向き合う〉
韓国ジャーナリズムの最前線――オルタナティブ・メディアによる「公共圏」をめぐる闘い
森 類臣(立命館大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇人権無視の恐るべき入管法改定案――「送還忌避罪」まで創設
指宿昭一
◇リビア 終わりなき戦争――周辺国の代理戦争の場に
福富満久
◇禁煙社会への前進と課題――改正健康増進法施行
大和 浩
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇SEKAI Review of Books
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆危機と「新しい生活様式」
斎藤貴男(ジャーナリスト)
☆ユーロ危機の真相――欧州通貨統合の矛盾と南北の分断
菊池恵介(同志社大学)
☆読書の要諦――ノンフィクション 政治家評伝は、侮れない
青木 理(ジャーナリスト)
☆新刊
○雇用劣化の最先端――J・ブラッドワース著『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』
綿貫ゆり
○医療「改革」の陰――ベス・メイシー著『DOPESICK』
山岡淳一郎(ノンフィクション作家)
☆〈連載〉読書会という幸福【第8回】
『ペスト』再読
向井和美(翻訳家・司書)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈新連載〉
●ポストコロナの大学論【第1回】
九月入学は危機打開への切り札か?
吉見俊哉(東京大学)
〈最終回〉
●ルポ 保育園株式会社【第10回】
コロナ禍の保育園
小林美希(ジャーナリスト)
〈最終回〉
●移民奔流【第6回】
「北」と「南」の狭間で
工藤律子(ジャーナリスト)
●メディア批評【第152回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●いま、この惑星で起きていること【第8回】
極地の混乱
森さやか(気象予報士)
●脳力のレッスン【220】
司馬遼太郎を必要とした戦後日本
寺島実郎
●すぐそこにある世界【第17回】
親の“欲名”
師岡カリーマ・エルサムニー(文筆家)
●プリズン・サークル【第8回】
排除よりも包摂
坂上 香(ジャーナリスト、映画監督)
●お許しいただければ
「丁重に辞退します」(A・A・ミルン)
訳=行方昭夫(英文学者)
●沖縄(シマ)という窓
コロナ禍、軍事費、コスタリカ
山城紀子(ジャーナリスト)
●原発月報――(20・5~6)
福島原発事故記録チーム
●ドキュメント激動の南北朝鮮【276】(20・5~6)
編集部
●但馬日記【第16回】
豊岡演劇祭
平田オリザ(劇作家)
●ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○読者談話室
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○表紙写真
ピエマンソンビーチに止まるキャンピングカー。フランス、2014年。Photo by Alvaro CANOVAS
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉
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編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
この編集後記を書いている六月末の段階では、まだ東京都知事選挙の結末は見えていない。
私が都知事選挙に、一投票者という以上の関わりを持つようになったのは一九九九年のことだったから、もう二〇年以上経つ。若者向けの都立社会教育施設の改廃をめぐる市民運動に参加していた私は、さまざまな市民団体とともに、候補者の立会討論会を企画したのだった。
この一九九九年都知事選挙で当選したのが、石原慎太郎であった。この石原都政のもとで、日の丸・君が代の陰湿な強制に象徴される教育の破壊が進み、アジア諸国への蔑視に満ちた発言と歴史修正主義というヘイトの種がばらまかれ、一方で新自由主義的な都市再編が進められ、都政への市民参加が失われていった。
このような都政であってはならないということが、一都民としての私の都政との関わりの原点にある。以来、政党の枠を超えた市民派の候補者の擁立をめぐる動きなどに関わり、二〇一二年の宇都宮健児氏の一回目の擁立から二〇一六年の選挙における同氏の立候補断念に至るまで、歩みを共にした。
その意味で、今回は二〇年ぶりに、否、実質的には初めて、「外」から都知事選挙を見ることとなった。
前回の立候補断念を経てなお都政課題の現場に足を運びつづけ、政策を論じてきた宇都宮氏をはじめとする関係者の努力にもかかわらず、全体としては都知事選の空疎化・エンタメ化はいっそう進んだ。都民本位の政策論争が置き去りにされ、「後出しじゃんけん」的立候補表明、先行する候補の討論会サボタージュは相変わらず横行し、都知事選挙なのに都政が問われないという傾向が強まったという印象を持った。コロナ対策は言うまでもなく、カジノ誘致や気候変動対策、震災対策や都市再開発など、重要な争点は多くあったはずなのだが。
先日、源川真希氏の新著『首都改造』(吉川弘文館)を読んでいて、一九七一年の都知事選に自民党推薦で立候補をした秦野章(元警視総監)が、選挙の七カ月前の段階で、都市構想を公表していたことを知った。開発中心のその内容の是非はともかく、審判までに十分な時間をおいて都民に自らの都市構想を明らかにしていたのだ。これに対して当時の美濃部都政の側は、「広場と青空の東京構想」を打ち出し、それに応じた(構想には本誌編集長を務めた安江良介も関わった)。選挙の結果は大差で美濃部革新都政が継続することとなったのだが、いわゆる革新勢力の強さという表層を超えて、隔世の感を抱かざるをえない。
自戒を込めて言うならば、政策論争の不在より、報道の不在に問題意識を持つべきなのかもしれない。あるべき都市構想を深め、コミュニティをつくり、自治を鍛えようという市民の参考に供する誌面を、今後とも追求していきたい。
