『世界』メールマガジン/2022年12月号【特集1:カルト・宗教・政治】【特集2:分断された国際秩序】
2022/11/08 (Tue) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2022年12月号
■■ vol.#0090
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■『世界』2022年12月号(第964号)好評発売中
2022年11月8日発行
定価935円(税込)
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▼本号の目次
特集/注目記事/世界の潮/SEKAI Review of Books/連載/編集後記/『世界』臨時増刊月号のご案内
/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集1┃カルト・宗教・政治
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈課題と展望〉
令和日本の「政教問題」
塚田穂高(上越教育大学)
〈座談会〉
カルト規制はどうあるべきか
紀藤正樹(弁護士)、島岡まな(大阪大学)、田近 肇(近畿大学)
〈どんな政党か〉
参政党を取り巻く陰謀論――自然派、反ワクチン、レイシズム……
藤倉善郎(ジャーナリスト)
〈中枢に迫る〉
自民党と宗教右派の結託が阻んできたもの
斉藤正美(富山大学非常勤講師)
〈ルポ〉
韓国の旧統一教会「聖地」を巡る
佐藤大介(共同通信)
〈Qアノンまでの道〉
米国のスピリチュアルと政治
雨宮 純(オカルト・スピリチュアル悪徳商法研究家)
┏━━━┓
┃特集2┃分断された国際秩序
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈対談〉
転換期の世界をどう見るか――ウクライナ侵攻以降の国際秩序
板橋拓己(東京大学)、三牧聖子(同志社大学)
〈国際秩序の力学〉
壊れる世界【第4回】――自由世界と国民国家
藤原帰一(東京大学客員教授)
〈権威主義国家台頭の中で〉
自由主義をめぐる分断と日本の役割
市原麻衣子(一橋大学)
〈「秩序」がはらむ矛盾〉
イスラエルが繁栄する陰で――リベラルな国際秩序の非リベラルな参加要件
鶴見太郎(東京大学)
〈非暴力という理念〉
ウクライナ戦争と平和主義のゆくえ
松元雅和(日本大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈逆転勝訴のあと〉
血の通った判決
伊藤詩織(映像ジャーナリスト)
〈責任追及へ〉
東京五輪疑獄事件 腐敗の正体
本間 龍(著述家)
〈大規模再開発の闇〉
神宮外苑は「創建の趣旨」に立ち返れ
森まゆみ(作家)
〈緊急提言〉
円安を止めるために、日銀がいますべきこと
和田哲郎(トータルアセットデザイン顧問)
〈なぜ、今また?〉
GXを掲げる原発回帰政策の欺瞞
松久保 肇(原子力資料情報室)
〈迷走する防衛省〉
日本のミサイルは何を狙うのか
文谷数重(軍事ジャーナリスト)
〈ソーシャルメディアと女性たち〉
「女性・命・自由」イラン抗議デモはなぜ起きたか
中西久枝(同志社大学)
〈ポピュリスト政党の勝利〉
イタリア「極右・女性首相の誕生」をめぐる狂騒曲
伊藤 武(東京大学)
〈新連載〉
ボナエ・リテラエ――私の読書遍歴【第1回】――『ファーブル昆虫記』
森本あんり(東京女子大学長)
〈最終回〉
分水嶺II――コロナ緊急事態と専門家【第13回】――経験の重み
河合香織(ノンフィクション作家)
〈ルポ〉
「死ぬ権利」とは何か?――欧州「安楽死」事情
宮下洋一(ジャーナリスト)
〈自殺学を手がかりに〉
安楽死は自殺問題の解決なのか――障害者運動と安楽死を望む声の対立をめぐって(続)
渡邉 琢(介助士)
〈座談会〉
トランスジェンダー問題とは何か――当事者不在の「議論」に抗して
高井ゆと里(群馬大学)、三木那由他(大阪大学)、清水晶子(東京大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇ノルトストリーム1、2の破裂と欧州ガス事情
小田 健
◇守られない家事労働者――過労死認定裁判が問うもの
池尾伸一
◇パキスタン大洪水――求められる「気候正義」
井上あえか
◇コソヴォとセルビア 情勢緊迫の背景
山崎信一
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇SEKAI Review of Books
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇「宗教2世問題」を理解するための必読書
横道 誠(京都府立大学)
◇読書の要諦――文芸 人界書き難し
藤沢 周(小説家)
◇読書録――ジャン・ボダンとlex regia、八月革命説
長谷部恭男(早稲田大学)
◇新刊紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈好評連載〉
脳力のレッスン(246)――戦後日本と都市新中間層の今
寺島実郎
香港からの通信【第6回】――見慣れた香港から見知らぬ都市へ
劉鋭紹(政治評論家)
●片山善博の「日本を診る」(157)――地方創生をどうするか
片山善博(大正大学)
●気候再生のために【第7回】――ホッキョクグマは増えているのか?
