『世界』メールマガジン/2024年3月号【特集1:さよなら自民党 派閥・世襲・裏金】【特集2:働けど働けど】
2024/02/08 (Thu) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2024年3月号
■■ vol.#0105
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■『世界』2024年3月号(第979号)好評発売中
2024年2月8日発行
定価1045円(税込)
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集 1┃さよなら自民党 派閥・世襲・裏金
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈「変わらない」を変える 特別編〉
金権体質をしつこく、問い続けよう
三浦まり(上智大学)
派閥政治の核心──ジェンダー化された世襲がもたらしたもの
申キ榮(お茶の水女子大学)*キは、王に其
「清和会支配」という虚像
井上正也(慶應義塾大学)
〈ドキュメント〉
自己保身という政治刷新
澤田大樹(TBSラジオ記者)
〈対談〉
90年代政治改革とは何だったのか
佐々木毅(東京大学名誉教授)× 山口二郎(法政大学) 聞き手=三浦俊章(ジャーナリスト)
安倍政治の罪と罰──ツケを払うのは誰か?
上野千鶴子(東京大学名誉教授)
┏━━━┓
┃特集 2┃働けど働けど
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈インタビュー〉
低賃金社会はなぜ続くのか
田中洋子(筑波大学)、聞き手=和田靜香(ライター)
生活不安と社会保障の論点
古市将人(帝京大学)
〈インタビュー〉
交通誘導員という社会の縮図
柏 耕一(交通誘導員・ライター)、聞き手=前川仁之
フェミニスト・エコロジカル経済学の視座
古沢希代子(東京女子大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
長引く戦時の質問集
エカテリーナ・シュリマン(政治学者)、訳・解説=奈倉有里
能登半島地震と活断層──繰り返される「想定外」の背景に何があるか?
鈴木康弘(名古屋大学)
「後回し」にさせてはいけない──現地メディアが見た被災地
五百旗頭幸男(ドキュメンタリー監督)
声を運ぶ船
瀬尾夏美(アーティスト)
〈スケッチ〉
高架沿いと高架下で
津村記久子(作家)
〈シリーズ夜店〉
人文学のアナクロニズム──なぜいま、エドワード・サイードを読むのか
中井亜佐子(一橋大学)
ルポ
パレスチナ・西岸地区に生きるということ──あるいは次の瞬間死ぬということ
安田菜津紀(フォトジャーナリスト)
ショアーからナクバへ、世界への責任
高橋哲哉(東京大学名誉教授)
台湾の現在地─総統選挙・立法委員選挙結果をどう見るか
家永真幸(東京女子大学)
米中半導体戦争のなかのTSMC
土屋直也(ジャーナリスト)
危機に瀕する外苑いちょう並木
石川幹子(中央大学)
クマはなぜ、都市にあらわれるのか?
佐藤喜和(酪農学園大学)
プーチンの終わらない戦争と抵抗する人々
キリル・マルティノフ
ロシアがウクライナで戦う理由はなにか──プーチンの開戦演説をめぐって
伊東孝之(北海道大学名誉教授)
「人道的軍縮」の限界──なぜ惨禍を防げなかったのか
榎本珠良(明治学院大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇辺野古「代執行」が破壊したもの
島 洋子(琉球新報)
◇「リバタリアン」大統領ミレイと、アルゼンチンのゆくえ
狐崎知己(専修大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇本との出会い
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
中村佑子(作家/映像作家)
本とチェック 第10回 大きな世界観─李光洙と波田野先生
金承福(クオン代表)
隣のジャーナリズム 「ケアをひらく」がひらこうとしたもの
白石正明(医学書院)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈好評連載〉
最後は教育なのか? 第2回 教室という密室 川上康則さんに聞く
武田砂鉄(ライター)
●島に帰る 第2回 戦争のあとの物語
榎本 空(エスノグラファー)
●〈小さな物語〉の復興 第3回 親ガチャ
小川公代(上智大学)
●「拉致問題」風化に抗して 第8回 日本人被害者への思想教育(その1)
蓮池 薫(新潟産業大学)
●ボナエ・リテラエ─私の読書遍歴 第16回 『ニコマコス倫理学』
森本あんり(東京女子大学長)
●脳力のレッスン(261)二一世紀・未来圏の日本再生の構想(その4)
寺島実郎
●片山善博の「日本を診る」(172)大災害にどう備え、どう向き合うか
片山善博(大正大学)
●滅びゆく日本、再生への道 第6回 安倍派「構造腐敗」が招く岸田政権の終焉
星 浩(ジャーナリスト)
●香港からの通信 第19回 民意研究の厳冬
鍾庭耀(香港民意研究所主席)
●気候再生のために 第22回 COP28と再エネ三倍目標
高村ゆかり(東京大学)
●日本語のなかの何処かへ 第12回(最終回) 私たちが愉快でいられるために
温又柔(作家)
●沖縄(シマ)という窓(最終回) 人権をあきらめない
親川志奈子(沖縄大学非常勤講師)
●ドキュメント激動の南北朝鮮 第319回(23・12~24・1)
編集部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○記憶をもった鏡──中井菜央『雪の刻』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○表紙木版画
