『世界』メールマガジン/2023年3月号【特集1:世界史の試練 ウクライナ戦争】【特集2:保育の貧困――「異次元の少子化対策」を問う】
2023/02/08 (Wed) 14:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2023年3月号
■■ vol.#0093
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■『世界』2023年3号(第967号)好評発売中
2023年2月8日発行
定価935円(税込)
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▼本号の目次
特集/注目記事/世界の潮/SEKAI Review of Books/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集1┃世界史の試練 ウクライナ戦争
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈社会と学問の「あるべき」姿〉
戦争の受益者は誰か 「学芸の共和国」はどこか
エカテリーナ・シュリマン(政治学者)、訳・解説=奈倉有里
〈座談会〉
プーチンのロシアは何を夢見るか?
池田嘉郎(東京大学)、宇山智彦(北海道大学)、浜由樹子(静岡県立大学)
〈インタビュー〉
この戦争は何であり、どこへ向かっているか
塩川伸明(東京大学名誉教授)
〈現地ルポ〉
ロシア軍占領地と接する町に残る人々
尾崎孝史(写真家)
〈何が変わったか?〉
「時代の転換」のなかのドイツ
藤野寛(國學院大學)
〈歴史学の使命は〉
西ウクライナの古都リヴィウが見てきたこと
野村真理(金沢大学名誉教授)
〈想像力への試練〉
ポーランドからみた「ウクライナ侵攻」
小山 哲(京都大学)
〈広島G7の意味〉
されど、“停戦”を呼びかけよ
西谷公明(元在ウクライナ大使館専門調査員)
〈プーチンの誤算〉
抵抗する言語──ウクライナ問題と言語学
田中克彦(一橋大学名誉教授)
〈「西欧」を問う〉
「人権の彼岸」から世界を観る──二重基準に抗して
岡 真理(京都大学)
┏━━━┓
┃特集2┃保育の貧困――「異次元の少子化対策」を問う
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈ルポ〉
「保育の質」はなぜ失われてきたか
田渕紫織(朝日新聞)
〈インタビュー〉
少子化対策に「特効薬」はない──経済学からみた幼児教育の意味
山口慎太郎(東京大学)
〈もう1人保育士を!〉
保育が社会を変えられるか?
平松知子(社会福祉法人熱田福祉会理事長)
〈民から官へ〉
韓国の保育政策史から考える ──保育の公共性とケアリングデモクラシー
相馬直子(横浜国立大学)、韓松花(延辺大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈「敵」は中国?〉
安保三文書を読み解く──臨戦態勢化する日米安保
前田哲男(軍事ジャーナリスト)
〈安倍氏悲願の達成か〉
「新しい戦前」への驀進──安保政策2012-2022
半田 滋(防衛ジャーナリスト)
〈解釈変更のトリック〉
「反撃能力」は「従来から憲法が認める」ものではない
邱静(中国人民大学)
〈ルポ〉
原発事故12年後の「子どもたち」──(上)被害「漂白」が進む中で
吉田千亜(フリーライター)
〈森功『国商』を読む〉
葛西敬之は日本の鉄道をどう変えたか
原 武史(放送大学)
〈追悼・磯崎新〉
〈建築〉の本義と〈建築〉の仁義
豊川斎赫(千葉大学)
〈「優しい」ネオリベ〉
ひろゆき論──なぜ支持されるのか、なぜ支持されるべきではないのか
伊藤昌亮(成蹊大学)
〈論争〉
新しい「農山村たたみ論」──「国土の多極集住論」の検討
小田切徳美(明治大学)
〈統計がなくなる?〉
農業集落調査「廃止騒動」の教訓
戸石七生(東京大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇ブラジル三権中枢襲撃事件──ボルソナリスタはどこへ向かうか?