江守正多(東京大学)
●沖縄(シマ)という窓――28.6万の「いいね」――ひろゆき氏ツイート現象が炙り出したもの
親川志奈子(沖縄大学非常勤講師)
●お許しいただければ――本当に読んだ?(E.V.ルーカス)
訳=行方昭夫(英文学者)
●原発月報――(22・9~10)
福島原発事故記録チーム
●ドキュメント激動の南北朝鮮(304)(22・9~10)
編集部
●民話採光
阿部海太(画家・絵本作家)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○読者投句・岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今年の三月、早口で東京地裁の裁判長が判決を読み上げたとき、胸をよぎったのは、憤りというより、司法が遠ざかっていくとの思いだった。
SNS上での自身に対する誹謗中傷をめぐり、伊藤詩織さんは二〇一八年六~八月にかけて、三件の民事訴訟を提起した。そのうち自民党衆院議員の杉田水脈氏に対する裁判の判決を傍聴に行ったときのことだ。
一連の訴訟は、デジタルな言論空間で何が違法行為となるのか、司法への問題提起といえ、伊藤さん側の主張が認められるかどうかはもちろんわからなかった。それでも、杉田氏がツイッター上で「いいね」を押した計二五件のツイート内容にも、その文脈にも立ち入らないまま判決の言渡しが終わると、壇上の裁判官と実際以上の距離を感じた。それから約半年後の逆転勝訴の意味については、今月号「血の通った判決」を読んでいただきたい。
請求棄却の一審判決に、私は司法の限界を感じたが、伊藤さんは裁判の勝ち負けには重きを置いてこなかった。
二〇一九年、性被害に対する民事裁判を支援する団体が立ち上がる際にも、集まった人たちと議論するなかで、司法のプロセスを透明化し、システムを変えることを共通の目的に据えたという(会はOpen the Black Boxという名で活動を続けている)。警察捜査、検察審査会などで司法の現実に直面した伊藤さんは、一貫して、個別の裁判を超えた軸を示してきた。そうやって指し示された未来像に多くの人が共感し、社会は少しずつ変わってきたのだと思う。
しかし、本当にそういえるのか。
「また被害が生まれ、再び涙を流す女性が現れる。そんなことがないよう、根本的な改善を心から望んでいる」
元陸上自衛官の五ノ井里奈さんは、性被害の訴えから一年以上を経て加害者四人による直接の謝罪を受けたあと、中日新聞の取材にこう答えた(一〇月二一日付)。一生消えないと語った傷を抱えながら、五ノ井さんは一歩ずつ組織を、そして社会を動かしてきた。どれほどのエネルギーが必要だっただろう。カメラの前に立ち、実名で声をあげた人が、誹謗中傷の波に覆われてしまう状況は、伊藤詩織さんのときと変わっていないようにも感じる。
先日、環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんは「世界のすべての期待が、疲れはてたティーンエイジャーたちの肩にのしかかっている」と述べていた(BBCインタビュー)。人々がもう少しずつ責任を担ってくれたらいいのに、と。
私はどこに立っているのか? 誰に対して、どう行動するのか。これは今号、親川志奈子さんの寄稿(「沖縄という窓」)で心に刺さった問いでもある。
今月号より編集長をつとめます。ウクライナ侵攻以後、亀裂を深める国際社会。政治に置き去りにされてきたカルト被害――複雑な世界を複雑なまま、しかし自分の手が届くものとして知り、考え続けるために。人権があたりまえに守られる社会を若い世代に残していくために。創刊七六年の歴史に学びながら、新しい時代の難問に挑戦します。
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~~『世界』臨時増刊号のご案内~~
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争――世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
http://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
http://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
http://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
http://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
http://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
http://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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〒101-8002 東京都千代田区一ツ橋2-5-5
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◇本誌のご注文はお近くの書店か小社営業部宛てにお願いいたします.
