『世界』メールマガジン/2023年6月号【特集1:現代日本のSNS空間】【特集2:もうひとつの資本主義へ――宇沢弘文という問い】
2023/05/08 (Mon) 14:30
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■■ 『世界』メールマガジン/2023年6月号
■■ vol.#0096
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■『世界』2023年6月号(第970号)好評発売中
2023年5月8日発行
定価935円(税込)
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▼本号の目次
特集/注目記事/世界の潮/SEKAI Review of Books/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集1┃現代日本のSNS空間
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈対談〉
「Colaboバッシング」とは何なのか
安田浩一(ノンフィクションライター)×小川たまか(ライター)
〈ファスト教養が社会を覆う〉
数と刺激とSNS
レジー(ライター)
〈ネットはユートピアか?〉
ミソジニーとサブカルチャーのインターネット文化史
藤田直哉(日本映画大学)
〈エッセイ〉
居場所を自作する――Discordの運用をめぐって
高島 鈴(ライター)
〈理論的視座〉
キャンセルカルチャーはデモクラシーを窒息させるのか?
五野井郁夫(高千穂大学)
┏━━━┓
┃特集2┃もうひとつの資本主義へ――宇沢弘文という問い
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈座談会〉
カール・ポランニーと宇沢弘文――「人間の自由」と「制度」をめぐって
佐々木 実(ジャーナリスト)×若森みどり(大阪公立大学)×間宮陽介(京都大学名誉教授)
〈インタビュー〉
無印良品が宇沢弘文「社会的共通資本」から考えること
金井政明(良品計画会長)
〈未来の経済学へ〉
新しい資本主義、新しい社会主義
松島 斉(東京大学)
〈流行に流される前に〉
リスキリング・ブームに欠けているもの
筒井美紀(法政大学)
〈共生の地平〉
内橋克人が描いた「もうひとつの日本」
加藤正文(神戸新聞)
〈対談〉
公益資本主義とは何か
上村達男(早稲田大学名誉教授)×原 丈人(アライアンス・フォーラム財団代表理事)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈病床からの声〉
神宮外苑を未来永劫守るために――坂本龍一さんが最後に伝えたこと
森本智之(東京新聞)
〈2023統一地方選〉
維新体制「完勝」の現実とその戦略
松本 創(ノンフィクションライター)
検証・大阪維新の会の財政運営――普遍主義に潜む社会的分断
吉弘憲介(桃山学院大学)
地方議会はいらない?――議員の多様化を進めるために
大山礼子(駒澤大学)
〈提言〉
G7とヒロシマ――サミットは核の廃絶を語れ
川崎 哲(ピースボート)
〈新連載〉
「変わらない」を変える【第1回】――「失われた30年」で失われたもの
三浦まり(上智大学)
〈その真の狙い〉
議員任期延長のための改憲案のどこが問題か
永井幸寿(弁護士)
〈粗雑な判決〉
「広場」で政治的集会を開催する自由はなぜ大事なのか――金沢市庁舎前広場集会不許可事件最高裁判決を受けて
毛利 透(京都大学)
〈立川反戦ビラ事件をめぐって〉
表現の自由をめぐる「時を超えた闘争」
ローレンス・レペタ(米国弁護士)、訳=岩川直子
〈死者たちのつなぎの道〉
続・夢の沈んだ底の『火山島』
金石範(作家)
〈「ままならなさ」を生きる〉
災厄の記憶を継承する【第3回(最終回)】――呼ばれて、繋がる
小松原織香(大阪公立大学)
〈インタビュー〉
陸前高田 海と生きる町の博物館
熊谷 賢(陸前高田市立博物館)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇フランス年金改革法成立――世論はなぜ燃え上がったのか
吉田 徹
◇大手電力のカルテル事件――電力システム改革の行方は?