さて、パンデミックはいまだ終息が見通せる状況にない。所康弘氏の報告するラテン・アメリカの状況に震撼するが、新自由主義の重荷が折り重なったその惨禍を他人事で済ましてはならないだろう。東アジアの低感染率・低死亡率という謎は、謎であるゆえに、いつ反転してもおかしくはない。社会的距離が強調される現在だが、危機に強靭な社会のために、工夫をこらして市民の社会的つながりを維持し強化することが求められよう。
また酷暑がやってくる。読者の皆様のご健勝を心より祈ります。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎孤塁 双葉郡消防士たちの3.11
吉田千亜
定価(本体1800円+税)
http://iwnm.jp/022969
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▼本号の目次
特集/注目記事/世界の潮/Sekai Review of Books/連載/グラビア/編集後記/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
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┃特集1┃グリーン・リカバリー
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈本質的課題〉
環境と生態系の回復へ――パンデミックが示した課題
井田徹治(共同通信)
〈ウイルス的観点〉
ブッシュミート――ウイルスにとっての「食肉市場」
ラッセル・ミッターマイヤー(霊長類学者)、訳=野口みどり
〈文明的転換を〉
コロナ危機は生態系からの警告である
湯本貴和(京都大学)
〈緑の未来構想〉
いまこそ〈健全な社会〉へ――コロナとともに考えるトランジション・デザイン
中野佳裕(早稲田大学)
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┃特集2┃パンデミック後の中国社会
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〈「共感」がなぜ「炎上」に?〉
『武漢日記』に宿る特殊の中の普遍――方方が綴る中国社会の現在地
吉岡桂子(朝日新聞)
〈ネット言論を読む〉
緊張高まる中国の世論動向――習近平体制との対決
辻 康吾(現代中国資料研究会)
〈寄せられた声〉
アムネスティ通信――漢民族が見た新疆ウイグル
〈短期連載〉
ウイグル日記(上)――監視下、消えた笑顔
川嶋久人(フォトジャーナリスト)
〈香港と自由〉
国家安全と民主主義――連帯は監視を超えられるか
阿古智子(東京大学)
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◆注目記事
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〈私たちの安全の保障を〉
パンデミックから軍縮へ
川崎 哲(ICAN)
〈本来的あり方へ〉
生存から考える「安全保障」――コロナと安保六〇年の年に
古関彰一(獨協大学名誉教授)
〈次の国際新秩序は?〉
コロナ・パンデミックと「歴史の教訓」
進藤榮一(筑波大学名誉教授)
〈科学者の倫理を問う〉
感染症専門家会議の「助言」は科学的・公平であったか
本堂 毅(東北大学)
〈政治利用の構造〉
片山善博の「日本を診る」(129) 新型コロナ対策専門家会議――政府はなぜ「議事録」を出さないのか
片山善博(早稲田大学)
〈歴史の原点へ〉
ブラック・ライヴズ・マター蜂起の可能性――「刑罰国家」アメリカとレイシズム
藤永康政(日本女子大学)
〈エッセイ〉
何が問題なのかわからない白人の友人たちへ
ヴィルジニー・デパント(作家、映画監督)、翻訳・解説=谷口亜沙子(明治大学)
〈緊急事態〉
パンデミックに襲われるラテン・アメリカ
所 康弘(明治大学)
〈ルポ〉
西サハラ 砂とマグロと解放闘争
岩崎有一(ジャーナリスト)
〈責任は誰に?〉
「正義連」バッシングの構図――報道と事実
梁澄子(希望のたね基金代表理事)
〈権力に向き合う〉
韓国ジャーナリズムの最前線――オルタナティブ・メディアによる「公共圏」をめぐる闘い
森 類臣(立命館大学)
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◇世界の潮
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◇人権無視の恐るべき入管法改定案――「送還忌避罪」まで創設
指宿昭一
◇リビア 終わりなき戦争――周辺国の代理戦争の場に
福富満久
◇禁煙社会への前進と課題――改正健康増進法施行
大和 浩
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◇SEKAI Review of Books
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☆危機と「新しい生活様式」
斎藤貴男(ジャーナリスト)
☆ユーロ危機の真相――欧州通貨統合の矛盾と南北の分断
菊池恵介(同志社大学)
☆読書の要諦――ノンフィクション 政治家評伝は、侮れない
青木 理(ジャーナリスト)
☆新刊
○雇用劣化の最先端――J・ブラッドワース著『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』
綿貫ゆり
○医療「改革」の陰――ベス・メイシー著『DOPESICK』
山岡淳一郎(ノンフィクション作家)
☆〈連載〉読書会という幸福【第8回】
『ペスト』再読
向井和美(翻訳家・司書)
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●連載
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〈新連載〉
●ポストコロナの大学論【第1回】
九月入学は危機打開への切り札か?