岩波書店営業部読者係(TEL:03-5210-4111,FAX:03-3263-6999)
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2022年11月8日発行
定価935円(税込)
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特集/注目記事/世界の潮/SEKAI Review of Books/連載/編集後記/『世界』臨時増刊月号のご案内
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┃特集1┃カルト・宗教・政治
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈課題と展望〉
令和日本の「政教問題」
塚田穂高(上越教育大学)
〈座談会〉
カルト規制はどうあるべきか
紀藤正樹(弁護士)、島岡まな(大阪大学)、田近 肇(近畿大学)
〈どんな政党か〉
参政党を取り巻く陰謀論――自然派、反ワクチン、レイシズム……
藤倉善郎(ジャーナリスト)
〈中枢に迫る〉
自民党と宗教右派の結託が阻んできたもの
斉藤正美(富山大学非常勤講師)
〈ルポ〉
韓国の旧統一教会「聖地」を巡る
佐藤大介(共同通信)
〈Qアノンまでの道〉
米国のスピリチュアルと政治
雨宮 純(オカルト・スピリチュアル悪徳商法研究家)
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┃特集2┃分断された国際秩序
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈対談〉
転換期の世界をどう見るか――ウクライナ侵攻以降の国際秩序
板橋拓己(東京大学)、三牧聖子(同志社大学)
〈国際秩序の力学〉
壊れる世界【第4回】――自由世界と国民国家
藤原帰一(東京大学客員教授)
〈権威主義国家台頭の中で〉
自由主義をめぐる分断と日本の役割
市原麻衣子(一橋大学)
〈「秩序」がはらむ矛盾〉
イスラエルが繁栄する陰で――リベラルな国際秩序の非リベラルな参加要件
鶴見太郎(東京大学)
〈非暴力という理念〉
ウクライナ戦争と平和主義のゆくえ
松元雅和(日本大学)
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◆注目記事
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〈逆転勝訴のあと〉
血の通った判決
伊藤詩織(映像ジャーナリスト)
〈責任追及へ〉
東京五輪疑獄事件 腐敗の正体
本間 龍(著述家)
〈大規模再開発の闇〉
神宮外苑は「創建の趣旨」に立ち返れ
森まゆみ(作家)
〈緊急提言〉
円安を止めるために、日銀がいますべきこと
和田哲郎(トータルアセットデザイン顧問)
〈なぜ、今また?〉
GXを掲げる原発回帰政策の欺瞞
松久保 肇(原子力資料情報室)
〈迷走する防衛省〉
日本のミサイルは何を狙うのか
文谷数重(軍事ジャーナリスト)
〈ソーシャルメディアと女性たち〉
「女性・命・自由」イラン抗議デモはなぜ起きたか
中西久枝(同志社大学)
〈ポピュリスト政党の勝利〉
イタリア「極右・女性首相の誕生」をめぐる狂騒曲
伊藤 武(東京大学)
〈新連載〉
ボナエ・リテラエ――私の読書遍歴【第1回】――『ファーブル昆虫記』
森本あんり(東京女子大学長)
〈最終回〉
分水嶺II――コロナ緊急事態と専門家【第13回】――経験の重み
河合香織(ノンフィクション作家)
〈ルポ〉
「死ぬ権利」とは何か?――欧州「安楽死」事情
宮下洋一(ジャーナリスト)
〈自殺学を手がかりに〉
安楽死は自殺問題の解決なのか――障害者運動と安楽死を望む声の対立をめぐって(続)
渡邉 琢(介助士)
〈座談会〉
トランスジェンダー問題とは何か――当事者不在の「議論」に抗して
高井ゆと里(群馬大学)、三木那由他(大阪大学)、清水晶子(東京大学)
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◇世界の潮
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◇ノルトストリーム1、2の破裂と欧州ガス事情
小田 健
◇守られない家事労働者――過労死認定裁判が問うもの
池尾伸一
◇パキスタン大洪水――求められる「気候正義」
井上あえか
◇コソヴォとセルビア 情勢緊迫の背景
山崎信一
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◇SEKAI Review of Books
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◇「宗教2世問題」を理解するための必読書
横道 誠(京都府立大学)
◇読書の要諦――文芸 人界書き難し
藤沢 周(小説家)
◇読書録――ジャン・ボダンとlex regia、八月革命説
長谷部恭男(早稲田大学)
◇新刊紹介
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●連載
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〈好評連載〉
脳力のレッスン(246)――戦後日本と都市新中間層の今
寺島実郎
香港からの通信【第6回】――見慣れた香港から見知らぬ都市へ
劉鋭紹(政治評論家)
●片山善博の「日本を診る」(157)――地方創生をどうするか
片山善博(大正大学)
●気候再生のために【第7回】――ホッキョクグマは増えているのか?
