『世界』メールマガジン/2024年1月号【特集1:ふたつの戦争、ひとつの世界】【特集2:ディストピア・ジャパン】
2023/12/08 (Fri) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2024年1月号
■■ vol.#0103
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■『世界』2024年1月号(第977号)好評発売中
2023年12月8日発行
定価1045円(税込)
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集 1┃ふたつの戦争、ひとつの世界
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈インタビュー〉
ガザ、人類の危機──それでも守るべき価値とは
中満 泉(国連事務次長、軍縮担当上級代表)、聞き手=国谷裕子(ジャーナリスト)
国際法と学問の責任──破局を再び起こさないために
根岸陽太(西南学院大学)
この人倫の奈落において──ガザのジェノサイド
岡 真理(早稲田大学)
イスラエルの焦り──この戦争に終わりはくるのか?
錦田愛子(慶應義塾大学)
正義論では露ウ戦争は止められない──ウクライナからカラバフへ、拡大する戦争
松里公孝(東京大学)
〈対 談〉
二〇二四年の世界と日本
田中 均(元外務審議官)× 佐橋 亮(東京大学)
「ふたつの戦争」と米国の世界戦略
菅 英輝(九州大学名誉教授)
┏━━━┓
┃特集 2┃ディストピア・ジャパン
┗━━━╋…────────────────────────────────
人間であることが困難な世界で
松村圭一郎(岡山大学)
〈インタビュー〉
反社会的で、善なるもの──いま小説を書くということ
桐野夏生(作家)、聞き手=前川仁之
〈インタビュー〉
入管はなぜ姉を同じ人間として扱ってくれなかったのか──ウィシュマさん死亡事件の真相を求めて
ワヨミ/ポールニマ、聞き手=伊藤詩織
さよなら、ジャニーズ。さよなら、テレビ。──見えない再生の糸口
林 香里(東京大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
宝塚の悲劇 何がカナリアを追いつめたのか
川崎賢子(文芸評論家)
大川原化工機「冤罪」事件の深層──警視庁公安部で何が
石原大史(NHK)
《新シリーズ》
〈スケッチ〉 カメレオン通り
多和田葉子(作家)
《新シリーズ》
〈夜店〉 歴史学は世界を変えることができるか
松沢裕作(慶應義塾大学)
事故と故事のあいだ──膨張する中国のナラティブ戦略
福嶋亮大(文芸批評家)
植民地主義者とはだれか──台湾とパレスチナのいまを貫く問い
駒込 武(京都大学)
国家が国籍を奪う──英国の経験
柄谷利恵子(関西大学)
『心的外傷と回復』について
阿部大樹(精神科医)
意見が嫌われる時代の言論
大澤 聡(批評家)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇岸田減税が不人気な理由
吉弘憲介(桃山学院大学)
◇性同一性障害特例法 違憲決定の意義
木村草太(東京都立大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇本との出会い
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
新城和博(編集者)
本とチェック 第8回 詩人とその父をめぐる時間旅行(上)
金承福(「クオン」代表)
取るに足らない「茶飯」が積み上げたもの─湯澤規子『焼き芋とドーナツ』
富永京子(立命館大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈新連載〉
最後は教育なのか? 第1回 「お花畑」は現実化する──仁平典宏さんに聞く
武田砂鉄(ライター)
〈新連載〉
〈小さな物語〉の復興──『フランケンシュタイン』をよむ 第1回 戦争
小川公代(上智大学)
〈最終回〉
再録・大江健三郎のことば 第6回 「持続する志」「再び持続する志」
大江健三郎 解題=山本昭宏
〈最終回〉
ブラック・ミュージックの魂を求めて 第6回 未来に向けて再構築されるルーツ
中村隆之(早稲田大学)
●「拉致問題」風化に抗して 第7回 日本人拉致が北朝鮮にもたらしたもの(その3)
蓮池 薫(新潟産業大学)
●隣のジャーナリズム ノンフィクションと「私」
伊澤理江(ジャーナリスト)
●ボナエ・リテラエ─私の読書遍歴 第7回 『キリスト教の絶対性と宗教史』
森本あんり(東京女子大学長)
●脳力のレッスン(259)二一世紀・未来圏の日本再生の構想(その2)
寺島実郎
●片山善博の「日本を診る」(170)埼玉県子ども放置禁止条例案から窺える地方議会の形骸化
片山善博(大正大学)
●「変わらない」を変える 第8回 政治は「愛と希望」を語れるか
三浦まり(上智大学)
●滅びゆく日本、再生への道 第4回 「豊かな国」から転げ落ちた背景
星 浩(ジャーナリスト)
●気候再生のために 第20回 食料システムの変革が私たちの食を守る