高橋 洋
◇原発から完全撤退したドイツの覚悟
梶村太一郎
◇サウジアラビアとイランの国交回復――背景にある不可逆なトレンド
高尾賢一郎
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇SEKAI Review of Books
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇新刊│事実の重み、失われる空間――石井大智編著『2ちゃん化する世界』
藤原学思(朝日新聞)
◇連載│読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
長谷部恭男(早稲田大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈好評連載〉
隣のジャーナリズム「政治報道は誰のためのものか」――オンレコ・オフレコ論争のはざまで
澤田大樹(TBSラジオ記者)
壊れる世界【第7回】――戦争とナショナリズム
藤原帰一(東京大学客員教授)
メディアの「罪と罰」 【第2回】――権力者の無責任な言動を追認するメディア
松本一弥(ジャーナリスト)
日本語のなかの何処かへ【第3回】──「悲情城市」の記憶
温又柔(作家)
●ボナエ・リテラエ──私の読書遍歴【第7回】──『時と永遠』
森本あんり(東京女子大学長)
●脳力のレッスン(252)──二一世紀システムの宿痾としての金融不安
寺島実郎
●片山善博の「日本を診る」(163)──「大臣答弁にチャットGPT」の耐えられない軽さ
片山善博(大正大学)
●Z世代と探るジャーナリズム【最終回】──SNSで「やせたい」を増幅され、あおられる女性たち
奥山俊宏(上智大学)
●香港からの通信【第11回】――白紙運動の本質
張泰格(ジャーナリスト)
●気候再生のために【第13回】──IPCCのメッセージと日本人の無関心
江守正多(東京大学)
●沖縄(シマ)という窓──放課後児童クラブ――なお続く「手探りの児童福祉」
親川志奈子(沖縄大学非常勤講師)
●ドキュメント激動の南北朝鮮(310)(23・3~4)
編集部
●民話採光
阿部海太(画家・絵本作家)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○読者投句・岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
東京五輪の開催が決まった当時、環境植栽学が専門の藤井英二郎さんと、発表されたマラソンコース沿いの街路樹を見て歩いた。永代通り、清洲橋通り、外堀通り……歴史ある大通りには、枝先を伐り詰められて「電柱と見まがう」(藤井さん)木が少なくなかった。その後、結局マラソン競技は札幌開催となり、樹木はなおさら寂しく見える。
近年、温暖化危機への対策として、各国で都市全体の「樹冠被覆率」を高めようとする動きが進んでいる。日本でも仙台、名古屋などゆたかな並木とその管理体制で知られる自治体はあるが、多くの場合、都市の緑の多面的な機能を生かすことより、安全・管理面や落葉の苦情対策が優先されている。
照りつける日差しを遮る「緑の日傘」の下を通って移動できる人は、いまどのくらいいるだろう。
樹木がよりのびのびと枝を伸ばせるはずの公園内でも、不適切な管理や伐採の動きがみられる。一九二六年につくられた神宮外苑一帯では、九〇〇本あまりの伐採・移植を含む開発計画が今年都に了承され、工事着工の手前まできている。
「樹々はどんな人にも恩恵をもたらしますが、開発によって恩恵を得るのは一握りの富裕層にしか過ぎません」(坂本龍一さんから東京都知事への手紙)
神宮外苑とは、私たちにとってどのような場所なのか。土地の所有者や、資本の論理がすべてなのか。
市場経済は市場のみで完結するものではなく、非市場的な領域がなければ安定的に存立できない――経済理論の研究からそうした発想を得た宇沢弘文さんは、「社会的共通資本」の概念を提示し、環境を射程にいれた経済学を構築しようとした(座談会、間宮陽介さん)。
社会的共通資本の三つのカテゴリ「自然環境」「社会的インフラ」「教育、医療、司法、金融などの制度」は、いずれも摩耗している。その結果何が起きるか、私たちはもう目撃してきたはずだ。市場原理主義の力、株主資本主義の限界が指摘されて久しい今、資本主義と格闘してきた知の足跡をあらためてたどりたい(特集2)。
四月、ドイツで全原発が停止した。政府高官は、最終処理施設に核廃棄物が運び込まれるまで六〇年はかかる、そのとき脱原発は完了する、と語っている(梶村太一郎論考)。百年前からの樹木を受け継ぐのと同時に、人間の時間で解決できない問題をこれ以上次の世代に持ち越さないことも大事だと思う。
宇沢さんが三十年前から取り組んできた温暖化問題では、三月のIPCC報告書で、転換の速度がまったく不十分であると示された。ところが、各種国際調査で明らかになるのは「日本人の気候変動認知には伸びしろが大きい」こと。痛烈なアイロニーの込められた江守正多さんのエッセイ(「気候再生のために」)を次の詩とともに共有したい。
「どこかに美しい街はないか 食べられる実をつけた街路樹が どこまでも続き すみれいろした夕暮は 若者のやさしいさざめきで満ち満ちる」(茨木のり子「六月」)。
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~~『世界』臨時増刊号のご案内~~
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争――世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
http://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
http://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
http://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
http://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
http://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
http://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11
吉田千亜
定価1,100円
http://iwnm.jp/603333
死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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登録情報の編集・解除は,こちらよりお願いいたします.
