『世界』メールマガジン/2021年8月号 【特集:サピエンス減少――人類史の折り返し点】
2021/07/09 (Fri) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2021年8月号
■■ vol.#0074
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■『世界』2021年8月号(第947号)好評発売中
2021年7月8日発行
定価935円(税込)
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▼本号の目次
特集/注目記事/世界の潮/SEKAI Review of Books/連載/編集後記/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃ 特集 ┃サピエンス減少――人類史の折り返し点
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈現状と論点〉
縮減に向かう世界人口――持続可能性への展望を探る
原 俊彦(札幌市立大学名誉教授)
〈「爆縮」の背景〉
いま東アジアで何か起きているのか――結婚しない若者
村山 宏(日本経済新聞)
〈ジェンダーの観点から〉
人口減少する格差社会――未来をいかに創るか
白波瀬佐和子(東京大学)
〈未富先老?〉
中国 近づく人口減少社会と社会保障
李蓮花(東京経済大学)
〈世界最低の出生率〉
0.84の衝撃――韓国の人口減少はなぜ急激なのか
春木育美(早稲田大学研究員)
〈近世史との対話〉
人口減少社会に生きるということ――歴史人口学からの問い
高橋美由紀(立正大学)
〈維持可能な惑星へ〉
ゼロ成長経済と資本主義――縮小という理想
小野塚知二(東京大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈外交の責務を問う〉
危機のなかのミャンマー――機能しない仲裁外交から標的制裁へ
根本 敬(上智大学)
〈期待される有効性〉
カーボンプライシング 脱炭素への選択肢
有村俊秀(早稲田大学)
〈神話のバリエーション〉
再びつくられる原発安価論――原発のコスト計算はどのようにゆがめられているか
松久保 肇(原子力資料情報室)、大島堅一(龍谷大学)
《絶望と罪》
〇誰がこの事件をもたらしたのか――相模原事件5年
上東麻子(毎日新聞)
〇なぜ彼は加害者になったのか――京都アニメーション放火殺人事件(下)
千葉紀和(毎日新聞)
〇トラウマ、死の刻印、安楽死希求――障害者運動と安楽死を望む声の対立をめぐって
渡邉 琢(介助士)
〈新事実〉
それは日本軍の人体実験だったのか?――インドネシア破傷風ワクチン “謀略” 事件の謎
倉沢愛子(慶應義塾大学名誉教授)
〈戦争と人生〉
ある中国残留婦人への悔恨の記録
井上志津(ライター)
〈“120位”から脱するために〉
個人通報制度が変えるこの国の人権状況――女性差別撤廃条約と司法判断
浅倉むつ子(早稲田大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇これは闘争、ではない――LGBT理解増進法案見送り
二階堂友紀
◇G・フロイド事件判決――続く作用と反作用
北丸雄二
◇教科書への新たな介入――歴史用語を政治が決めるのか
石山久男
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇SEKAI Review of Books
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇蘇る戦場の鬼気――戦中派サスペンスをいま読む
斎藤貴男(ジャーナリスト)
◇日中戦争――新たな民衆の記憶と記録の発掘
笠原十九司(都留文科大学名誉教授)
◇読書の要諦――ノンフィクション 沖縄から矛盾を問う
青木 理(ジャーナリスト)
◇【連載】読書会という幸福 (第20回・最終回) そして読書会は続く
向井和美(翻訳家、司書)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
----〈好評連載〉----------
●分水嶺II コロナ緊急事態と専門家【第2回】
オリンピックへの提言
河合香織(ノンフィクション作家)
●コロナ戦記【第11回】
コロナ対応 歪みの起点――屋形船から永寿へのリンクを追う
山岡淳一郎(ノンフィクション作家)
●脳力のレッスン【232】
戦後日本人としての宗教再考――問われる新たなレジリエンス
寺島実郎
●県境の町【第6回】
天秤にかけられる健康
吉田千亜(ライター)
●お許しいただければ
渡し場で考えたこと(E・V・ルーカス)
訳=行方昭夫(英文学者)
----〈新展開〉----------
●但馬日記【第27回】
狙い撃ちにされた「演劇」――豊岡市長選顛末記(1)
平田オリザ(劇作家)
--------------------------
●メディア批評【第164回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●片山善博の「日本を診る」【141】
企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)改訂に際して
片山善博(早稲田大学)
●沖縄(シマ)という窓――「まりやハウス」の開設――若年妊産婦を支える
山城紀子(フリーライター)
●亡所考 【第8回】
〈総動員〉の夢の跡――農林省毛皮獣養殖所の成立と廃絶
北條勝貴(上智大学)
●いま、この惑星で起きていること【第20回】
リズムが乱れる生物たち