高村ゆかり(東京大学)
●日本語のなかの何処かへ 第10回 この名にちなんで
温又柔(作家)
●沖縄(シマ)という窓─沖縄を二度と戦場にしない
松元 剛(琉球新報)
●ドキュメント激動の南北朝鮮 第317回(2023・10~11)
編集部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○記憶をもった鏡─奥山由之『windows』
○表紙木版画
久保舎己 (潜水艦の闘い 2000、裏表紙 ひとがゆく 2023)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○デザイン
大原由衣
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「美術表現による社会批判は本当に無力です、しかし何もしないではいられなかったのです」
今号表紙の中央に置かれた木版画の作者である久保舎己(すてみ)さんの言葉だ。社会が不穏な方向へ向かう兆しから、湧き起こるイメージを作品化されてきた。
雑誌のリニューアルにあたって、新しい表紙をどうするか。デザイナーの須田杏菜さんとの模索は、「世界」とはどんな雑誌なのかを編集部で改めて考える機会でもあった。これでいこう、と最終的にはストンと決まったのは、書体を受け継ぎつつ、時代にあわせて整えたロゴ、そして、木版画が重心となってくれたからかもしれない。久保さんはご病気で二〇二三年一〇月に亡くなられたが、この表紙が、作品との新たな出会いの場になればと思う。
国際法の、国連の、理想の――無力を、この間何度突きつけられたことだろう。停戦、ガザでの人道危機の一刻も早い解決を求めると同時に、事態の収束後、イスラエル、またパレスチナでの日常がいかなるものとなるかを想像することも求められているのではないか。
これまで異常事態を日常として経験してきた人々に、ニュー・ノーマルという名の下の新たな破局をもたらさないためには、そもそも異常を生み出してきた日常の構造を変えなくてはならない。そう指摘し、構造の変革における国際法学の責任を示す根岸陽太さんの論考は、無力から一歩踏み出す応答である。
ガザの惨状が訴えられ続けてきたにもかかわらず、パレスチナの側が国際社会に見捨てられていると感じる状況は変わらなかった。国連は、より積極的な役割を果たせなかったのか。国谷裕子さんの質問には、人々の切実な思いが反映されているようで、問いの向こう側に、一人ひとりの読者がいるのだと気づかされた。
その国谷さんに、国連事務次長の中満泉さんは、ガザ、ウクライナにとどまらず、世界各地で同時に進行する人道危機を注視する、その余力を人々がもてなくなってきているのではないか、と吐露している。
戦争の暴力は、けっして遠い国の話ではない。松村圭一郎さんが指摘するように、この社会に遍在する、「人間らしさ」を剝奪するロジックに目を向けるとき、「等身大の目線に踏みとどまる思考」の重要性がみえてくる。
資材の高騰を受け、本誌は今号より本体九五〇円に価格変更いたします。物価高の続くなか税込一〇〇〇円超となる値上げですが、内容の充実により、読者の皆さんの期待にお応えできるよう、いっそう尽力してまいります。
「今の社会で、古い服を直しながらいつまでも着るのは大変なこと」(多和田葉子さん)。さりげない手入れを重ねて時代に適応するベルリンの「カメレオン通り」のように、雑誌も多くの人が行き交う場でありたい。
創刊七八年、装い新たに、平和のための言葉を届けてまいります。
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~~『世界』臨時増刊号のご案内~~
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争――世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
https://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
https://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
https://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
https://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
https://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
https://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11
吉田千亜
定価1,100円
https://iwnm.jp/603333
死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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登録情報の編集・解除は,こちらよりお願いいたします.