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◇本誌のご注文はお近くの書店か小社営業部宛てにお願いいたします.
岩波書店営業部読者係(TEL:03-5210-4111,FAX:03-3263-6999)
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2023年5月8日発行
定価935円(税込)
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『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
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┃特集1┃現代日本のSNS空間
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〈対談〉
「Colaboバッシング」とは何なのか
安田浩一(ノンフィクションライター)×小川たまか(ライター)
〈ファスト教養が社会を覆う〉
数と刺激とSNS
レジー(ライター)
〈ネットはユートピアか?〉
ミソジニーとサブカルチャーのインターネット文化史
藤田直哉(日本映画大学)
〈エッセイ〉
居場所を自作する――Discordの運用をめぐって
高島 鈴(ライター)
〈理論的視座〉
キャンセルカルチャーはデモクラシーを窒息させるのか?
五野井郁夫(高千穂大学)
┏━━━┓
┃特集2┃もうひとつの資本主義へ――宇沢弘文という問い
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈座談会〉
カール・ポランニーと宇沢弘文――「人間の自由」と「制度」をめぐって
佐々木 実(ジャーナリスト)×若森みどり(大阪公立大学)×間宮陽介(京都大学名誉教授)
〈インタビュー〉
無印良品が宇沢弘文「社会的共通資本」から考えること
金井政明(良品計画会長)
〈未来の経済学へ〉
新しい資本主義、新しい社会主義
松島 斉(東京大学)
〈流行に流される前に〉
リスキリング・ブームに欠けているもの
筒井美紀(法政大学)
〈共生の地平〉
内橋克人が描いた「もうひとつの日本」
加藤正文(神戸新聞)
〈対談〉
公益資本主義とは何か
上村達男(早稲田大学名誉教授)×原 丈人(アライアンス・フォーラム財団代表理事)
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◆注目記事
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〈病床からの声〉
神宮外苑を未来永劫守るために――坂本龍一さんが最後に伝えたこと
森本智之(東京新聞)
〈2023統一地方選〉
維新体制「完勝」の現実とその戦略
松本 創(ノンフィクションライター)
検証・大阪維新の会の財政運営――普遍主義に潜む社会的分断
吉弘憲介(桃山学院大学)
地方議会はいらない?――議員の多様化を進めるために
大山礼子(駒澤大学)
〈提言〉
G7とヒロシマ――サミットは核の廃絶を語れ
川崎 哲(ピースボート)
〈新連載〉
「変わらない」を変える【第1回】――「失われた30年」で失われたもの
三浦まり(上智大学)
〈その真の狙い〉
議員任期延長のための改憲案のどこが問題か
永井幸寿(弁護士)
〈粗雑な判決〉
「広場」で政治的集会を開催する自由はなぜ大事なのか――金沢市庁舎前広場集会不許可事件最高裁判決を受けて
毛利 透(京都大学)
〈立川反戦ビラ事件をめぐって〉
表現の自由をめぐる「時を超えた闘争」
ローレンス・レペタ(米国弁護士)、訳=岩川直子
〈死者たちのつなぎの道〉
続・夢の沈んだ底の『火山島』
金石範(作家)
〈「ままならなさ」を生きる〉
災厄の記憶を継承する【第3回(最終回)】――呼ばれて、繋がる
小松原織香(大阪公立大学)
〈インタビュー〉
陸前高田 海と生きる町の博物館
熊谷 賢(陸前高田市立博物館)
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◇世界の潮
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◇フランス年金改革法成立――世論はなぜ燃え上がったのか
吉田 徹
◇大手電力のカルテル事件――電力システム改革の行方は?
