『世界』メールマガジン/2024年6月号【特集1:軍拡進行国家】【特集2:SNSと子どもたち】
2024/05/08 (Wed) 11:00
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■■ 『世界』メールマガジン/2024年6月号
■■ vol.#0108
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■『世界』2024年6月号(第982号)好評発売中
2024年5月8日発行
定価1045円(税込)
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
┏━━━┓
┃特集 1┃軍拡進行国家
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈対談〉
「国のかたち」の一方的な変更は許されない
青井未帆(学習院大学)×石井 暁(共同通信)
「セキュリティ・クリアランス」制度の何が問題か
高山佳奈子(京都大学)※「高」は「はしごだか」
同盟調整メカニズムと「外国軍隊」
城野一憲(福岡大学)
存立危機事態の存立可能性
長谷部恭男(早稲田大学)
┏━━━┓
┃特集 2┃SNSと子どもたち
┗━━━╋…────────────────────────────────
デジタル空間に潜む三つのリスク
水谷瑛嗣郎(関西大学)
手のひらの上のテーマパーク
江澤隆輔(公立学校教諭)
性的グルーミングという犯罪
櫻井 鼓(追手門学院大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
DVはなぜ「見えない」のか──共同親権導入の前に考える
山本千晶(フェリス女学院大学)
総選挙という名の「市民の法廷」
権容ソク(一橋大学)※「ソク」の字は、大の左右に百
代執行でも破綻する辺野古新基地建設
北上田毅(沖縄平和市民連絡会)
「紅麹」サプリ事件の深層
神里達博(千葉大学)
ケアと教育をつなぐ 子どものための学童保育とは
鈴木 瞬(金沢大学)
「働く人の健康」がみんなの生産性を高める
小原美紀(大阪大学)
宝塚歌劇団は変われるか──冬の時代の演劇を考える
川崎賢子(文芸評論家)
「ALS嘱託殺人」と隠蔽されたもうひとつの事件 後編
渡邉 琢(介助士)
〈スケッチ〉
二〇二四年三月二十三日土曜日午前中デュッセルドルフ
岡田利規(劇作家)
〈シリーズ夜店〉
韓国の少子化はなぜ加速するのか
笹野美佐恵(茨城大学)
「歴史家論争2.0」とドイツの転落
橋本伸也(関西学院大学)
〈対談〉
慰霊とアート──水俣から考える
小田原のどか(彫刻家)×小松原織香(東北大学)
武器を手に取るアーティストを忘却してはならない
藤井 光(現代美術家)
隣のジャーナリズム──靖国神社と池田大作の「戦後」
小川寛大(『宗教問題』編集長)
岡口基一裁判官の弾劾裁判所罷免判決に寄せて
松井茂記(ブリティッシュコロンビア大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇同性婚訴訟の次のステージへ──札幌高裁判決をいかに受け止めるか
駒村圭吾(慶應義塾大学)
◇徴兵制は混乱するミャンマーに何をもたらすか
中西嘉宏(京都大学)
◇介護報酬引き下げで、訪問介護サービスはどうなる?
中澤まゆみ(福祉ジャーナリスト)
◇ハイチ 崩壊した統治と深まる複合危機
久松佳彰(東洋大学)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇本との出会い
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇本とチェック──第13回
『広場』と創作 金承福(クオン代表)
◇読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
長谷部恭男(早稲田大学)
◇文学が掬い取るもの──性暴力、そしてひとりの人間である房思チー ※「チー」はおうへんに其
水上 文(文芸評論家)
◇見えない真実、それぞれの正義──『正義の行方』
河合香織(ノンフィクション作家)
◇アナキズムの渦へようこそ
高島 鈴(ライター)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈往復エッセイ〉
言葉と言葉のかくれんぼ 第3回 夢のなかの父
チョン・スユン(翻訳家)
●ボナエ・リテラエ──私の読書遍歴 第19回 『出会いとしての真理』
森本あんり(東京女子大学長)
〈小さな物語〉の復興 第5回 レイシズム
小川公代(上智大学)
島に帰る 第5回 同級生
榎本 空(エスノグラファー)
「変わらない」を変える 第13回 光州旅行で考えた、民衆と市民
三浦まり(上智大学)
脳力のレッスン(264) ピョートル大帝と徳川綱吉に会った男ケンペル
寺島実郎
片山善博の「日本を診る」(175) 政権交代の議論で欠かせない視点
片山善博(大正大学)
ルポ 軍事優先社会 第3回 軍事費膨張ではなく社会保障の拡充を
吉田敏浩(ジャーナリスト)
滅びゆく日本、再生への道 第8回(最終回) 政権交代のある政治へ 有権者の選択の時
星 浩(ジャーナリスト)
香港からの通信 第22回 ディアスポラメディアの使命
キャンディア・トン
気候再生のために 第25回 「地球沸騰」はどこまで解明されたか
江守正多(東京大学)
ドキュメント激動の南北朝鮮 第322回(24・3~4)
編集部
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