軽部理人
◇COP15、ネイチャーポジティブへの出発点
井田徹治
◇イスラエル 最右派政権への懸念
辻田俊哉
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇SEKAI Review of Books
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇連載│読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
中村佑子(作家/映像作家)
◇新刊│生き延びるための文学──岩川ありさ『物語とトラウマ』
水上 文(文筆家)
◇冷戦期の大量殺害をグローバルに考察する
松野明久(大阪大学名誉教授)
◇新刊紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈好評連載〉
「拉致問題」風化に抗して【第2回】──「八人死亡 二人未入境」の虚偽(その2)
蓮池 薫(新潟産業大学)
ボナエ・リテラエ──私の読書遍歴 第4回──『教育の森のその後』
森本あんり(東京女子大学長)
〈最終回〉
お許しいただければ──壊れたメガネ(ロバート・リンド)
訳=行方昭夫(英文学者)
原発月報──(22・12~23・1)
福島原発事故記録チーム
●脳力のレッスン(249)――近現代史の折り返し点に立つ日本
寺島実郎
●片山善博の「日本を診る」(160)――「大砲もバターも借金で」では次世代に顔向けができない
片山善博(大正大学)
●Z世代と探るジャーナリズム【第3回】──内部告発者と記者の関係が社会を変える
奥山俊宏(上智大学)
●香港からの通信【第9回】――世界史のなかの香港史
新左学社(香港中文大学学生団体)
●気候再生のために【第10回】――気候の危機と生態系の危機
高村ゆかり(東京大学)
●沖縄(シマ)という窓――先住民族の権利、精神障害者の権利
親川志奈子(沖縄大学非常勤講師)
●ドキュメント激動の南北朝鮮(307)(22・12~23・1)
編集部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○読者投句・岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
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ウクライナ侵攻から一年が経つ。
書名に引きつけられ、歴史学者の野村真理さんによる『隣人が敵国人になる日』(人文書院)を読んだのは侵攻直後のことだ。第一次大戦下の東ガリツィア地域(現在のウクライナ西部)での民衆の戦争体験が克明に描かれており、時を経て今度は東部国境の戦闘地域の人々がいま何を経験しているのか、この本のように接近できたらと思わずにはいられなかった。
特集座談会で池田嘉郎さんが指摘する通り、前線の動きは連日報じられている一方、国内情勢をつかむのは難しい。甚大な被害を日々目にしていると、戦争が未曽有の天災のような錯覚に陥る。だが、これは「人間が継続させている事態」である――政治学者エカテリーナ・シュリマンさんの指摘は重い。
やはり歴史学者の小山哲さんは、侵攻以降、ポーランド国境(ウクライナ、またベラルーシとの国境)を越えた人々の動きを丁寧に追いながら、こう述べている。「爆撃によって日常を破壊された人びと、故郷を離れてさまよう人びとの目線にたってどこまで考えることができるか――この戦争は、私たちの市民としての知力と想像力にとっての試練でもある」
市民たちの知力と想像力が試されるのは、戦時だけではない。
昨年末、駆け足で防衛政策、そして原発政策の転換を決めた岸田政権が、今年に入って早々「異次元の少子化対策」を打ち出した。児童手当の増額、保育・幼児教育の拡充がその中心とされている。政府の発表の直後、東京都の小池知事は、子どもへの現金給付の大幅増を発表した。景気のいい話には、支持率回復という目的が透けてみえる。
防衛予算の倍増はありえないが(今号、前田哲男論考)、やはり倍増をうたう少子化対策の財源は「まったくの白紙」(片山善博「日本を診る」)という。
もうすぐ四歳になる息子がいる。子どもをとりまく環境を「持続可能性」の視点からみつめたとき、荒涼とした景色がひろがっている。出産した近所の大学病院では、後に四〇〇人以上の看護師さんが一〇〇名以上退職の意向を示したとニュースになっていた。保育園では先生に学ぶことばかりだが、それでも、年度末に退職する人の数は尋常ではない。
昨年、保育園での死亡事故や虐待事件が相次いで発覚した。これらの問題は突然噴出したわけではない。待機児童対策として行なわれた二〇〇〇年代以降の規制緩和により、現場の歪みは大きくなっていった。多くの保育士が、子どもに「ちょっと待ってね」「ごめんね」を繰り返し、専門性を育んだり発揮したりできない環境にあるという。「保育士が限界を感じる環境で毎日を過ごす子どもたちの人権は、どうなるのだろう」。記者の田渕紫織さんは今号で端的に書いている。
未来を担う子どもたちに、「ごめんね」「待ってね」ではなく、目の前の問題を解決するのが大人の仕事であるはずだ。多様な現場の声を聴き、求められてきた少子化対策をまず実行してほしい。
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~~『世界』臨時増刊号のご案内~~
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争――世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
http://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
http://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
http://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
http://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
http://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
http://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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岩波書店営業部読者係(TEL:03-5210-4111,FAX:03-3263-6999)
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■■ vol.#0093
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■『世界』2023年3号(第967号)好評発売中
2023年2月8日発行
定価935円(税込)
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▼本号の目次
特集/注目記事/世界の潮/SEKAI Review of Books/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
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┃特集1┃世界史の試練 ウクライナ戦争
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈社会と学問の「あるべき」姿〉
戦争の受益者は誰か 「学芸の共和国」はどこか
エカテリーナ・シュリマン(政治学者)、訳・解説=奈倉有里
〈座談会〉
プーチンのロシアは何を夢見るか?