久保舎己(水たまりの水をのむ野良の犬 1981、裏表紙 日の丸弁当 1979)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+安賀裕子
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
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昨年末、映画『PERFECT DAYS』を観た。早朝に木造アパートを出て、トイレ清掃の仕事をする。一〇〇円の古本を読み眠りにつく。スマホもテレビもない、ルーティンを重ねる静かな生活は、閉塞感に満ちた時代からの解放にもみえる。だが「Feeling Good」(ニーナ・シモン)の流れる終盤、役所広司さん演じる主人公の表情には、本当にこれでよかったのか、こんなはずではなかった──そんなやるせなさも窺える。
清掃や介護、警備といった、誰もがどこかで支えられているエッセンシャルワークはなぜ軽んじられ続けるのか。規制緩和や人件費削減など新自由主義的な政策・制度が、自己責任論とともに人々に浸透していく。この三〇年で、私たちは非正規という言葉に慣れすぎた──そう田中洋子さんは指摘する(特集2)。
三〇年という時間の意味を、何度も突きつけられた一月だった。
元日に起きた能登半島地震の被災地では、いまなおライフラインが復旧していない。今年で二九年目を迎えた阪神・淡路大震災の後、いくつもの震災を経てきたが、その経験の蓄積を十分に活かせているか。SNSに溢れた「被災地に入るな」の声に萎縮することなく、政治をウォッチし、被災地の人々が平穏な暮らしに戻れるよう、一刻も早く支援を届けなければならない。
日本活断層学会会長である鈴木康弘さんによれば、海岸沿いの活断層認定は遅れており、詳細な調査がなされているのは三パーセントに過ぎないとの指摘もあるという。陸域だけで二〇〇〇もの活断層がある日本で、大小様々な地震の起きる頻度が過小に見積もられていることが再度示された。原発再稼働などもってのほかだ。
三〇年前とは異なる衰弱局面でどう踏ん張るのか。九〇年代の政治改革論議をリードした佐々木毅さんは、今の日本政治には、当時よりもっと困難な課題が迫っていると語る(特集1対談)。しかし裏金問題の発覚以来、見せつけられてきたのは保身に走る議員の姿だけだった。政治資金規正法の改正がなぜか選挙制度改革とセットにされた、論点のすり替えを繰り返してはならない。
米兵による少女暴行事件後、日米両政府が普天間基地返還に合意したのは一九九六年。移設先とされた辺野古での建設計画の迷走、そして埋立て承認をめぐる訴訟を経て、今年一月、大浦湾側での新基地建設の工事が始まった(島洋子さん「世界の潮」)。
親川志奈子さんは「沖縄という窓」でコラムを執筆してきた十年余りを振り返り、時々に取り上げてきた問題で、一つでも解決できたものがあっただろうか、と書いている。
「何度読んでも一つだって『勝利』はなかった」。その時間は、日本人が沖縄を抑圧し続けた時間だと改めて思う。世界に目を向ければ、今なおパレスチナでの殺戮が続くこの四カ月も、ナクバからの七五年間も、国際社会が沈黙してきた時間だ(安田菜津紀さんルポ)。
無関心と無力で時間を失いつづけることはもう許されない。
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~~『世界』臨時増刊号のご案内~~
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争――世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
https://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
https://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
https://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
https://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
https://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
https://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11
吉田千亜
定価1,100円
https://iwnm.jp/603333
死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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2024年2月8日発行
定価1045円(税込)
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┃特集 1┃さよなら自民党 派閥・世襲・裏金
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈「変わらない」を変える 特別編〉
金権体質をしつこく、問い続けよう
三浦まり(上智大学)
派閥政治の核心──ジェンダー化された世襲がもたらしたもの
申キ榮(お茶の水女子大学)*キは、王に其
「清和会支配」という虚像
井上正也(慶應義塾大学)
〈ドキュメント〉
自己保身という政治刷新
澤田大樹(TBSラジオ記者)
〈対談〉
90年代政治改革とは何だったのか
佐々木毅(東京大学名誉教授)× 山口二郎(法政大学) 聞き手=三浦俊章(ジャーナリスト)
安倍政治の罪と罰──ツケを払うのは誰か?
