『世界』メールマガジン/2021年11月号 【特集1:反平等─新自由主義日本の病理】【特集2:入管よ、変われ】
2021/10/19 (Tue) 11:01
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■■ 『世界』メールマガジン/2021年11月号
■■ vol.#0077
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■『世界』2021年11月号(第950号)好評発売中
2021年10月8日発行
定価935円(税込)
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▼本号の目次
特集/注目記事/世界の潮/SEKAI Review of Books/連載/編集後記/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集1┃反平等─新自由主義日本の病理
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈なぜなのか?〉
反平等という想念
酒井隆史(大阪府立大学)
〈平等の哲学〉
平等と公平はどう違うのか─新自由主義から福祉国家へ
新村 聡(岡山大学特命教授)
〈逆機能とコロナ〉
生き延びるためにジェンダー平等─パンデミック時代の生活保障システム
大沢真理(東京大学名誉教授)
〈同一化が平等か〉
日本的平等のカラクリ
辛淑玉(「のりこえねっと」共同代表)
┏━━━┓
┃特集2┃入管よ、変われ
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈ルポ〉
絶望の収容所─入管施設とその戦後史を歩く
安田浩一(ジャーナリスト)
〈なぜ死ななくてはならなかったのか〉
ウィシュマさんの生の軌跡、死の真相─妹さんたちの訴えと私たち
安田菜津紀(ジャーナリスト)
〈提起〉
入管改革への課題
水上洋一郎(元東京入管局長)
〈インタビュー〉
苦悩する職員のためにも、入管よ、変われ。
木下洋一(元入国審査官)、聞き手=樫田秀樹
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈何が起こったのか〉
崩壊のスペクタクル 東京オリンピック2020─惨事と化したメガイベントの行方
鵜飼 哲(一橋大学名誉教授)
〈「笑って終わり」にさせない〉
安倍マリオからずっとうさん臭かった──ニュースで読む東京五輪事件史
プチ鹿島(芸人)
〈追悼〉
人が人らしく生きていける社会を──内橋克人さんが伝えてきた言葉
国谷裕子(ジャーナリスト)
〈展望〉
対テロ戦争の時代を超えて──中東における民主主義の展望
栗田禎子(千葉大学)
〈総括〉
対テロ戦争とは何だったのか──現場のリアリティから見えてくるもの
谷山博史(JVC顧問)
〈インタビュー〉
9・11から二〇年──あの日の意味を問い続ける
中村 佑(9・11犠牲者遺族)
〈負の連鎖を断つ〉
死者が問う日本の二〇年
島本慈子(ジャーナリスト)
〈支援ミッションの経験から〉
タリバン復権とアフガニスタンのゆくえ──国際社会に求められる関与とは
山本忠通(元国連事務総長特別代表)
〈「物言う株主」は何者か〉
東芝調査報告書と企業社会の危機
上村達男(早稲田大学名誉教授)
〈短期連載〉
関西生コン弾圧と産業労働組合、そしてジャーナリスト・ユニオン(中)
花田達朗(早稲田大学名誉教授)
〈インタビュー〉
京都の観光はどう変わらなければならないか
ウスビ・サコ(京都精華大学学長)、聞き手=小林哲夫
〈手記〉
金学順さんが伝えたかったこと──最初に報じた記者からの報告
植村 隆(元朝日新聞記者)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇エチオピア内戦──権力闘争から武力紛争へ
児玉由佳
◇在日米軍によるPFAS含有水放出強行
島袋夏子
◇南西諸島軍事化の現在
半田 滋
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇SEKAI Review of Books
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇越境する世界史家(上)─リチャード・J・エヴァンズ著『エリック・ホブズボーム』
三宅芳夫(千葉大学)
◇読書の要諦──ノンフィクション 反骨の人
青木 理(ジャーナリスト)
◇【連載】本とチェック 第2回 「第一子」誕生
金承福(「クオン」代表)
◇新刊紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
----〈好評連載〉----------
●コロナ戦記【第14回・最終回】
敗北と「公」の復権
山岡淳一郎(ノンフィクション作家)
●分水嶺II コロナ緊急事態と専門家【第5回】
ルビコン川を渡る筏
河合香織(ノンフィクション作家)
●県境の町【第9回】
突然の「幕引き」
吉田千亜(ライター)
●亡所考【第11回】
帝国を内面化する人形
北條勝貴(上智大学)
----------------------------
●脳力のレッスン特別篇
日本経済・産業再生への道筋(中)
寺島実郎
