『世界』メールマガジン/2021年4月号 【特集1:デジタル監視体制】【特集2:社会民主主義という選択肢】
2021/03/08 (Mon) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2021年4月号
■■ vol.#0070
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■『世界』2021年4月号(第943号)好評発売中
2021年3月8日発行
定価(本体850円+税)
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▼本号の目次
特集/注目記事/世界の潮/Sekai Review of Books/連載/グラビア/編集後記/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集1┃デジタル監視体制
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈危険すぎる狙い〉
パンデミック監視資本主義の台頭――デジタル網に閉じ込められる私たち
小笠原みどり(ジャーナリスト)
〈提起〉
デジタル庁構想批判の原則を立てる
小倉利丸(批評家)
〈加速する既成事実化〉
実装される監視社会化ツール
武藤糾明(弁護士)
〈市民の行動変容〉
中国デジタル革命と監視社会の行方
倉澤治雄(科学ジャーナリスト)
〈誰がための技術?〉
「個別最適な学び」の何が問題か――ICTがもたらす教育の危機
佐藤隆(都留文科大学)
〈バルセロナの挑戦〉
人々による人々のためのデジタル社会へ――監視社会化に抗する“恐れぬ自治体”
内田聖子(PARC)
┏━━━┓
┃特集2┃社会民主主義という選択肢
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈国際的動向〉
変化しつづける社会民主主義――ヨーロッパと日本の経験から
近藤康史(名古屋大学)
〈再生へ〉
私たちは社会民主主義を選ぶ
福島みずほ(社民党党首)× 大椿ゆうこ(社民党副党首)
〈時代のダイナミズム〉
マリン政権はフィンランドの未来を切り開けるか
柴山由理子(東海大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈手記〉
自治体としてパンデミックに立ち向かう――(上)PCR検査の拡充へ
保坂展人(世田谷区長)
〈調査報道〉
辺野古密約――陸上自衛隊の独走と逸脱
石井暁(共同通信)
〈金融政策と民主主義〉
中央銀行は漂流しているのか?
白川方明(前日銀総裁)
〈福島を撮り続ける〉
原発事故後の一〇年でわかったこと
豊田直巳(フォトジャーナリスト)
〈インタビュー〉
福島・市民測定の一〇年――被曝後の世界を生きるために
鈴木 薫(「たらちね」理事・事務局長)
《アメリカはどう変わるか?》
○バイデン政権の気候変動対策と日本
亀山康子(国立環境研究所)
○対等な日米関係?――第5次アーミテージ・ナイ報告分析
猿田佐世(新外交イニシアティブ)
○核兵器の先制不使用と日本政府
田窪雅文(「核情報」主宰)
〈「平和賞」の裏側で〉
混迷するエチオピア政治――アビィ政権成立とティグライ戦争
眞城百華(上智大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇ミャンマー政変 その背景と構造
中西嘉宏
◇始動した国際金融センター構想
笠井哲也
◇IR誘致が問う民主主義――住民投票否決と横浜市長選
佐藤百合
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇SEKAI Review of Books
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇フィルム・ノワールの階級政治
渋谷 望(日本女子大学)
◇地域社会の当事者としての在日朝鮮人
山内明美(宮城教育大学)
◇読書の要諦――サイエンス 脱炭素人の踊り
植木不等式(サイエンスライター)
◇【映画】自省するドキュメンタリー ――映画『夜明け前のうた――消された沖縄の障害者』
七沢 潔(ジャーナリスト)
◇【連載】読書会という幸福 第16回 内気な弟子と内気な師匠
向井和美(翻訳家、司書)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
----〈短期連載〉-----------
●誰が廃炉にするのか? 廃炉への現実的道筋を提起する(下)
筒井哲郎(プラント技術者の会)
----〈短期集中連載〉-----------
●移民たちのパンデミック 【第1回】
メキシコーー「北」の壁の町で
工藤律子(ジャーナリスト)、撮影=篠田有史
----〈好評連載〉----------
●コロナ戦記 【第7回】
自宅待機ゼロ 墨田区の独行
山岡淳一郎(ノンフィクション作家)
●県境の町【第2回】
日々の営みの中の三月一一日
吉田千亜(ライター)
●但馬日記【第24回】
働き方改革とハラスメントの逆説(パラドクス)――森喜朗氏発言に考える
平田オリザ(劇作家)
----〈最終回〉----------
●すぐそこにある世界 【第25回】
多様性を超えて
師岡カリーマ・エルサムニー
------------------------
●片山善博の「日本を診る」【137】