上野千鶴子(東京大学名誉教授)
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┃特集 2┃働けど働けど
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈インタビュー〉
低賃金社会はなぜ続くのか
田中洋子(筑波大学)、聞き手=和田靜香(ライター)
生活不安と社会保障の論点
古市将人(帝京大学)
〈インタビュー〉
交通誘導員という社会の縮図
柏 耕一(交通誘導員・ライター)、聞き手=前川仁之
フェミニスト・エコロジカル経済学の視座
古沢希代子(東京女子大学)
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◆注目記事
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長引く戦時の質問集
エカテリーナ・シュリマン(政治学者)、訳・解説=奈倉有里
能登半島地震と活断層──繰り返される「想定外」の背景に何があるか?
鈴木康弘(名古屋大学)
「後回し」にさせてはいけない──現地メディアが見た被災地
五百旗頭幸男(ドキュメンタリー監督)
声を運ぶ船
瀬尾夏美(アーティスト)
〈スケッチ〉
高架沿いと高架下で
津村記久子(作家)
〈シリーズ夜店〉
人文学のアナクロニズム──なぜいま、エドワード・サイードを読むのか
中井亜佐子(一橋大学)
ルポ
パレスチナ・西岸地区に生きるということ──あるいは次の瞬間死ぬということ
安田菜津紀(フォトジャーナリスト)
ショアーからナクバへ、世界への責任
高橋哲哉(東京大学名誉教授)
台湾の現在地─総統選挙・立法委員選挙結果をどう見るか
家永真幸(東京女子大学)
米中半導体戦争のなかのTSMC
土屋直也(ジャーナリスト)
危機に瀕する外苑いちょう並木
石川幹子(中央大学)
クマはなぜ、都市にあらわれるのか?
佐藤喜和(酪農学園大学)
プーチンの終わらない戦争と抵抗する人々
キリル・マルティノフ
ロシアがウクライナで戦う理由はなにか──プーチンの開戦演説をめぐって
伊東孝之(北海道大学名誉教授)
「人道的軍縮」の限界──なぜ惨禍を防げなかったのか
榎本珠良(明治学院大学)
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◇世界の潮
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◇辺野古「代執行」が破壊したもの
島 洋子(琉球新報)
◇「リバタリアン」大統領ミレイと、アルゼンチンのゆくえ
狐崎知己(専修大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇本との出会い
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
中村佑子(作家/映像作家)
本とチェック 第10回 大きな世界観─李光洙と波田野先生
金承福(クオン代表)
隣のジャーナリズム 「ケアをひらく」がひらこうとしたもの
白石正明(医学書院)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
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〈好評連載〉
最後は教育なのか? 第2回 教室という密室 川上康則さんに聞く
武田砂鉄(ライター)
●島に帰る 第2回 戦争のあとの物語
榎本 空(エスノグラファー)
●〈小さな物語〉の復興 第3回 親ガチャ
小川公代(上智大学)
●「拉致問題」風化に抗して 第8回 日本人被害者への思想教育(その1)
蓮池 薫(新潟産業大学)
●ボナエ・リテラエ─私の読書遍歴 第16回 『ニコマコス倫理学』
森本あんり(東京女子大学長)
●脳力のレッスン(261)二一世紀・未来圏の日本再生の構想(その4)
寺島実郎
●片山善博の「日本を診る」(172)大災害にどう備え、どう向き合うか
片山善博(大正大学)
●滅びゆく日本、再生への道 第6回 安倍派「構造腐敗」が招く岸田政権の終焉
星 浩(ジャーナリスト)
●香港からの通信 第19回 民意研究の厳冬
鍾庭耀(香港民意研究所主席)
●気候再生のために 第22回 COP28と再エネ三倍目標
高村ゆかり(東京大学)
●日本語のなかの何処かへ 第12回(最終回) 私たちが愉快でいられるために
温又柔(作家)
●沖縄(シマ)という窓(最終回) 人権をあきらめない
親川志奈子(沖縄大学非常勤講師)
●ドキュメント激動の南北朝鮮 第319回(23・12~24・1)
編集部
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○記憶をもった鏡──中井菜央『雪の刻』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○表紙木版画
久保舎己(水たまりの水をのむ野良の犬 1981、裏表紙 日の丸弁当 1979)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+安賀裕子