○記憶をもった鏡──児玉浩宜『Notes in Ukraine』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○編集後記
○表紙木版画
久保舎己(せんそう(1)1981、裏表紙 何処へもってゆこうとしているのか 1980)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+安賀裕子
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
四月のある朝、前ぶれなく呼び鈴が鳴った。近所に住む、先日入学式を迎えたばかりの女の子が、少しはにかんだ様子でそこにいた。黄色い帽子には小さなリボンがついていて、放課後に行く学童によって色が違うと教えてくれた。
学童保育に通う小学生は年々増えている。しかし、一年生の時点で約半数が退所するとの調査もあり(鈴木瞬さん論考)、保育園同様、その質が問われている。学童は「教育の場」でもあるが、いま、この時間を安心して過ごす「生活の場」であるはずだ。それを支える学童保育指導員の多くは非正規雇用で、不安定な立場にある。ケアの現場は、担い手が踏みとどまることで成立している。「私たちが介護を受けるときには、こんなふうにはいかないね」
看取り期間のケアにも長く携わってきた中澤まゆみさんは、介護保険制度の改悪を受け、友人とこう話す機会が増えたという(「世界の潮」)。保育園では保育士一人がうけもつ子どもの数を定めた配置基準が七六年ぶりに一部改定されたものの、人手不足は深刻だ。首相は車座で何を聞いてきたのだろう。
放課後の子どもは、オンラインにもつながっている。コミュニケーションのインフラともなっているスマホやタブレットを一方的に取り上げるのは現実的でなく、居場所を奪うことになりうる。だが、今や公共的な空間といえるソーシャルメディアでの誹謗中傷はあとを絶たず、命を失う人もいる。このまま市場や搾取の動きを放置してよいはずがない。
何がネットを危険にしているか、なぜその改善が困難なのか。水谷瑛嗣郎さんが指摘するように、デジタル空間の構造面でのリスクを認識し、効果的な仕組みづくりを進めたい。
八年連続の出生率の減少、高齢単身世帯の増加などが報じられるなか、今年度予算で防衛費は過去最大の七兆九四九六億円。「五年間で四三兆円」と掲げられたものの、財源はいまだみえない。
連邦議会の拍手に踊らされているうちに、自衛隊は米国の「世界戦略」の道具(城野一憲さん)と化しつつある。もはや外国の軍隊でないほど日米一体化に突き進む政府に歯止めをどうかけるか。足がかりを求めて特集1を編んだ。
先日、新国立競技場建設に伴う区画整理の対象となった、霞ヶ丘アパートの跡地につくられた明治公園に行ってみた。タワーマンションの公開空地のように様変わりし、デモの集合場所だったかつての公園のことが頭をよぎった。私たちはどんな居場所を子どもたちに残していけるのだろう。
「人生を、風評を聞くように生きるのは悲しいことです。風聞に満足せず、現場に立つとき、私たちは運命に出会います」
『広場』の著者・崔仁勲さんは、こんな言葉を残したという(今号「本とチェック」)。未来に開かれた場が今こそ求められている。
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~~『世界』臨時増刊号のご案内~~
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争――世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
https://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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~~『世界』から生まれた本~~
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
https://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
https://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
https://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
https://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
https://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11
吉田千亜
定価1,100円
https://iwnm.jp/603333
死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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~~「WEB世界」のご案内~~
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雑誌『世界』のWEB版もぜひ、ご覧ください
https://tanemaki.iwanami.co.jp/
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■『世界』2024年6月号(第982号)好評発売中
2024年5月8日発行
定価1045円(税込)
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▼本号の目次
特集1/特集2/注目記事/世界の潮/本との出会い/連載/編集後記/
