『世界』メールマガジン/2021年3月号 【特集1:21世紀の公害】【特集2:軍事化される琉球弧】
2021/02/12 (Fri) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2021年3月号
■■ vol.#0069
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■『世界』2021年3月号(第942号)好評発売中
2021年2月8日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/注目記事/世界の潮/Sekai Review of Books/連載/グラビア/編集後記/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集1┃21世紀の公害
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈何が起きているのか〉
新たな公害の世紀――電磁波の人体影響と社会の変容を中心に
上田昌文(市民科学研究室)
〈便利さの陥穽〉
プラスチック依存社会からの脱却
高田秀重(東京農工大学)
〈次世代への影響〉
化学物質に満たされたコップの中の子どもたち
戸高恵美子(千葉大学)・森 千里(千葉大学)
〈化学物質汚染〉
香害――新たな空気公害
水野玲子(サイエンスライター)
〈食と人体〉
生態系とヒトを蝕み続ける農薬
岡田幹治(ジャーナリスト)
〈20世紀の教訓〉
ゆきわたる公害――可視化するのはだれか
友澤悠季(長崎大学)
┏━━━┓
┃特集2┃軍事化される琉球弧
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈異なる未来へ〉
不戦の琉球弧へのイマジン
星川 淳(作家、翻訳家)
〈一大拠点化〉
日米一体の巨大軍事基地――馬毛島と安保政策のゆくえ
前田哲男(軍事評論家)
〈座談会〉
地域で軍事化と向き合う
金城龍太郎(石垣島)、下地 茜(宮古島)、和田香穂里(種子島)
〈人々の表情〉
大琉球写真絵巻2020
石川真生(写真家)
〈市民の責任〉
島の未来と軍事基地
池尾靖志(立命館大学非常勤講師)
〈連載〉
沖縄(シマ)という窓――島々の再軍事化と歴史の改竄
親川志奈子(沖縄大学非常勤講師)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈新局面〉
バイデンが直面する「核の多次元方程式」
太田昌克(共同通信)
〈抑圧の前線から〉
草津町議会リコール事件――議場でのセカンドレイプはなにを見せたか
北原みのり(作家)
《事故から10年》
◇原発裁判で明らかになったこと、政府事故調が隠したこと
添田孝史(サイエンスライター)
◇甲状腺がん二五〇人の裏側で進む「検査見直し」
白石 草(ジャーナリスト)
◇原発月報――(20・12~21・1)
福島原発事故記録チーム
〈圧力の裏側〉
NHKは再び政治権力に屈するのか
長井 暁(元NHKチーフ・プロデューサー)
〈議論の決定版〉
日本学術会議会員任命拒否問題と法令解釈
羽田貴史(広島大学・東北大学名誉教授)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇ニワトリのパンデミック――深刻化する家畜感染症
渡邉浩子
◇時代遅れの「主権免除」論――韓国「慰安婦」訴訟判決
山本晴太
◇西サハラの主権問題――トランプ外交の負の遺産
松野明久
◇寿都・神恵内での調査開始――「核のゴミ」処分という難問
松久保 肇
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇SEKAI Review of Books
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇格差社会におけるケア労働のゆくえ
奥田若菜(神田外語大学)
◇読書の要諦――文芸 上等なる不適応
藤沢 周(小説家)
◇【新刊】
〇戦争の真の当事者たちの姿――映画『シャドー・ディール 武器ビジネスの闇』
村瀬健介(ジャーナリスト)
〇暴力の水源を辿る――藤野裕子『民衆暴力』
森 元斎(長崎大学)
◇【連載】読書会という幸福 第15回 『ノートル=ダム・ド・パリ』に恋をして
向井和美(翻訳家、司書)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
----〈新連載〉-----------
●県境の町 【第1回】
晴れやかな感情の目覚め
吉田千亜(ライター)
----〈好評連載〉----------
●コロナ戦記 【第6回】
ICU病床を確保せよ
山岡淳一郎(ノンフィクション作家)
●ネグロスからの手紙――虐殺と弾圧の島で【第4回】
砂糖の島、農民の涙はかれず
クラリッサ・シングソン(人権アクティビスト)、訳・構成=木村英昭・勅使川原香世子
----〈最終回〉----------
●分水嶺――ドキュメント コロナ対策専門家会議【第6回】
専門家会議の「卒業」
河合香織(ノンフィクション作家)
------------------------
●メディア批評【第159回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●片山善博の「日本を診る」【136】
首相もマスコミも頓珍漢な「緊急事態宣言」
片山善博(早稲田大学)
●いま、この惑星で起きていること【第15回】
異常事態が常態に?
