『世界』メールマガジン/2021年6月号 【特集1:イベント資本主義――その破局】【特集2:気候変動とエネルギー】
2021/05/14 (Fri) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2021年6月号
■■ vol.#0072
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■『世界』2021年6月号(第945号)好評発売中
2021年5月8日発行
定価935円(税込)
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▼本号の目次
特集/注目記事/世界の潮/SEKAI Review of Books/連載/編集後記/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集1┃イベント資本主義――その破局
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈転換へ〉
メガ・イベントの時代の終焉――新しい創発に向けた大都市の課題
町村敬志(一橋大学特任教授)
〈虚構の祝祭〉
祝賀資本主義のグロテスクな象徴――東京五輪の総括
本間 龍(著述家)
〈SNSと参加意識〉
ソーシャルメディア時代のメガ・イベント
阿部 潔(関西学院大学)
〈万博誘致の背景〉
大阪の興行的都市政策――堺屋太一と維新政治
森 裕之(立命館大学)
〈新たな都市像へ〉
オリンピック開発と資本の論理
荒又美陽(明治大学)
┏━━━┓
┃特集2┃気候変動とエネルギー
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈論点は何か〉
カーボンニュートラルへ 日本の課題
高村ゆかり(東京大学)
〈新技術をめぐる7条件〉
革新的技術は気候を救うか
伊与田昌慶(気候ネットワーク)
〈実践に学ぶ〉
どうして海外は再エネが普及しているのか
山家公雄(京都大学特任教授)
〈政策提言〉
すぐそこにある再エネ社会――誰がこの転換を妨げるのか?
飯田哲也(環境エネルギー政策研究所)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈告発〉
NHKと政治と世論誘導――公共放送の内部で何が起きているのか
長井 暁(ジャーナリスト)
〈いま私たちにできること〉
ミャンマーのクーデターと日本の責任――(上)「独自のパイプ」神話をさかのぼる
木口由香(メコン・ウォッチ)
〈公助を!〉
自助も共助も限界を迎えている――生活保護を利用者本位の制度へ
稲葉 剛(つくろい東京ファンド代表理事)
〈重すぎる代償〉
コロナ戦記――第9回 死の淵からの生還
山岡淳一郎(ノンフィクション作家)
〈3・11の検証を〉
この原発を動かしてよいのか?――新潟県原発検証委員会をめぐって
池内 了(科学者)
《新基地建設と遺骨》
○遺骨まじりの土砂――本土が問われている
渡辺 豪(ジャーナリスト)
○〈インタビュー〉戦没者の尊厳は守られなければならない
具志堅隆松(「ガマフヤー」代表)
○沖縄(シマ)という窓――人道上許されない絶対的愚行
親川志奈子(沖縄大学非常勤講師)
〈驚愕の事実〉
コンピュータシステムがもたらした冤罪事件――英国史上最大の誤判スキャンダルの衝撃
指宿 信(成城大学)
〈「大きな一歩」の落とし穴?〉
同性婚訴訟 札幌地裁の画期的判決をどう考えるか――「同性婚の是非」という疑似問題を超えて
喜久山大貴(弁護士)
〈地に根差す技術〉
中村哲医師と「緑の大地計画」――クナール川を制した伝統的河川工法
梶原健嗣(愛国学園大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇韓国「四・三特別法」改正――「積弊清算」の新局面
文京洙
◇名古屋入管死亡事件――国際法違反の入管法改正問題
駒井知会
◇中国人ビザ拒否訴訟――国家の「自由裁量」を人権から問う
田中 宏
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇SEKAI Review of Books
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇日銀はどこに漂着しようとしているか――『ドキュメント 日銀漂流』
西野智彦(ジャーナリスト)
◇母の褒め殺し――現代日本映画における“毒母”など
木下千花(京都大学)
◇読書の要諦――文芸 地の声を聴く
藤沢 周(小説家)
◇【連載】読書会という幸福 第18回 ようやくのヘミングウェイ
向井和美(翻訳家、司書)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
----〈最終回〉-----------
●自治体としてパンデミックに立ち向かう――最終回 ワクチン接種へ
保坂展人(世田谷区長)
●ネグロスからの手紙――虐殺と弾圧の島で【第6回】
殺された126人の先住民族