『世界』臨時増刊月号のご案内/『世界』から生まれた本/「WEB世界」のご案内
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┃特集 1┃軍拡進行国家
┗━━━╋…────────────────────────────────
〈対談〉
「国のかたち」の一方的な変更は許されない
青井未帆(学習院大学)×石井 暁(共同通信)
「セキュリティ・クリアランス」制度の何が問題か
高山佳奈子(京都大学)※「高」は「はしごだか」
同盟調整メカニズムと「外国軍隊」
城野一憲(福岡大学)
存立危機事態の存立可能性
長谷部恭男(早稲田大学)
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┃特集 2┃SNSと子どもたち
┗━━━╋…────────────────────────────────
デジタル空間に潜む三つのリスク
水谷瑛嗣郎(関西大学)
手のひらの上のテーマパーク
江澤隆輔(公立学校教諭)
性的グルーミングという犯罪
櫻井 鼓(追手門学院大学)
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◆注目記事
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DVはなぜ「見えない」のか──共同親権導入の前に考える
山本千晶(フェリス女学院大学)
総選挙という名の「市民の法廷」
権容ソク(一橋大学)※「ソク」の字は、大の左右に百
代執行でも破綻する辺野古新基地建設
北上田毅(沖縄平和市民連絡会)
「紅麹」サプリ事件の深層
神里達博(千葉大学)
ケアと教育をつなぐ 子どものための学童保育とは
鈴木 瞬(金沢大学)
「働く人の健康」がみんなの生産性を高める
小原美紀(大阪大学)
宝塚歌劇団は変われるか──冬の時代の演劇を考える
川崎賢子(文芸評論家)
「ALS嘱託殺人」と隠蔽されたもうひとつの事件 後編
渡邉 琢(介助士)
〈スケッチ〉
二〇二四年三月二十三日土曜日午前中デュッセルドルフ
岡田利規(劇作家)
〈シリーズ夜店〉
韓国の少子化はなぜ加速するのか
笹野美佐恵(茨城大学)
「歴史家論争2.0」とドイツの転落
橋本伸也(関西学院大学)
〈対談〉
慰霊とアート──水俣から考える
小田原のどか(彫刻家)×小松原織香(東北大学)
武器を手に取るアーティストを忘却してはならない
藤井 光(現代美術家)
隣のジャーナリズム──靖国神社と池田大作の「戦後」
小川寛大(『宗教問題』編集長)
岡口基一裁判官の弾劾裁判所罷免判決に寄せて
松井茂記(ブリティッシュコロンビア大学)
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◇世界の潮
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◇同性婚訴訟の次のステージへ──札幌高裁判決をいかに受け止めるか
駒村圭吾(慶應義塾大学)
◇徴兵制は混乱するミャンマーに何をもたらすか
中西嘉宏(京都大学)
◇介護報酬引き下げで、訪問介護サービスはどうなる?
中澤まゆみ(福祉ジャーナリスト)
◇ハイチ 崩壊した統治と深まる複合危機
久松佳彰(東洋大学)
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◇本との出会い
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◇本とチェック──第13回
『広場』と創作 金承福(クオン代表)
◇読書・観賞日記 読んで、観て、聴いて
長谷部恭男(早稲田大学)
◇文学が掬い取るもの──性暴力、そしてひとりの人間である房思チー ※「チー」はおうへんに其
水上 文(文芸評論家)
◇見えない真実、それぞれの正義──『正義の行方』
河合香織(ノンフィクション作家)
◇アナキズムの渦へようこそ
高島 鈴(ライター)
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●連載
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〈往復エッセイ〉
言葉と言葉のかくれんぼ 第3回 夢のなかの父
チョン・スユン(翻訳家)
●ボナエ・リテラエ──私の読書遍歴 第19回 『出会いとしての真理』
森本あんり(東京女子大学長)
〈小さな物語〉の復興 第5回 レイシズム
小川公代(上智大学)
島に帰る 第5回 同級生
榎本 空(エスノグラファー)
「変わらない」を変える 第13回 光州旅行で考えた、民衆と市民
三浦まり(上智大学)
脳力のレッスン(264) ピョートル大帝と徳川綱吉に会った男ケンペル
寺島実郎
片山善博の「日本を診る」(175) 政権交代の議論で欠かせない視点
片山善博(大正大学)
ルポ 軍事優先社会 第3回 軍事費膨張ではなく社会保障の拡充を
吉田敏浩(ジャーナリスト)
滅びゆく日本、再生への道 第8回(最終回) 政権交代のある政治へ 有権者の選択の時
星 浩(ジャーナリスト)
香港からの通信 第22回 ディアスポラメディアの使命
キャンディア・トン
気候再生のために 第25回 「地球沸騰」はどこまで解明されたか
江守正多(東京大学)
ドキュメント激動の南北朝鮮 第322回(24・3~4)
編集部
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○記憶をもった鏡──児玉浩宜『Notes in Ukraine』
戸田昌子(写真史家)
○岩波俳句
選・文 池田澄子(俳人)
○アムネスティ通信
○読者談話室
○編集後記
○表紙木版画