●メディア批評【第167回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●片山善博の「日本を診る」【144】
自民党総裁選に埋没する立憲民主党に敢えて苦言を呈する
片山善博(早稲田大学)
●いま、この惑星で起きていること【第23回】
あたたまる地球と終末時計
森さやか(気象予報士)
●沖縄(シマ)という窓――「命の選別をしないで」─新型コロナウイルスと精神障がい者
山城紀子(フリーライター)
●お許しいただければ──家庭の守護神 続(E・V・ルーカス)
訳=行方昭夫(英文学者)
●原発月報――(21・7~9)
福島原発事故記録チーム
●ドキュメント激動の南北朝鮮【291】(21・8~9)
編集部
●但馬日記【第30回】
いま地域共同体に必要なこと──豊岡市長選顛末記
平田オリザ(劇作家)
●ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○読者投句・岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○表紙写真
子ども用のバイクに乗る女の子。
Photo by Kate T. Parker/INSTITUTE
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今回の自民党総裁選挙は、政策的な路線をめぐる違いを持つ複数の男女の候補者による公開討論を重ねたうえで、党員投票と都道府県連代表・国会議員による複層的な投票を経て選出するという過程を踏んだ。そこで語られている政策の内容は全体として周回遅れであったが、ともあれ手続きとしては民主政の諸原則と合致している。
この自民党総裁選についてメディアが「報道しすぎる」という批判を目にする。たしかに、集中豪雨的な報道に流れすぎる問題は一般論として常に存在する。だが、野党側がメディアに「中立的な報道」や「政治的公平性」を要請し、放送倫理・番組向上機構(BPO)への対応をウンヌンするのは、お門違いであろう。そもそもジャーナリズムの責務の中に政治的中立などという文言は含まれないわけだが、それはおいても、野党はメディアを批判する前に、自分たちが代表者をどう選んでいるのかを省みるべきだろう。メディアが「政治的に公平」であろうとしても、実質的な代表選や政策論争が行なわれていなければ報じようがない。
直近の例で言えば、韓国やドイツにおいても、与野党問わず、政党内部での激烈な討議と選挙を経てリーダーや候補者が選出されている。日本においても、野党でこそ議論されるべきテーマは多く存在するはずだ。先月号で特集し、今号で寺島実郎氏が論争的に展開している脱成長をめぐる議論などはその典型だ。日本社会の行き詰まりを打開するための真剣な論争は、野党への市民とメディアの関心を喚起するだろう。今号で片山善博氏が鋭く指摘している政策面の問題についても、必然的に洗練されよう。与党・政府が議題を設定し、野党がノーと言う(それが野党の重要な役割であることは前提として)、この構図を逆転させる知恵と力量を野党には期待したい。この点、特集における酒井隆史氏の指摘――日本の新自由主義は現在、新たな社会構想を嘲笑し、潰すためにのみ機能している――は、重要な示唆であると思う。
きたる総選挙ではコロナ対策も問われることになろう。山岡淳一郎氏の連載「コロナ戦記」は、新型ウイルス感染症に苦闘する各地の現場の状況を報告しつづけてきたが、最終回となる今回は総括的内容が記されている。一年以上にわたり医療現場を取材してきた山岡氏による、小泉改革以降の医療政策への批判に、強い説得力を感じた。当面の対策という枠をこえ、医療と公衆衛生においても「公」を解体してきた従来の政策の根幹が問われなければなるまい。自らの感染というリスクへの対策を尽くしながら報告を続けてこられた山岡氏に深くお礼を申し上げる。
内橋克人さんと色川大吉さんが、ときを同じくして世を去った。二人とも今こそ読まれるべきテキストを大量にのこした。色川さんの事績についても、いずれ誌面にて顧みる機会をもちたい。
なお、今号特集で同一化と日本的「平等」をめぐる論考を寄せていただいた辛淑玉さんには、次号にもご寄稿いただく予定である。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議
河合香織
定価1,980円
http://iwnm.jp/061466
クラスター対策に3密回避。専門家たちの議論と葛藤を、政権や行政も含め関係者の証言で描くノンフィクション。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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◇「webいわなみ たねをまく」(岩波書店のウェブマガジン)
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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〒101-8002 東京都千代田区一ツ橋2-5-5
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WEB: http://iwnm.jp/sekai
Twitter: https://twitter.com/WEB_SEKAI
◇本誌のご注文はお近くの書店か小社営業部宛てにお願いいたします.