クラリッサ・シングソン(人権アクティビスト)、訳・構成=木村英昭・勅使川原香世子
●移民たちのパンデミック 【第3回】
生きる場を求めて
工藤律子(ジャーナリスト)、撮影=篠田有史
----〈好評連載〉----------
●県境の町【第4回】
汚染の「線引き」
吉田千亜(ライター)
----------------------------
●メディア批評【第162回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●片山善博の「日本を診る」【139】
多発する法案ミス 国会と霞が関改革の契機とせよ
片山善博(早稲田大学)
●いま、この惑星で起きていること【第18回】
天空の異変
森さやか(気象予報士)
●脳力のレッスン【230】
中世における神道の形成─―神道の本質を考える
寺島実郎
●亡所考 【第6回】
ドメスティケーションの帝国
北條勝貴(上智大学)
●但馬日記【第26回】
新大学、ついに始動
平田オリザ(劇作家)
●お許しいただければ
――幸福の度合い(R.リンド)
訳=行方昭夫(英文学者)
●原発月報─(21・2~4)
福島原発事故記録チーム
●ドキュメント激動の南北朝鮮【286】(21・3~4)
編集部
●ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○表紙写真
五輪カラーにライトアップされるレインボーブリッジと東京タワー。2021 年4 月14 日。(ロイター/アフロ提供)
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
イベント資本主義という今号第一特集のタイトルは、やや分かりにくいかもしれない。本誌でも何度か紹介してきた(二〇二〇年二月号のインタビューなど)J.ボイコフ氏の「祝賀資本主義」の言い換えである。その議論は、今号では本間龍氏が詳細に紹介している。
ただ、単なる言い換えというわけでもなく、より日本的な含意を持たせることはできるかもしれない。祝賀資本主義に、石原慎太郎、安倍晋三、堺屋太一、秋元康、森喜朗的なものを加えて、マリオ・ブラザーズとAKB48を添えて電通が仕上げるもの、それがニッポンのイベント資本主義だ。
今号の書評欄で藤沢周氏が書かれていることに深く共感した。安倍晋三氏の「アンダー・コントロール」は、この「祝福されない祝祭」(先号、尾崎正峰氏)の徹底した軽さを表している。「復興五輪」も「コロナに人類が打ち勝った証」も、口から出まかせにすぎないことは、もはや誰でも理解している。
東京五輪の行方はともかく、大規模なイベントは今後も続く。大阪万博が典型だが、そうしたイベント以外に構想力をもって都市の未来を語れないのだろうか。先号で大阪維新府政の浅薄なパンデミック対応を報告した松本創氏のルポが評判を呼んだ。その維新府政を生み出した一人である故・堺屋太一氏について、今号で森裕之氏が詳しく考察している。イベント資本主義の一つの象徴だろう。
都市の別の進み方を構想したい。四月号特集で内田聖子氏が紹介したスペインのバルセロナ市政のような在り方は参考になろうが、はっきりしていることは、いかなる構想にせよ、もはや気候危機をはじめとする環境危機への対応なくして社会の未来は語れないということだ。第二特集では、動きの加速するこの領域の最新の議論を、高村ゆかり氏はじめ、第一線で活躍する研究者の方々に寄せていただいた。
再エネシステムの普及をめぐる山家公雄氏の論考をはじめ、専門用語もあってとっつきにくい印象もあるかもしれないが、難解さをまとったシステムの奥に良からぬ企みが潜んでいることが少なくない。今号、西野智彦氏の金融政策をめぐる論考を読んでいる際にも同様のことを感じた。
最後に、実質的な第三特集となっている辺野古新基地の埋め立て問題について。体調不良で政権を放り出した安倍晋三氏が先日、靖国に参拝していた。具志堅隆松氏のインタビューの後に、この報道に接した。その際の当方の感情を言葉にするのは控えるが、戦争に動員しておいて遺骨の回収もやりきらず、その骨の混ざる土を米軍基地の埋め立てに使うという発想に、底なしの倫理的退廃を感じる。民意を蹂躙して突き進む辺野古新基地建設という案件自体の性質が、為政者と官僚たちの倫理感を破壊してしまったのではないか。
紙幅が尽きた。「第四波」到来である。読者の皆様の無事を祈ります。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎孤塁 双葉郡消防士たちの3.11
吉田千亜
定価1,980円
http://iwnm.jp/022969
☆第63回日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)(2020年)
☆第42回講談社本田靖春ノンフィクション賞(2020年)受賞
☆日隅一雄・情報流通促進賞2020大賞受賞
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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┃特集1┃イベント資本主義――その破局