江守正多(東京大学)
●沖縄(シマ)という窓――28.6万の「いいね」――ひろゆき氏ツイート現象が炙り出したもの
親川志奈子(沖縄大学非常勤講師)
●お許しいただければ――本当に読んだ?(E.V.ルーカス)
訳=行方昭夫(英文学者)
●原発月報――(22・9~10)
福島原発事故記録チーム
●ドキュメント激動の南北朝鮮(304)(22・9~10)
編集部
●民話採光
阿部海太(画家・絵本作家)
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○読者投句・岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
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編集後記
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今年の三月、早口で東京地裁の裁判長が判決を読み上げたとき、胸をよぎったのは、憤りというより、司法が遠ざかっていくとの思いだった。
SNS上での自身に対する誹謗中傷をめぐり、伊藤詩織さんは二〇一八年六~八月にかけて、三件の民事訴訟を提起した。そのうち自民党衆院議員の杉田水脈氏に対する裁判の判決を傍聴に行ったときのことだ。
一連の訴訟は、デジタルな言論空間で何が違法行為となるのか、司法への問題提起といえ、伊藤さん側の主張が認められるかどうかはもちろんわからなかった。それでも、杉田氏がツイッター上で「いいね」を押した計二五件のツイート内容にも、その文脈にも立ち入らないまま判決の言渡しが終わると、壇上の裁判官と実際以上の距離を感じた。それから約半年後の逆転勝訴の意味については、今月号「血の通った判決」を読んでいただきたい。
請求棄却の一審判決に、私は司法の限界を感じたが、伊藤さんは裁判の勝ち負けには重きを置いてこなかった。
二〇一九年、性被害に対する民事裁判を支援する団体が立ち上がる際にも、集まった人たちと議論するなかで、司法のプロセスを透明化し、システムを変えることを共通の目的に据えたという(会はOpen the Black Boxという名で活動を続けている)。警察捜査、検察審査会などで司法の現実に直面した伊藤さんは、一貫して、個別の裁判を超えた軸を示してきた。そうやって指し示された未来像に多くの人が共感し、社会は少しずつ変わってきたのだと思う。
しかし、本当にそういえるのか。
「また被害が生まれ、再び涙を流す女性が現れる。そんなことがないよう、根本的な改善を心から望んでいる」
元陸上自衛官の五ノ井里奈さんは、性被害の訴えから一年以上を経て加害者四人による直接の謝罪を受けたあと、中日新聞の取材にこう答えた(一〇月二一日付)。一生消えないと語った傷を抱えながら、五ノ井さんは一歩ずつ組織を、そして社会を動かしてきた。どれほどのエネルギーが必要だっただろう。カメラの前に立ち、実名で声をあげた人が、誹謗中傷の波に覆われてしまう状況は、伊藤詩織さんのときと変わっていないようにも感じる。
先日、環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんは「世界のすべての期待が、疲れはてたティーンエイジャーたちの肩にのしかかっている」と述べていた(BBCインタビュー)。人々がもう少しずつ責任を担ってくれたらいいのに、と。
私はどこに立っているのか? 誰に対して、どう行動するのか。これは今号、親川志奈子さんの寄稿(「沖縄という窓」)で心に刺さった問いでもある。
今月号より編集長をつとめます。ウクライナ侵攻以後、亀裂を深める国際社会。政治に置き去りにされてきたカルト被害――複雑な世界を複雑なまま、しかし自分の手が届くものとして知り、考え続けるために。人権があたりまえに守られる社会を若い世代に残していくために。創刊七六年の歴史に学びながら、新しい時代の難問に挑戦します。
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~~『世界』臨時増刊号のご案内~~
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争――世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
http://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
http://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
http://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
http://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
http://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
http://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
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