池田嘉郎(東京大学)、宇山智彦(北海道大学)、浜由樹子(静岡県立大学)
〈インタビュー〉
この戦争は何であり、どこへ向かっているか
塩川伸明(東京大学名誉教授)
〈現地ルポ〉
ロシア軍占領地と接する町に残る人々
尾崎孝史(写真家)
〈何が変わったか?〉
「時代の転換」のなかのドイツ
藤野寛(國學院大學)
〈歴史学の使命は〉
西ウクライナの古都リヴィウが見てきたこと
野村真理(金沢大学名誉教授)
〈想像力への試練〉
ポーランドからみた「ウクライナ侵攻」
小山 哲(京都大学)
〈広島G7の意味〉
されど、“停戦”を呼びかけよ
西谷公明(元在ウクライナ大使館専門調査員)
〈プーチンの誤算〉
抵抗する言語──ウクライナ問題と言語学
田中克彦(一橋大学名誉教授)
〈「西欧」を問う〉
「人権の彼岸」から世界を観る──二重基準に抗して
岡 真理(京都大学)
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┃特集2┃保育の貧困――「異次元の少子化対策」を問う
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈ルポ〉
「保育の質」はなぜ失われてきたか
田渕紫織(朝日新聞)
〈インタビュー〉
少子化対策に「特効薬」はない──経済学からみた幼児教育の意味
山口慎太郎(東京大学)
〈もう1人保育士を!〉
保育が社会を変えられるか?
平松知子(社会福祉法人熱田福祉会理事長)
〈民から官へ〉
韓国の保育政策史から考える ──保育の公共性とケアリングデモクラシー
相馬直子(横浜国立大学)、韓松花(延辺大学)
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◆注目記事
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〈「敵」は中国?〉
安保三文書を読み解く──臨戦態勢化する日米安保
前田哲男(軍事ジャーナリスト)
〈安倍氏悲願の達成か〉
「新しい戦前」への驀進──安保政策2012-2022
半田 滋(防衛ジャーナリスト)
〈解釈変更のトリック〉
「反撃能力」は「従来から憲法が認める」ものではない
邱静(中国人民大学)
〈ルポ〉
原発事故12年後の「子どもたち」──(上)被害「漂白」が進む中で
吉田千亜(フリーライター)
〈森功『国商』を読む〉
葛西敬之は日本の鉄道をどう変えたか
原 武史(放送大学)
〈追悼・磯崎新〉
〈建築〉の本義と〈建築〉の仁義
豊川斎赫(千葉大学)
〈「優しい」ネオリベ〉
ひろゆき論──なぜ支持されるのか、なぜ支持されるべきではないのか
伊藤昌亮(成蹊大学)
〈論争〉
新しい「農山村たたみ論」──「国土の多極集住論」の検討
小田切徳美(明治大学)
〈統計がなくなる?〉
農業集落調査「廃止騒動」の教訓
戸石七生(東京大学)
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◇世界の潮
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◇ブラジル三権中枢襲撃事件──ボルソナリスタはどこへ向かうか?