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〈転換へ〉
メガ・イベントの時代の終焉――新しい創発に向けた大都市の課題
町村敬志(一橋大学特任教授)
〈虚構の祝祭〉
祝賀資本主義のグロテスクな象徴――東京五輪の総括
本間 龍(著述家)
〈SNSと参加意識〉
ソーシャルメディア時代のメガ・イベント
阿部 潔(関西学院大学)
〈万博誘致の背景〉
大阪の興行的都市政策――堺屋太一と維新政治
森 裕之(立命館大学)
〈新たな都市像へ〉
オリンピック開発と資本の論理
荒又美陽(明治大学)
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┃特集2┃気候変動とエネルギー
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈論点は何か〉
カーボンニュートラルへ 日本の課題
高村ゆかり(東京大学)
〈新技術をめぐる7条件〉
革新的技術は気候を救うか
伊与田昌慶(気候ネットワーク)
〈実践に学ぶ〉
どうして海外は再エネが普及しているのか
山家公雄(京都大学特任教授)
〈政策提言〉
すぐそこにある再エネ社会――誰がこの転換を妨げるのか?
飯田哲也(環境エネルギー政策研究所)
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◆注目記事
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〈告発〉
NHKと政治と世論誘導――公共放送の内部で何が起きているのか
長井 暁(ジャーナリスト)
〈いま私たちにできること〉
ミャンマーのクーデターと日本の責任――(上)「独自のパイプ」神話をさかのぼる
木口由香(メコン・ウォッチ)
〈公助を!〉
自助も共助も限界を迎えている――生活保護を利用者本位の制度へ
稲葉 剛(つくろい東京ファンド代表理事)
〈重すぎる代償〉
コロナ戦記――第9回 死の淵からの生還
山岡淳一郎(ノンフィクション作家)
〈3・11の検証を〉
この原発を動かしてよいのか?――新潟県原発検証委員会をめぐって
池内 了(科学者)
《新基地建設と遺骨》
○遺骨まじりの土砂――本土が問われている
渡辺 豪(ジャーナリスト)
○〈インタビュー〉戦没者の尊厳は守られなければならない
具志堅隆松(「ガマフヤー」代表)
○沖縄(シマ)という窓――人道上許されない絶対的愚行
親川志奈子(沖縄大学非常勤講師)
〈驚愕の事実〉
コンピュータシステムがもたらした冤罪事件――英国史上最大の誤判スキャンダルの衝撃
指宿 信(成城大学)
〈「大きな一歩」の落とし穴?〉
同性婚訴訟 札幌地裁の画期的判決をどう考えるか――「同性婚の是非」という疑似問題を超えて
喜久山大貴(弁護士)
〈地に根差す技術〉
中村哲医師と「緑の大地計画」――クナール川を制した伝統的河川工法
梶原健嗣(愛国学園大学)
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◇世界の潮
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◇韓国「四・三特別法」改正――「積弊清算」の新局面
文京洙
◇名古屋入管死亡事件――国際法違反の入管法改正問題
駒井知会
◇中国人ビザ拒否訴訟――国家の「自由裁量」を人権から問う
田中 宏
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◇SEKAI Review of Books
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◇日銀はどこに漂着しようとしているか――『ドキュメント 日銀漂流』
西野智彦(ジャーナリスト)
◇母の褒め殺し――現代日本映画における“毒母”など
木下千花(京都大学)
◇読書の要諦――文芸 地の声を聴く
藤沢 周(小説家)
◇【連載】読書会という幸福 第18回 ようやくのヘミングウェイ
向井和美(翻訳家、司書)
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●連載
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----〈最終回〉-----------
●自治体としてパンデミックに立ち向かう――最終回 ワクチン接種へ
保坂展人(世田谷区長)
●ネグロスからの手紙――虐殺と弾圧の島で【第6回】
殺された126人の先住民族
クラリッサ・シングソン(人権アクティビスト)、訳・構成=木村英昭・勅使川原香世子
●移民たちのパンデミック 【第3回】
生きる場を求めて
工藤律子(ジャーナリスト)、撮影=篠田有史
----〈好評連載〉----------
●県境の町【第4回】
汚染の「線引き」
吉田千亜(ライター)
