『世界』メールマガジン/2023年4月号【特集1:痛みからつながる──女性と法の現在】【特集2:保学校 息苦しさからの脱却】
2023/03/16 (Thu) 15:02
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■■ 『世界』メールマガジン/2023年4月号
■■ vol.#0094
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■『世界』2023年4月号(第968号)好評発売中
2023年3月8日発行
定価935円(税込)
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▼本号の目次
特集/注目記事/世界の潮/SEKAI Review of Books/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集1┃痛みからつながる──女性と法の現在
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈対談〉
回復の場所を育む──当事者を真ん中に
上間陽子(琉球大学)×戒能民江(お茶の水女子大学名誉教授)
〈条約が照らす日本の課題〉
世界の女性の憲法 女性差別撤廃条約がめざすもの
林 陽子(弁護士)
〈なお残る問題点〉
被害者が裁かれない社会へ──刑法性犯罪、改正要綱案公表
谷田川知恵(一橋大学ほか非常勤講師)
〈父母の平等と子の利益〉
離婚後の「非合意・強制型共同親権」導入論の背景と問題
木村草太(東京都立大学)
〈三つの法がもたらしたもの〉
避妊・中絶への自己決定権を求めて
大橋由香子(フリーライター)
〈社会運動と議論の歴史から〉
韓国「女性暴力防止基本法」ができるまで
古橋 綾(岩手大学)
〈21世紀フェミニズム理論の射程〉
ケアと正義──あるいは〈法と女性〉を語る居心地の悪さについて
岡野八代(同志社大学)
┏━━━┓
┃特集2┃学校 息苦しさからの脱却
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈提言〉
学校を暴力から解放せよ
山本宏樹(大東文化大学)
〈インタビュー〉
映画『教育と愛国』と共に全国を訪ねて
斉加尚代(毎日放送)
〈性教育と人権〉
包括的セクシュアリティ教育の可能性
田代美江子(埼玉大学)
〈多様性の包摂〉
「移民第二世代」が学校で直面してきたこと
清水睦美(日本女子大学)
〈大切なのは「個」〉
学びに困難を抱えた子どもたち──発達障害と向き合う
川崎聡大(東北大学)
〈学力調査から考える〉
日本の教育は時代遅れなのか?
川口俊明(福岡教育大学)
〈自己責任論を超えて〉
借金をしないと学べない社会は健全なのか?
岩重佳治(弁護士)
〈子どもたちの分岐点〉
「家庭の問題」が出会う場としての学校
志田未来(日本女子大学学術研究員)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈ルポ〉
原発事故12年後の「子どもたち」──(下)法廷で語られる「いのち」の言葉
吉田千亜(フリーライター)
〈インタビュー〉
原発ゼロ、やらない岸田首相こそ「変人」だ
小泉純一郎(元内閣総理大臣)
〈座談会〉
またも提案? 入管法改定──私たちがかかわる理由
金井真紀(文筆家)×児玉晃一(弁護士)×木村友祐(小説家)
〈なぜ学者総裁に?〉
「植田総裁」サプライズ人事の深層──新体制に一抹の不安
西野智彦(ジャーナリスト)
〈ルポ〉
スペイン「労働者協同組合」の最前線
工藤律子(ジャーナリスト)、写真=篠田有史
〈「分水嶺II」番外編〉
ルビコン川の向こう──新型コロナ2類から5類へ
河合香織(ノンフィクション作家)
〈ルポ〉
死者最多のコロナ第八波──切り捨てられた高齢者
和田秀子(ライター)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇原発回帰 GXの正体と民意の行方
満田夏花
◇同性カップルの法的保護は人権の問題だ
申惠〓(シン ヘボン)
◇ミャンマー危機 終わらない軍政の「自作自演」
中西嘉宏
◇NHK 官製放送では「夢」語れず──会長人事と事業計画
砂川浩慶
◇PFAS汚染 東京・国分寺、血液検査の衝撃
諸永裕司
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈新連載〉
災厄の記憶を継承する【第1回】──福島・希望の牧場
小松原織香(関西大学)
隣のジャーナリズム──冤罪、公共放送、「エルピス」
大島 新(ドキュメンタリー監督)
日本語のなかの何処かへ【第1回】──自分の声を取り戻す
温又柔(作家)
〈好評連載〉
壊れる世界【第6回】──戦争が変える世界
藤原帰一(東京大学客員教授)
●読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
酒井啓子(千葉大学)
●ボナエ・リテラエ──私の読書遍歴【第5回】──『ヘーゲル批判』
森本あんり(東京女子大学長)
●脳力のレッスン(250)──四つの帝国の解体と二つの理念の登場 一〇〇年前の重い教訓
寺島実郎
●片山善博の「日本を診る」(161)──日銀総裁人事をめぐる国会審議
片山善博(大正大学)
●Z世代と探るジャーナリズム【第4回】──原発事故一二年目の福島県浜通りを学生と歩く