森さやか(気象予報士)
●但馬日記【第23回】
危機、ふたたび――緊急事態宣言下の暮らしと演劇
平田オリザ(劇作家)
●脳力のレッスン【227】
日蓮――日本の柱たらんとする意識の意味
寺島実郎
●亡所考 【第3回】
残酷と表裏する共苦
北條勝貴(上智大学)
●お許しいただければ
「雨傘症」について(A.G.ガードナー)
訳=行方昭夫(英文学者)
●すぐそこにある世界【第24回】
まことに不便な便利の概念
師岡カリーマ・エルサムニー
●ドキュメント激動の南北朝鮮【283】(20・12~21・1)
編集部
●グラビア 特別招待作品――琉球弧――大琉球写真絵巻2020から
石川真生(写真家)
●ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○表紙写真
台風接近間近、傘を差して横断歩道をわたる女性。東京、2020年10月8日。写真=AP/アフロ
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
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編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
河合香織氏の連載が今号でいったん終了する。市民の生命と生活にかかわる緊急事態のもとの科学的専門知と政治という、今後もおそらく繰り返し提起されるであろうテーマを検討する上で、不可欠の歴史的ドキュメントであり、好評と注目をいただいていたが、専門家会議解散の段階で一区切りをつける。同時進行中の第三波についての報告は時を改め、また河合さんに報告をお願いしたいと思う。今号で、緊迫するICUについてのルポをされている山岡淳一郎氏もそうだが、自身が感染リスクを抱えながらの取材である。その報告の意味を噛み締めたい。
感染の再拡大にともない、再び緊急事態宣言が発出された。二度目ということで当方の心理的圧迫感――無事に読者のもとに次号を送り出せるだろうか――は前回ほどではないが、緊張は少なからず強いられる。安倍―菅政権の対策の「頓珍漢」ぶり(今号、片山善博氏)がそれに拍車をかける。「対策強化」を求める声が大きいが、私権制限、市民的自由の制限については、政府を全面的に信頼できるということでもないのだから、もっと慎重に議論すべきではないか。さらに、「店名公表」のような私刑の奨励を行政が持ち出してくることへの警戒感も共有したい。
一方、トランプ政権の無策が爆発的な感染拡大をもたらしたアメリカでは、それが一因ともなって政権が交代した。太田昌克氏の論考を読みつつ、その存在の理由そのものが議論となった前政権が退場し、政策論議が可能になったという印象を持つ。日本との関連で注目する分野は多いが、直接的影響のある基地問題、原子力・核政策、東アジア地域の平和といった問題をはじめとして、次号以降も論考を掲載していきたい。
今号の星川淳氏も指摘しているように、核政策と分かちがたい側面を持つ日本の原子力政策は、3・11から一〇年が経過しようとしている現在もなお、決定的な転換に至っていない。原子力ムラに反省は今日もなく、非民主主義的手法を改めず地域の分断をつづけ、再生可能エネルギー普及に桎梏(しっこく)をはめ、原発の維持にいまだ大規模に税金・電気料金を投入しつづけている。さらに経産省の審議会では原発の「新増設」を求める声が多数というから、底なしの泥沼である。今号の添田報告を読むと、3・11前夜、政治・行政と電力会社が、いかに科学的警告を無視・無効化し、懐柔し、潰してきたかが、よくわかる。これらの人々の短期的視野による無批判な「合理的行動」の積み重ねが私たちの生活にいかなる結果をもたらしたか。吉田千亜氏の新しい連載は、そのことを描き出そうとしている。
最後に良い報告を。第二特集の座談会で宮古の状況を話された下地茜さんが、一月一七日の宮古島市の市議補選で当選した。欠員二議席の選挙で一万人を超える市民の票を託されてのトップ当選であった。同日の市長選でも、今号池尾論文で触れられている保守系首長の「チーム沖縄」の現職市長が落選、「オール沖縄」候補が当選した。琉球弧の状況は地域自治と東アジアの平和全体にかかわる重要性とを併せ持つ。ひきつづき取り上げていきたい。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎孤塁 双葉郡消防士たちの3.11
吉田千亜
定価(本体1800円+税)
http://iwnm.jp/022969
☆第63回日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)(2020年)
☆第42回講談社本田靖春ノンフィクション賞(2020年)受賞
☆日隅一雄・情報流通促進賞2020大賞受賞
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https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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┃特集1┃21世紀の公害