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編集後記
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昨年末、映画『PERFECT DAYS』を観た。早朝に木造アパートを出て、トイレ清掃の仕事をする。一〇〇円の古本を読み眠りにつく。スマホもテレビもない、ルーティンを重ねる静かな生活は、閉塞感に満ちた時代からの解放にもみえる。だが「Feeling Good」(ニーナ・シモン)の流れる終盤、役所広司さん演じる主人公の表情には、本当にこれでよかったのか、こんなはずではなかった──そんなやるせなさも窺える。
清掃や介護、警備といった、誰もがどこかで支えられているエッセンシャルワークはなぜ軽んじられ続けるのか。規制緩和や人件費削減など新自由主義的な政策・制度が、自己責任論とともに人々に浸透していく。この三〇年で、私たちは非正規という言葉に慣れすぎた──そう田中洋子さんは指摘する(特集2)。
三〇年という時間の意味を、何度も突きつけられた一月だった。
元日に起きた能登半島地震の被災地では、いまなおライフラインが復旧していない。今年で二九年目を迎えた阪神・淡路大震災の後、いくつもの震災を経てきたが、その経験の蓄積を十分に活かせているか。SNSに溢れた「被災地に入るな」の声に萎縮することなく、政治をウォッチし、被災地の人々が平穏な暮らしに戻れるよう、一刻も早く支援を届けなければならない。
日本活断層学会会長である鈴木康弘さんによれば、海岸沿いの活断層認定は遅れており、詳細な調査がなされているのは三パーセントに過ぎないとの指摘もあるという。陸域だけで二〇〇〇もの活断層がある日本で、大小様々な地震の起きる頻度が過小に見積もられていることが再度示された。原発再稼働などもってのほかだ。
三〇年前とは異なる衰弱局面でどう踏ん張るのか。九〇年代の政治改革論議をリードした佐々木毅さんは、今の日本政治には、当時よりもっと困難な課題が迫っていると語る(特集1対談)。しかし裏金問題の発覚以来、見せつけられてきたのは保身に走る議員の姿だけだった。政治資金規正法の改正がなぜか選挙制度改革とセットにされた、論点のすり替えを繰り返してはならない。
米兵による少女暴行事件後、日米両政府が普天間基地返還に合意したのは一九九六年。移設先とされた辺野古での建設計画の迷走、そして埋立て承認をめぐる訴訟を経て、今年一月、大浦湾側での新基地建設の工事が始まった(島洋子さん「世界の潮」)。
親川志奈子さんは「沖縄という窓」でコラムを執筆してきた十年余りを振り返り、時々に取り上げてきた問題で、一つでも解決できたものがあっただろうか、と書いている。
「何度読んでも一つだって『勝利』はなかった」。その時間は、日本人が沖縄を抑圧し続けた時間だと改めて思う。世界に目を向ければ、今なおパレスチナでの殺戮が続くこの四カ月も、ナクバからの七五年間も、国際社会が沈黙してきた時間だ(安田菜津紀さんルポ)。
無関心と無力で時間を失いつづけることはもう許されない。
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争――世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
https://iwnm.jp/022242
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国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
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人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
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日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
https://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
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三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
https://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11
吉田千亜
定価1,100円
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死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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