奥山俊宏(上智大学)
●香港からの通信【第10回】──全面的に整えられた“香港の教育”
ハヤシ(教育評論家)
●気候再生のために【第11回】──日本のエネルギー政策の根っこの問題
江守正多(東京大学)
●沖縄(シマ)という窓──ポスト復帰50年の現実
松元 剛(琉球新報)
●ドキュメント激動の南北朝鮮(308)(23・1~2)
編集部
●民話採光
阿部海太(画家・絵本作家)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○読者投句・岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
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編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
私たちはあの事故から何を学んだのだろう。
東京電力は、二〇一一年一二月の事故「収束」宣言から遅くても四〇年で福島第一原発を廃炉にする方針を示していたが、日程も費用も具体的な見通しは立たず、廃炉の最終形が何かも決まっていない。吉田千亜さんが前号に続き伝える「311子ども甲状腺がん裁判」では、事故当時六~一六歳だった若者たちが原告としていま法廷に立ち、証言を残している。
しかし、エネルギー情勢の変化を理由に、政府は発電所の新規増設を含む原発回帰へと舵を切った。運転期間の延長をめぐり委員の一人から反対意見が出たものの、原子力規制員会もその機能を果たしていない(今号、満田夏花論考)。同じ誤ちを繰り返すことはもう許されない。原発ゼロを掲げ続ける小泉元首相も、事故の目撃者の一人だ。
今号から始まる集中連載で、小松原織香さんは、とりかえしのつかない「災厄」の記憶の継承を考察している。事故八年後に福島を訪れ、ここでの記憶の継承は「始まったばかりだ」と思った、との言葉から、その被害の深さと複雑さに改めて気づかされる。
コロナ禍で三年ぶりにイラクを訪れたという酒井啓子さんのエッセイも、「記憶の継承」への示唆に富む。バグダッド旧市街にある書店街ムタナッビー通りは、イラク戦争以降の内戦を通して、激しい爆撃に晒された。二〇年の時を経て再建され、賑わう通りの「地べた」に埋められたものに視線を送っている。
女性参政権、また男女の平等を定めた日本国憲法の誕生から七五年あまり。女性たちは権利を獲得してきた一方で、売春防止法、旧優生保護法/母体保護法など、法に宿る差別によって傷つけられ、分断も生み出されてきた。
特集1の各論考が示す通り、いま検討されている刑法性犯罪規定や家族法の改正は政治問題とも化し、抜本的な改善までは見込めない。だが、法律は「かつて挫かれた正義の痕跡としてある」という、ある法哲学者の思想を引いた岡野八代さんの論考に視界が開かれた。堕胎罪で罰せられた人たち。性暴力が性犯罪と認められず、法廷の内外で裁かれた人……果たされなかった正義を求める声に、耳を傾け続けたい。
同性婚の法制化は「社会が変わってしまう課題」とした岸田首相の発言は、人権を、多数派が認めてあげるものと勘違いした政府の姿勢を象徴している。多様性が大事、と唱えるだけでなく、摩擦のなかでも一人ひとりの異質さが尊重される社会に変えていくには、子ども時代から、様々な社会慣習に接することが重要という(特集2川崎聡大論考)。障害のある子、外国にルーツのある子、誰もがアクセスを妨げられず、学び続けられることが、学校の閉塞感を打ち破る鍵のひとつではないか。
今号より、温又柔さんの連載エッセイ「日本語のなかの何処かへ」、第一線のジャーナリストが、同同業他社の仕事を批評するリレー連載「隣のジャーナリズム」が始まります。新年度の本誌もどうぞご期待ください。
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~~『世界』臨時増刊号のご案内~~
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争――世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
http://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
http://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
http://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
http://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
http://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
http://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11
吉田千亜
定価1,100円
http://iwnm.jp/603333
死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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◇本誌のご注文はお近くの書店か小社営業部宛てにお願いいたします.