森さやか(気象予報士)
●原発月報─(21・5~6)
福島原発事故記録チーム
●ドキュメント激動の南北朝鮮【288】(21・5~6)
編集部
●ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○読者投句・岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○表紙写真
ビエンナーレ国際建築展で、展示されたインスタレーションを通り過ぎる女性。イタリア・ベニス、2021年5月19日。(写真=AP/アフロ)
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
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たしかに、日本は少子高齢化する人類社会の先端をひた走ってきた。ほとんど孤高のトップランナーだったと言っていい――これまでのところは。
今号特集に東アジアの状況を寄せた村山宏氏と電話で打ち合わせしていた際、「日本は、東アジアでは出生率がもっとも高くなっているのですよ」と教えられ、不意を突かれた。我々の少子化へ走る速度が緩んだのではない。東アジアの後続集団の速度が劇的に上がったのだ。韓国はすでに人口減少に転じ(春木育美氏の論考参照)、そして世界最大の人口をもつ中国も、まもなく人口減少に転じる(李蓮花氏の論考参照)。現在の「人口減少クラブ」には東アジアの国々ばかりが参加しているように見えるが、ヨーロッパやラテン・アメリカ、やがてはアフリカや中東の一部地域を除いた地球のほぼ全域が、このクラブのメンバーに登録されることになろう。
特集冒頭で原俊彦氏が詳説するように、人類は多産多死から少産少死への歴史的な転換のプロセスを終えつつある。新型コロナによるパンデミックは、この流れを加速させた。もはやこのマクロな人口転換の流れを逆転させうるとは、想定できないのではないか。
少子化対策の取り組みが無意味だと主張するのではない。施策によっては一定の成果も見込まれよう。そもそも、産み育てたいカップルと生まれる子どもたちのための環境を整備していくことは政府の責務である。一方で、「産めよ殖やせよ」も、過激な人口制限を構想するエコファシズムも、避けなければならない。すべての社会課題がそうだが、とくに人口という問題を考えるときには、基本的人権の保障という軸を失ってはならないと痛感している。
二〇世紀の人口爆発から人口爆縮に向かう折れ線は、あたかも紙飛行機が、急に昇ったと思ったら失速して墜ちていく様に似ていなくもない。小野塚論文が深めるように、現在の経済システムの見直しも避けられまい。問題は、それを自覚的に進めるか、現実に迫られてから泥縄式の対処を余儀なくされるか、である。人類は定常社会という安定飛行への移行を実現できるだろうか。
さて、人気連載の「読書会という幸福」、著者の向井和美さんには、当初のお願いから延長を重ねてご執筆いただいたが、今号で最終回となる。
コロナ禍によってさまざまな交流がぶつ切りにされているが、私自身がもっともつらく思ったのも、友人たちとの読書会(とその後のビール)に重大な制約がかかったことである。本質的に読書は孤独な営みだが、だからこそ、同じテキストを共有した友人との語り合いに喜びを覚えるのだ(オンラインでも開催してみたが、どうも勘所を押さえられず、かゆいところに手が届かない思いがする)。それは、民主主義というものの核心にふれる営みでもあると、直感的にだが、思う。
コロナのせいで検討が足踏みをしているが、読者の方からのご要望もあり、ぜひ本誌の読書会も、すでに開催されている方々のご協力を得ながら、どこかの段階で開催したいと思っている。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎孤塁 双葉郡消防士たちの3.11
吉田千亜
定価1,980円
http://iwnm.jp/022969
☆第63回日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)(2020年)
☆第42回講談社本田靖春ノンフィクション賞(2020年)受賞
☆日隅一雄・情報流通促進賞2020大賞受賞
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◎アパレル興亡
黒木 亮
定価2,090円
http://iwnm.jp/061390
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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◇「webいわなみ たねをまく」(岩波書店のウェブマガジン)
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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登録情報の編集・解除は,こちらよりお願いいたします.
http://iwnm.jp/MM
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□『世界』メールマガジン
〒101-8002 東京都千代田区一ツ橋2-5-5
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WEB: http://iwnm.jp/sekai
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◇本誌のご注文はお近くの書店か小社営業部宛てにお願いいたします.