岩波書店営業部読者係(TEL:03-5210-4111,FAX:03-3263-6999)
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定価935円(税込)
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┃特集1┃反平等─新自由主義日本の病理
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〈なぜなのか?〉
反平等という想念
酒井隆史(大阪府立大学)
〈平等の哲学〉
平等と公平はどう違うのか─新自由主義から福祉国家へ
新村 聡(岡山大学特命教授)
〈逆機能とコロナ〉
生き延びるためにジェンダー平等─パンデミック時代の生活保障システム
大沢真理(東京大学名誉教授)
〈同一化が平等か〉
日本的平等のカラクリ
辛淑玉(「のりこえねっと」共同代表)
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┃特集2┃入管よ、変われ
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈ルポ〉
絶望の収容所─入管施設とその戦後史を歩く
安田浩一(ジャーナリスト)
〈なぜ死ななくてはならなかったのか〉
ウィシュマさんの生の軌跡、死の真相─妹さんたちの訴えと私たち
安田菜津紀(ジャーナリスト)
〈提起〉
入管改革への課題
水上洋一郎(元東京入管局長)
〈インタビュー〉
苦悩する職員のためにも、入管よ、変われ。
木下洋一(元入国審査官)、聞き手=樫田秀樹
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◆注目記事
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〈何が起こったのか〉
崩壊のスペクタクル 東京オリンピック2020─惨事と化したメガイベントの行方
鵜飼 哲(一橋大学名誉教授)
〈「笑って終わり」にさせない〉
安倍マリオからずっとうさん臭かった──ニュースで読む東京五輪事件史
プチ鹿島(芸人)
〈追悼〉
人が人らしく生きていける社会を──内橋克人さんが伝えてきた言葉
国谷裕子(ジャーナリスト)
〈展望〉
対テロ戦争の時代を超えて──中東における民主主義の展望
栗田禎子(千葉大学)
〈総括〉
対テロ戦争とは何だったのか──現場のリアリティから見えてくるもの
谷山博史(JVC顧問)
〈インタビュー〉
9・11から二〇年──あの日の意味を問い続ける
中村 佑(9・11犠牲者遺族)
〈負の連鎖を断つ〉
死者が問う日本の二〇年
島本慈子(ジャーナリスト)
〈支援ミッションの経験から〉
タリバン復権とアフガニスタンのゆくえ──国際社会に求められる関与とは
山本忠通(元国連事務総長特別代表)
〈「物言う株主」は何者か〉
東芝調査報告書と企業社会の危機
上村達男(早稲田大学名誉教授)
〈短期連載〉
関西生コン弾圧と産業労働組合、そしてジャーナリスト・ユニオン(中)
花田達朗(早稲田大学名誉教授)
〈インタビュー〉
京都の観光はどう変わらなければならないか
ウスビ・サコ(京都精華大学学長)、聞き手=小林哲夫
〈手記〉
金学順さんが伝えたかったこと──最初に報じた記者からの報告
植村 隆(元朝日新聞記者)
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◇世界の潮
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◇エチオピア内戦──権力闘争から武力紛争へ
児玉由佳
◇在日米軍によるPFAS含有水放出強行
島袋夏子
◇南西諸島軍事化の現在
半田 滋
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◇越境する世界史家(上)─リチャード・J・エヴァンズ著『エリック・ホブズボーム』
三宅芳夫(千葉大学)
◇読書の要諦──ノンフィクション 反骨の人
青木 理(ジャーナリスト)
◇【連載】本とチェック 第2回 「第一子」誕生
金承福(「クオン」代表)
◇新刊紹介
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●連載
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----〈好評連載〉----------
●コロナ戦記【第14回・最終回】
敗北と「公」の復権
山岡淳一郎(ノンフィクション作家)
●分水嶺II コロナ緊急事態と専門家【第5回】
ルビコン川を渡る筏
河合香織(ノンフィクション作家)
●県境の町【第9回】
突然の「幕引き」
吉田千亜(ライター)
●亡所考【第11回】
帝国を内面化する人形
北條勝貴(上智大学)
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●脳力のレッスン特別篇
日本経済・産業再生への道筋(中)
寺島実郎
●メディア批評【第167回】
神保太郎(ジャーナリスト)