久保舎己(せんそう(1)1981、裏表紙 何処へもってゆこうとしているのか 1980)
○キャラクター・扉絵
西村ツチカ
○アートディレクション
須田杏菜
○本文デザイン
大原由衣+安賀裕子
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編集後記
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四月のある朝、前ぶれなく呼び鈴が鳴った。近所に住む、先日入学式を迎えたばかりの女の子が、少しはにかんだ様子でそこにいた。黄色い帽子には小さなリボンがついていて、放課後に行く学童によって色が違うと教えてくれた。
学童保育に通う小学生は年々増えている。しかし、一年生の時点で約半数が退所するとの調査もあり(鈴木瞬さん論考)、保育園同様、その質が問われている。学童は「教育の場」でもあるが、いま、この時間を安心して過ごす「生活の場」であるはずだ。それを支える学童保育指導員の多くは非正規雇用で、不安定な立場にある。ケアの現場は、担い手が踏みとどまることで成立している。「私たちが介護を受けるときには、こんなふうにはいかないね」
看取り期間のケアにも長く携わってきた中澤まゆみさんは、介護保険制度の改悪を受け、友人とこう話す機会が増えたという(「世界の潮」)。保育園では保育士一人がうけもつ子どもの数を定めた配置基準が七六年ぶりに一部改定されたものの、人手不足は深刻だ。首相は車座で何を聞いてきたのだろう。
放課後の子どもは、オンラインにもつながっている。コミュニケーションのインフラともなっているスマホやタブレットを一方的に取り上げるのは現実的でなく、居場所を奪うことになりうる。だが、今や公共的な空間といえるソーシャルメディアでの誹謗中傷はあとを絶たず、命を失う人もいる。このまま市場や搾取の動きを放置してよいはずがない。
何がネットを危険にしているか、なぜその改善が困難なのか。水谷瑛嗣郎さんが指摘するように、デジタル空間の構造面でのリスクを認識し、効果的な仕組みづくりを進めたい。
八年連続の出生率の減少、高齢単身世帯の増加などが報じられるなか、今年度予算で防衛費は過去最大の七兆九四九六億円。「五年間で四三兆円」と掲げられたものの、財源はいまだみえない。
連邦議会の拍手に踊らされているうちに、自衛隊は米国の「世界戦略」の道具(城野一憲さん)と化しつつある。もはや外国の軍隊でないほど日米一体化に突き進む政府に歯止めをどうかけるか。足がかりを求めて特集1を編んだ。
先日、新国立競技場建設に伴う区画整理の対象となった、霞ヶ丘アパートの跡地につくられた明治公園に行ってみた。タワーマンションの公開空地のように様変わりし、デモの集合場所だったかつての公園のことが頭をよぎった。私たちはどんな居場所を子どもたちに残していけるのだろう。
「人生を、風評を聞くように生きるのは悲しいことです。風聞に満足せず、現場に立つとき、私たちは運命に出会います」
『広場』の著者・崔仁勲さんは、こんな言葉を残したという(今号「本とチェック」)。未来に開かれた場が今こそ求められている。
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~~『世界』臨時増刊号のご案内~~
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◎『世界』臨時増刊 ウクライナ侵略戦争――世界秩序の危機
『世界』編集部 編
2022年4月14日刊
定価1,320円
https://iwnm.jp/022242
※書籍版はご好評につき品切れとなりましたが、電子書籍版を配信中です。
国際社会は冷戦終結以降、最大の危機を迎えた。核大国による侵略という事態をどう理解し、どう対峙するのか。多角的に検証する。
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◎プリズン・サークル
坂上 香
定価2,200円
https://iwnm.jp/061526
人は、ひとりでは罪と向き合えない。日本初となる刑務所内での長期撮影、一〇年超の取材がここに結実。
◎学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か(岩波新書)
芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明
定価924円
https://iwnm.jp/431925
日本学術会議会員任命拒否には、日本社会の矛盾が象徴されている。当事者六名が、その背景と本質を問う。
◎読書会という幸福(岩波新書)
向井和美
定価946円
https://iwnm.jp/431932
本を語ることは人生を語ること。三十年以上続く、豊穣な「魂の交流の場」への想いをやわらかな文章で綴る。
◎沖縄という窓 クロニクル2008―2022
山城紀子、松元 剛、親川志奈子
定価2,420円
https://iwnm.jp/061541
三人の書き手が多角的に描き出す沖縄の同時代史。一四年にわたる雑誌『世界』好評リレー連載を単行本化。
◎いま、この惑星で起きていること 気象予報士の眼に映る世界
森さやか
定価902円
https://iwnm.jp/500954
世界各地で観測される異常気象を気象予報士の立場で解説し、今後について考察する。『世界』の大好評連載をまとめた一冊。
◎孤塁 双葉郡消防士たちの3・11
吉田千亜
定価1,100円
https://iwnm.jp/603333
死と隣り合わせで震災と原発災害に対応した消防士たちを丹念に取材。当時の緊迫を描き出した迫力作。
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