岩波書店営業部読者係(TEL:03-5210-4111,FAX:03-3263-6999)
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┃ 特集 ┃サピエンス減少――人類史の折り返し点
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈現状と論点〉
縮減に向かう世界人口――持続可能性への展望を探る
原 俊彦(札幌市立大学名誉教授)
〈「爆縮」の背景〉
いま東アジアで何か起きているのか――結婚しない若者
村山 宏(日本経済新聞)
〈ジェンダーの観点から〉
人口減少する格差社会――未来をいかに創るか
白波瀬佐和子(東京大学)
〈未富先老?〉
中国 近づく人口減少社会と社会保障
李蓮花(東京経済大学)
〈世界最低の出生率〉
0.84の衝撃――韓国の人口減少はなぜ急激なのか
春木育美(早稲田大学研究員)
〈近世史との対話〉
人口減少社会に生きるということ――歴史人口学からの問い
高橋美由紀(立正大学)
〈維持可能な惑星へ〉
ゼロ成長経済と資本主義――縮小という理想
小野塚知二(東京大学)
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◆注目記事
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〈外交の責務を問う〉
危機のなかのミャンマー――機能しない仲裁外交から標的制裁へ
根本 敬(上智大学)
〈期待される有効性〉
カーボンプライシング 脱炭素への選択肢
有村俊秀(早稲田大学)
〈神話のバリエーション〉
再びつくられる原発安価論――原発のコスト計算はどのようにゆがめられているか
松久保 肇(原子力資料情報室)、大島堅一(龍谷大学)
《絶望と罪》
〇誰がこの事件をもたらしたのか――相模原事件5年
上東麻子(毎日新聞)
〇なぜ彼は加害者になったのか――京都アニメーション放火殺人事件(下)
千葉紀和(毎日新聞)
〇トラウマ、死の刻印、安楽死希求――障害者運動と安楽死を望む声の対立をめぐって
渡邉 琢(介助士)
〈新事実〉
それは日本軍の人体実験だったのか?――インドネシア破傷風ワクチン “謀略” 事件の謎
倉沢愛子(慶應義塾大学名誉教授)
〈戦争と人生〉
ある中国残留婦人への悔恨の記録
井上志津(ライター)
〈“120位”から脱するために〉
個人通報制度が変えるこの国の人権状況――女性差別撤廃条約と司法判断
浅倉むつ子(早稲田大学)
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◇世界の潮
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◇これは闘争、ではない――LGBT理解増進法案見送り
二階堂友紀
◇G・フロイド事件判決――続く作用と反作用
北丸雄二
◇教科書への新たな介入――歴史用語を政治が決めるのか
石山久男
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◇SEKAI Review of Books
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇蘇る戦場の鬼気――戦中派サスペンスをいま読む
斎藤貴男(ジャーナリスト)
◇日中戦争――新たな民衆の記憶と記録の発掘
笠原十九司(都留文科大学名誉教授)
◇読書の要諦――ノンフィクション 沖縄から矛盾を問う
青木 理(ジャーナリスト)
◇【連載】読書会という幸福 (第20回・最終回) そして読書会は続く
向井和美(翻訳家、司書)
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●連載
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オリンピックへの提言
河合香織(ノンフィクション作家)
●コロナ戦記【第11回】
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山岡淳一郎(ノンフィクション作家)
●脳力のレッスン【232】
戦後日本人としての宗教再考――問われる新たなレジリエンス
寺島実郎
●県境の町【第6回】
天秤にかけられる健康
吉田千亜(ライター)
●お許しいただければ
渡し場で考えたこと(E・V・ルーカス)
訳=行方昭夫(英文学者)
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●但馬日記【第27回】
狙い撃ちにされた「演劇」――豊岡市長選顛末記(1)
平田オリザ(劇作家)
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●メディア批評【第164回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●片山善博の「日本を診る」【141】
企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)改訂に際して
片山善博(早稲田大学)