岩波書店営業部読者係(TEL:03-5210-4111,FAX:03-3263-6999)
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■■ vol.#0094
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■『世界』2023年4月号(第968号)好評発売中
2023年3月8日発行
定価935円(税込)
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特集/注目記事/世界の潮/SEKAI Review of Books/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
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┃特集1┃痛みからつながる──女性と法の現在
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈対談〉
回復の場所を育む──当事者を真ん中に
上間陽子(琉球大学)×戒能民江(お茶の水女子大学名誉教授)
〈条約が照らす日本の課題〉
世界の女性の憲法 女性差別撤廃条約がめざすもの
林 陽子(弁護士)
〈なお残る問題点〉
被害者が裁かれない社会へ──刑法性犯罪、改正要綱案公表
谷田川知恵(一橋大学ほか非常勤講師)
〈父母の平等と子の利益〉
離婚後の「非合意・強制型共同親権」導入論の背景と問題
木村草太(東京都立大学)
〈三つの法がもたらしたもの〉
避妊・中絶への自己決定権を求めて
大橋由香子(フリーライター)
〈社会運動と議論の歴史から〉
韓国「女性暴力防止基本法」ができるまで
古橋 綾(岩手大学)
〈21世紀フェミニズム理論の射程〉
ケアと正義──あるいは〈法と女性〉を語る居心地の悪さについて
岡野八代(同志社大学)
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┃特集2┃学校 息苦しさからの脱却
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈提言〉
学校を暴力から解放せよ
山本宏樹(大東文化大学)
〈インタビュー〉
映画『教育と愛国』と共に全国を訪ねて
斉加尚代(毎日放送)
〈性教育と人権〉
包括的セクシュアリティ教育の可能性
田代美江子(埼玉大学)
〈多様性の包摂〉
「移民第二世代」が学校で直面してきたこと
清水睦美(日本女子大学)
〈大切なのは「個」〉
学びに困難を抱えた子どもたち──発達障害と向き合う
川崎聡大(東北大学)
〈学力調査から考える〉
日本の教育は時代遅れなのか?
川口俊明(福岡教育大学)
〈自己責任論を超えて〉
借金をしないと学べない社会は健全なのか?
岩重佳治(弁護士)
〈子どもたちの分岐点〉
「家庭の問題」が出会う場としての学校
志田未来(日本女子大学学術研究員)
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◆注目記事
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〈ルポ〉
原発事故12年後の「子どもたち」──(下)法廷で語られる「いのち」の言葉
吉田千亜(フリーライター)
〈インタビュー〉
原発ゼロ、やらない岸田首相こそ「変人」だ
小泉純一郎(元内閣総理大臣)
〈座談会〉
またも提案? 入管法改定──私たちがかかわる理由
金井真紀(文筆家)×児玉晃一(弁護士)×木村友祐(小説家)
〈なぜ学者総裁に?〉
「植田総裁」サプライズ人事の深層──新体制に一抹の不安
西野智彦(ジャーナリスト)
〈ルポ〉
スペイン「労働者協同組合」の最前線
工藤律子(ジャーナリスト)、写真=篠田有史
〈「分水嶺II」番外編〉
ルビコン川の向こう──新型コロナ2類から5類へ
河合香織(ノンフィクション作家)
〈ルポ〉
死者最多のコロナ第八波──切り捨てられた高齢者
和田秀子(ライター)
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◇世界の潮
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◇原発回帰 GXの正体と民意の行方
満田夏花
◇同性カップルの法的保護は人権の問題だ
申惠〓(シン ヘボン)
◇ミャンマー危機 終わらない軍政の「自作自演」
中西嘉宏
◇NHK 官製放送では「夢」語れず──会長人事と事業計画
砂川浩慶
◇PFAS汚染 東京・国分寺、血液検査の衝撃
諸永裕司
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●連載
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〈新連載〉
災厄の記憶を継承する【第1回】──福島・希望の牧場
小松原織香(関西大学)
隣のジャーナリズム──冤罪、公共放送、「エルピス」
大島 新(ドキュメンタリー監督)
日本語のなかの何処かへ【第1回】──自分の声を取り戻す
温又柔(作家)
〈好評連載〉
壊れる世界【第6回】──戦争が変える世界
藤原帰一(東京大学客員教授)
●読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
酒井啓子(千葉大学)
●ボナエ・リテラエ──私の読書遍歴【第5回】──『ヘーゲル批判』
森本あんり(東京女子大学長)
●脳力のレッスン(250)──四つの帝国の解体と二つの理念の登場 一〇〇年前の重い教訓
寺島実郎
●片山善博の「日本を診る」(161)──日銀総裁人事をめぐる国会審議
片山善博(大正大学)