オリパラ組織委員会新会長選出の正当性を問う
片山善博(早稲田大学)
●メディア批評【第160回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●いま、この惑星で起きていること【第16回】
こおりつく出来事
森さやか(気象予報士)
●脳力のレッスン【228】
日本と天皇の始まり――天武・持統期の革命性
寺島実郎
●亡所考 【第4回】
忘却に抗う誓い
北條勝貴(上智大学)
●お許しいただければ
占い(A.A.ミルン)
訳=行方昭夫(英文学者)
●沖縄(シマ)という窓―― 頻発する米軍機低空飛行 見透かされる日本の弱腰
松元剛(琉球新報)
●原発月報(21・1~2)
福島原発事故記録チーム
●ドキュメント激動の南北朝鮮【284】(21・1~2)
編集部
●グラビア 特別招待作品――飯舘村の10年
豊田直巳(フォトジャーナリスト)
●ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
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○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○『世界』へ――人生の原点を知った 中央労働学院の日々
藤田庄市(フォトジャーナリスト)
○読者談話室
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○表紙写真
ロックダウン中のフランス・リヨンの地下鉄にて。スマホを見る女性。2020 年4 月20 日
( 写真提供:Robert DEYRAIL /Gamma-Rapho via Getty Images =共同通信イメージズ)
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
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編集後記
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かねて宗教と人間への深い洞察をもとにした著作を多く著しているジャーナリストの藤田庄市さんと、ある企画をめぐるやりとりをしていた。ある日のメールで、本誌二月号特集の「阿波根昌鴻――態度としての非戦」についての感想を頂戴した。その内容が、ただ私の個人的な記憶にとどめるだけではもったいない内容であったので、本誌に新欄を設け、原稿としてお寄せいただいた。特集に収めた謝花悦子氏や榎本空氏の回想もそうだったが、阿波根昌鴻の躍動する精神が、それを引き継いで昇華し、実践している人の文章を媒介にして伝わってくる。
沖縄をめぐっては前号でも「軍事化される琉球弧」を特集したが、今号では、共同通信の石井暁氏に、陸上自衛隊と米海兵隊が基地の共同使用について密約を結んでいた事実を報告していただいた。石井氏といえば、陸自の秘密部隊「別班」の存在を明るみに出し、最近でも陸自特殊部隊のトップをつとめた人物による現役自衛官などへの私的戦闘訓練の様子をスクープしている。
石井氏は自衛隊の"天敵"であるかのように思われがちだが、むしろ逆である。シビリアン・コントロールを軽視、無視して突き進む軍事組織という存在が社会に何をもたらしかねないか、今号で中西嘉宏氏が報告するミャンマーの状況は極端に思われるかもしれないが、そう遠くない過去の日本も似たような状況だった。それを理解しているからこそ、石井氏や、ともに取材にあたった阿部岳氏に対し、自衛隊幹部をはじめ多くの関係者が応答するのであろう。パンデミックもあり取材は難航したとのことだったが、まずは、そのジャーナリズムの成果を共有したい。
また、今号の連載「沖縄という窓」では、琉球新報の松元剛氏が、沖縄で米軍戦闘機の低空飛行が常態化している状況を報告している。私の住む東京・八王子でも横田基地の米軍飛行機の騒音が激しくなっているが、事故が起きてからでは遅い。……というより、これほど屈辱的な状況を、政治がそのまま受容している異様さがおそろしい。沖縄に負担を押し付けて恬然としているうちに、植民地的様相が足もとでも拡大深化してきている。今号の猿田佐世氏による第五次アーミテージ・ナイ報告書の分析もあわせ読んでほしい。
関連してお知らせを。前号のグラビアで「大琉球写真絵巻2020」を掲載した石川真生氏の大規模な写真展が、三月五日から六月六日まで沖縄県立博物館・美術館で開かれる。タイトルは「醜くも美しい人の一生、私は人間が好きだ。」――なんとすばらしいコトバだろう。ぜひ行きたい。
この写真展のタイトルが胸に突き刺さってくると同時に、師岡カリーマ・エルサムニーさんの美しいエッセイの数々を思い出した。人間の多様性と共通性が世界各地で醸し出す妙味を伝えてくれた二年間にわたる連載、ありがとうございました。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎孤塁 双葉郡消防士たちの3.11
吉田千亜
定価(本体1800円+税)
http://iwnm.jp/022969
☆第63回日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)(2020年)
☆第42回講談社本田靖春ノンフィクション賞(2020年)受賞
☆日隅一雄・情報流通促進賞2020大賞受賞