軽部理人
◇COP15、ネイチャーポジティブへの出発点
井田徹治
◇イスラエル 最右派政権への懸念
辻田俊哉
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◇SEKAI Review of Books
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◇連載│読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
中村佑子(作家/映像作家)
◇新刊│生き延びるための文学──岩川ありさ『物語とトラウマ』
水上 文(文筆家)
◇冷戦期の大量殺害をグローバルに考察する
松野明久(大阪大学名誉教授)
◇新刊紹介
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●連載
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〈好評連載〉
「拉致問題」風化に抗して【第2回】──「八人死亡 二人未入境」の虚偽(その2)
蓮池 薫(新潟産業大学)
ボナエ・リテラエ──私の読書遍歴 第4回──『教育の森のその後』
森本あんり(東京女子大学長)
〈最終回〉
お許しいただければ──壊れたメガネ(ロバート・リンド)
訳=行方昭夫(英文学者)
原発月報──(22・12~23・1)
福島原発事故記録チーム
●脳力のレッスン(249)――近現代史の折り返し点に立つ日本
寺島実郎
●片山善博の「日本を診る」(160)――「大砲もバターも借金で」では次世代に顔向けができない
片山善博(大正大学)
●Z世代と探るジャーナリズム【第3回】──内部告発者と記者の関係が社会を変える
奥山俊宏(上智大学)
●香港からの通信【第9回】――世界史のなかの香港史
新左学社(香港中文大学学生団体)
●気候再生のために【第10回】――気候の危機と生態系の危機
高村ゆかり(東京大学)
●沖縄(シマ)という窓――先住民族の権利、精神障害者の権利
親川志奈子(沖縄大学非常勤講師)
●ドキュメント激動の南北朝鮮(307)(22・12~23・1)
編集部
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○読者投句・岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
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編集後記
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ウクライナ侵攻から一年が経つ。
書名に引きつけられ、歴史学者の野村真理さんによる『隣人が敵国人になる日』(人文書院)を読んだのは侵攻直後のことだ。第一次大戦下の東ガリツィア地域(現在のウクライナ西部)での民衆の戦争体験が克明に描かれており、時を経て今度は東部国境の戦闘地域の人々がいま何を経験しているのか、この本のように接近できたらと思わずにはいられなかった。
特集座談会で池田嘉郎さんが指摘する通り、前線の動きは連日報じられている一方、国内情勢をつかむのは難しい。甚大な被害を日々目にしていると、戦争が未曽有の天災のような錯覚に陥る。だが、これは「人間が継続させている事態」である――政治学者エカテリーナ・シュリマンさんの指摘は重い。
やはり歴史学者の小山哲さんは、侵攻以降、ポーランド国境(ウクライナ、またベラルーシとの国境)を越えた人々の動きを丁寧に追いながら、こう述べている。「爆撃によって日常を破壊された人びと、故郷を離れてさまよう人びとの目線にたってどこまで考えることができるか――この戦争は、私たちの市民としての知力と想像力にとっての試練でもある」
市民たちの知力と想像力が試されるのは、戦時だけではない。
昨年末、駆け足で防衛政策、そして原発政策の転換を決めた岸田政権が、今年に入って早々「異次元の少子化対策」を打ち出した。児童手当の増額、保育・幼児教育の拡充がその中心とされている。政府の発表の直後、東京都の小池知事は、子どもへの現金給付の大幅増を発表した。景気のいい話には、支持率回復という目的が透けてみえる。
防衛予算の倍増はありえないが(今号、前田哲男論考)、やはり倍増をうたう少子化対策の財源は「まったくの白紙」(片山善博「日本を診る」)という。
もうすぐ四歳になる息子がいる。子どもをとりまく環境を「持続可能性」の視点からみつめたとき、荒涼とした景色がひろがっている。出産した近所の大学病院では、後に四〇〇人以上の看護師さんが一〇〇名以上退職の意向を示したとニュースになっていた。保育園では先生に学ぶことばかりだが、それでも、年度末に退職する人の数は尋常ではない。
昨年、保育園での死亡事故や虐待事件が相次いで発覚した。これらの問題は突然噴出したわけではない。待機児童対策として行なわれた二〇〇〇年代以降の規制緩和により、現場の歪みは大きくなっていった。多くの保育士が、子どもに「ちょっと待ってね」「ごめんね」を繰り返し、専門性を育んだり発揮したりできない環境にあるという。「保育士が限界を感じる環境で毎日を過ごす子どもたちの人権は、どうなるのだろう」。記者の田渕紫織さんは今号で端的に書いている。
未来を担う子どもたちに、「ごめんね」「待ってね」ではなく、目の前の問題を解決するのが大人の仕事であるはずだ。多様な現場の声を聴き、求められてきた少子化対策をまず実行してほしい。
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~~『世界』臨時増刊号のご案内~~
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争――世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
http://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
http://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
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日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
http://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
http://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
http://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
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