吉見俊哉(東京大学)
〈最終回〉
●ルポ 保育園株式会社【第10回】
コロナ禍の保育園
小林美希(ジャーナリスト)
〈最終回〉
●移民奔流【第6回】
「北」と「南」の狭間で
工藤律子(ジャーナリスト)
●メディア批評【第152回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●いま、この惑星で起きていること【第8回】
極地の混乱
森さやか(気象予報士)
●脳力のレッスン【220】
司馬遼太郎を必要とした戦後日本
寺島実郎
●すぐそこにある世界【第17回】
親の“欲名”
師岡カリーマ・エルサムニー(文筆家)
●プリズン・サークル【第8回】
排除よりも包摂
坂上 香(ジャーナリスト、映画監督)
●お許しいただければ
「丁重に辞退します」(A・A・ミルン)
訳=行方昭夫(英文学者)
●沖縄(シマ)という窓
コロナ禍、軍事費、コスタリカ
山城紀子(ジャーナリスト)
●原発月報――(20・5~6)
福島原発事故記録チーム
●ドキュメント激動の南北朝鮮【276】(20・5~6)
編集部
●但馬日記【第16回】
豊岡演劇祭
平田オリザ(劇作家)
●ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
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○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○読者談話室
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○表紙写真
ピエマンソンビーチに止まるキャンピングカー。フランス、2014年。Photo by Alvaro CANOVAS
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉
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編集後記
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この編集後記を書いている六月末の段階では、まだ東京都知事選挙の結末は見えていない。
私が都知事選挙に、一投票者という以上の関わりを持つようになったのは一九九九年のことだったから、もう二〇年以上経つ。若者向けの都立社会教育施設の改廃をめぐる市民運動に参加していた私は、さまざまな市民団体とともに、候補者の立会討論会を企画したのだった。
この一九九九年都知事選挙で当選したのが、石原慎太郎であった。この石原都政のもとで、日の丸・君が代の陰湿な強制に象徴される教育の破壊が進み、アジア諸国への蔑視に満ちた発言と歴史修正主義というヘイトの種がばらまかれ、一方で新自由主義的な都市再編が進められ、都政への市民参加が失われていった。
このような都政であってはならないということが、一都民としての私の都政との関わりの原点にある。以来、政党の枠を超えた市民派の候補者の擁立をめぐる動きなどに関わり、二〇一二年の宇都宮健児氏の一回目の擁立から二〇一六年の選挙における同氏の立候補断念に至るまで、歩みを共にした。
その意味で、今回は二〇年ぶりに、否、実質的には初めて、「外」から都知事選挙を見ることとなった。
前回の立候補断念を経てなお都政課題の現場に足を運びつづけ、政策を論じてきた宇都宮氏をはじめとする関係者の努力にもかかわらず、全体としては都知事選の空疎化・エンタメ化はいっそう進んだ。都民本位の政策論争が置き去りにされ、「後出しじゃんけん」的立候補表明、先行する候補の討論会サボタージュは相変わらず横行し、都知事選挙なのに都政が問われないという傾向が強まったという印象を持った。コロナ対策は言うまでもなく、カジノ誘致や気候変動対策、震災対策や都市再開発など、重要な争点は多くあったはずなのだが。
先日、源川真希氏の新著『首都改造』(吉川弘文館)を読んでいて、一九七一年の都知事選に自民党推薦で立候補をした秦野章(元警視総監)が、選挙の七カ月前の段階で、都市構想を公表していたことを知った。開発中心のその内容の是非はともかく、審判までに十分な時間をおいて都民に自らの都市構想を明らかにしていたのだ。これに対して当時の美濃部都政の側は、「広場と青空の東京構想」を打ち出し、それに応じた(構想には本誌編集長を務めた安江良介も関わった)。選挙の結果は大差で美濃部革新都政が継続することとなったのだが、いわゆる革新勢力の強さという表層を超えて、隔世の感を抱かざるをえない。
自戒を込めて言うならば、政策論争の不在より、報道の不在に問題意識を持つべきなのかもしれない。あるべき都市構想を深め、コミュニティをつくり、自治を鍛えようという市民の参考に供する誌面を、今後とも追求していきたい。
さて、パンデミックはいまだ終息が見通せる状況にない。所康弘氏の報告するラテン・アメリカの状況に震撼するが、新自由主義の重荷が折り重なったその惨禍を他人事で済ましてはならないだろう。東アジアの低感染率・低死亡率という謎は、謎であるゆえに、いつ反転してもおかしくはない。社会的距離が強調される現在だが、危機に強靭な社会のために、工夫をこらして市民の社会的つながりを維持し強化することが求められよう。
また酷暑がやってくる。読者の皆様のご健勝を心より祈ります。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎孤塁 双葉郡消防士たちの3.11
吉田千亜
定価(本体1800円+税)
http://iwnm.jp/022969
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