●片山善博の「日本を診る」【144】
自民党総裁選に埋没する立憲民主党に敢えて苦言を呈する
片山善博(早稲田大学)
●いま、この惑星で起きていること【第23回】
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森さやか(気象予報士)
●沖縄(シマ)という窓――「命の選別をしないで」─新型コロナウイルスと精神障がい者
山城紀子(フリーライター)
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訳=行方昭夫(英文学者)
●原発月報――(21・7~9)
福島原発事故記録チーム
●ドキュメント激動の南北朝鮮【291】(21・8~9)
編集部
●但馬日記【第30回】
いま地域共同体に必要なこと──豊岡市長選顛末記
平田オリザ(劇作家)
●ことわざの惑星
金井真紀(イラストレーター)
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○読者投句・岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
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○表紙写真
子ども用のバイクに乗る女の子。
Photo by Kate T. Parker/INSTITUTE
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
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編集後記
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今回の自民党総裁選挙は、政策的な路線をめぐる違いを持つ複数の男女の候補者による公開討論を重ねたうえで、党員投票と都道府県連代表・国会議員による複層的な投票を経て選出するという過程を踏んだ。そこで語られている政策の内容は全体として周回遅れであったが、ともあれ手続きとしては民主政の諸原則と合致している。
この自民党総裁選についてメディアが「報道しすぎる」という批判を目にする。たしかに、集中豪雨的な報道に流れすぎる問題は一般論として常に存在する。だが、野党側がメディアに「中立的な報道」や「政治的公平性」を要請し、放送倫理・番組向上機構(BPO)への対応をウンヌンするのは、お門違いであろう。そもそもジャーナリズムの責務の中に政治的中立などという文言は含まれないわけだが、それはおいても、野党はメディアを批判する前に、自分たちが代表者をどう選んでいるのかを省みるべきだろう。メディアが「政治的に公平」であろうとしても、実質的な代表選や政策論争が行なわれていなければ報じようがない。
直近の例で言えば、韓国やドイツにおいても、与野党問わず、政党内部での激烈な討議と選挙を経てリーダーや候補者が選出されている。日本においても、野党でこそ議論されるべきテーマは多く存在するはずだ。先月号で特集し、今号で寺島実郎氏が論争的に展開している脱成長をめぐる議論などはその典型だ。日本社会の行き詰まりを打開するための真剣な論争は、野党への市民とメディアの関心を喚起するだろう。今号で片山善博氏が鋭く指摘している政策面の問題についても、必然的に洗練されよう。与党・政府が議題を設定し、野党がノーと言う(それが野党の重要な役割であることは前提として)、この構図を逆転させる知恵と力量を野党には期待したい。この点、特集における酒井隆史氏の指摘――日本の新自由主義は現在、新たな社会構想を嘲笑し、潰すためにのみ機能している――は、重要な示唆であると思う。
きたる総選挙ではコロナ対策も問われることになろう。山岡淳一郎氏の連載「コロナ戦記」は、新型ウイルス感染症に苦闘する各地の現場の状況を報告しつづけてきたが、最終回となる今回は総括的内容が記されている。一年以上にわたり医療現場を取材してきた山岡氏による、小泉改革以降の医療政策への批判に、強い説得力を感じた。当面の対策という枠をこえ、医療と公衆衛生においても「公」を解体してきた従来の政策の根幹が問われなければなるまい。自らの感染というリスクへの対策を尽くしながら報告を続けてこられた山岡氏に深くお礼を申し上げる。
内橋克人さんと色川大吉さんが、ときを同じくして世を去った。二人とも今こそ読まれるべきテキストを大量にのこした。色川さんの事績についても、いずれ誌面にて顧みる機会をもちたい。
なお、今号特集で同一化と日本的「平等」をめぐる論考を寄せていただいた辛淑玉さんには、次号にもご寄稿いただく予定である。
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定価1,980円
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クラスター対策に3密回避。専門家たちの議論と葛藤を、政権や行政も含め関係者の証言で描くノンフィクション。
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