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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┃特集1┃デジタル監視体制
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈危険すぎる狙い〉
パンデミック監視資本主義の台頭――デジタル網に閉じ込められる私たち
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〈提起〉
デジタル庁構想批判の原則を立てる
小倉利丸(批評家)
〈加速する既成事実化〉
実装される監視社会化ツール
武藤糾明(弁護士)
〈市民の行動変容〉
中国デジタル革命と監視社会の行方
倉澤治雄(科学ジャーナリスト)
〈誰がための技術?〉
「個別最適な学び」の何が問題か――ICTがもたらす教育の危機
佐藤隆(都留文科大学)
〈バルセロナの挑戦〉
人々による人々のためのデジタル社会へ――監視社会化に抗する“恐れぬ自治体”
内田聖子(PARC)
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┃特集2┃社会民主主義という選択肢
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈国際的動向〉
変化しつづける社会民主主義――ヨーロッパと日本の経験から
近藤康史(名古屋大学)
〈再生へ〉
私たちは社会民主主義を選ぶ
福島みずほ(社民党党首)× 大椿ゆうこ(社民党副党首)
〈時代のダイナミズム〉
マリン政権はフィンランドの未来を切り開けるか
柴山由理子(東海大学)
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◆注目記事
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〈手記〉
自治体としてパンデミックに立ち向かう――(上)PCR検査の拡充へ
保坂展人(世田谷区長)
〈調査報道〉
辺野古密約――陸上自衛隊の独走と逸脱
石井暁(共同通信)
〈金融政策と民主主義〉
中央銀行は漂流しているのか?
白川方明(前日銀総裁)
〈福島を撮り続ける〉
原発事故後の一〇年でわかったこと
豊田直巳(フォトジャーナリスト)
〈インタビュー〉
福島・市民測定の一〇年――被曝後の世界を生きるために
鈴木 薫(「たらちね」理事・事務局長)
《アメリカはどう変わるか?》
○バイデン政権の気候変動対策と日本
亀山康子(国立環境研究所)
○対等な日米関係?――第5次アーミテージ・ナイ報告分析
猿田佐世(新外交イニシアティブ)
○核兵器の先制不使用と日本政府
田窪雅文(「核情報」主宰)
〈「平和賞」の裏側で〉
混迷するエチオピア政治――アビィ政権成立とティグライ戦争
眞城百華(上智大学)
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◇世界の潮
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◇ミャンマー政変 その背景と構造
中西嘉宏
◇始動した国際金融センター構想
笠井哲也
◇IR誘致が問う民主主義――住民投票否決と横浜市長選
佐藤百合
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◇SEKAI Review of Books
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◇フィルム・ノワールの階級政治
渋谷 望(日本女子大学)
◇地域社会の当事者としての在日朝鮮人
山内明美(宮城教育大学)
◇読書の要諦――サイエンス 脱炭素人の踊り
植木不等式(サイエンスライター)
◇【映画】自省するドキュメンタリー ――映画『夜明け前のうた――消された沖縄の障害者』
七沢 潔(ジャーナリスト)
◇【連載】読書会という幸福 第16回 内気な弟子と内気な師匠
向井和美(翻訳家、司書)
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●連載
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----〈短期連載〉-----------
●誰が廃炉にするのか? 廃炉への現実的道筋を提起する(下)
筒井哲郎(プラント技術者の会)
----〈短期集中連載〉-----------
●移民たちのパンデミック 【第1回】
メキシコーー「北」の壁の町で
工藤律子(ジャーナリスト)、撮影=篠田有史
----〈好評連載〉----------
●コロナ戦記 【第7回】
自宅待機ゼロ 墨田区の独行
山岡淳一郎(ノンフィクション作家)
●県境の町【第2回】
日々の営みの中の三月一一日
吉田千亜(ライター)
●但馬日記【第24回】
働き方改革とハラスメントの逆説(パラドクス)――森喜朗氏発言に考える
平田オリザ(劇作家)
----〈最終回〉----------
●すぐそこにある世界 【第25回】
多様性を超えて
師岡カリーマ・エルサムニー
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●片山善博の「日本を診る」【137】
オリパラ組織委員会新会長選出の正当性を問う
片山善博(早稲田大学)