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〈何が起きているのか〉
新たな公害の世紀――電磁波の人体影響と社会の変容を中心に
上田昌文(市民科学研究室)
〈便利さの陥穽〉
プラスチック依存社会からの脱却
高田秀重(東京農工大学)
〈次世代への影響〉
化学物質に満たされたコップの中の子どもたち
戸高恵美子(千葉大学)・森 千里(千葉大学)
〈化学物質汚染〉
香害――新たな空気公害
水野玲子(サイエンスライター)
〈食と人体〉
生態系とヒトを蝕み続ける農薬
岡田幹治(ジャーナリスト)
〈20世紀の教訓〉
ゆきわたる公害――可視化するのはだれか
友澤悠季(長崎大学)
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┃特集2┃軍事化される琉球弧
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈異なる未来へ〉
不戦の琉球弧へのイマジン
星川 淳(作家、翻訳家)
〈一大拠点化〉
日米一体の巨大軍事基地――馬毛島と安保政策のゆくえ
前田哲男(軍事評論家)
〈座談会〉
地域で軍事化と向き合う
金城龍太郎(石垣島)、下地 茜(宮古島)、和田香穂里(種子島)
〈人々の表情〉
大琉球写真絵巻2020
石川真生(写真家)
〈市民の責任〉
島の未来と軍事基地
池尾靖志(立命館大学非常勤講師)
〈連載〉
沖縄(シマ)という窓――島々の再軍事化と歴史の改竄
親川志奈子(沖縄大学非常勤講師)
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◆注目記事
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〈新局面〉
バイデンが直面する「核の多次元方程式」
太田昌克(共同通信)
〈抑圧の前線から〉
草津町議会リコール事件――議場でのセカンドレイプはなにを見せたか
北原みのり(作家)
《事故から10年》
◇原発裁判で明らかになったこと、政府事故調が隠したこと
添田孝史(サイエンスライター)
◇甲状腺がん二五〇人の裏側で進む「検査見直し」
白石 草(ジャーナリスト)
◇原発月報――(20・12~21・1)
福島原発事故記録チーム
〈圧力の裏側〉
NHKは再び政治権力に屈するのか
長井 暁(元NHKチーフ・プロデューサー)
〈議論の決定版〉
日本学術会議会員任命拒否問題と法令解釈
羽田貴史(広島大学・東北大学名誉教授)
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◇世界の潮
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◇ニワトリのパンデミック――深刻化する家畜感染症
渡邉浩子
◇時代遅れの「主権免除」論――韓国「慰安婦」訴訟判決
山本晴太
◇西サハラの主権問題――トランプ外交の負の遺産
松野明久
◇寿都・神恵内での調査開始――「核のゴミ」処分という難問
松久保 肇
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◇SEKAI Review of Books
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◇格差社会におけるケア労働のゆくえ
奥田若菜(神田外語大学)
◇読書の要諦――文芸 上等なる不適応
藤沢 周(小説家)
◇【新刊】
〇戦争の真の当事者たちの姿――映画『シャドー・ディール 武器ビジネスの闇』
村瀬健介(ジャーナリスト)
〇暴力の水源を辿る――藤野裕子『民衆暴力』
森 元斎(長崎大学)
◇【連載】読書会という幸福 第15回 『ノートル=ダム・ド・パリ』に恋をして
向井和美(翻訳家、司書)
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●連載
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----〈新連載〉-----------
●県境の町 【第1回】
晴れやかな感情の目覚め
吉田千亜(ライター)
----〈好評連載〉----------
●コロナ戦記 【第6回】
ICU病床を確保せよ
山岡淳一郎(ノンフィクション作家)
●ネグロスからの手紙――虐殺と弾圧の島で【第4回】
砂糖の島、農民の涙はかれず
クラリッサ・シングソン(人権アクティビスト)、訳・構成=木村英昭・勅使川原香世子
----〈最終回〉----------
●分水嶺――ドキュメント コロナ対策専門家会議【第6回】
専門家会議の「卒業」
河合香織(ノンフィクション作家)
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●メディア批評【第159回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●片山善博の「日本を診る」【136】
首相もマスコミも頓珍漢な「緊急事態宣言」
片山善博(早稲田大学)
●いま、この惑星で起きていること【第15回】
異常事態が常態に?