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〒101-8002 東京都千代田区一ツ橋2-5-5
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岩波書店営業部読者係(TEL:03-5210-4111,FAX:03-3263-6999)
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■『世界』2024年1月号(第977号)好評発売中
2023年12月8日発行
定価1045円(税込)
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
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┃特集 1┃ふたつの戦争、ひとつの世界
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈インタビュー〉
ガザ、人類の危機──それでも守るべき価値とは
中満 泉(国連事務次長、軍縮担当上級代表)、聞き手=国谷裕子(ジャーナリスト)
国際法と学問の責任──破局を再び起こさないために
根岸陽太(西南学院大学)
この人倫の奈落において──ガザのジェノサイド
岡 真理(早稲田大学)
イスラエルの焦り──この戦争に終わりはくるのか?
錦田愛子(慶應義塾大学)
正義論では露ウ戦争は止められない──ウクライナからカラバフへ、拡大する戦争
松里公孝(東京大学)
〈対 談〉
二〇二四年の世界と日本
田中 均(元外務審議官)× 佐橋 亮(東京大学)
「ふたつの戦争」と米国の世界戦略
菅 英輝(九州大学名誉教授)
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┃特集 2┃ディストピア・ジャパン
┗━━━╋…────────────────────────────────
人間であることが困難な世界で
松村圭一郎(岡山大学)
〈インタビュー〉
反社会的で、善なるもの──いま小説を書くということ
桐野夏生(作家)、聞き手=前川仁之
〈インタビュー〉
入管はなぜ姉を同じ人間として扱ってくれなかったのか──ウィシュマさん死亡事件の真相を求めて
ワヨミ/ポールニマ、聞き手=伊藤詩織
さよなら、ジャニーズ。さよなら、テレビ。──見えない再生の糸口
林 香里(東京大学)
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◆注目記事
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宝塚の悲劇 何がカナリアを追いつめたのか
川崎賢子(文芸評論家)
大川原化工機「冤罪」事件の深層──警視庁公安部で何が
石原大史(NHK)
《新シリーズ》
〈スケッチ〉 カメレオン通り
多和田葉子(作家)
《新シリーズ》
〈夜店〉 歴史学は世界を変えることができるか
松沢裕作(慶應義塾大学)
事故と故事のあいだ──膨張する中国のナラティブ戦略
福嶋亮大(文芸批評家)
植民地主義者とはだれか──台湾とパレスチナのいまを貫く問い
駒込 武(京都大学)
国家が国籍を奪う──英国の経験
柄谷利恵子(関西大学)
『心的外傷と回復』について
阿部大樹(精神科医)
意見が嫌われる時代の言論
大澤 聡(批評家)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
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◇岸田減税が不人気な理由
吉弘憲介(桃山学院大学)
◇性同一性障害特例法 違憲決定の意義
木村草太(東京都立大学)
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◇本との出会い
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読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
新城和博(編集者)
本とチェック 第8回 詩人とその父をめぐる時間旅行(上)
金承福(「クオン」代表)
取るに足らない「茶飯」が積み上げたもの─湯澤規子『焼き芋とドーナツ』
富永京子(立命館大学)
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●連載
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〈新連載〉
最後は教育なのか? 第1回 「お花畑」は現実化する──仁平典宏さんに聞く
武田砂鉄(ライター)
〈新連載〉
〈小さな物語〉の復興──『フランケンシュタイン』をよむ 第1回 戦争
小川公代(上智大学)
〈最終回〉
再録・大江健三郎のことば 第6回 「持続する志」「再び持続する志」
大江健三郎 解題=山本昭宏
〈最終回〉
ブラック・ミュージックの魂を求めて 第6回 未来に向けて再構築されるルーツ
中村隆之(早稲田大学)
●「拉致問題」風化に抗して 第7回 日本人拉致が北朝鮮にもたらしたもの(その3)
蓮池 薫(新潟産業大学)
●隣のジャーナリズム ノンフィクションと「私」
伊澤理江(ジャーナリスト)
●ボナエ・リテラエ─私の読書遍歴 第7回 『キリスト教の絶対性と宗教史』
森本あんり(東京女子大学長)
●脳力のレッスン(259)二一世紀・未来圏の日本再生の構想(その2)
寺島実郎
●片山善博の「日本を診る」(170)埼玉県子ども放置禁止条例案から窺える地方議会の形骸化