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●メディア批評【第162回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●片山善博の「日本を診る」【139】
多発する法案ミス 国会と霞が関改革の契機とせよ
片山善博(早稲田大学)
●いま、この惑星で起きていること【第18回】
天空の異変
森さやか(気象予報士)
●脳力のレッスン【230】
中世における神道の形成─―神道の本質を考える
寺島実郎
●亡所考 【第6回】
ドメスティケーションの帝国
北條勝貴(上智大学)
●但馬日記【第26回】
新大学、ついに始動
平田オリザ(劇作家)
●お許しいただければ
――幸福の度合い(R.リンド)
訳=行方昭夫(英文学者)
●原発月報─(21・2~4)
福島原発事故記録チーム
●ドキュメント激動の南北朝鮮【286】(21・3~4)
編集部
●ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
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○読者投句・岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
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○表紙写真
五輪カラーにライトアップされるレインボーブリッジと東京タワー。2021 年4 月14 日。(ロイター/アフロ提供)
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
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編集後記
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イベント資本主義という今号第一特集のタイトルは、やや分かりにくいかもしれない。本誌でも何度か紹介してきた(二〇二〇年二月号のインタビューなど)J.ボイコフ氏の「祝賀資本主義」の言い換えである。その議論は、今号では本間龍氏が詳細に紹介している。
ただ、単なる言い換えというわけでもなく、より日本的な含意を持たせることはできるかもしれない。祝賀資本主義に、石原慎太郎、安倍晋三、堺屋太一、秋元康、森喜朗的なものを加えて、マリオ・ブラザーズとAKB48を添えて電通が仕上げるもの、それがニッポンのイベント資本主義だ。
今号の書評欄で藤沢周氏が書かれていることに深く共感した。安倍晋三氏の「アンダー・コントロール」は、この「祝福されない祝祭」(先号、尾崎正峰氏)の徹底した軽さを表している。「復興五輪」も「コロナに人類が打ち勝った証」も、口から出まかせにすぎないことは、もはや誰でも理解している。
東京五輪の行方はともかく、大規模なイベントは今後も続く。大阪万博が典型だが、そうしたイベント以外に構想力をもって都市の未来を語れないのだろうか。先号で大阪維新府政の浅薄なパンデミック対応を報告した松本創氏のルポが評判を呼んだ。その維新府政を生み出した一人である故・堺屋太一氏について、今号で森裕之氏が詳しく考察している。イベント資本主義の一つの象徴だろう。
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再エネシステムの普及をめぐる山家公雄氏の論考をはじめ、専門用語もあってとっつきにくい印象もあるかもしれないが、難解さをまとったシステムの奥に良からぬ企みが潜んでいることが少なくない。今号、西野智彦氏の金融政策をめぐる論考を読んでいる際にも同様のことを感じた。
最後に、実質的な第三特集となっている辺野古新基地の埋め立て問題について。体調不良で政権を放り出した安倍晋三氏が先日、靖国に参拝していた。具志堅隆松氏のインタビューの後に、この報道に接した。その際の当方の感情を言葉にするのは控えるが、戦争に動員しておいて遺骨の回収もやりきらず、その骨の混ざる土を米軍基地の埋め立てに使うという発想に、底なしの倫理的退廃を感じる。民意を蹂躙して突き進む辺野古新基地建設という案件自体の性質が、為政者と官僚たちの倫理感を破壊してしまったのではないか。
紙幅が尽きた。「第四波」到来である。読者の皆様の無事を祈ります。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎孤塁 双葉郡消防士たちの3.11
吉田千亜
定価1,980円
http://iwnm.jp/022969
☆第63回日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)(2020年)
☆第42回講談社本田靖春ノンフィクション賞(2020年)受賞
☆日隅一雄・情報流通促進賞2020大賞受賞
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