森さやか(気象予報士)
●但馬日記【第23回】
危機、ふたたび――緊急事態宣言下の暮らしと演劇
平田オリザ(劇作家)
●脳力のレッスン【227】
日蓮――日本の柱たらんとする意識の意味
寺島実郎
●亡所考 【第3回】
残酷と表裏する共苦
北條勝貴(上智大学)
●お許しいただければ
「雨傘症」について(A.G.ガードナー)
訳=行方昭夫(英文学者)
●すぐそこにある世界【第24回】
まことに不便な便利の概念
師岡カリーマ・エルサムニー
●ドキュメント激動の南北朝鮮【283】(20・12~21・1)
編集部
●グラビア 特別招待作品――琉球弧――大琉球写真絵巻2020から
石川真生(写真家)
●ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
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○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
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○表紙写真
台風接近間近、傘を差して横断歩道をわたる女性。東京、2020年10月8日。写真=AP/アフロ
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
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編集後記
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河合香織氏の連載が今号でいったん終了する。市民の生命と生活にかかわる緊急事態のもとの科学的専門知と政治という、今後もおそらく繰り返し提起されるであろうテーマを検討する上で、不可欠の歴史的ドキュメントであり、好評と注目をいただいていたが、専門家会議解散の段階で一区切りをつける。同時進行中の第三波についての報告は時を改め、また河合さんに報告をお願いしたいと思う。今号で、緊迫するICUについてのルポをされている山岡淳一郎氏もそうだが、自身が感染リスクを抱えながらの取材である。その報告の意味を噛み締めたい。
感染の再拡大にともない、再び緊急事態宣言が発出された。二度目ということで当方の心理的圧迫感――無事に読者のもとに次号を送り出せるだろうか――は前回ほどではないが、緊張は少なからず強いられる。安倍―菅政権の対策の「頓珍漢」ぶり(今号、片山善博氏)がそれに拍車をかける。「対策強化」を求める声が大きいが、私権制限、市民的自由の制限については、政府を全面的に信頼できるということでもないのだから、もっと慎重に議論すべきではないか。さらに、「店名公表」のような私刑の奨励を行政が持ち出してくることへの警戒感も共有したい。
一方、トランプ政権の無策が爆発的な感染拡大をもたらしたアメリカでは、それが一因ともなって政権が交代した。太田昌克氏の論考を読みつつ、その存在の理由そのものが議論となった前政権が退場し、政策論議が可能になったという印象を持つ。日本との関連で注目する分野は多いが、直接的影響のある基地問題、原子力・核政策、東アジア地域の平和といった問題をはじめとして、次号以降も論考を掲載していきたい。
今号の星川淳氏も指摘しているように、核政策と分かちがたい側面を持つ日本の原子力政策は、3・11から一〇年が経過しようとしている現在もなお、決定的な転換に至っていない。原子力ムラに反省は今日もなく、非民主主義的手法を改めず地域の分断をつづけ、再生可能エネルギー普及に桎梏(しっこく)をはめ、原発の維持にいまだ大規模に税金・電気料金を投入しつづけている。さらに経産省の審議会では原発の「新増設」を求める声が多数というから、底なしの泥沼である。今号の添田報告を読むと、3・11前夜、政治・行政と電力会社が、いかに科学的警告を無視・無効化し、懐柔し、潰してきたかが、よくわかる。これらの人々の短期的視野による無批判な「合理的行動」の積み重ねが私たちの生活にいかなる結果をもたらしたか。吉田千亜氏の新しい連載は、そのことを描き出そうとしている。
最後に良い報告を。第二特集の座談会で宮古の状況を話された下地茜さんが、一月一七日の宮古島市の市議補選で当選した。欠員二議席の選挙で一万人を超える市民の票を託されてのトップ当選であった。同日の市長選でも、今号池尾論文で触れられている保守系首長の「チーム沖縄」の現職市長が落選、「オール沖縄」候補が当選した。琉球弧の状況は地域自治と東アジアの平和全体にかかわる重要性とを併せ持つ。ひきつづき取り上げていきたい。
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吉田千亜
定価(本体1800円+税)
http://iwnm.jp/022969
☆第63回日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)(2020年)
☆第42回講談社本田靖春ノンフィクション賞(2020年)受賞
☆日隅一雄・情報流通促進賞2020大賞受賞
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