片山善博(大正大学)
●「変わらない」を変える 第8回 政治は「愛と希望」を語れるか
三浦まり(上智大学)
●滅びゆく日本、再生への道 第4回 「豊かな国」から転げ落ちた背景
星 浩(ジャーナリスト)
●気候再生のために 第20回 食料システムの変革が私たちの食を守る
高村ゆかり(東京大学)
●日本語のなかの何処かへ 第10回 この名にちなんで
温又柔(作家)
●沖縄(シマ)という窓─沖縄を二度と戦場にしない
松元 剛(琉球新報)
●ドキュメント激動の南北朝鮮 第317回(2023・10~11)
編集部
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○岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○記憶をもった鏡─奥山由之『windows』
○表紙木版画
久保舎己 (潜水艦の闘い 2000、裏表紙 ひとがゆく 2023)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○デザイン
大原由衣
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編集後記
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「美術表現による社会批判は本当に無力です、しかし何もしないではいられなかったのです」
今号表紙の中央に置かれた木版画の作者である久保舎己(すてみ)さんの言葉だ。社会が不穏な方向へ向かう兆しから、湧き起こるイメージを作品化されてきた。
雑誌のリニューアルにあたって、新しい表紙をどうするか。デザイナーの須田杏菜さんとの模索は、「世界」とはどんな雑誌なのかを編集部で改めて考える機会でもあった。これでいこう、と最終的にはストンと決まったのは、書体を受け継ぎつつ、時代にあわせて整えたロゴ、そして、木版画が重心となってくれたからかもしれない。久保さんはご病気で二〇二三年一〇月に亡くなられたが、この表紙が、作品との新たな出会いの場になればと思う。
国際法の、国連の、理想の――無力を、この間何度突きつけられたことだろう。停戦、ガザでの人道危機の一刻も早い解決を求めると同時に、事態の収束後、イスラエル、またパレスチナでの日常がいかなるものとなるかを想像することも求められているのではないか。
これまで異常事態を日常として経験してきた人々に、ニュー・ノーマルという名の下の新たな破局をもたらさないためには、そもそも異常を生み出してきた日常の構造を変えなくてはならない。そう指摘し、構造の変革における国際法学の責任を示す根岸陽太さんの論考は、無力から一歩踏み出す応答である。
ガザの惨状が訴えられ続けてきたにもかかわらず、パレスチナの側が国際社会に見捨てられていると感じる状況は変わらなかった。国連は、より積極的な役割を果たせなかったのか。国谷裕子さんの質問には、人々の切実な思いが反映されているようで、問いの向こう側に、一人ひとりの読者がいるのだと気づかされた。
その国谷さんに、国連事務次長の中満泉さんは、ガザ、ウクライナにとどまらず、世界各地で同時に進行する人道危機を注視する、その余力を人々がもてなくなってきているのではないか、と吐露している。
戦争の暴力は、けっして遠い国の話ではない。松村圭一郎さんが指摘するように、この社会に遍在する、「人間らしさ」を剝奪するロジックに目を向けるとき、「等身大の目線に踏みとどまる思考」の重要性がみえてくる。
資材の高騰を受け、本誌は今号より本体九五〇円に価格変更いたします。物価高の続くなか税込一〇〇〇円超となる値上げですが、内容の充実により、読者の皆さんの期待にお応えできるよう、いっそう尽力してまいります。
「今の社会で、古い服を直しながらいつまでも着るのは大変なこと」(多和田葉子さん)。さりげない手入れを重ねて時代に適応するベルリンの「カメレオン通り」のように、雑誌も多くの人が行き交う場でありたい。
創刊七八年、装い新たに、平和のための言葉を届けてまいります。
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~~『世界』臨時増刊号のご案内~~
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争――世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
https://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
https://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
https://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
https://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
https://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
https://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11
吉田千亜
定価1,100円
https://iwnm.jp/603333
死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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