●沖縄(シマ)という窓――「まりやハウス」の開設――若年妊産婦を支える
山城紀子(フリーライター)
●亡所考 【第8回】
〈総動員〉の夢の跡――農林省毛皮獣養殖所の成立と廃絶
北條勝貴(上智大学)
●いま、この惑星で起きていること【第20回】
リズムが乱れる生物たち
森さやか(気象予報士)
●原発月報─(21・5~6)
福島原発事故記録チーム
●ドキュメント激動の南北朝鮮【288】(21・5~6)
編集部
●ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
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○読者投句・岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
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○表紙写真
ビエンナーレ国際建築展で、展示されたインスタレーションを通り過ぎる女性。イタリア・ベニス、2021年5月19日。(写真=AP/アフロ)
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
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編集後記
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たしかに、日本は少子高齢化する人類社会の先端をひた走ってきた。ほとんど孤高のトップランナーだったと言っていい――これまでのところは。
今号特集に東アジアの状況を寄せた村山宏氏と電話で打ち合わせしていた際、「日本は、東アジアでは出生率がもっとも高くなっているのですよ」と教えられ、不意を突かれた。我々の少子化へ走る速度が緩んだのではない。東アジアの後続集団の速度が劇的に上がったのだ。韓国はすでに人口減少に転じ(春木育美氏の論考参照)、そして世界最大の人口をもつ中国も、まもなく人口減少に転じる(李蓮花氏の論考参照)。現在の「人口減少クラブ」には東アジアの国々ばかりが参加しているように見えるが、ヨーロッパやラテン・アメリカ、やがてはアフリカや中東の一部地域を除いた地球のほぼ全域が、このクラブのメンバーに登録されることになろう。
特集冒頭で原俊彦氏が詳説するように、人類は多産多死から少産少死への歴史的な転換のプロセスを終えつつある。新型コロナによるパンデミックは、この流れを加速させた。もはやこのマクロな人口転換の流れを逆転させうるとは、想定できないのではないか。
少子化対策の取り組みが無意味だと主張するのではない。施策によっては一定の成果も見込まれよう。そもそも、産み育てたいカップルと生まれる子どもたちのための環境を整備していくことは政府の責務である。一方で、「産めよ殖やせよ」も、過激な人口制限を構想するエコファシズムも、避けなければならない。すべての社会課題がそうだが、とくに人口という問題を考えるときには、基本的人権の保障という軸を失ってはならないと痛感している。
二〇世紀の人口爆発から人口爆縮に向かう折れ線は、あたかも紙飛行機が、急に昇ったと思ったら失速して墜ちていく様に似ていなくもない。小野塚論文が深めるように、現在の経済システムの見直しも避けられまい。問題は、それを自覚的に進めるか、現実に迫られてから泥縄式の対処を余儀なくされるか、である。人類は定常社会という安定飛行への移行を実現できるだろうか。
さて、人気連載の「読書会という幸福」、著者の向井和美さんには、当初のお願いから延長を重ねてご執筆いただいたが、今号で最終回となる。
コロナ禍によってさまざまな交流がぶつ切りにされているが、私自身がもっともつらく思ったのも、友人たちとの読書会(とその後のビール)に重大な制約がかかったことである。本質的に読書は孤独な営みだが、だからこそ、同じテキストを共有した友人との語り合いに喜びを覚えるのだ(オンラインでも開催してみたが、どうも勘所を押さえられず、かゆいところに手が届かない思いがする)。それは、民主主義というものの核心にふれる営みでもあると、直感的にだが、思う。
コロナのせいで検討が足踏みをしているが、読者の方からのご要望もあり、ぜひ本誌の読書会も、すでに開催されている方々のご協力を得ながら、どこかの段階で開催したいと思っている。
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◎孤塁 双葉郡消防士たちの3.11
吉田千亜
定価1,980円
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☆第63回日本ジャーナリスト会議賞(JCJ賞)(2020年)
☆第42回講談社本田靖春ノンフィクション賞(2020年)受賞
☆日隅一雄・情報流通促進賞2020大賞受賞
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◎アパレル興亡
黒木 亮
定価2,090円
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