●Z世代と探るジャーナリズム【第4回】──原発事故一二年目の福島県浜通りを学生と歩く
奥山俊宏(上智大学)
●香港からの通信【第10回】──全面的に整えられた“香港の教育”
ハヤシ(教育評論家)
●気候再生のために【第11回】──日本のエネルギー政策の根っこの問題
江守正多(東京大学)
●沖縄(シマ)という窓──ポスト復帰50年の現実
松元 剛(琉球新報)
●ドキュメント激動の南北朝鮮(308)(23・1~2)
編集部
●民話採光
阿部海太(画家・絵本作家)
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○読者投句・岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
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編集後記
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私たちはあの事故から何を学んだのだろう。
東京電力は、二〇一一年一二月の事故「収束」宣言から遅くても四〇年で福島第一原発を廃炉にする方針を示していたが、日程も費用も具体的な見通しは立たず、廃炉の最終形が何かも決まっていない。吉田千亜さんが前号に続き伝える「311子ども甲状腺がん裁判」では、事故当時六~一六歳だった若者たちが原告としていま法廷に立ち、証言を残している。
しかし、エネルギー情勢の変化を理由に、政府は発電所の新規増設を含む原発回帰へと舵を切った。運転期間の延長をめぐり委員の一人から反対意見が出たものの、原子力規制員会もその機能を果たしていない(今号、満田夏花論考)。同じ誤ちを繰り返すことはもう許されない。原発ゼロを掲げ続ける小泉元首相も、事故の目撃者の一人だ。
今号から始まる集中連載で、小松原織香さんは、とりかえしのつかない「災厄」の記憶の継承を考察している。事故八年後に福島を訪れ、ここでの記憶の継承は「始まったばかりだ」と思った、との言葉から、その被害の深さと複雑さに改めて気づかされる。
コロナ禍で三年ぶりにイラクを訪れたという酒井啓子さんのエッセイも、「記憶の継承」への示唆に富む。バグダッド旧市街にある書店街ムタナッビー通りは、イラク戦争以降の内戦を通して、激しい爆撃に晒された。二〇年の時を経て再建され、賑わう通りの「地べた」に埋められたものに視線を送っている。
女性参政権、また男女の平等を定めた日本国憲法の誕生から七五年あまり。女性たちは権利を獲得してきた一方で、売春防止法、旧優生保護法/母体保護法など、法に宿る差別によって傷つけられ、分断も生み出されてきた。
特集1の各論考が示す通り、いま検討されている刑法性犯罪規定や家族法の改正は政治問題とも化し、抜本的な改善までは見込めない。だが、法律は「かつて挫かれた正義の痕跡としてある」という、ある法哲学者の思想を引いた岡野八代さんの論考に視界が開かれた。堕胎罪で罰せられた人たち。性暴力が性犯罪と認められず、法廷の内外で裁かれた人……果たされなかった正義を求める声に、耳を傾け続けたい。
同性婚の法制化は「社会が変わってしまう課題」とした岸田首相の発言は、人権を、多数派が認めてあげるものと勘違いした政府の姿勢を象徴している。多様性が大事、と唱えるだけでなく、摩擦のなかでも一人ひとりの異質さが尊重される社会に変えていくには、子ども時代から、様々な社会慣習に接することが重要という(特集2川崎聡大論考)。障害のある子、外国にルーツのある子、誰もがアクセスを妨げられず、学び続けられることが、学校の閉塞感を打ち破る鍵のひとつではないか。
今号より、温又柔さんの連載エッセイ「日本語のなかの何処かへ」、第一線のジャーナリストが、同同業他社の仕事を批評するリレー連載「隣のジャーナリズム」が始まります。新年度の本誌もどうぞご期待ください。
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争――世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
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国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
http://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
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◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
http://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
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三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
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世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11
吉田千亜
定価1,100円
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死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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