●メディア批評【第160回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●いま、この惑星で起きていること【第16回】
こおりつく出来事
森さやか(気象予報士)
●脳力のレッスン【228】
日本と天皇の始まり――天武・持統期の革命性
寺島実郎
●亡所考 【第4回】
忘却に抗う誓い
北條勝貴(上智大学)
●お許しいただければ
占い(A.A.ミルン)
訳=行方昭夫(英文学者)
●沖縄(シマ)という窓―― 頻発する米軍機低空飛行 見透かされる日本の弱腰
松元剛(琉球新報)
●原発月報(21・1~2)
福島原発事故記録チーム
●ドキュメント激動の南北朝鮮【284】(21・1~2)
編集部
●グラビア 特別招待作品――飯舘村の10年
豊田直巳(フォトジャーナリスト)
●ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
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○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○『世界』へ――人生の原点を知った 中央労働学院の日々
藤田庄市(フォトジャーナリスト)
○読者談話室
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○表紙写真
ロックダウン中のフランス・リヨンの地下鉄にて。スマホを見る女性。2020 年4 月20 日
( 写真提供:Robert DEYRAIL /Gamma-Rapho via Getty Images =共同通信イメージズ)
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
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編集後記
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かねて宗教と人間への深い洞察をもとにした著作を多く著しているジャーナリストの藤田庄市さんと、ある企画をめぐるやりとりをしていた。ある日のメールで、本誌二月号特集の「阿波根昌鴻――態度としての非戦」についての感想を頂戴した。その内容が、ただ私の個人的な記憶にとどめるだけではもったいない内容であったので、本誌に新欄を設け、原稿としてお寄せいただいた。特集に収めた謝花悦子氏や榎本空氏の回想もそうだったが、阿波根昌鴻の躍動する精神が、それを引き継いで昇華し、実践している人の文章を媒介にして伝わってくる。
沖縄をめぐっては前号でも「軍事化される琉球弧」を特集したが、今号では、共同通信の石井暁氏に、陸上自衛隊と米海兵隊が基地の共同使用について密約を結んでいた事実を報告していただいた。石井氏といえば、陸自の秘密部隊「別班」の存在を明るみに出し、最近でも陸自特殊部隊のトップをつとめた人物による現役自衛官などへの私的戦闘訓練の様子をスクープしている。
石井氏は自衛隊の"天敵"であるかのように思われがちだが、むしろ逆である。シビリアン・コントロールを軽視、無視して突き進む軍事組織という存在が社会に何をもたらしかねないか、今号で中西嘉宏氏が報告するミャンマーの状況は極端に思われるかもしれないが、そう遠くない過去の日本も似たような状況だった。それを理解しているからこそ、石井氏や、ともに取材にあたった阿部岳氏に対し、自衛隊幹部をはじめ多くの関係者が応答するのであろう。パンデミックもあり取材は難航したとのことだったが、まずは、そのジャーナリズムの成果を共有したい。
また、今号の連載「沖縄という窓」では、琉球新報の松元剛氏が、沖縄で米軍戦闘機の低空飛行が常態化している状況を報告している。私の住む東京・八王子でも横田基地の米軍飛行機の騒音が激しくなっているが、事故が起きてからでは遅い。……というより、これほど屈辱的な状況を、政治がそのまま受容している異様さがおそろしい。沖縄に負担を押し付けて恬然としているうちに、植民地的様相が足もとでも拡大深化してきている。今号の猿田佐世氏による第五次アーミテージ・ナイ報告書の分析もあわせ読んでほしい。
関連してお知らせを。前号のグラビアで「大琉球写真絵巻2020」を掲載した石川真生氏の大規模な写真展が、三月五日から六月六日まで沖縄県立博物館・美術館で開かれる。タイトルは「醜くも美しい人の一生、私は人間が好きだ。」――なんとすばらしいコトバだろう。ぜひ行きたい。
この写真展のタイトルが胸に突き刺さってくると同時に、師岡カリーマ・エルサムニーさんの美しいエッセイの数々を思い出した。人間の多様性と共通性が世界各地で醸し出す妙味を伝えてくれた二年間にわたる連載、ありがとうございました。
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◎孤塁 双葉郡消防士たちの3.11
吉田千亜
定価(本体1800円+税)
http://iwnm.jp/022969
☆第63回日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)(2020年)
☆第42回講談社本田靖春ノンフィクション賞(2020年)受賞
☆日隅一雄・情報流通促進賞2020大賞受賞
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