高橋 洋
◇原発から完全撤退したドイツの覚悟
梶村太一郎
◇サウジアラビアとイランの国交回復――背景にある不可逆なトレンド
高尾賢一郎
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◇SEKAI Review of Books
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◇新刊│事実の重み、失われる空間――石井大智編著『2ちゃん化する世界』
藤原学思(朝日新聞)
◇連載│読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
長谷部恭男(早稲田大学)
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●連載
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〈好評連載〉
隣のジャーナリズム「政治報道は誰のためのものか」――オンレコ・オフレコ論争のはざまで
澤田大樹(TBSラジオ記者)
壊れる世界【第7回】――戦争とナショナリズム
藤原帰一(東京大学客員教授)
メディアの「罪と罰」 【第2回】――権力者の無責任な言動を追認するメディア
松本一弥(ジャーナリスト)
日本語のなかの何処かへ【第3回】──「悲情城市」の記憶
温又柔(作家)
●ボナエ・リテラエ──私の読書遍歴【第7回】──『時と永遠』
森本あんり(東京女子大学長)
●脳力のレッスン(252)──二一世紀システムの宿痾としての金融不安
寺島実郎
●片山善博の「日本を診る」(163)──「大臣答弁にチャットGPT」の耐えられない軽さ
片山善博(大正大学)
●Z世代と探るジャーナリズム【最終回】──SNSで「やせたい」を増幅され、あおられる女性たち
奥山俊宏(上智大学)
●香港からの通信【第11回】――白紙運動の本質
張泰格(ジャーナリスト)
●気候再生のために【第13回】──IPCCのメッセージと日本人の無関心
江守正多(東京大学)
●沖縄(シマ)という窓──放課後児童クラブ――なお続く「手探りの児童福祉」
親川志奈子(沖縄大学非常勤講師)
●ドキュメント激動の南北朝鮮(310)(23・3~4)
編集部
●民話採光
阿部海太(画家・絵本作家)
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○読者投句・岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
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編集後記
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東京五輪の開催が決まった当時、環境植栽学が専門の藤井英二郎さんと、発表されたマラソンコース沿いの街路樹を見て歩いた。永代通り、清洲橋通り、外堀通り……歴史ある大通りには、枝先を伐り詰められて「電柱と見まがう」(藤井さん)木が少なくなかった。その後、結局マラソン競技は札幌開催となり、樹木はなおさら寂しく見える。
近年、温暖化危機への対策として、各国で都市全体の「樹冠被覆率」を高めようとする動きが進んでいる。日本でも仙台、名古屋などゆたかな並木とその管理体制で知られる自治体はあるが、多くの場合、都市の緑の多面的な機能を生かすことより、安全・管理面や落葉の苦情対策が優先されている。
照りつける日差しを遮る「緑の日傘」の下を通って移動できる人は、いまどのくらいいるだろう。
樹木がよりのびのびと枝を伸ばせるはずの公園内でも、不適切な管理や伐採の動きがみられる。一九二六年につくられた神宮外苑一帯では、九〇〇本あまりの伐採・移植を含む開発計画が今年都に了承され、工事着工の手前まできている。
「樹々はどんな人にも恩恵をもたらしますが、開発によって恩恵を得るのは一握りの富裕層にしか過ぎません」(坂本龍一さんから東京都知事への手紙)
神宮外苑とは、私たちにとってどのような場所なのか。土地の所有者や、資本の論理がすべてなのか。
市場経済は市場のみで完結するものではなく、非市場的な領域がなければ安定的に存立できない――経済理論の研究からそうした発想を得た宇沢弘文さんは、「社会的共通資本」の概念を提示し、環境を射程にいれた経済学を構築しようとした(座談会、間宮陽介さん)。
社会的共通資本の三つのカテゴリ「自然環境」「社会的インフラ」「教育、医療、司法、金融などの制度」は、いずれも摩耗している。その結果何が起きるか、私たちはもう目撃してきたはずだ。市場原理主義の力、株主資本主義の限界が指摘されて久しい今、資本主義と格闘してきた知の足跡をあらためてたどりたい(特集2)。
四月、ドイツで全原発が停止した。政府高官は、最終処理施設に核廃棄物が運び込まれるまで六〇年はかかる、そのとき脱原発は完了する、と語っている(梶村太一郎論考)。百年前からの樹木を受け継ぐのと同時に、人間の時間で解決できない問題をこれ以上次の世代に持ち越さないことも大事だと思う。
宇沢さんが三十年前から取り組んできた温暖化問題では、三月のIPCC報告書で、転換の速度がまったく不十分であると示された。ところが、各種国際調査で明らかになるのは「日本人の気候変動認知には伸びしろが大きい」こと。痛烈なアイロニーの込められた江守正多さんのエッセイ(「気候再生のために」)を次の詩とともに共有したい。
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争――世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
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国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
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◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
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日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
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本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
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三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
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世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11
吉田千亜
定価1,100円
http://iwnm.jp/603333
死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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